株式日記と経済展望

ページを繰り越しましたのでホームページからどうぞ。


中国は、経済発展すればするほど環境汚染は酷くなり、石油の消費は
爆発的に増えてしまった。手本にすべき国は日本でありアメリカではない。


2008年10月15日 水曜日

バブル崩壊後の世界へ GO! GO! 9月13日 株式投資の部屋(長期投資)

もはや新興国のバブルは、崩壊への道を歩み始めました。

結局ところ、その最大の原因は、エネルギー資源の高騰でありましたね。

とりわけ原油価格の上昇は、他の様々な商品相場へ波及し、世界中の庶民の生活を窮地に落としいれ、世論を敵に回すことになり、相場上昇することが不可能な事態になってしまいました。

こうなってしまうと、資源国に投入されていた投機資金は逃げ、相場は下落し、バブルに沸く資産家が、含み益を失ってしまいます。

消費は落ち込み、実需の投資資金も撤退を余儀なくされることでしょう。

そしてもう一つの原因が、格差社会にあったことも忘れてはなりません。

いくら新興国が成長しても、豊かになるのは富裕層だけであって、庶民にまでは金は回らない。

つまり、消費国としての成長に限界が見えたことも、投機資金が逃げていった理由の一つでありましょう。

さて、ここで考えなければいけないことが一つあります。

原油価格が下がれば、例えば新興国の自動車販売は復活するのかどうか、という点であります。

安くなればまた需要が増え、原油の供給量には限りがあるのですから、相場は再び高騰するのではないか、という問いかけも可能ですからね。

しかし「それはない」というのが、私の結論でございます。

原油価格の天井が見えた以上、ここに投機するものはいないと思われるからであります。

財産をかけたババ抜きだとわかれば、参加しないのが一番賢い選択でありますからね。

また実需の投資にしても、例えば新興国の人が車を買ったとしても、原油価格の上昇で車を運転出来なくなることがわかっていれば、彼らは車なんか買いません。

実需の投資でさえ、新興国の消費には疑問を抱くようになるのであります。

つまり新興国バブルが復活することはないと結論づけるわけであります。

また私は、あえて今までの文章で新興国から先進国への輸出による成長については、触れないでおきました。

サブプライムローン問題の影響は、これっぽっちで終わるわけがないと思っているので、あえて触れるまでもないと思っているからです。

これからのグローバル経済は、エネルギー資源の有効活用と、格差社会の是正が最大の課題になってくるでしょう。

これが成されなければ、グローバル企業は成長できないのであります。

成長が出来ないと言うことは、株主から経営陣への支持がなくなるということであります。

経営陣はこの課題について、真剣に取り組むようになると、私は考えておりますよ。

起こりうる日本経済のポイントは二つ。

技術革新と内需拡大であります。

技術革新で言えば、例えば電気自動車の普及。

内需拡大で言えば、例えば私の注目銘柄「2402 アマナHD」のグループ会社、アマナイメージズで見るならば・・・

「日本回帰」でございます(笑)


リーマン、日本の排出権取引市場に参入 2月27日 日経BPネット

リーマン・ブラザーズ証券は2月26日、日本の排出権取引市場に参入すると発表した。環境省と経済産業省が1月21日付けで、リーマンが日本で国連認証の排出権(CER:認証排出削減量)を現物取引するための管理口座の開設を承認した。外資系金融機関としては初という。

リーマンは、英国ロンドンの拠点を中心に各種のCER関連事業を手がけており、過去1年半は中国やインド、南米で事業を拡大してきた。日本における口座開設の承認については、CER関連分野におけるリーマンの実績を、日本の当局が高く評価したものとしている。

またリーマンでは口座開設の承認により、すでにCERの現物取引を行っている大手日本企業と同等に事業を展開することが可能になったとしている。今後は日本と欧州の排出権取引市場を結び、欧州とアジアの市場に流動性を供給するという。



(私のコメント)
最近は株価の値動きが非常に荒っぽくなってきていますが、金融恐慌の影響が実体経済にまで及んできたからでしょう。しかし金融の問題は公的資金が注入されても一時的なカンフル注射にしかならない。それは金融機関が抱える不良債権の総額が見当がつかないからだ。CDSといったデリバティブは単純ではないし、売ろうと思っても買い手のいない債券の評価も査定が出来ない。

日本のバブル崩壊の処理に時間がかかったのは、日本の銀行が換金化しやすい株式を大量に持っていたために流動資金を確保する事ができたが、アメリカの銀行は株式は持てず証券化された債券を大量に持っていて、債券市場が売買不能状態でインターバンク市場も機能が停止していて、流動資金が確保できないと一気に破綻してしまう。それで公的資金の注入で一息つけますが、また息切れして危機が訪れる。

企業も長期資金の借り入れには高金利で借りなければならず財務体質がどんどん劣化してくる。住宅や車も当然売れなくなり、リストラで個人のカード破産も増える一方だろう。世界経済を動かしてきた投資銀行というエンジンが商業銀行に変わったことにより規制を受けるようになって、金融革命的な金融商品でビジネスができなくなる。

アメリカの投資銀行は次の投資戦略を排出権証券化ビジネス戦略を持っていたのでしょうが、このようなデリバティブはご破算になるしかない。日本のテレビでもエコロジー番組が大量に放送されてエコビジネスに焦点が当たっていましたが、これを仕掛けていたのがリーマンなどの投資銀行だ。榊原英資氏も盛んに排出権ビジネスを推進しなければならないと言っていたものだ。

このようにアメリカは次の国家戦略としてエコロジービジネスを仕掛けてきましたが、投資銀行の破綻で排出権ビジネスも終わりだ。「株式日記」では排出権取引に関して胡散臭いものとして反対してきましたが、マスコミの地球温暖化キャンペーンもアメリカの投資銀行が仕掛けたものなのだろう。それくらいマスコミと投資銀行とは密接な動きをしてきた。


サブプライム・排出量取引証券化ビジネスから国を守れ! なぜ、サブプライムローンの様な「まやかし」の証券化ビジネスが生まれたのか 7月21日 株式日記

投機の対象を生み出し続けなければマネー・ゲームは成立しない。 従って、ウォールストリートが次に標的を定める対象は、間違いなく排出量取引やCDM(クリーン開発メカニズム)である。 現在CDMは、国家間の相対取引であるが、あらゆる排出量取引はいずれ証券化され、サブプライムローン同様、様々なものとミックスされた複雑な証券化商品として、中身も実態も不明のまま、全世界にばら撒かれることになるだろう。

周知のとおり、今年から京都議定書の約束期間が始まり、日本でもEU−ETSに似た国内排出量取引制度の導入が議論され始めた。 7月の洞爺湖サミットでは、ポスト京都議定書のフレームづくりが主要議題となる。 将来的には、排出量取引が全世界に広がり、森林などの吸収源を多く持ち、エネルギー効率の改善にも余裕がある、途上国の莫大な排出枠が、証券化などの金融工学的手法とあいまって盛んに取引される事になるだろう。

しかしながら、排出量取引そのものでは、排出量が「移転」するだけで、ニ酸化炭素などの温室効果ガスの総排出量は全く減らない。 総量ペースで現状の排出量より少ないキャップ(排出可能枠)を全世界の国や企業に割り当てることができれば、経済合理的に温室効果ガスを削減できるというのが推進派の理屈だが、米国、中国、インドといった排出大国が京都議定書に参加せず、日本が基準年の不公平性を主張していることから見ても、全世界に「合理的に」枠を配分することは不可能である。


(私のコメント)
新興国の市場参加で、中国やインドなどが経済発展して石油などのエネルギー消費が爆発的に増えて、石油などの一次産品が高騰しましたが、その為に地球温暖化が問題になり先進諸国では排出権を証券化して売買しようというインチキが行われようとしていた。

「株式日記」では地球温暖化よりも環境汚染のほうが大変な問題ではないかと指摘してきたのですが、アメリカは遺伝子組み換え作物を世界にばら撒いているが、マスコミは問題にしようとはしない。新興国の経済発展事態は喜ばしい事ですが環境破壊が進んで住めない土地がどんどん広がっていく。

排出権証券化ビジネスは投資銀行が仕掛けているものであり、CO2の排出が移転するだけで減る事ではない。しなければならないことは環境汚染の防止と省エネルギー化なのですが、それが地球温暖化と排出権売買取引に転化してしまっている。いわゆるエコバブルを作る事によって投資銀行は商売にしようとしていた。

しかしアメリカの投資銀行は自ら撒いた証券化ビジネスやデリバティブによって破綻して処分された。この事によってアメリカの世界経済戦略は見直しを迫られて、バブル破綻処理にしばらくの間追われる事になるだろう。投資銀行という経営形態はアメリカ政府がバックにあってこそ出来ることであり、ITバブルも住宅バブルも政府の経済戦略であった。

アメリカの投資銀行がなくなったことにより、世界のカネの流れにも変化が出てきて、ウォール街が中心になった投資戦略は小さくなり、投資活動は多極化していくだろう。アジアの投資活動は東京が中心なって行われるようになるだろう。欧米の経済が停滞する事によりカネの流れは東京に集まってくるようになるだろう。

なぜならば、環境破壊に対する技術力も省エネルギーに対する技術力も日本が中心であり、金融と技術力で日本は世界の中心になって貢献すべきなのであり、アメリカのようなエネルギー多消費型の産業経済の時代は終わったのだ。

新興国などもアメリカ型の産業発展を目指してきましたが、自動車やハイウエイや超高層のビルはエネルギー多消費型の開発なのだ。中国を見ればよく分かるがそれは間違っている。だから経済発展すればするほど環境汚染は酷くなり、石油の消費は爆発的に増えてしまった。中国が手本にすべき国は日本でありアメリカではない。





アメリカがダメになった以上は日本が世界の金融センターとなって
いかなければなりません。
つまり通貨戦争での勝利者は日本である。


2008年10月14日 火曜日

米、25兆円の公的資金注入はモルスタ、シティなど大手に 10月14日 産経新聞

【ワシントン=渡辺浩生】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は13日、関係筋の話として、米政府が金融機関に約2500億ドル(約25兆5000億円)の公的資金を資本注入する計画だと報じた。ゴールドマン・サックスや、三菱UFJフィナンシャル・グループが出資を決めたモルガン・スタンレー、シティグループなど大手9社を含む金融機関で、先に成立した金融安定化法に基づいて財務省が各社の発行する優先株式を購入する。欧州諸国に続いて資本注入計画を明確化し、金融危機の沈静化を図る。


ウォールストリート;恐怖の8日間 10月14日 吉田繁治

■4.米欧の政府・中央銀行の対策

▼米国政府と中央銀行

米政府は、$7000億(70兆円)を、金融機関の救済資金として、(これから)出すことを、約束しています。とても、この額では足りなくなることは、容易にわかります。

内容は、
・主要金融機関の不良債権・証券の買い取りと、・340兆円の残高のMMF(個人預金)の、保護用です。

(注)米国政府が出資することは、まだ決定していませんが、近々、破綻金融機関へ出資することになるでしょう。

▼英国と欧州大陸

先週末に、英国と大陸欧州では、資金繰り難におちいった金融機関に対し、次々に、政府による資本注入(出資)の決定(つまり一時国有化の宣言)が行われています。

欧州では、金融機関間の、短期取引(コール・ローン)についても、各国政府が保証するという。取り付けが起こると金融が崩壊する預金も、政府が保護しています。

まとめて言えば、米欧の政府と中央銀行が、金融危機の後始末をしなければならない。他に、手段はないからです。

▼すでに100兆円を注いだFRBとECB

米欧の中央銀行(FRBとECB)は、銀行間の短期資金市場が消えたことを補うために、08年10月時点で、すでに100兆円の短期資金を、供給しています。

今後、どれくらいの資金を投入できるのか?

物的担保としては「国債と金融機関から買う証券」しかないペーパー・マネーですから、無限に、紙幣を印刷(実際は金融機関と政府への貸付)ができます。

(注)今日の時点では、日米欧の中央銀行とG20カ国は、金額に枠を設けず、必要なら、いくらでも資金を供給するという「青天井宣言」をしています。日本も、ペイオフをはずし、政府が、預金を全額保護するという。無際限の、資金供給です。

以下で、中央銀行のマネー供給の仕組みを見ます。

■5.中央銀行はどういった形で、金融機関に、資金供給を行うのか?

わが国日銀の、貸借対照表を見れば、中央銀行のマネー供給の仕組みがわかります。(08年9月30日現在)
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/ac07/ac080930.htm

   【資産】           【負債及び資本】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・金の保有    0.4兆円  ・発行紙幣    75.5兆円 
・現金紙幣保有  0.2兆円  ・当座預金預かり 16.3兆円
・買現先勘定   8.7兆円  ・政府預金預かり  2.5兆円
・保有国債   65.5兆円  ・売現先勘定   11.4兆円
・金銭信託    1.2兆円  ・その他負債    0.8兆円
・貸付金    27.1兆円  ・資本勘定     5.8兆円
・外国為替    8.6兆円
・その他     0.6兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
資産合計   112.5兆円   負債・資本   112.5兆円

(注)現先勘定は、一定期間後に買い戻す(買現先)、または売戻すこと(売現先)を条件にした債券の、短期での売買残です。

概略でいえば、日銀は、
・日本国債を65.5兆円分買い、
・金融機関への円の貸し付けを27.1兆円行い、
・金融機関へ米ドルの貸し付けを8.6兆円分(=外国為替)行っていて、それらの資産を根拠にして、
・75.5兆円の1万円札を発行していて、
・18.8兆円を、金融機関と政府から日銀当座に預かっていると言うことです。

日銀のマネー供給額とは、[紙幣発行の75.5兆円+当座預金での預かり18.8兆円=94.3兆円]を言います。

そのマネー供給の裏付けになっているのが、[国債65.5兆円+円の貸付証書27.1兆円+ドルの貸付証書8.6兆円=101.2兆円]です。

▼マネー発行の担保は、要は、国債

以上の、わが国日銀の例で見るように、各国中央銀行がマネーを供給するときは
(1)担保として国債を買う、
(2)貸付証書を作成する、
(3)金融機関が持つ証券を買う、ということです。

【信用の根幹】
従って、中央銀行の信用は、
(1)担保として取った国債の信用(=国の財政の信用)、
(2)民間金融機関への貸付証書の信用(=金融機関の財政の信用)、
(3)買った証券の信用、ということになります。

つまり、中央銀行の信用とは、
・国家財政の信用と、
・金融機関の信用が根源です。

しかし、今、米欧の金融機関は、自己資本を失い、信用がない。そのため、金融機関の間の、短期資金市場(インターバンク・マーケット)が停止しています。

つまり、金融機関への貸付証書と、金融機関が担保に出す価値が下がった証券の信用は、薄くなった。

どうしたらいいか。

【国債の信用が根底になる】
(1)財務省が、国の財政の信用を元に、国債(=借用証)を発行する。

(2)中央銀行が、国債を担保に預かり、財務省の当座預金の口座に、現金を振り込む。

(3)各国の財務省が、自己資本を失った金融機関に、その資金を振り込む。あるいは増資・優先株・劣後債の発行に応じる。

以上のような、構造です。

▼国家財政の信用

根底になるのが、国が発行する紙の国債(=利付借用証)の信用であることが、了解できるでしょう。

この信用は、国の返済力と利払い力です。

ゴールドという物的担保を裏付けにしないペーパー・マネーの信用の根源は、各国の、将来の国家財政です。つまり、あらゆる国の国家財政の信用は、将来の徴税力(=課税力)に依存します。

過去に金融救済のために緊急に使った分を、後で課税ができるのは、国民所得(=世帯の所得+企業所得)の増加があるからです。つまりは今後の経済力(=生産力と販売力)の伸びです。

米欧の政府・中央銀行が、「金融危機を避けるためあらゆる朱手段をとる」ということは、
・国債を増発し、中央銀行に買い取ってもらい、
・そのマネーを、金融機関に貸すまたは増資に応じるという意味です。

中央銀行も、無からマネーを生むことはできない。「国の財政の信用力」を無視し、無茶に行えば、その国の通貨の信用が、下落します。

通貨信用は、国債の信用と同義です。

米国と欧州の中央銀行は、以上のような形で、すでに100兆円を、金融機関に増加供給しています。あと、必要になる数百兆円も、この方法で集めるしかない。

【重要】海外(日本、中国、アラブ)からも、マネーを集めるとは言っても、担保に、米欧の国債を差し入れねばならない。あるいは、米政府または中央銀行の、特別借用証の差し入れが必要です。


■6.究極に問題になるのは、米国経済の信用

米国のGDP(国内総生産=経済の生産力と販売力)は、2007年で$11.7兆(1170兆円:日本の2.2倍)です。世界のGDP(5500兆円)の22%を占めています。

この米国は、2007年末で、対外債務を$20兆(2000兆円:GDPの17倍)抱えています。

他方、対外資産は$16.5兆(1650兆円:GDPの1.4倍)です。純債務が$3.5兆(350兆円)です。

(注1)日本の対外純資産は、2007年末で250兆円です。他の純債権国は、ドイツ107兆円、中国78兆円、香港61兆円、スイス55兆円、フランス13兆円です。

(注2)純債務国は、大きい順にいえば、米国の純債務350兆円、英国80兆円、カナダ18兆円、イタリア12兆円・・・です。米英の合計で430兆円の純債務であり、世界は、過去の貿易黒字分を、そっくり米英に貸し付けしていると言っていいのです。


●対外純債務国(米国)が、金融危機の中心というのが、今回の危機の最大の特徴です。

1929年の大恐慌のとき、米国は対外純債務国でははかった。1997年の日本の金融危機の時は、日本も対外純債務国ではなかった。

2008年からの米国は、
・減税で18兆円、
・イラク戦費で20兆円、
・医療費や国防費の財政赤字で40兆円、
・金融救済で確定した分が70兆円、
・貿易赤字で、80兆円を使います。


米国に必要な、海外からの資金の流入は、今後1年で、18+20+40+70+80=228兆円になります。これは、過去の100兆円水準の2.2倍です。

今後の焦点は、米国が必要とするこの228兆円を、どの国が、米国債あるいは借用証と引き換えに、供出するか、です。

日本・中国・アラブが、総力を挙げて米国債を買っても、買い切れない金額です。


じゃ、米国内で買えるか。それも無理です。米国の金融機関は、今、国債を増加買いする余力はない。むしろ、政府から資金供給を受けねばならない

【結論】以上の帰結として、年末と2009年に向かい、米ドルは崩落することになります。つまり、米国の政府財政の信用力の低下です。

買いがなく、売りが超過すれば、その国の通貨は当然に下落します。まずは、$1=80円に向かうはずです。

▼今、ユーロが下げ、米ドルがユーロに対し維持し、円が上がっている理由

【ユーロの、対ドルでの下げの原因】
今は米ドルに対し、1ユーロは$1.36に下げています。ユーロに対しては、ドルが上がった。

この原因は、米国の金融機関が、欧州にもつユーロの株や証券を売ってユーロを得て、そのユーロをドルに交換(ユーロ売り=ドル買い)して、自国での資金繰りに充てているからです。

欧州の株価の下落は、米国と欧州の金融機関及びファンドの、ユーロ株売りによります。

(注)米国の金融機関とファンドは、前述のように、対外債権を$16.5兆持っています。これを、売っている。

【米ドルの、対円での下げの原因】
他方、米ドルは、日本円に対しては$1=100円付近に下げています。(08.10.08)

この原因は、米系ファンドがもつ日本株の売りの金額(円売り=ドル買い)より、日本の金融機関によるドル債やドル株の売り(ドル売り=円買い)の金額が大きいからです。

ドル債を売ってドル札に換え、そのドルを円に交換(ドル売り=円買い)し、自国に持ち帰っているからです。今、日本に資金が回帰しています。

●今通貨でもっとも強いのが円、次がユーロ、もっとも弱いのが米ドルです。

【短期では】
短期では、米国の金融機関とファンドの、資金繰りのためのポジション解消売りで、米ドルへの回帰(ドル買い)が上回って、ドルが上げるように見えるときがあるかもしれません。

【重要】
しかし前述のように、米国は、今後1年で228兆円が不足します。したがって、3か月、6か月スパンで見た時の、いずれの、世界の通貨に対するドル安は、避けられない。

米国のドルの信用が下落しているのです。(中略)

■8.重要な事実

▼ドル下落に向かう米国債を、どこが買うか?

米国は2009年、2010年にかけて、228兆円もの国債の増発が必要だということを示しました。

米国債は、今でも、その94%を、海外が買っています。米国内では、増発される国債を消化できない。根底の理由は、毎年の、国民の増加預金(残高は700兆円)がないからです。

【重要】228兆円ものドル建て証券を、どこの国が、買えるかです。買えなければ、中央銀行のFRBが買うしかない。日本、アラブ、中国を、懸命に合わせても100兆円分が限界でしょう。欧州は買う力がない。

そうすると、2000兆円の対外債務の米ドル証券が、激しく売られ、米ドルが崩落し、米国債の金利が、市場の圧力で高騰します。

▼米国世帯の消費は、100兆円が過剰だった

米国世帯の資産とは、株であり、住宅の値上がり(1年で100兆円〜200兆円の含み利益)でした。

これがなくなると、米国の世帯は、1年で、100兆円くらいの個人消費を減らさねばならない。米国の個人消費は、約800兆円(GDPの70%)です。

100兆円は、12.5%の個人消費の減ですから、大きい。1世帯当たりで1年100万円分の消費減です。米国の消費者ローンは、大きく減っています。


2009年の米国GDPは、相当なマイナス(−3%から5%)になります。これは、米国の自動車会社3社を破産させ、中国・日本の輸出工場も直撃します。米国での、日本企業の生産も、減ります。

米国の貿易赤字を売上としてきた貿易黒字国の過剰生産力(約100兆円分の生産力)は、今後数年の、デフレ圧力(商品物価の下落圧力)になります。

過去、5%の高い実質経済成長だった世界は、2009年、2010年と、GDPのマイナスを、経験するでしょう。


(私のコメント)
アメリカ政府は公的資金を銀行に25兆円資本注入することを発表して世界の株式が大きく上がっています。しかしアメリカの銀行の損失がどれくらいあるのかが分からない以上は解決の目処すら立ちません。しかも実体経済がどんどん悪化してきておりアメリカ政府の財政が何時まで持つのかという問題が浮上してくる。

今までもアメリカは毎年100兆円も海外から借金してやりくりしていましたが、一連の金融危機対策で130兆円もすでに使ってしまっているから合計で230兆円も国債を発行する事になる。しかしそれだけの国債をどこが買うのだろうか? 当面はFRBが買うしかないのですが、FRBは米国債を担保に外国政府から金を借りることになる。

アメリカと北朝鮮はよく似ており瀬戸際外交が得意だ。米公債を売りつけるときには、買ってくれなければアメリカ経済が破綻して御宅の国にも大きな影響が出ますよと脅迫してくる。もっぱら買っているのは日本と中国と中東産油国の政府機関しかないのですが、その割合は94%にもなっている。

当面は銀行間の短期資金市場を機能させなければならないのですが、公的資金注入のカンフル注射で効き目があるのだろうか? 銀行は当面は決算に計上できる損失しか計上していませんが、隠されている損失を全部洗い出せば債務超過で銀行は強制的に破綻させられる。

日本の銀行もそのような状況でしたが、竹中大臣は厳格な資産査定で多くの銀行が潰された。しかし欧米では時価会計やBIS規制は棚上げされて粉飾決算がまかり通ってしまっている。売買不能になった債券はゼロ査定で無ければ時価会計とはいえないだろう。8%のBIS規制も査定不能なのだから自己資本もへったくりもないのだ。

アメリカは2000兆円もの対外債務を抱えていてGDPの1,7倍だ。この調子だと対外債務の山にアメリカは押しつぶされて国家ぐるみの破綻国家になるなる可能性が高い。アメリカの世帯も年収の1,3倍の借金を抱えている事になり、500万の年収だと650万円の借金を抱えている事になる。

このような状況では米国債の信用が何時まで持つかということですが、アメリカにも1650兆円の対外資産があり差し引き350兆円の純債務になっている。いわば世界中の借金をアメリカが背負っているようなもので、その国の金融機関が総崩れなのだから大変な事だ。当面は対外資産を処分して回収しているからドルも堅調なのですが、純債務は爆発的に増える計算になる。

だから日本としては今のうちにドル債券を処分しなければ換金できる機会はなくなるだろう。アメリカのバブル崩壊で住宅の下落と株の下落で数千兆円の資産価格が吹っ飛んで、さらに金融市場からCDSなどの清算価格査定がいくらになるかですが、6600兆円規模の爆弾を抱えている。まさにアメリカは絶体絶命の状況であり、世界がまだそれを認識していないだけだ。

まさにアメリカは北朝鮮と同じ破綻国家になりつつあるのですが、ブッシュと金正日は同病相哀れむ状況だ。日本は北朝鮮と韓国とアメリカという破綻国家の面倒をいつまで見るつもりなのだろうか。日本と中国が米国債を買うにしても100兆円程度が限度であり230兆円もの米国債は買いきれない。

アメリカにはすでに消費不況が襲い始めていますが、自動車の売れ行きも激減している。自動車が無ければ生活できない国の自動車も売れないのだから、アメリカの家庭は100万円の消費を減らさなければならない。中国からのアメリカへの輸出もブレーキがかかり中国もこれからバブル崩壊で大変だろう。

EUも金融機関が次々国有化されて銀行の融資にも制限が加えられて経済は停滞するだろう。金融は経済の血液だから貧血状態になってふらふらだ。中東産油国や中国や発展途上国の銀行は国民にも信用されていないからお金は欧米の銀行に預けられてきた。しかしその銀行が信用不安でカネが逃げ出している。しかしどこへ逃げるのだろうか?

ヨーロッパでは金庫が売れているようですが、自宅の金庫に現金をしまっておくのがデフレ時代には一番いい方法なのだろう。一部は金に換えておくのもいいだろう。それ以外に、先進国のうちでは日本の銀行が一番しっかりしていますが、だから円が高くなり世界から金が集まってきている。日本はそのカネを世界に再投資しなければならないだろう。まさに日本の金融力が試される時ですが、アメリカの投資銀行のような真似は出来ない。

アメリカがダメになった以上は日本が世界の金融センターとなっていかなければなりませんが、日本の政治家や官僚にはそれだけの大きな戦略は無理なのだろう。しかし国力というものは人口の多さでもなく国土の広さでもなく経済力の大きさだけでもない。スペインーオランダーイギリスと世界の覇権国家が交代してきましたが、みんな日本よりも小さな国だ。

それがなぜ世界覇権を取ったのかというと技術力であり、最先端の兵器を駆使して戦争に勝ってきた。しかし現代は熱戦の時代は終わり経済戦争が世界の覇権を決める時代だ。その中で経済力のバロメーターである通貨で円が一番強い。つまり通貨戦争での勝利者は日本である。中国の元という人もいるが元は18%切り上げただけで中国経済は技術力がないから輸出競争力が無くなってしまった。





アメリカもイギリスも、日本以外の欧米の銀行は、もう「日本の銀行
のビジネスモデル」を見習うしか、他に「出口」がないように思う。


2008年10月13日 月曜日

日米株価暴落と公的資金投入のあり方 10月10日 植草一秀

株価暴落が止まらない。先の見えない不安心理が株式売却を加速させている。10月3日に米国議会は7000億ドル(約70兆円)の公的資金投入を柱とする金融安定化法を成立させた。10月8日には、世界の10の中央銀行が同時金利引き下げを実施した。英国政府は10月8日に、最大500億ポンド(約9兆円)の公的資金を銀行の資本を増強するために注入する方針を発表した。

米国政策当局がこれまでに提示した公的資金投入金額は1兆ドル(約100兆円)を突破している。それにもかかわらず、金融市場は安定を取り戻していない。NYダウは10月9日、前日比678ドル安の8579ドルに下落した。2003年5月以来、5年5ヵ月ぶりの安値を記録した。

日経平均株価は10月10日、前日比881円安の8276円まで下落した。日経平均株価も2003年5月以来、5年5ヵ月ぶりの安値を記録した。日経平均株価のバブル崩壊後最安値は2003年4月28日の7607円だが、この水準が視界に入ってきた。

問題の震源地は米国で、発端は不動産価格下落である。米国の住宅価格はS&Pケース・シラー住宅価格指に従うと、全米主要10都市の場合、1994年2月から上昇が始まり、2006年6月までにちょうど3倍になった。2000年1月を起点とすると、2006年6月までに2.26倍になった。

2006年から住宅価格は下落に転じたが、本年7月までの下落率は21.1%である。金融危機が広がって、大混乱が生じているから、不動産価格が半値、3分の1、10分の1に下落したのかと考えてしまうが、下落率はわずかに21%にすぎないのだ。

サブプライムローン残高は1.3兆ドル(約130兆円)だったから、住宅を最高値の2006年6月にすべて購入したとしても、26兆円の損失しか生まれない。住宅購入の時期はばらけているから、130兆円の評価損は限定される。

日本の1990年代では、3倍に上昇した資産価格が元の水準以下に暴落して、大混乱が生じた。200兆円融資して購入した資産の時価評価が50兆円程度になり、150兆円規模の損失処理が必要になった。その過程で、金融機関の破綻が広がった。

この日本の事例を念頭に入れたのでは、米国の金融危機は説明できない。謎を解く鍵は「レバレッジ=てこ」なのだ。「デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品の世界が際限なく広がった。その機能を一言で説明すると、「少額の投資資金で巨額の金融取引が可能になる」ということだ。債券先物取引の例で示すと、証拠金比率1%での取引を認めると、投資家は100万円の元本で、1億円の債券を買うことができる。額面100円の債券価格が1円変動すると、100万円の損益が生まれる。100万円の元手が1日で倍になったり、ゼロになったりする。

金融工学と表現すると聞こえが良いが、金融市場が「カジノ」になったのだ。デリバティブを扱う金融マンは億円単位の高額報酬を獲得した。破綻したリーマンブラザーズの最高経営責任者は2000年以降に494億円もの報酬を得ていた。

「市場原理主義」の終着点は「カジノ経済」だったのだ。26兆円の損失が100倍に拡大されれば、2600兆円になる。最終的な損失金額は不明であるが、100兆円の公的資金では、問題処理には程遠いことを認識しなければならない。

日本の政府関係者が、日本の経験を元に、金融機関への資本注入を提言するべきだなどと発言しているが、問題の本質をまったく理解していないと思わざるを得ない。米国の不動産価格は2割下落したが、理論価格=長期のトレンド上の価格に回帰するには、さらに2割から3割程度の下落が必要である。不動産価格調整はまだ4合目に差しかかったところだ。

この意味で、今回の金融危機に対しては、強い警戒感をもって対処する必要がある。デリバティブの想定元本の全体を把握し、最大で損失がどこまで膨張するかを予測し、その予測に見合う対応策を検討しなければならないのだ。

デリバティブ金融の想定元本は600兆ドルに達すると見られている。6京円の想定元本の1%が損失になるとしても、6兆ドル(約600兆円)の資金が必要になる。手元にはデータがないから、確かな推計はできないが、問題が途方もなく大きなものに膨れ上がってしまっている可能性は低くない。

サブプライム危機で常に取り上げられるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる、債務保証を商品化した金融商品だけでも、その残高は60兆ドルに達すると見られている。「市場原理主義」=「新自由主義」=「自由放任主義」は、取り返しのつかない「過ち」を犯してしまったのかも知れない。(後略)



日本経済を後追いする欧米。(今は世界規模でのLTCM破綻!)  10月11日 貞子ちゃんの連れ連れ日記

(前略)
「金融工学」といった、一見先端を走っているかのように見受けられる新技術を駆使する頭脳集団によるヘッジファンドということで、LTCMは多くの幻想をふりまきながら、設立当初は世界中から崇拝者を集めていた。しかしながら、ロシア通貨危機といった想定外のリスクが起きたことが引き金になって、急速に破たんしてゆく。
このとき、破たん処理をしたのが、前FRC議長のグリーンスパンと、ゴールドマンサックス出身のルービン前財務長官だ。
このとき、LTCMは、およそ1,400億ドルとも1,500億ドルとも指摘される資金を運用していた。そして、LTCMの1998年の穏やかな破たん処理で必要になった救済額は、その運用金額のおよそ0.25%弱に当たる35億ドルだった。

その後、ルービンは、なぜか、LTCMの破たん処理に懲りることなく、とりあえず、「強いドル」を標ぼうして、世界中からお金をアメリカにかき集めて、アメリカを「巨大な国家ぐるみのヘッジファンド国家」へと脱皮させてゆく下地を創り上げてゆく。

今起きているのは、「巨大なヘッジファンド国家の破たん」、あるいは「欧米型投資銀行のビジネスモデルの破たん」の始まりなのだ。

言い換えたら、「世界中からお金を借金してまでかき集めて、小さな小さな市場のゆらぎに思いっきりレバレッジを掛けて、「より大きな利ざや」を稼ぎ、世界から集めた借金の金利を返済しながら、自社・自国をも大いに繁栄させてゆこう」とする「国家規模での巨大な実験:ヘッジファンド国家」の「終わりの始まり」が、今現在の世界中の株式市場の大暴落として、現れているのだ。(中略)

結論から言えば、アメリカもイギリスも、日本以外の欧米の銀行は、もう「日本の都市銀行・地方銀行のビジネスモデル」を見習うしか、他に「出口」がないように思う。
言い換えたら、彼ら欧米の投資銀行あるいは商業銀行も、自国の政府に大量の国債を発行してもらって、その大量に発行した国債を彼ら欧米の銀行が大量に買い支えなければ、自分たちも生き延びられないように思う。
実際、欧米の銀行への資本注入は、今後数年間だらだら続くのではないだろうか。
なぜなら、アメリカをはじめヨーロッパも、今後は金融機関を救うために、多くの国債をだらだらだらだら発行しなければならなくなるからだ。

欧米型の投資銀行モデルは、いまや、世界中から嫌われているから、欧米の国債を今から買ってやろうという気の良い国は、世界広しといえどもそれほど沢山いるわけではない。日本と中国とアラブ穏健派の国々くらいだ。
さらに、これら三国でも、外貨準備の合計は、今まででも、数兆億ドル(数百兆円)規模なわけで、とうてい、欧米型投資銀行モデルの大失態の「ツケ」である1,500兆円以上の欧米国債を今後も買い支えるには、この三国だけでが、あまりにも「焼け石に水」だ。

もう、話は決まりじゃないでしょうか???

今後は、アメリカやイギリスやEUでは、投資銀行や投資銀行もどきのことをしていた商業銀行たちは、「日本の銀行並に、いや、日本の銀行並み以上に、自分たちを救うために国家が発行してくれる国債を大量に買い支え続けるだけの金融機関に成り下がる」という「出口」し見えないのだ
話(結論と処方箋)はいたって簡単だったのですが、こんな現状(結論と処方箋)を、あの誇り高き彼らアングロサクソンやユダヤ系の人々がすぐに受け入れらるのだろうか・・・・。
でも、それ(現実を受け入れること)が嫌なら、彼ら欧米人は、どんなエリートでも、すべからく富める者も貧しき者も、全員、1〜2年ほど、無給で今まで通り働かなければならない。あるいは、いかなる資産家でも、欧米人は、すべての資産を没収されなければならなくなる。
あるいは、この「日本型銀行ビジネスモデル」を彼らが受け入れてくれないと、大惨事、もとい第三次世界大戦が始まってしまうかもしれない・・・。(中略)

ここで再び「資本主義2.0」でも明快に記されているのが、「日本の転倒性」。
「日本の転倒性」とは、私も幾度かこのブログで紹介しましたが、「日本の資本主義が世界でいちばん先端を走っている」ということを意味しています。
水野和夫氏は、「資本主義2.0」で、大変分かりやすい言葉で、この「日本の転倒性」を詳述してくださっています。
「『日本の転倒性』とは、日本経済は戦後一丸となって、欧米に追い付け追い越せと頑張っていたら、あっという間に、彼らをぶっちぎって、あっという間に日本経済が世界経済の先頭を走るようになっていた。けれども、自国の経済が先頭を走っているとの自覚が日本には無かったから、いつまでたっても、日本は、日本の後ろを追いかけている欧米のマネをしようとしてしまった。まるで、『先頭を走る車のドライバー(←日本)』が、どうやってもっと上手に走ろうかと迷って、バックミラーに映っている「後ろから追いかけて来る車のドライバー」(←欧米)の姿を参考にして、走行・迷走している」ことを指しています

この「日本の転倒性」を理解したら、今後のアメリカ発金融危機が、どのように処理されてゆくべきかが、なんとはなしに仮説としては、あるいは、たいていの人が納得するシナリオとしては、当たらずとも遠からずの図星が出てくるのではないでしょうか。

欧米が、「既に利ざやが極端なまでに薄くなってしまった先進国の経済は、やがては国債をばかすか発行して、金融機関はその国の国債を買い支える役目しか残っていないという『日本型金融ビジネスモデル』」に気がつくこと。言い換えたら、欧米が、「日本型斜陽国家の運命」を諦めて受け入れて、この「日本型金融ビジネスモデル」に追随してくれるまでは、まだまだ、内外の株式市場の大荒れが続くのではないでしょうか・・・。


(私のコメント)
アメリカの投資銀行やヘッジファンドや「金融工学」というのは、ローリスク・ハイリターンの投資法ということですが、毎年のように20%から30%の利回りを稼ぎ出すヘッジファンドはまさに魔法使いのようでしたが、株式投資をやってきた人なら分かるのですが100戦99勝1敗でも1敗でもって致命的打撃を負ってしまうものだ。

上げ相場の時は5年10年と長く続きましが、下げ相場の時は数ヶ月で10分の1になってしまう。気がついたときは手遅れでストップ安が数日続く。私も株を始めたころは株の天才ではないかとうぬぼれた時があり、何円も底値だった株が私が買って3日ほどでストップ高を記録するような事もあった。

私が得意なのは海運株や造船株であり低位株を万株単位で売買して、一回の売買で300万ほど儲けた事もある。最初の頃は金額も小さく思い切った投資で上手く行くことが多かった。その頃は罫線を見て直感的にそろそろ動きそうな予感がするのを買っていた。全く非科学的であり勘だけだ頼りだった。

しかし金額も大きくなり、株式の勉強をすればするほど設ける事は難しくなった。株式新聞や株式雑誌を読みすぎるようになって勘が鈍ってきてダメになったような気がする。株式投資は他人と同じ事をやっていては必ず損をするものであり、自分だけの投資法を確立してやらないと儲からないようだ。

一時は株式ソフトを買って機関投資家のような売買にも挑戦してみましたが、傷口を広げるばかりで株式ソフトもダメだった。デイトレやった人はほとんどの人が失敗したようだ。テレビなどではデイトレで数十億円儲けた人が出てきましたが、やはり直感で売買しているようで他の人にはまねの出来ない方法だ。

ヘッジファンドも売りと買いを組み合わせた投資法で、いわゆる鞘取りであり比較的確実な投資法なのですが、レバレッジを効かせて大きな利益を稼ぎ出してきた。しかしニューヨーク市場で行なわれたような空売り禁止されたりすると、ヘッジファンドのやり方が出来なくなり株式から撤退せざるを得なくなる。

ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーのような投資銀行は、まさにアメリカの国家戦略とリンクしており、国家ぐるみのインサイダー取引で巨額な利益を上げてきた。ゴールドマンサックスなどからは財務長官などのポストが当てられて、壮大なスケールで持って世界的な投資をする。BRICsなどはゴールドマンサックスの投資戦略ですがアメリカ政府の戦略が無ければ出来ない事だ。

バイオエタノールなどのエネルギー戦略もブッシュ政権が打ち出した政策ですが、その為にトウモロコシをはじめとして食料価格が暴騰して、暴騰した影にはリーマンなどの投資銀行が食料買い占めに動いていた。このようにアメリカの国家戦略を一足先に知って投資をしてきたのだから国家ぐるみのインサイダー取引であり、決して金融工学の勝利ではない。

90年代のITバブルから00年代の住宅バブルなどもアメリカの国家政策によるものであり、投資銀行が世界から投資を集めてIT企業や住宅産業に投資されてきた。しかしITバブルの崩壊も住宅バブルの崩壊も避ける事はできず、投資銀行による国家戦略モデルも破綻し始めた。

バブルも規模が小さければ経済政策で何とかコントロールできるのですが、今回の住宅バブルの崩壊はアメリカ経済をふっ飛ばしかねないほどの破壊力を持っている。植草一秀氏のブログで書かれているように日本の住宅バブル崩壊と様子が異なるようだ。

アメリカの住宅バブル崩壊はまだ20%程度の値下がりであり、日本のような三分の一になってしまうほどの値下がりではまだ無い。アメリカの住宅の値上がりもかなりのものだったから場所によっては半値になってもおかしくはないし、買い手のいない住宅ともなれば銀行が全額損失扱いになる。

日本の住宅バブルも政府の持ち家政策があり、株の世界でも政策に売りなしという言葉があるように、土地神話が出来て値下がりはありえないはずだった。日本でもアメリカでも住宅の値上がりが20年も続くと永久的に続くように錯覚してしまう。

住宅は株式のように空売りが出来ないからヘッジ手段が無い。だからCDSが出来て焦げ付いたら保険金でローンは清算されるはずだった。しかし不動産の証券化で不良なものまで証券としてまぜこぜにされて、サブプライムローンが破綻の相次いで証券そのものが買い手がいなくなってしまった。

精巧緻密に出来た金融工学による金融商品も、思わぬ欠陥があると金融恐慌を引き起こすほどの破壊力があるようだ。90年代のLTCMの破綻も数百万年に一回起きるようの事が起きて破綻したのですが、「貞子ちゃんの連れ連れ日記」」に書かれているように、この時の教訓は生かされなかった。

アメリカは金融を国家戦略にしてきたから、投資銀行に規制をかけることは難しかったのだろう。CDSと言うデリバティブは査定が難しく、欧米の金融機関はそれでどれだけの損失を抱えているのか分からない状態であり、それらを清算して行くにはかなりの年月を要するだろうし、LTCMのように一社だけなら奉加帳を回して清算できますが、今回は欧米の金融機関がデリバティブに嵌ってしまっている。

日本のエコノミストによれば日本の金融機関は一周遅れのランナーだとバカにされてきましたが、バブル崩壊で信用の崩壊の恐ろしさが身についていたからこそ、怪しげな金融商品に手を出すところは少なかった。大和生命が潰れたのは怪しげな金融商品に手を出したからだということですが、欧米の金融機関はみんな大和生命状態なのだ。

アメリカの投資銀行が世界から金を集めて世界に再投資してきましたが、投資銀行が普通の銀行になることによって、今までのような大胆な投資戦略は出来ないだろう。新興国ではアメリカの投資銀行の破綻でドルの手配がつかなくなり、新興国の経済も今までのようなダイナミックさはなくなるだろう。

新興国もアメリカの世界金融に頼りきってきたから、アメリカの投資銀行の消滅はBRICs神話の崩壊でもある。特に中国はゴールドマンサックスなどの役割が大きかった。年間数億円も稼いでいた投資銀行の社員たちは規制によって報酬の制限されて普通の銀行なみの収入になり、人材も他の分野に散っていく事だろう。

銀行とは本来から非常に保守的であり、堅実さが求められている。アメリカの投資銀行やヘッジファンドは時代の仇花であり、年率10%以上の利回り商品は詐欺だと思ったほうがいいだろう。株をやっていれば10%の利益を稼ぐ事がいかに大変か分かるだろう。




アメリカは困難を伴う金融機関の再建に長期間取り組めるのだろうか?
むしろロシアのようなデフォルトして債権を凍結させてしまうかもしれない。


2008年10月12日 日曜日

<リーマン>破綻で派生商品9割消滅 10月11日 毎日新聞

国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)は10日、破綻(はたん)した米証券大手リーマン・ブラザーズを対象にした「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の清算価格が元本の8.625%に決まったと発表した。総額約4000億ドル(約40兆円)と見られる同社関連のCDSの価値が9割以上吹き飛んだ形で、保有する金融機関などにとっては打撃となりそうだ。

 CDSは企業向け融資や証券化商品が焦げ付いた際に損失を肩代わりする金融派生商品(デリバティブ)で、世界の大手金融機関や投資家の間で取引が急増。ISDAによると、今年6月末時点の取引残高は54兆6000億ドル(5460兆円)に達する。

 統計が未整備のため、リーマン関連のCDSをどの金融機関が、いくら保有するかは明らかになっていない。このため、金融機関同士が疑心暗鬼となり、短期金融市場でお金を借りられなくなる一因になった。また、金融機関が手元資金の確保に動き、保有株式を相次いで売却、株式相場下落を招いていた。

 市場関係者は「清算価格決定で損失額が確定するため、新たに破綻する金融機関が出る可能性がある。その一方、健全な金融機関も明確となり、不安が沈静化する効果もある」と指摘している。【後藤逸郎】


Lehman破綻の代償? 10月11日 ウォールストリート日記

Lehman Brothersが9月半ばに経営危機に陥った際、アメリカ金融当局が下した決断は、「救済なし」でした。巨額の損失を抱えて流動性危機に陥りつつあった同社を、アメリカ政府の保証なしに救済出来る体力のある金融機関は存在せず、158年の歴史を持つ大手投資銀行は、あっさりと破綻に追い込まれました。

巷からは、「モラルハザードを起こさないためにやむを得ない」、「ミスを犯したのだから破綻して当然」という声も聞かれます。しかしLehmanを破綻させたことは、30%以上の株式を従業員が保有し、愛社精神に溢れた社員の多かった同社を解体する結果になったのみならず、世界中の金融市場や経済に、極めて深刻な影響を及ぼすことになってしまったと言える気がします。

WSJの9月29日の記事「Lehman’s Demise Triggered Cash Crunch Around Globe(リーマン破綻が世界中でキャッシュクランチをもたらす」にその話が詳しく書いてあったので、少々触れてみたいと思います。

経営危機に瀕していた同社を救うため、9月半ばの週末に金融当局・業界関係者が集まって救済案を話し合ったことは、周知の通りです。しかし後に明らかになったところによると、Bear Stearnsのケースと比較して、「必要とされる公的資金の額が莫大であった」、「担保が不十分だった」、「破綻しても市場に与える影響が収拾可能と想定された」などの理由から、同社は事実上当局から「見捨てられる」形で、破綻することになりました。

しかし大手グローバル投資銀行が破綻することで市場が受けた影響は、当局が想像していたものを遥かに上回っていると言える気がします。

CDSとAIG破綻

その影響がまず最初に現れたのは、CDS(クレジットデフォルトスワップ、企業破綻に対する債権に掛けられた保険)です。

WSJが指摘する通り、Bear Stearnsが政府のアレンジでJP Morganに救済された際は、同社の株主は株価の急落によって甚大な損害を被りましたが、同社の債権者はデフォルトという最悪の事態を回避することが出来ました。その結果、債券・ローン市場には、大手金融機関の信用には政府が介入するという、安心感が広がっていたと言える気がします。

それに対してLehmanは、文字通り「破産」に追い込まれ、株式の価値がゼロになって株式投資家と従業員は全てを失うことになった上、債券の投資家も、デフォルト→回収価値が分からないという、最悪の状況に追い込まれ、同社の債権は、担保付の短期債も含めて価格が急落しました。

大手金融機関が破綻したことで、CDSのスプレッド(保険プレミアム)は急騰し、保険の売り手は、保険金を担保するための巨額の追加資金が必要になりました。WSJによると、Lehmanが破綻した翌日に発生した追加担保額は、$140bn(約14兆円)に上ったそうです。

その結果、$400bn(約40兆円)に及ぶCDSを取り扱っていた保険最大手のAIG(アメリカンインターナショナルグループ)が破綻に追い込まれるという、想定外の事態になりました。

同社が契約していたCDSが全て破棄されることのインパクトの大きさ、本業の保険契約社に被害が及ぶ深刻さを考慮して、政府は巨額の救済融資(事実上の国有化)を行うことになりました。

このように、Lehmanを破綻させた二日後には、既にその失敗が明らかになりつつあったと言える気がします。(中略)

ヘッジファンド業界への影響

以前から書いている通り、現在のヘッジファンド業界には、かつて世界の為替市場を震撼させたような「グローバルマクロ」戦略のファンドは極めて少なく、業界の7割程度が、株式運用のファンドであると言われています。

これらのファンドは、「ヘッジ」の名前が示す通り、株式の買い持ち(ロング)と売り持ち(ショート)を組み合わせることで市場リスクをヘッジし、市場の上下に関らず絶対リターンを上げることを目的として、主に年金・大学基金の資金を運用しています。

Lehman Brothersの破綻は、約200兆円の資金を運用していると言われるヘッジファンド業界にとって、空売り規制以上の制度的問題を引き起こしました。

ヘッジファンドが機能するためには、投資銀行に「プライムブローカー(PB)」業務を委託する必要があります。PBの主な役割は、空売りに必要な貸し株と、レバレッジの提供で、ヘッジファンドというシステムにとっての生命線であると言っても過言ではないかもしれません。

Lehmanも、大手ではなかったものの、当然PB業務を行っていたわけですが、そこが破綻してしまったことにより、一部のヘッジファンドが、自らの資産にアクセス出来なくなったり、Lehmanを通じて行った取引の損益が分からなくなるという事態が発生しました。その原因は、レバレッジを受ける際に供与していた担保証券が、別のファンドに貸し出されるなどしていた為のようです。

通常大手のヘッジファンドは、3社以上のPBと取引をしており、LehmanはPB業界では大手ではありませんでしたが、同社が取り扱っていた額は$50-70bn(約5〜7兆円)とも言われます。その全てが失われるわけではないと思いますが、「カウンターパーティリスク」(取引先が債務不履行に陥ること)によって廃業に追い込まれるファンドも出てしまっているようです。

このようなシステマティックリスクに直面したヘッジファンドは、投資銀行から商業銀行へと、PBを変更したり(資産を移し替えたり)、高騰しているボラティリティから身を守るために、急速にレバレッジ(グロスエクスポージャー、総投資額)を下げていると言われています。

ヘッジファンドがレバレッジを下げる、つまり借入金を使って行っていた売買を解消することは、「換金売り」と同じ効果をもたらします。業界規模から考えて、投資信託の解約売りほどのインパクトはないでしょうが、株式市場にとっては大きなマイナス要因になっていることは、間違いない気がします。

(一部銘柄には、必要に迫られたショートカバーが引き起こす「スクイーズ」、つまり異常な値段高騰が発生して、ますます市場のボラティリティを上げてしまっています。)


・・・言うまでもありませんが、アメリカ市場の株価暴落と、クレジット市場の機能不全は、ヨーロッパや日本、アジアの先進国など、世界中で市場を大混乱に陥れています。これらの事態が全てLehmanを破綻させたことで発生したと考えると、その影響が「許容範囲」であると言うのは、明らかに無理がある気がします。

そんな大失敗から得られた唯一のメリットは、今後このような大手金融機関の破綻は二度と当局が許さないだろう、と言うこと位かもしれません。


(私のコメント)
「株式日記」では10年以上バブル崩壊に伴う金融問題を書き続けてきたのですが、時価会計もBIS規制もペイオフ解除も反対してきました。しかしアメリカに言われるままに日本にもアメリカの金融制度を日本に導入させられてきたのですが、最近になって頭の悪いアメリカ人にも新自由主義経済の破綻が分かり始めたようだ。

新自由主義経済の原理からすれば、ダメな銀行は潰すのが原則だ。しかし潰せばどうなるか、頭の悪いアメリカ人はリーマン・ブラザースを潰してみて、間違っていた事がはじめて分かったのだろう。日本人は過去の教訓を大切にするから銀行を潰す事には慎重だった。しかし護送船団方式はマスコミから批判されて、日本も97年ごろから潰す方針に切り替えてしまった。

護送船団方式が変わると同時に大蔵省も解体されて、財務省と金融庁に分割されましたが、こんな事をしているのはG7では日本ぐらいで、財務大臣には金融行政の権限が無い。これではG7参加も意味がないわけで、非常事態には権限を集中させなければならない。

ペイオフ解除も2002年に行なわれましたが、当時は次はどこの銀行が潰されるのかといった噂が出回っていた時でもあり反対した。竹中大臣は銀行に取り付け騒ぎが起き易い状況に持っていくことで銀行を潰すことを目指していたのだろう。マスコミも竹中大臣を改革派として応援して、ペイオフ解除反対は抵抗勢力にされてしまった。

「ウォールストリート日記」においても大手の金融機関の破綻は認めないだろうと書いていますが、ダメな銀行は潰すという新自由主義経済の原理の破綻でもある。これは「会社は誰のものか」という課題にも関係してきますが、もはや会社は株主のものではなく社会のインフラでもあり、株主が勝手に運用していいとする資本主義原理の否定だ。

私自身は銀行に十数年勤務していましたが、国会議員たちは銀行の現場のことを知らないし、景気が良いのか悪いのかといった情報も現場にいないと分からない。株式投資でもやっていれば株価が景気のバロメーターでもあるので分かるのでしょうが、今の株価は世界的な金融恐慌を示し始めた。だから2002年に実施したペイオフも全額保証に戻さざるを得ないだろう。

アメリカの場合、リーマンを破綻させたことで、アメリカの金融国家戦略が破綻して、その清算には見当もつかないほどの時間がかかるだろう。不良債権となる金額も見当もつかない金額でありリーマン1社のCDSの清算価格は9割も吹っ飛んでしまって、リーマンがらみの保証は40兆円失われたという事なのだろう。となると他の金融機関の損失も確定して決算に出さざるを得なくなる。

国有化されたAIGにしても国が保証しても国に払うだけの金があるのだろうか? デリバティブや証券化された債券は清算して見なければどれだけの損失になっているのか分からないから、欧米の金融機関は疑心暗鬼になってインターバンク市場が停止してしまっている。CDSも取引残高は6600兆円にもなり、関係銀行にはそれだけの金は無い。

日本の銀行は公的資金を注入されて、資金運用も思うままにはならず不良債権の清算に追われた。だからサブプライムがらみの債券やCDSといった金融商品には手が出せず、日本は金融革命に遅れたと欧米のマスコミからバカにされ続けてきた。しかし「株式日記」ではデリバティブや金融工学というのは詐欺的商品だろうと書いてきた。

それはITバブルの破綻やLTCMの破綻やエンロン・ワールドコムの破綻などから推測できた事であり、今回はそれが国家的規模で破綻が起きたということだ。アメリカの金融業界にはそのような前兆現象からとんでもない破局が起きることを想定できなかったのだろうか? またCDSといった仕組みがこれほど大規模になることを放置した危険性を政府は認識できなかったのだろうか?

サブプライムローンも金融工学を駆使した金融商品なのでしょうが、金融常識からすれば無理な商品であり、さらにローンを証券化して売り飛ばしてしまうのは詐欺的行為に他ならない。破綻するローンである事が分かっていながら他の債権と混ぜて売ってしまえばいいとでも思っていたのだろう。

住宅産業は自動車と並ぶ裾野の広い基幹産業でもありますが、住宅ロ−ンの普及こそが金融革命であり金融の大衆化が進んで誰もが銀行のローンを利用するようになった。昔は銀行は企業にしか貸さずに住宅は自己資金で建てるしかなかった。それが今では住宅会社との提携ローンで自己資金ゼロでも借りる事ができる。

銀行もそれだけ借り手が少なくなってきたからですが、カネのだぶつきがバブルの始まりであり住宅ブームの始まりでもあった。80年代に起きたバブルが90年代後半からアメリカにも起きて、資産ローンを合わせて大消費景気が起きた。クレジットカード会社もカードを乱発して国民は過剰債務状態になってしまった。

バブルの清算は時間をかけて過剰な債務を地道に返していくしかないのですが、日本はそれに15年を要した。小泉・竹中内閣は不良債権の早期処理を銀行に迫り、中小企業は無理やり潰されて処理されていった。事業が完全に破綻したのなら処理しなければなりませんが、利益が上がっている債権はリスケをすれば融資を全額回収することも出来るのである。それが銀行にとっても一番負担の少ない不良債権の処理方法だ。

しかし最近の住宅ローンは証券化されてどんどん他に売り払われてしまって、纏めて細かくきざまれてCDSを付けて販売されてきた。細かく刻まれているからファンドの内容が分からず、サブプライムローンの焦げ付きが出だすと、ファンドの中身が分からないから買い手は一斉に手を引いてしまった。これがアメリカが自慢した金融工学の正体だ。

これをさらにレバレッジをかけて、借入金でファンドを膨らませて運用したから、上手く行っている時は高利回りだが、損を出すと膨大な損金になってしまって、損害は清算して見ないと分からない。だから欧米の金融機関はかなりの長期間業務を停止して、手持債券を清算して損を確定しないと公的資金の注入をしても再建はむずかしいだろう。

アメリカはそのような困難を伴う金融機関の再建に長期間取り組めるのだろうか? むしろアルゼンチンやロシアのようなデフォルトして債権を凍結させてしまうかもしれない。いわば国家的徳政令ですが、日本はドル債券を放棄する事になるだろう。そうなればユーロ債券も危ない。そして唯一信用が出来る国際通貨は円だけとなり、円が唯一の国際通貨になる可能性もある。米ドルは二度と信用されずにアメリカは南米化して慢性的インフレ国家になるだろう。

ドル債券もユーロ債券も信用を失い誰も買わなくなれば、資金を調達するには円債券しか調達できない事も想定できる。欧米のインターバンク市場は機能を停止して、ドルもユーロも調達が出来なくなってきている。このような事が長期間続けば円で決済するしか無くなるのではないかと思う。だから最近は円の独歩高でユーロ高もバブルだったのだろう。しかし政府日銀にはこのようなことを考えている人はいない。




米国の、日本の経験に対する不当な評価の根底には、拭いがたい日本
蔑視の観念がある。自分たちは優秀であると言う倒錯した優越感がある。


2008年10月11日 土曜日

不良債権処理の認識を誤っている米国 - 新自由主義と日本蔑視 10月10日 世に倦む日々

(前略)
国民に説明しない。説明すれば反発を喰らうのは目に見えているから、騙し騙し静かにそっとやる。国民を犠牲にすること、時間をかけること、この二つの柱で宮沢喜一は結果的に日本の不良債権問題を解決した。だが、本人が言挙げしなかったから、功罪含めて名前は残っていない。その後の新自由主義の宣伝によって、不良債権問題を解決したのは竹中平蔵で、だらだらと放置したのが宮沢喜一だというストーリーになっている。それは新自由主義の側の作り話である。不良債権処理を指導したのは宮沢喜一であり、実際に処理をしたのは日本の国民である。処理とはカネを銀行に貢ぎ続けることだ。何年も何年も、現在に至るまで、庶民は血と汗を流して稼いだカネを銀行に貢ぎ続けてきた。@-Bは不良債権処理が終わった現在でも制度定着して、日本の銀行に巨万の富をうならせ、カネが余り過ぎた三菱UFJは気前よく9000億円をモルスタにくれてやった。我慢強い日本国民は立派と言うほかない。日本の場合、銀行の不良債権の処理は、積み上げた庶民のカネを引当にして積み上げ、銀行会計から徐々に償却して行ったのであり、庶民のカネの積み上げには時間がかかり、結局のところ10年以上を費やす始末となったのである。それが「失われた10年」の真相だ。

日本政府は何もやらなかったわけではない。98年頃だったか、政治の表の舞台では、石原伸晃や塩崎恭久や枝野幸男が「政策新人類」などと称して派手に立ち回り、やれ国有だ、やれ民主党案丸のみだと騒ぎながらドタバタと金融危機に対応していたように見えたが、実際には金融政策の実権を握り続けていたのは大蔵省と宮沢喜一だった。宮沢喜一は個々の銀行の不良債権金額と中身について絶対に口を割らなかったし、大手都銀分で纏めた金額だけを適当にマスコミに流すのみで、現実の処理は@-Bの大衆収奪による救済策で徹していた。まさに護送船団方式が貫徹されていた。現在の米国は、この日本の不良債権処理の真相を知らず、早く手を打てば早く問題が解決すると錯覚しているように見える。この点を田幡直樹は懸念しているわけだが、私もそれに同感である。新自由主義のイデオロギーに毒された不良債権認識を当局や国民や関係者が持っていて、「日本は対策が遅かったから解決が遅れた」と誤った判断をベースに政策をドライブしようとしている。それは根本的な間違いで、「あの日本でも10年以上かかった」というのが正解なのである。不良債権処理は庶民大衆から収奪する以外に解決策はないのだ。「日本の二の舞になるな」という発想は誤りで、日本の二の舞ができれば御の字なのである。

この米国の不良債権処理認識、すなわち日本の経験に対する不当な評価の根底には、拭いがたい日本蔑視の観念がある。自分たちは経済に優秀で、日本人は経済に無知だから、だから日本は失敗し、米国は失敗しないのだという根拠のない倒錯した優越感がある。この15年間、米国は、日本経済の失敗と米国経済の成功を繰り返し言い上げ、日本型の経済モデルの全面否定を主張し続けてきた。90年代以降の新自由主義のイデオロギーの基底には、社会主義否定と同時に日本否定の思想があり、それを日本人の内面に強力に刷り込み、日本人の自信喪失を誘引し蔓延させようとする意図が見られた。それは、1987年に東芝のラジカセをドラム管の上に置いてハンマーで叩き壊した米国の自信喪失体験と表裏一体のものであるはずだ。新自由主義にとっての仮想敵国は日本経済であり、仮想敵国を破壊する策略が日米構造協議であり、「年次改革要望書」のイニシアティブに他ならなかった。新自由主義の経営思想の特徴である短期利益の獰猛な追求や意思決定のスピード競争やパラノイア型経営者という範疇は、戦後日本の成功体験である日本型経営思想を否定するところから招来されている疑いがあり、意識的にその逆を規範化しているように見える。その思想が、今度の米国の不良債権処理にも大きく動機づけされている。

日本蔑視の経済政策の選択は必ず米国を破滅へと導くだろう。10/8の日経の1面にFRBが一般企業のCP(コマーシャルペーパー)を購入する制度を創設した記事が載っていた。田中宇も「前代未聞の施策」だと評しているが、私もこのニュースには本当に驚かされた。米国の金融機関による貸し渋りが激しくなり、企業がCPを発行して資金調達することができなくなっているのである。やむなく中央銀行であるFRBが企業のCPを直接に引き受ける事態に及んだ。こんな経験は日本ではない。想像することもできない。記事を見て最初に思ったのは、事務のことで、FRBの限られた職員で全米の企業のCP発行を引き受ける事務的体制があるのだろうかという疑念だった。新聞記事では来年4月までの半年間の臨時措置だとある。半年間、FRBの職員は個別企業のCP購入依頼を受け付け、短期の資金を貸し出し、満期になればまた借り換えに対応する金融事務に忙殺されることになる。ハーバードを優秀な成績で卒業して、世界のドル政策を切り回すデスクワークを担当してきたFRBのエリートに、そんな企業相手の融資実務に手を汚すことなど本当にできるのだろうか。東大経卒の日本銀行の職員が大田区の中小企業の金型メーカーの社長と毎日資金のやりとりをする図と同じである。半年後に米短期金融市場の凍結状態が解けなければ、2年も3年も同じ仕事を続けなければならない。

この事態は、別角度から見れば、まさに米国経済の社会主義化である。金融セクターだけでなく、国のあらゆる産業部門が国有化されたと同じことだ。FRBによる企業のCP購入がどれほどテンポラリーな市中銀行の肩代わりだと言っても、投入される資金は赤字国債でファイナンスされた米国民の税金であり、よもやめくら判でCP購入の決済など許されるはずがない。当然、当該企業のバランスシートをチェックしなければならないし、経理の役員を呼んで事情を聴取する必要があるだろうし、場合によっては現地に出張して工場の設備を視察したり、倉庫の在庫を確認したりする必要があるだろう。市中銀行の担当者が日常業務でやっていることである。FRBの職員がこれをやるということは、かつてのソビエトでモスクワのゴスプラン(国家計画委員会)の官僚が、ドニエストル州で釘を何本生産、ハバロフスク州でスコップを何個生産と、国家のあらゆる生産について膨大で詳細な投入算出表を作成し、各州の共産党官僚に示達していた仕事のやり方と本質的に変わりない。すなわち、社会主義国の経済官僚の業務である。FRBにCPを購入してもらう企業にとって、その資金は原材料の購入代金や従業員の賃金や工場の操業資金なのだが、それとて畏れ多くも神聖な米国民の税金であり、間違っても経営者の株投資や役員賞与などに振り向けることは許されず、まさに資金は清く正しく申告どおり「計画経済」的に使われざるを得ない。

米国FRBの金融エリートはソ連ゴスプランの経済官僚になる。



(私のコメント)
昨日はノーベル賞と日本人の能力について述べましたが、アメリカ人はノーベル賞を沢山とることによって自分たちが優秀であり、世界をリードしていくという意識の現われだろうという事を書きました。しかしアメリカ人がそれほど優秀であるのなら、どうして金融や経済がこれほどボロボロになるのだろうか?

日本はバブルが崩壊しても円は強いままであるし、貿易黒字も続けて国債もほとんどを国内で消化している。しかしアメリカは貿易赤字であり財政赤字で新発の米国債の95%を外国に買って貰っている。利率が低いので民間で買う人おらず外国の政府機関が買っている。

アメリカの貿易赤字は世界中から物を買っているのですが、特に中国からの輸入が多い。アメリカは中国製品無しにはスーパーは成り立たないし、中国もアメリカへの輸出が経済を支えている。だから米国債も中国政府に買ってもらうしか財政を支える方法は無いだろう。しかし中国はこれからも米国債を買い続けるだろうか? まさにドルも株も米国債もトリプル安で中国は我慢し続けられるだろうか?

日本は傍からこのような米中関係を見ていればいいのですが、アメリカ政府はなぜこれほど中国政府を信頼できるのだろうか? 特にウォール街は日本を叩くわりには中国には寛大だ。ポールソン財務長官は中国を80回も訪問している中国通であり、アメリカは中国をアジアの覇権国として育てようというつもりなのだろう。

それに比べるとアメリカ政府の日本に対する政策は、より日本を骨抜きにして、日本のぼろくそに貶す事で日本人として自信を失わせ、日本をサイパンかジャマイカのような参政権無き属国として飼いならして行こうというつもりなのだろうか? 

「世に倦む日々」というブログにも、アメリカ人の日本に対する蔑視的態度は、日本否定の思想があるからだと断じていますが、特にクリントン政権時代のルービン財務長官とサマーズ財務長官の時代は酷かった。『ルービン回顧録』の中にも次のように書いていますが、ルービン財務長官もゴールドマンサックス出身であり、親中派のようだ。


ルービン回顧録 ロバート・ルービン著 2005 年 9 月 19 日  株式日記

公式の場では、かなり手厳しく日本の経済問題を批判した。こうした私の発言は、常にきわどい外交問題に発展した。日本はアメリカの緊密な同盟国であり、非難にきわめて敏感な傾向があった。しかし次第に、公式発言を通じてインパクトを与えるほうがよいとの確信を強めた。

なぜなら、日本政府は各国からの助言を拒否する姿勢を見せていたが、日本の景気回復は国際経済全体にとってますます重要になってきたためである。こうした拒絶反応は、ゴールドマン・サックス時代にもよく目にしていた。日本政府の態度は、トレーダーが含み損の回復を祈る態度に似ていた。しかしそのような場合には、冷静に状況を再評価し、適切な修正を受け入れるしかないのだ。

政権内では、日本に対する今後の方針をめぐる議論を重ねた。クリントン政権のメンバーの大半がそうであったように、私も日本に対して強硬論者だった。しかしアル・ゴアはさらに強硬だった。閣議室でミーティングを開催し、経済を安定させるよう日本側を説得する手段を話し合ったときのことだ。

クリントン大統領の向かいに座っていた副大統領が、語気を強めて大統領に進言した。「何としても日本の危機感を喚起し、プレッシャーを与えるべきです」。副大統領は日本側の頑なな態度を変えさせる説得力のある戦略を提案した。そのなかには、東京にアメリカの識者を送り込み、景気回復の重要性を国民に訴えるという案まで含まれていた。それは真剣な提案というより、論点を協調するための発言だったのかもしれないが、先進同盟国の経済失策のせいでみなが苦境に追い込まれているのだというわれわれの苛立ちを反映してのことだった。(中略)

結局、日本の景気回復を見ないまま、国際経済危機は何とか収まった。しかし、日本経済の脆弱さが回復の足を引っ張り、アジアの経済不安を増大させたという見解は正しかったと、いまでも信じている。そして日本経済の弱さは、経済の安定に重要な役割を果たした中国とは対照的だった。もし、日本が不況に陥ったとき中国が別の選択をしていたら、二国からの影響が重なり、アジア経済は決定的なダメージを受けていただろう。当時の中国は主要輸出市場ではなく、アジア諸国に多額の投資もしていなかった。

しかし、輸出市場での競争力はあり、中国政府のなかには、人民元の平価切り下げを行えば輸出品が安くなり、中国の利益につながるとの意見もあったようだ。しかしもし、そのようなことになっていれば、アジア全土で新たな平価切下げ競争が引き起こされただろう。クリントン大統領や私を含めた政権幹部との何回かの会談の席で、江沢民主席と朱鋳基首相は中国通貨の平価切り下げは絶対に行わないと強調した。そして実際にその言葉を守った。

こうした会談を通して私の中国観が固まり、今日に至っている。中国の政治リーダーたちは手強く、独立心が強く、圧力に屈しない。良し悪しは別として、アメリカや世界各国から、中国は日本よりも建設的な役割を果たしていると見なされると、大いに満足していた。しかしその国家としての誇りは、アジア経済危機の間、建設的な経済支援に貢献したが、中国の政治指導者たちの心がそこに向いていなければ、国際的な圧力をかけても無駄だっただろう。

クリントン政権がスタートしたばかりの頃、大統領が、アメリカ市場への参入と人権問題の進展を取引材料に圧力をかけるよりは、貿易政策によって中国を国際経済に引き込む戦略に出たほうがよいのではないかと提案した。大統領はそれを裏づけるために中露対立を歴史的な例として挙げ、中国は国力が劣っていた時代でもロシアの要求に応じなかったほどなので、大国となったいま、アメリカが圧力を強めたところで屈することはないだろうと説明した。



(私のコメント)
このように、ルービン財務長官の回顧録を見ても、アメリカ政府の特にウォール街は日本を叩き中国をアメリカのパートナーにする戦略を持っている。だからアメリカ政府は日本に対してはプラザ合意で円を240円から120円にまで短期間に切り上げさせられましたが、中国に対しては1兆8000億ドルも黒字を溜め込んでいるのに、中国を叩く事はしない。

さらにアメリカ政府は「年始改革要望書」を毎年突きつけて日本をガタガタにしていきますが、中国に対してはチベットで大虐殺しても見て見ぬふりだ。人権弾圧も米国議会では非難決議が何度も出ても政府は無視したままだ。日本政府も中国政府みたいにアメリカに対して断固とした態度を見習うべきなのですが、マスコミを始めとして日本否定思想によって、日本人の自信喪失させることで日本を弱体化させようという意図があるのだ。

日本のバブル崩壊のダメージは15年の長きにわたっていますが、アメリカ政府はそのあいだ中やいのやいのと日本を非難し続けてきた。しかしバブル崩壊のダメージから立ち直るには、企業や個人の過剰債務を解消するには時間がかかるのだ。日本は経済力があるから15年でようやく過剰債務から脱却できましたが、アメリカにそのような事ができるのだろうか?

それが出来なければ、アルゼンチンやロシアのようなデフォルトするしかありませんが、彼らはプライドが高いから日本の経験を馬鹿にし続けてきた。ルービン財務長官もかなり厳しく日本に対して批判し続けたと自身の回顧録にも書いていますが、ルービン氏は現在はシティのCEOをしていますが、見事に解決できるのだろうか?


米シティCEO辞任 後任はルービン氏 2007年11月5日 産経新聞

【ワシントン=渡辺浩生】米最大手金融シティグループは4日、プリンス会長兼最高経営責任者(CEO)の辞任を発表した。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライム)の大量焦げ付きに端を発した金融市場混乱の影響で巨額損失計上の責任を取ったもので、後任の会長には、元財務長官のルービン経営委員会会長が就任する。

 シティは、サブプライムローンを組み込んだ債権投資の価格暴落で、80億−110億ドルの追加損失が発生する見通し。ウォール街(金融街)では、サブプライムローン関連の金融商品の価格暴落で、米証券大手のメリルリンチが6年ぶりの最終赤字に転落し、オニール会長兼CEOが引責辞任したばかり。相次ぎトップが追われる異例の事態となった。

 シティは7−9月期に、同ローン絡みの巨額損失で約65億ドルの評価損を計上したばかり。その後株価が下落を続け、経営責任を問う声が高まっていた。シティは4日招集した緊急役員会でプリンス会長の辞任を承認。プリンス氏は「巨額損失に、私に残された名誉ある道は辞任しかなかった」と声明を発表した。後任のルービン氏はクリントン政権時代に財務長官を務め、1999年にシティ入りした。





日本の基礎科学がどうして強いのかについては様々な理由があるが、
私が見るに、日本語で学問をするという点も大きいようだ。韓国日報


2008年10月10日 金曜日

日本がノーベル賞を取れるのは自国語で深く思考できるから。我が国も英語ではなく韓国語で科学教育を行なうべき  10月9日 韓国日報

■自国語で学問する

今年のノーベル物理学賞受賞者は日本人一色だ。高エネルギー加速器研究所の小林名誉教授、京都大の益川名誉教授と日系アメリカ人の南部シカゴ大名誉教授だ。日本は1949年に湯川秀樹が物理学賞で初のノーベル賞を受賞して以来、物理学賞受賞者だけで7人になる。今年も受賞者をまた輩出した化学賞に医学生理学賞を加えれば受賞者は13人になり、この分野の国家別順位でも世界7位だ。

日本の物理学賞受賞者たちは専ら日本で大学を終えたが、特に今回の受賞者3人はいずれも最終学位まで日本で終えた。80代の南部教授は1952年にプリンストン大招聘を契機にアメリカに定着したものの東京大学で勉強したし、60代の小林・益川教授は名古屋大で博士課程まで終えた。今回の受賞対象となった「小林・益川理論」自体、2人が大学院生と研究員として出会った名古屋大で誕生した。

日本の基礎科学がどうして強いのかについては様々な理由があるが、私が見るに、日本語で学問をするという点も大きいようだ。基礎科学、特に物理学のような分野は物質界の作動原理を研究するものであるから、どの分野よりも深みがあり独創的な思考が重要だ。深みがあり独創的な思考をするためには、たくさん思考せねばならない。そのためには基本的な概念を早くからきちんと身に付けねばならない。南部教授は小学校のときに理科の時間に感じた興味が彼を科学者に導いたという。基本概念はどうすればきちんと身につくか。理解しやすい言語で科学を説明することから始まるはずだ。

日本は初等・中等過程はもちろん、大学でも日本語で科学を教える。そのため、西洋で発達した科学を日本語に訳すのを当然の基礎過程だと考えている。漢字文化圏である東洋4国があまねく使っている「科学」「化学」「物理学」などの用語自体が、アルファベット圏言語を自国語で把握しようとした日本の知識人たちによる翻訳の所産だ。「素粒子」「陽子」「電子」などの用語も、すべて日本人が作ったものだ。

そのおかげで、日本人にとって世界的水準で思考するということは世界で一番深く思考するということであり、英語で思考するということではなくなった。これは外国語が苦手といわれる日本人たちが基礎科学分野でノーベル賞を多く取っていることや、益川と小林の研究が日本の大学から誕生したことにもよく現われている。

一方我が国は、小学校・中学高校過程では科学の基本概念をきちんと把握する教育をしないで、大学に入ると突然英語で科学を教える。名門大学であればあるほど、理学部・工学部・医学部の物理・化学・生理学などの基礎分野に英語教材が使われる。内容理解だけでも不足な時間に外国語の負担まで重なっては、韓国語で学ぶ場合に比べると半分も学べない。韓国の基礎科学は外国に留学に行くことを初めから想定して教えているわけだ。

教授たちは、基礎科学分野の名著がまともに翻訳されていないからだと言うが、このように原書で教えていては翻訳する意味がなくなる。韓国語なら10冊読めるであろう専攻書籍を、1冊把握することも手に負えないから、基本の面で韓国の大学生たちが日本の大学生たちより遅れるのは当然だ。大学を出ても学んだものが無いという現象も、ここから生じているのだ。

大学の基礎科学教育を世界的な水準へ高めるために外国の碩学たちを連れてくるのに国はお金を惜しまないという。ちょっと聞くと素晴らしいことだ。ところが、果たして全国の小学校と中学・高校で科学の実験は思う存分できるか。初等・中等過程と大学過程で科学を正しく理解する基礎は用意されているか。世界的な水準で思考するということは、英語で思考するということではなくて世界で一番深く思考するということだが、それ実践する土台は用意されているか。ハングルの日だから言っているのではない。


英語を学べばバカになる―グローバル思考という妄想』 薬師院仁志

アメリカ時代の絡わりと英語時代の終わり

われわれは、ヨーロッパの教訓を無視すべきではない。何もアメリカだげが親分や模範ではないし、ましてやアメリカだけが世界ではないのである。交通手段や通信技術の飛躍的な発達によって、今や、世界中のあらゆる国が日本の隣国となっている。隣国と足の引っ張り合いをしていたのでは、自国の発展などありえない。たしかに、グローバルな経済競争の中で、効率性を追求する必要を訴える者は多い。だが、それに積極的に加担し、それに自ら進んで巻き込まれることが、本当に日本および日本国民の発展につながるのかどうか、もう一度考え直してみる必要がある。そもそも、世界はアメリカだけではない。実際、EUのGDP(国内総生産)は、すでにアメリカを超えているのだ。

あらゆるものは、近くで見るほど大きく見える。英語に関してもアメリカに関しても、それは同じことだ。われわれは、英語やアメリカの影響力を、いささか過大に見積もっているようなのである。特に、アメリカに関してはそうだ。だが、アメリカは、世界標準でもなけれぱ、世界の中心でもない。日本人は、よく欧米という言葉を使い、ヨーロッパとアメリカを同一視する傾向があるが、これほど大きな勘違いもない。むしろ、ヨーロッパ人から見るとアメリカは特殊な国であり、その影響力も低下する一方なのである。

船橋洋一氏によると、「英語が二一世紀に向げて、事実上の世界語へとのし上がってきたのは、英語を母語とする米国が世界の超大国」となったことに負っているという。つまり、英語による一言語支配は、アメリカによる世界支配の一側面に他ならないというわけである。つまるところ、英語の公用語化は、超大国アメリカの威を籍るという戦略に他ならないのだ。

裏返せぱ、そもそもアメリカに威がなければ、英語に乗っかろうとする戦略自体が成り立たないことになる。アメリカによる世界支配が終わると、英語による言語支配も終わることになってしまうからである。

アメリカによる世界支配は、終わりつつある。ある面では、もう終わっているのかもしれない。おそらく、問題は、いつ、どの時点で、人々がそれに気がつくのかということでしかないだろう。そして、アメリカの時代の終わりは、英語の時代の終わりでもあるのだ。

すでに二〇〇二年、エマニュエル・トッド氏は、その著書『帝国以後』の中で、「二〇五〇年頃には、アメリカ帝国は存在していないということを間違いなく予言することができる」と予言している。今となっては、これが特に大胆な予想であるとも思われない。私は、同じような予想を、アメリカの研究者から聞いたことさえある。アメリカ人のチャルマーズ・ジョンソン氏が、アジアにおけるアメリカの帝国主義的政策が近い将来必ず報復を受けると警告したこともまた記憶に新しいところであろう。

なぜアメリカの時代が終わるのか。極めて単純にまとめると、ソ連の脅威がなくなれぱ、世界はもはやアメリカを必要としないということである。東西冷戦時代、日本や西ヨーロッパをはじめとする多くの旧西側同盟国は、ソ連の脅威(それ自体の実在性も怪しいものだが)に対する守護者として、アメリカの軍事力を必要としていた。だからこそ、多くの国々がアメリカに追随し、その自已中心的な横暴さにも目をつぶってきたのだ。逆に、アメリカは、同盟諸国の自発的服従があったからこそ、世界の超大国として君臨し続けることができたのである。

◆英語ができなければ、この先生きてゆけないのか

ただ、私の場合、英会話は苦痛だが、フランス語会話なら何とかなる。フランス語は大学の授業ではじめて習った言葉だし、私が長期の海外生活を体験したのは四〇歳をすぎてからなので、下手であることはたしかである。それでも、フランス語なら、テレビやラジオのニュースくらいは理解できるし、対面コミュニケーションにおいても大した不自由は感じない。要するに、会話力に関しても、必要性と使用機会のある言語ならぱ、何とか身につくのだ。逆に言えぱ、必要性も使用機会もない言語は、身につかない可能性が非常に高いと考えた方がよいと思われる。

と言うのは、特段の語学的才能も経済的余裕もない者にとって、知的業務で役立つレベルの外国語力を身につけるには、並々ならぬ努力の積み重ねを要するからである。たしかに、語学的才能に恵まれた人は実在する。だが、それは、語学の専門家となるようなごく一部の人たちであろう。普通の者は、よほど強い動機づけと必要性がない限り、まともな外国語能力を身につけるだけの努力は続かないものなのである。

文通を楽しんだり気軽なお喋りをしたりする程度の語学力であれぱ、大した努力をしなくても身によくつくのかもしれない。だが、それは趣味や遊びのレベルだ。国際的な契約交渉をしたり、外国文献で専門知識を得たりするためには、そんな程度の語学力では全く役に立たない。日本で普通に暮らす普通の人間が、それだけの語学力を身につけるだけの努力をするには、よほどの理由が必要なのである。だからと言って、自分は勉強せず、その努力を我が子に押しつけてみても仕方あるまい。もちろん、趣味や楽しみで英語を学ぶのも悪くはない。その場合は、金銭的にも時間的にも無理のない範囲でやればよいのである。

結局、英語を本当に必要としない者が、世間の風潮にあおられたり強制されたりして、英会話学校に通い、英語教材を買い集めても、挫折を繰り返す可能性が高いのだ。この挫折は、豊かさの反映でもある。英会話に何度挫折しても、それでも英会話学習費を払い続けられるということは、豊かさの証拠であると同時に、その人にとって英語が不要だという事実の裏返しでもあるのだ。英語ができなけれぱ本当に生きてゆけないというのなら、今日の日本のような状況が生まれることもない。

英語が苦手でも発展を遂げてきた

では、日本で生きてゆくのに英語を必要とする人間はどのくらいいるのか。藤田悟氏によると、仕事の上で英語を必要とする人の割合は、「職業人の一%程度」だとのことである。逆に言えぱ、九九%の人には不要だということになる。冷静に考えると、まあそんなくらいだろう。私の身の回りでも、会社や役所に勤めている友人や親類を見た場合、実際に仕事で英語を使っている者など一人もいない。英語が苦手なことが原因で失業したり生活苦に陥ったりした知人もいない。

実際、大多数の国民が英語を苦手とする日本は、他の多くの国々以上の発展を遂げてきた。国の豊かさという面だけで見るならば、まだまだ世界には貧しい国が多い中、今の日本以上の状態を望むのは賛沢というものであろう。日本は、労働力や生産力の全般的レベルが高いからこそ、今日の生活水準を築きえたのである。この事実は、大部分の職業人が、たとえ英語は苦手でも、自らの仕事を立派に果たすことができたということの証拠であろう。考えてもみよう。世界には英語を「公用語」とする国が六〇か国ほどあるらしいが、主要国首脳会議(G8)の仲間入りを果たしたのは、そのうちの三か国でしかないのである。

藤田悟氏も正しく認めているように、外国語の支配を受けず、外国語に依存せずとも生きてゆけるという日本の状況は、喜ぶべきことなのだ。さらに言えば、英語に支配された国々がアメリカ化への防御壁を失っている一方、母語が安定している国は、自分たちの杜会を自分たちで考える可能性を持っているとさえ言える。われわれは、莫大なカネと時間と努力とを要する英語公用語化を考えるよりも、日本語で成り立つ社会を維持し発展させることを考えた方が得策なのである。自ら好んで苦痛を求めることもあるまい。

なぜ外資系企業の日本支社長でなければならないのか。日本語を母語とし、日本に暮らす人間ならば、日本の会社で出世して高給取りになることを考えた方が、ずっと実現の可能性が高いに違いないのである。

さらに、英語と外資系企業を直結させることもまた、非常に短絡的である。外資系企業であれ日本企業であれ、証券会杜は証券会杜だし、製薬会杜は製薬会杜であって、それぞれ専門分野の仕事をしているのだ。就職や転職にとって、外資系か否かよりも、そちらの方がずっと重要な要素である。しかも、藤田悟氏の言うように、「外資系企業でも英語で仕事をこなしている社員は限られている」し、「海外との仕事であっても英語をペラペラしゃべる必要はない」というのが実情なのである。

たしかに、高い志をもつことは素晴らしい。現状を超えてゆこうという努力は大切である。だが、作家やスポーツ選手や芸術家にはなれそうもない、学者や研究者になるのも難しそうだ、事業を起こすだけのカネもない、独立起業は危険が大きい、でも英語ならできるかもしれない、英語さえできれば、きっと国際的に活躍できるだろう、といった発想は、非常に安易なのだ。はっきり言って、幻想である。

日本語を母語とする人間は、何か知りたいことがあると、まず日本語を母語とする人間に聞く。それで間に合えば、間題は解決である。そのようなことは、どこの国の人間にとっても同じであろう。何か知りたいことができれぱ、まず第一に、母語を共有する身近な人に尋ねるに違いないし、自国語で書かれた文献を見るに違いない。わざわざ言葉の壁のある人間に尋ねるのは、よほど特殊な情報や、よほど専門的な知識に関してだけである。アメリカの企業にしても、アメリカの人間だけで間に合う仕事に、わざわざ日本から人を雇う必要もないのである。

だから、現状を超えてゆくためには、英語以前の間題として、何らかの技能や高度な知識が必要なのだ。大リーグ入りした日本のプロ野球選手にしても、英語を武器に活躍しているわけではない。アメリカで働くのだから英語ができるに越したことはないだろうが、まず必要とされるのは野球の技量である。問題が言葉だけであれぱ、専門の通訳や翻訳者を雇えばよいのだ。それでたいていのことは解決するだろう。だが、知識や技能を欠いている場合は、たとえ何語ができようとも、どうしようもないのである。

英語を勉強するのば効率が悪い

では、知識や技能を身につけるには英語ができる方が有利かというと、そうでもない。日本語は、一億人以上の使用者を持つ言語である。日本語の出版物は、専門書や教養書も合め、非常に多量である。また、さまざまな言語で書かれた著作が日本語に翻訳されている。実際、これほど多様かつ多量の著作が自国語に訳されている国も珍しい。このような恵まれた状況にあれば、よほどの専門家でもない限り、知識や文化を身につげるために外国語など不要なのである。

とりわけ、英語の文献は実にたくさん邦訳されている。アメリカで少しでも話題になった本は、すぐさま日本語に翻訳されると言っても過言ではない。ニュースにしても、アメリカ発のものはすぐに日本のメディアで紹介される。となると、一般人が原書を読んだり英語放送を聞いたりする必要性もないわけである。

第一、特に専門的な知識や技能を持たない人間は、英語を学んでみたところで、どのみち日本語で読めるようなレベルの本や雑誌しか読めない。しかも、言葉さえできれぱ、言われたり書かれたりしている内容が理解できるわけではない。たとえば、国際貿易に関する基礎知識のない人間は、たとえ何語で言われようが何語で書かれていようが、高度な貿易問題について理解することなどできないのである。そんな人間が外資系企業の支社長になることもない。英語だけできても、大した武器にはならないのだ。

また、発信といったところで、発信するに値する内容を持たなければ、何の意味もない。たしかに、一般人でも外国語で発信する値打ちのある体験をすることがある。たとえば、自分が実際に体験した災害や事件の状況を世界に伝えたいなどという場合である。だが、それならば、必要なときだけ専門の通訳や翻訳者の力を借りればよいのだ。その方が高い費用と長い時間をかけて英語を習うよりずっと合理的であろう。そもそも、世界の人々に何かを伝えるというのであれぱ、英語一つだけできても仕方がないわけで、どのみち語学の専門家の力が必要なのである。

いずれにせよ、個人の成功や出世の手段として考えた場合でも、まず英語を学ぶというのは、非常に効率が悪いと言わざるをえない。それ以前に必要なものがたくさんあるのだ。それに、他の知識をさしおいて、英語力だけが向上するということはない。

たとえ何語であれ、自分の知識の範囲内でしか語彙は増えないし、自分の思考力以上の言語表現はできないのである。たとえぱ、日本で生まれ育った日本の中学生は、日本語に不自由している自覚はないだろうが、複式簿記という単語を知っている者はほとんどいないだろうし、西田幾多郎の著作を理解できる者もまずいないだろう。自分の母語能力以上に外国語が上達することもまた、ありえない話だ。


(私のコメント)
今年のノーベル賞の発表において、日本人および日系人が4人も受賞したという事は特別な意図があるようだ。ノーベル賞といえばアメリカ人によるアメリカ人の為のアメリカ人の賞でもあるのですが、グローバルな意味合いを持たせるために、外国人にも賞を与えてきた。受賞者の国籍の内訳を見ればアメリカが232人であり、2位がイギリスの75人で、米英だけで300人を越えるのに、3位ドイツ4位フランスを含めた米英以外の国は100人にもならない。

それにも拘らず学界の最高権威の賞として報道されていますが、それほど学界の重要な研究が米英に偏ってきたのだろうか? ノーベル賞の元になったノーベルはスエーデン人ですが、ノーベルの遺言によって国籍は考慮しないとされてきたのですが、結果としてアメリカ人イギリス人に集中して多い。これは選考が英語による論文で評価されるからだろう。

しかし科学研究が非常に金のかかるものであり、世界一の経済力を持つアメリカにノーベル賞受賞者が多いのは当然の事でもある。しかし英語の壁があるのも事実であり、ドイツやフランスやロシアやイタリアなどは異常に少ないのは不可解だ。日本もノーベル賞級の科学的な実績はあるのでしょうが、選考などは英語で書かれた論文などが対象となっている。

戦前に関してはドイツ人のノーベル賞受賞者が一番多く36人なのにアメリカ人は18人で、アメリカ偏重は少なかったのですが、戦後は米英の為のノーベル賞になってしまっている。私自身は自然科学のことは詳しくないのですが、本当に科学的業績がアメリカに集中しているのだろうか? 論文の数自体はアメリカと日本とは同じくらいなのですが、日本語の論文は対象外なのだろう。それとも日本語の論文のレベルが低いのか?

このようになってしまった背景としてはアメリカが世界帝国であり、英語文化が世界のグローバルスタンダードだというプロパガンダがあるからだろう。戦前はヨーロッパが世界の政治経済文化の中心でもあったのですが、戦後はアメリカにそれが移ってしまった。経済力でも軍事力でもアメリカに敵う国はなく、現在でも覇権国家である事は間違いない。

しかしアメリカが覇権国家になったのは戦後の事でありわずか60年余りの事だ。軍事的に対抗していたソ連は崩壊して共産主義のイデオロギーも否定された。戦後経済力で頭角を現して来た日本も最近は影が薄くなり、90年代以降はアメリカの一国覇権主義の時代と言われるようになった。

アメリカがこれほど強大になった理由と衰退する理由は同じであり、それは国内から産出された石油の富によるものだ。石油があったからこそアメリカは世界大戦で勝者となり、世界経済の中心ともなった。だから学術研究の分野でも資金力の豊富なアメリカに科学的業績が集中したのは当然なのだろう。

石油以外にもアメリカを強大にした力の源は、ヨーロッパからの豊富な労働力の供給があったからともいえる。ヨーロッパの高度な文化がアメリカに移植されて、豊かな地が資源と共に結びついて世界一の超大国となった。

しかしこのような認識と、英語による世界公用語化は認識が別である。日本の教育界には英語が世界のデェフェクトスタンダードだとして、小学校からの英語教育が行なわれるようになりました。しかし本当に英語が世界のデフェクトスタンダードなのだろうか? 

それに疑問を投げかけているのが薬師院仁志氏の『英語を学べばバカになる』という本ですが、題名が誤解を招きやすいのですが、英語グローバリズムに対する批判だ。この本によれば世界の英語人口は多くなく、思い浮かぶ英語国はアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージ−ランド、南アフリカぐらいで、インドやパキスタンは英語は通ずるが母国語ではない。つまり英語を母国語とする人口は4億人くらいで、後は英語を外国語として学んでいる人が多いということなのだろう。

つまりアメリカが国家として衰退すれば英語も使われなくなり、新たなる覇権国家の言葉が使われだすのだろう。つまり英語を学べば先進国になれるというわけでもなく、なれるものならインドやフィリピンなどはとっくに先進国になっているはずだ。むしろ英語教育を普及促進しようとすればするほど、その国の国力が落ちている。

そのいい例が、破綻しつつある韓国ですが、韓国ほど英語教育に力を入れている国は無いだろう。アメリカに留学する韓国人学生の数は異常なものであるし、国内教育においても英語教育に費やされる時間と費用は異常なものだ。これは高度な教育は英語が前提とした教育体制となっており、大学レベルになると英語で授業ができる事が大学教授の条件になっている。

当然使われる教材も全部英語で、英語が分からないと科学も理解できない。自国語の本なら10冊読める時間で、英語の本を読むのに1冊がやっとというのでは科学のレベルも落ちるのが当然だ。なぜ日本のような翻訳して母国語での教育が行なわれないのだろうかという疑問が出ますが、日本では理工系の教育も医学系の教育も日本語で行なわれていますが、日本のような例は希なのだろう。

つまり英語の文献を母国語に翻訳しようとしても該当する言葉が無くて翻訳が出来ない事が問題であり、津波のように押し寄せる英語の新語に対して翻訳する事が出来る文化レベルがないと翻訳できない。科学用語も日本では翻訳されていますが、海外の場合は英語を先に学んで科学用語を理解したほうが早い。しかしそれでは英語をマスターできないと最先端の科学が理解できない。

韓国日報の記事はこのような韓国の現実を指摘していますが、日本は韓国のような過ちは犯してはならない。確かに英語がマスターできて最先端の科学も理解できればいいがそれは理想論だ。だから英語教育に力を入れれば入れるほど科学技術のレベルは落ちて韓国やフィリピンやインドのように科学後進国になってしまう。

むしろ問題にしなければならないのは、日本人の日本語力が落ちてきて、外国語を日本語に翻訳できる能力が落ちてきている事だ。映画の題名にしても昔は名訳が多かったが最近では英語のカタカナ読みをそのまま使っている。科学用語もカタカナのままが多いのですが意味が掴みづらい。今回のノーベル物理学賞にしても「素粒子」「陽子」「電子」などの日本語で意味を掴んで思考されたのでしょうが、インターフェロンといわれても何のことか分からない。しいて言えば抗体蛋白質と訳せるのでしょうが、マスコミもカタカナ用語をそのまま使っている。

つまり日本語力が落ちればカタカナ用語が増えてきて意味が掴みづらくなって思考に影響が出てくることだろう。だから日本語力を高める事が翻訳能力を高めていく事が大切ですが、文部省は英語教育に時間を割くことで対応しようとしている。これは即ち日本も韓国と同じ過ちを犯すことであり、英語教育に時間をとられる結果、日本の科学技術は確実に後れて行くことになる。




30年間、「市場は万能」というのが経済の常識だったが、世界を支配
してきたアングロサクソン型モデルは崩壊し、経済の新時代が始まる。


2008年10月9日 木曜日

金融不安の裏にある覇権国・米の構造問題=信州大 真壁氏 10月8日 ロイター

(前略)

 <低下した米金融テクノロジーの神通力>

 ところが、それは「ITバブル」と「住宅バブル」によって支えられていたことが明らかになった。しかも、米国自慢の投資銀行部門のオペレーションの多くは、借入や派生商品を使うことによって、単純にレバレッジを掛けていただけだったことが露呈してしまった。それが明らかになると、それに追随する投資家の数は極端に減少するはずだ。米国流のファイナンシャル・テクノロジーが神通力を失い、米国の信用力が低下したのである。

 米国の信用力低下のもう1つの理由は、米国の財政状況だ。米国の財政状況は、減税の実施などによって短期的にかなり悪化している。しかも、金融機関の救済などによって、今後一段と悪化することが予想される。救済資金ねん出のために米国政府は、多額の国債を発行することが避けられないからだ。今後の焦点は、増発される国債をだれが買うかだ。従来のよう、わが国や中国、産油国が積極的に購入してくれれば問題は顕在化しない。

 しかし、米国発の金融市場の混乱を目の前で見せられてしまうと、増発される米国債に対する食指は動き難くなるはずだ。増発国債の消化がうまく行かず、発行できない事態に追い込まれると、それは間違いなく、米国自身の覇権国としての神通力の失墜につながる。

 <米国債の信認維持に欠かせないISバランスの好転>

 それを阻止するためには、増発される国債の多くを国内で消化することが必要になる。実現には、米国民の消費カットによる生活水準の引き下げと貯蓄の増加が必須の条件になる。米国のIS(投資・貯蓄)バランスが好転するからだ。問題は、高い生活水準に慣れてしまった米国民が、果たして、生活水準を落とすことができるか否かだ。

 おそらく短いタイムスパンで考えると、答えは「ノー」だろう。1度慣れ親しんだ高い生活水準を低下させることは、口で言うほど容易なことではない。短期間に、それを成就することは困難と見るべきだろう。増発される米国債の国内消化がおぼつかないとなると、金利水準を引き上げてでも、海外投資家に購入してもらうしか有効な選択肢はない。それは米国にとって、大きく威信を傷つけることにほかならない。

 こうして考えてくると、今回の金融危機は単なる金融市場の混乱ではなく、むしろ米国という覇権国が持つ本源的な問題点が、世界中の人々に明確に示されたということができるだろう。その認識が正しいとすれば、今後、われわれは、世界経済が米国ひとりに依存する米国一極集中型の構造から、次の新しい構造への移動プロセスを歩まなければならないことになる。早期に発想の転換が必要になりそうだ。そうでないと、適切な対応ができないからだ。

 真壁昭夫 信州大学・経済学部教授



ポスト金融危機のグローバル資本主義 10月8日 ニューズウィーク日本版

世界を支配してきたアングロサクソン型モデルは崩壊し、経済の新時代が始まる

 文字どおりドラマのような1週間だった。米連邦議会は最大7000億ドル規模の金融安定化法案を議論し、投票にかけ、修正し、最終的には10月3日に成立させた。

 法案を下院が一度否決した9月29日には、ダウ平均株価が過去20年で最大の下げ幅を記録。その後、世界の株式市場はまるでジェットコースターのように乱高下を繰り返した。銀行間取引金利は過去最高になった。誰が危ない資産を保有しているのかわからず、金融機関は疑心暗鬼に陥ったからだ。

 個人投資家たちは強迫観念にとらわれている。ロンドンの高級ビル、サボイ・プレイスには、現金をゴールドに換えようとする人が殺到。1オンス当たり100ドルという割増料金を支払い、金貨や金塊を持ち帰っている。「少なくとも(金は)安全だから」とあるバイヤーは言う。「銀行は私たちのカネでいったい何をしているのか」

 誰もがそんな疑問を口にするようになった。銀行の支払い能力だけでなく、アングロサクソン型の資本主義制度全体に対する疑いが日々強まっている。

 この30年間、「市場は万能」というのが経済の常識だった。だから、今回の銀行救済策に一般国民は怒り狂った。懸命に働いて支払った税金のうち1兆ドル近くを投入して救う相手は、真の価値を何も生み出していないようにみえるからだ。

 こうした国民の怒りに政治家が屈服したことは、「ウォール街にとっていいことは一般市民にとってもいいこと」という考え方が通用しなくなったことを示している。

 ロナルド・レーガン元米大統領やマーガレット・サッチャー元英首相が推し進めた新自由主義の影響力が、今まさに消えつつある。私たちは自由な市場での容易な借り入れとリスクの高い取引、巨額の報酬に象徴される「黄金時代」に別れを告げ、融資の絞り込みや規制の強化、投機の縮小、政府の市場介入などが一般的になる新しい時代に突入しているのだ。

 世界中の政治家が、金融システムに対する新たな規制や「改革」を求めている。一方で、中国のような統制的な資本主義国家や、ドイツやフランスのような社会民主主義国家では、アメリカ発の金融危機に対して安堵する気持ちと「だから言ったじゃないか」という感情がない交ぜになっている。

 ドイツとフランスは、アングロサクソン型の金融システムに怯えていた。だがウォール街の崩壊は、彼らの経済モデルが生き残り、むしろ繁栄するかもしれないことを意味している。

 フランスのニコラ・サルコジ大統領は「金融システムの運営に公的権力が介入することの正当性に、もはや疑問の余地はない」と宣言。「資本主義を再検討する」国際会議を計画中だ。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は先週、「グローバル化した世界では政府の力が弱くなる、そう語るのが数年前の流行だった。私はそんな見方をしたことはない」と述べた。ペール・シュタインブリュック独財務相は、今回の危機は「アメリカが金融超大国としての役割を終える」ことにつながるとさえ述べた。 (中略)

「終焉」を迎える投資銀行

 まず、従来型の投資銀行はもうおしまいだ。FRBの規制により、これまでのようにレバレッジで高い収益をあげることはむずかしくなるだろう。

「基本に立ち返ることになるだろう」と、モルガン・スタンレー・アジアのローチは言う。「コンサルティング業務が増え、レバレッジの高い取引は減る。取引はクライアントの戦略的ニーズに沿って進められるようになり、取引そのものも金儲け一辺倒ではなく、より戦略的になるだろう」

 金融関係者の報酬にも上限が設けられる可能性がある。アメリカでは、ライシュをはじめ多くの人が、報酬を5年ごとの業績目標に連動させることを求めている。目先にとらわれて過度のリスクを犯すことを防止するためだ。

 それに、金融関係者の巨額の報酬のもととなった複雑なデリバティブ市場も縮小傾向にある。アメリカでは取引の透明性の向上のために、デリバティブの取引機関の整備を求める声がある。EU(欧州連合)はすでに、デリバティブ規制に動いている。欧州委員会は先週、債務担保証券を禁止もしくは制限する規制案のたたき台を作成した

 ドイツのシュタインブリュック財務相は、金融市場の「教化」にも乗り出した。週刊誌の取材に対し、彼はこう述べた。「現在のような欲望むき出しで野放しの資本主義は、自らを食い尽くす運命にある」。シュタインブリュックは金融機関の自己資本比率を増やし、空売りを禁止し、金融関係者のボーナスに上限を設け、そして何より、簿外取引をなくそうと必死だ。

「過度のリスクを負うか、他の市場参加者に意図的に損害を与えないかぎり、25%のリターンは達成できないことを、明確にすべきだ」と、シュタインブリュックは先週、ドイツ連邦議会で語った。(後略)



(私のコメント)
テレビや新聞などのマスコミは現在何が起きているのかを報道するのが公的な使命なのですが、芸能やスポーツなどでは裏の事まで克明に報道するのに、経済の事になるととたんに通信社任せになってしまう。専門家にインタビューしようにも質問するだけの基礎学力が無いからだ。

相手が政治家なら突撃インタビューしていればいいのだろうが、経済はそうは行かない。普段から自分でも株式投資やFXでもしていればいいのだろうが、記者は株式やFXは出来ない。NHKの職員が株をやっていてインサイダーで捕まりましたが、だからマスコミの記者は経済に疎くなってきてしまう。

政治家も株はご法度だから、どうしても経済に関心が薄くなり、経済政策通といわれる政治家も少なくなりました。昔は議員バッチをひけらかして証券会社に出入りして、確実に儲かる株式売買をしていたようですが、最近はそのような事が出来なくなった。日本の証券会社の悪口は書けばきりがないのですが、外資系証券会社も詐欺師まがいの商法がバブル崩壊でばれてしまった。

外資系証券会社の言う金融工学は、分かりやすくいえばレバレッジを効かせた投資法ということなのだろう。デリバティブなどもノーベル賞学者を採用して科学的合理性を追求していたのでしょうが、経済は数学ではない。

ファニーメイやフレディーマックにしてもAIGにしてもCDSをよく理解しないまま売買していたから、現在のような金融恐慌になったのですが、住宅価格が下落して全国の住宅ローンが破綻すれば債務保証を引き受けたところが代位弁済を一斉に引き受けなければならなくなる。その金額は数百兆円にもなる可能性がある。


ファニーメーの悲劇 その2 10月9日 宮崎正弘の国際ニュース

「なにを我々は売っているのか、よく理解していなかった」と経営幹部

ファニーメーとフレディマックが売買して、不良債権と化したCDSの総額は、540兆円に達する(CDSはCredit Debt Swap)
 今頃になって「なにを我々は売っているのか、よく理解していなかった」と経営幹部が発言している。

 ファニーメーは05年から08年までに「怪しげな借り手が銀行から借りた住宅担保証券」を2300億ドルを購入した。

 「途中から銀行がわれわれを経由しないで投資家に担保証券を売却していて、焦燥と不安が広がった」とCEOのマッドはインタビューに答えた(ヘラルドトリビューン、10月6日付け)。

 市場の仕組みが変わった。
 迅速に流れが変わっていたのだ。
過去八年間で住宅ローンを担保として、ファニーメーは米国全体の40%を購入し、投資家へ売ってきた。ファニーメーが扱った主業務は一種の住宅保険で、銀行から担保物件を買うが、もし借り手が債務不履行に陥った場合にファニーメーが保証するという一種の保険機構なのである。

 要するに借り手が大挙して債務不履行となった場合、全額保証を求められるのだ。だが、同社は強気で、2010年まで2兆ドルを目指した。住宅価格は右肩上がりだったし、政府も議会も低所得層が住宅を購入するというアメリカンドリームが実現させる基軸の機構なのだから、誰もファニーメーを責め立ててはいなかった。
 不良債権かの恐れがでた07年でも議会民主党は、「もっと低所得層にローンを提供するべきだ」とファニー目に噛みついていた。
 
 ある日、ファニーメーは自身の会社がきわめてファニーなビジネスモデルの陥穽に陥っていることに気がついた。
年収の十倍以上もの物件を低所得層がつぎつぎと購入しているが、これは風向きがかわれば、突如不良債権かすることは明らか、その不良債権が自社に累積しているではないか!と。

 危機を正確に認識できたとき既に遅く対応をとる時間はなかった。



(私のコメント)
日本でもバブルの崩壊で住宅価格の下落が一斉に起きたのですが、日本人は実直だから住宅ローンを払い続けて焦げ付くローンは少なかった。だからローン保証会社も破産せずに済んだ。ところがアメリカはノンリコースローンだから買った住宅を銀行に返せばそれ以上遡及される事は無い。

アメリカでは4軒も5軒もローンを利用して不動産投資している人がいたようですが、失敗したら銀行にカギを送りつけるだけですんでしまう。これほど確実な投資法があるだろうか? もし株式投資に例えればローンで買って株が上がれば利益は自分のもので下がれば株の所有権は放棄すればいいのだから、これほどの「金融工学」はあるだろうか?

これでは銀行も商売にならないから保証会社の債務保証を付けて貸すのですが、債務保証も証券化されて転売されてファニーメイやフレディマックが一手に引き受けてしまった。両者が保証している残高は5兆ドルで500兆円にもなるわけですが、両社の発行している債券残高は5兆3000億ドルで600兆円にもなる。両社の債券は政府系金融機関ということで米国債並みの信用があった。だから外国政府が沢山所有している。

まさにファニーメイとフレディマックが破綻すれば1100兆円の焦げ付きが発生するわけですが、アメリカの金融そのものの破綻だ。さらにはAIGなども巨額のCDSを抱え込んでおり、CDSそのものの残高は6600兆円にもなる。債券に保証をつければ格付けが上がるからですが、それだけの保険金を払える金融機関は無い。

そんなことが分からないくらいアメリカの金融マンの頭のレベルは低いのですが、これがアメリカの「金融工学」の正体なのだ。まさにアングロサクソン型の経済モデルは崩壊してヨーロッパ諸国も巻き込まれてしまっている。だから欧米の金融市場はマヒ状態になり、銀行同士の金融も信用不安で中央銀行しか貸し手はない。

最近は日本人のノーベル賞の受賞が相次いでいますが、全く関係ないことなのですが、日本人の金融に対する賢さも評価されてきているのではないだろうか? 日本人はバブル崩壊で市場の恐ろしさを体験していたのですが、アメリカはソ連崩壊でアメリカの資本主義の勝利と錯覚して市場原理主義がアングロサクソンのイデオロギーとなった。

その市場原理主義を日本に取り入れたのが小泉・竹中内閣ですが、竹中平蔵氏はいまだに日本は構造改革が進んでいないとテレビで言っていますが、構造改革すべきなのはアメリカであり、だからこそアメリカ政府はアメリカの金融機関を相次いで国有化して社会主義的政策を行なおうとしている。自民党の言っている「小さな政府」は理想論であり、アメリカの金融破綻は「小さな政府」のプロパガンダの破綻でもあるのだ。




ニクソンショック以降は石油がドルの裏付けとなりましたが、
アメリカが通貨制度の再構築に失敗すればジンバブエのようになる。


2008年10月8日 水曜日

米株底入れは2020年の可能性も=三井住友銀 宇野氏 10月7日 ロイター

米株の底入れ時期はかなり先になるとみている。日本を例にとると、日経平均は1989年12月をピークに下落し始め、2003年にボトムアウトするまで13年かかった。これを当てはめれば、NYダウのピークを2007年として13年プラスすると2020年ということになる。クリントン政権で金融を国の基幹産業と位置づけその恩恵を15年間享受してきたことからも、同等の期間、低迷が続いていもおかしくない。

 当面の株価の底値は、NYダウで7000─8000ドル、日経平均については為替がさらに大きく円高に振れないとの前提で9000円前後とみている。

 米国を中心とする金融問題はまだ3合目程度。金融問題への対応に追われ、実体経済の減速への対応が見えてこないからだ。特に米国については、利下げはもちろん景気対策なしには回復しないという観点から、先行きについては悲観的にみている。



米国がトリプルAから転げ落ちたら・・・ 10月7日 モーニングスター

 先週末3日、米国で金融安定化法案がようやく成立。効果については、引き続き疑問視する見方が多いものの、焦点は金融不安から、世界各国の景気に移ってきた。

 ところで、金融安定化法案での公的資金は最大7,000億ドル。既にファニー・メイ、フレデイ・マックという政府系住宅金融機関に対して、計2,000億ドルの公的資金の枠を設定。また、米大手保険のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)にはFRB(米連邦準備制度理事会)が最大850億ドルの特別融資を決定。それ以前にFRBは、証券大手ベア・スターンズに290億ドルの特別融資を実施済み。このほか、住宅ローンのユーザーに対して、3,000億ドルの借り換え保証枠を設定。さらに、MMFの元本保証のためにFRBが500億ドルの基金を設定する。
 なんだ、かんだといって、米国政府は金融不安に対応するため、表面化しているものだけで最大13,640億ドル。日本円にして140兆円を超える規模の公的資金を投入することになる。この巨額な公的資金は国債の増発で捻出しようとする動きがある。

 そこで、注目されるのが米国債の格付けだ。ムーディーズなどの大手格付け会社では、最も信用力の高いトリプルAを付与している。もともと、米国は貿易赤字、経常赤字という巨大な双子赤字を持つ国家で、米国債のトリプルA自体が国際金融筋の7不思議のひとつ(他の6つの不思議は知らないが・・・)だった。ただ、今回の巨額な公的資金投入を国債で賄うことになれば、財政悪化から米国債の格下げというリスクがあるのは間違いない。

 遡って、日本国債の格付けを見てみると、2000年9月にムーディーズがトリプルAから2ノッチ(段階)下げて、Aa2(ダブルAフラット)に、翌年2月にS&Pが1ノッチ引き下げるAA+(ダブルAプラス)に引き下げた。日本の国債もかつてはトリプルAだったのだ。以降、相次いで引き下げられ、中でもムーディーズは先進国の中で最低のA2まで引き下げ、当時の日本の財務省が質問状を送付するなど、米格付け会社とのバトルが話題になった。今や、そのムーディーズもAa3(ダブルAマイナスに相当)まで引き上げている。
 日本国債がトリプルAから転落しても、対ドルで一時的に円安に触れただけ。日本国内でも話題になったが、国際的には大きな影響はなかった。外国人投資家が日本の国債を現物で保有しているのは全体の1割にも満たないという現実があるからだ。

 ところが、米国債はそうはいかない。トリプルAから引き下げられれば、米国債は売られ(利回りは上昇)、生保など日本の金融機関などは評価損の懸念が高まることが必至。米国は株安、債券安、米ドル安というトリプル安に陥ることになる。日本だけではなく、中国や欧州各国も米国債を大量に保有しており、全世界に影響を及ぼすことになる。米国にとっては基軸通貨の座はユーロに取って代わる可能性もある一大事だ。

 こうした情勢下で、10日にワシントンで開催されるG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で、米国の奥の手が注目されている。米金融機関がFRB(米連邦準備制度理事会)の担保に入っている米国債を、FRBが改めて各国中央銀行から資金調達する担保にするというクロスボーダー担保を各国で検討してもらうというもの。米国では新たに国債発行する必要がなく、格下げの懸念も薄れる。

 ただ、市場では「同じ米国のムーディーズやS&Pの身内びいきは知られており、どんなに財政が悪化しても格下げする可能性はない」との見方が大勢。とはいえ、日本の投資家は、来るべき米ドル安・円高に対する備えだけはしていたほうが無難だろう。


(私のコメント)
ニューヨークダウ株式が1万ドルを割ってきましたが、金融が恐慌状態にもかかわらず1万ドルを維持していただけでも不思議だ。FRBのバーナンキ議長は更なる利下げを示唆しましたが、株価が暴落し始めた事に対するものだろう。バブルの崩壊は金融危機から始まって実体経済にまで影響が及んでくるには1,2年かかる。

アメリカの場合、サブプライムの問題が表面化して、FRBは素早く利下げに踏み切りバブル崩壊を防ごうとした。だから株価は今まで堅調だったのでしょうが、2%のFF金利でもアメリカの金融市場が機能麻痺に陥って、長期のローンが組めなくなり、それでは自動車も住宅も売れなくなる。

アメリカの金融はパニック状態であり、次はどこかという噂が飛びかっている。5大投資銀行はひととおり整理されましたが、大手銀行の破綻危機はこれからやってくる。7000億ドルの不良債権買取も間に合うのだろうか? シティをはじめ大手銀行は中東や中国の政府系ファンドから資本調達して資本増強してきましたが、バンカメも1兆円の増資をする。しかし何処にそんな金があるのだろう。


NY株、5年ぶり安値 予想より悪化、バンカメの決算悲観 10月8日 ビジネスアイ

【ニューヨーク=長戸雅子】7日のニューヨーク株式市場は、金融不安の拡大懸念と企業業績の悪化を嫌気し全面安の展開となり、ダウ工業株30種平均は今年2番目の下げ幅となる前日終値比508・39ドル安の9447・11ドルで取引を終えた。終値が9500ドルを割り込むのは5年ぶり。ダウは5営業日続落し、下落幅は1403ドル(約13%)に達した。
 ハイテク株中心のナスダック総合指数は同108・08ポイント安の1754・88と約4年2カ月ぶりの安値をつけた。
 堅実な経営とされていた米銀大手、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が前日の取引終了直後に発表した7〜9月期決算が市場予想を大幅に下回る減益となったことで、今後相次いで行われる決算発表への悲観的な見方が広がった。バンカメが買収を発表したメリルリンチも26%下落、モルガンスタンレーは一時40%急落した。
 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長はこの日、早期利下げを示唆したが「正しい方向に進んでいるのだろうが、まだ何も機能したわけでない」と市場の反応は限定的だった。


(私のコメント)
銀行は手持ち資産が劣化してくるにつれて貸し倒れに対する引当金を積み増ししなければなりませんが、利益で足りなければ資本増強を強いられる事になる。融資先がどんどん経営が悪化してくればそれに対する引当金も必要になる。足りなければ債務超過で銀行は破綻する。

大手銀行の決算発表が今月ありますが、バンカメの決算も予想以上の悪化であり、資本増強に1兆円を必要とする。メリルリンチの株もモルガンスタンレーの株も暴落した。これでは次はどこかという噂が絶えないのはしかたがないのですが、インターバンク市場も機能せず、日本でも外資系金融機関で資金手当てが出来ずに日銀が今日も1兆5000億円放出している。


日銀、1兆5000億円の即日資金供給…16営業日連続 10月8日 読売新聞

日本銀行は8日、金融機関が資金を貸し借りする短期金融市場に1兆5000億円の資金を供給した。

 外資系金融機関を中心に短期金融市場で資金を調達しにくい状態が続いているためだ。

 日銀による即日の資金供給は、米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)以降、16営業日連続。累計は28兆9000億円に達した。

 一方、日銀は日米欧の6中央銀行による協調策に基づいて、200億ドルのドル資金供給の入札を7日に実施し、362億ドルの応札があった。3か月後に返済する約束で金融機関に貸し付ける。


(私のコメント)
バーナンキ議長は更なる金利の引き下げを示唆しているが、さらにドルを供給して市場をジャブジャブにして強引に金利を下げさせようということなのだろう。その為には米国債が発行されてFRBが一手に買うしかない。FRBには米国債の山ができて金庫は満杯だ。仕方がないから外国の中央銀行にその米国債を担保に金を借りるようですが、結果的には米国債の外国の中央銀行への押し売りだ。

このような米国債がAAAの最高級の格付けなのだから不思議でならないのですが、米国債を買わされている日本の国債がボツワナ並みなのは不思議だ。日本のバブル崩壊は日本政府と日銀だけで食い止めましたが、アメリカのバブル崩壊は世界中を巻き込んで、それがヨーロッパにも飛び火して銀行が相次いで国有化されている。


「米は公的資金の注入を」日本、G7で促す見通し 10月8日 読売新聞

10日にワシントンで開かれる先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で日本は米国に対し、事実上、金融機関への公的資金による資本注入を促す見通しとなった。

 世界に波及した金融危機を沈静化するためには、混乱の発端となった米金融機関への早期注入が不可欠と判断した。前回4月のG7以降、世界経済の減速も鮮明となっており、G7各国は金融危機が実体経済に悪影響を及ぼしつつある現状に危機感を共有する見通しだ。

 G7では、9月15日の米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)をきっかけに緊張感が高まっている国際金融市場の安定化策を集中的に協議。各国が主要金融機関の資金繰り支援に向けドル資金供給策の継続などで協調を強めることで合意する。欧州は公的資金で金融機関の国有化を進めている。G7で日本は欧州とともに、米金融機関の資本増強のため公的資金の早期投入の必要性を主張する。


(私のコメント)
結局はバンカメはじめシティなど公的資金の注入で、資本主義の総本山であるアメリカの銀行も国営化されて金融市場を落ち着かせるしかないのだろう。しかしアメリカ国民の納得は得られないからマイケルムーアが主張したような救済策が取られるかも知れない。すでに日銀は16営業日にわたって30兆円もの資金供給を続けているが、これもアメリカの外資系銀行に信用不安があるためだ。

しかしこれで落ち着いたとしても、FRBは米国債の山に埋まり、海外の中央銀行の金庫も米国債で埋まってしまう。一番買わされるのが日本であり、世界にあふれかえった米国債とドルの信用が無くなり、アフリカのジンバブエみたいになるのではないだろうか? ジンバブエでは札束を秤にかけて買い物をしますが、ドル札や米国債も把を秤にかけて買い物をする時がやってくるだろう。


超インフレなジンバブエの買い物風景と現状 3月8日 Garbagenews

以前の記事で比較対象として挙げた第一次大戦直後のドイツにおけるハイパーインフレでは、国内の土地を担保にした(いわば「金本位制」ならぬ「土地本位制」)新通貨レンテンマルクを発行。通貨発行量や国債引受高を制限することで、インフレを抑えることに成功している。ジンバブエで同様の政策を行なうかどうかは不明だが、少なくとも現状の独裁体制においては、変革は望めそうにもない。今しばらくはさらなる、そして歴史上類を見ないインフレの加速を耳にすることになりそうだ。



(私のコメント)
ペーパーマネーが信用を失った場合、ドイツでも日本でも土地を担保にした信用創造が行われてインフレを抑え込んだ。その土地が値上がりすれば信用が拡大した事になりますが、ペーパーマネーを刷り過ぎればバブルになってしまう。だから日本でもアメリカでも住宅価格が上がりすぎればバブルが発生してしまった。だから住宅金融などを規制して安定的な土地価格を維持して通貨の信用を維持すべきなのだ。

ゴールドを通貨の信用の裏付けにするには、あまりにも量が少ない。だから土地を担保にした土地本位制で通貨制度の再構築がアメリカで必要になるだろう。ドイツや日本では大戦で敗れて通貨制度が破壊されて再構築した経験がありますが、アメリカにはそれが無い。ニクソンショック以降は石油がドルの裏付けとなりましたが、石油はいずれ無くなる。アメリカが通貨制度の再構築に失敗すればジンバブエのようになってしまうだろう。




リーマンに限らず、米国の証券会社は、そうしたインチキ商品を山の
ように作りあげて、右から左に金を稼ぐというやり方をしていたのである。


2008年10月7日 火曜日

「なぜリーマンだけ…」リーマンCEO議会で恨み節 10月7日 産経新聞

【ワシントン=渡辺浩生】経営破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズのファルド最高経営責任者(CEO)は6日、米下院公聴会で証言し、破綻に至った経営判断について「全責任が私にある」と述べた。ただ、その一方で、リーマン破綻翌日に当局の線引きで米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が救済されたことについ「なぜリーマンだけ救済されなかったのか」と恨み節も漏らした。

 先月15日の連邦破産法11条適用申請から3週間。ファルドCEOは、やつれた表情で「当時の情報に基づきとった判断と行動の全責任は私にある」と強調した。金融危機の引き金となり「会社に起きたことやその影響の大きさを考えると、恐ろしくなる」とも打ち明けた。

 しかし、AIG救済をめぐり、議員から「リーマンだけ救済されなかった正当な理由はあるか」と尋ねられると、ファルドCEOは「なぜ私たちだけだったのか分からない」と政府の線引きに疑問を呈した。

 さらに、リーマン破綻後に株価が急落した証券大手ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが銀行持ち株会社化への移行を米連邦準備制度理事会(FRB)に認められたことについて、「そうした変化がもっと早かったら、リーマンには非常に大きな助けになっていたに違いない」と述べ、当局の支援策を受けていれば破綻が回避できたという認識を示した。

 下院監視・政府改革委員会はファルド氏の2000年以降の報酬を現金・株式合計で約4億8000万ドル(約504億円)という試算結果を発表。ファルド氏は「大半はリーマン株式でいまだ持っている。現金報酬は6000万ドルだと思う」と反論した。


今まさに瓦解する市場原理主義 10月6日 森永卓郎

9月15日、米国のリーマン・ブラザーズ証券が経営破綻した。158年の歴史を持ち、全米第4位の証券会社が姿を消すことになったわけだ。

 同時に、全米第3位のメリルリンチも、バンク・オブ・アメリカに買収された。半年前に破綻した全米第5位のべアー・スターンズを加えると、米国の第3位から5位までの証券会社が、わずか半年の間に消えるという異常事態が起こったのである。

 そして、証券第2位のモルガン・スタンレーも、三菱UFJフィナンシャル・グループから1兆円近い出資を受けることになった。

 米国では、最大7000億ドル(約73兆円)の不良資産を金融機関から買い取るとする金融安定化法案をようやく可決したが、サブプライムローンに端を発した金融危機はまだまだ終息しそうにない。

 これまで、米国の金融機関自らが処理した金額は30兆円程度。今回の法律で米国政府は70兆円以上の不良債権の買い取りを実施するのだから、あわせて約100兆円。この金額は、米国の金融機関の総損失に匹敵する。これで、サブプライムローンの処理が終わり、米国内の金融危機は峠を越えたと言ってもおかしくないはずだ。

 だが、今回の金融危機の根はもっと深いところにある。米国型の金融システムが作り上げてきた信用バブルが、まさに崩壊しようとしているのである。サブプライムローン問題は、あくまでもきっかけに過ぎなかったのだ。

 いま、時代は大きく変わろうとしている。ここ30年間、世界を席巻してきた弱肉強食の新自由主義、市場原理主義、行き過ぎた金融資本主義が、いままさに瓦解しようとしている現場にわたしたちは立ち会っているのである。

米国の証券会社と格付け会社がグルになってやってきたこと

 破綻したリーマン・ブラザーズの名を聞いて、ホリエモンによるニッポン放送買収騒ぎを思い出した人もいるだろう。ライブドアが発行したMSCBという新株予約権付社債を引き受けることで、800億円という資金を出した証券会社だ。ライブドアの件に限らず、リーマンはそうした乗っ取りの手伝いをよくやっていた会社なのである。

 もう一つ、最近になってリーマンの名がメディアを賑わした事件として、丸紅の元社員による詐欺事件があった。元社員は、あたかも丸紅の本社が事業に絡んでいるかのように見せかけて、リーマンに約400億円を出資させ、その大半が未償還になっている。

 もちろん、リーマンは被害者なのだが、その案件は病院の乗っ取りであり、しかもリーマン側が受け取ることになっていたリターンは、半年で12.5%、1年で25%という非常に高い利回りだったと言われている。

 もちろん、だますのは悪いことだが、同時にリーマンがそうした危険な事業に手を染めていたことが、図らずも明らかになった事件であった。

 リーマンが得意にしていたビジネスは、例えば商業用不動産の証券化であった。

 米国の銀行は自己資本比率の規制を逃れると同時に、融資リスクを避けるため、あらゆるローンを証券化してきた。そこで、不動産から、クレジットカード、自動車ローンに至るまで証券化を進めてきたのである。

 証券化の流れは、リーマンのような証券会社の手によって、ビルの再開発から病院の再生にまで広がっていった。そこで、利用されたのがレバレッジというテクニックである。

 これは、投資家から集めた資金に、その何倍もの銀行融資を加えることで、より大きな資金を生み出す方法だ。レバレッジとは「てこ」という意味で、小さな力で大きなものを動かす様子に例えた用語である。

 そのからくりをごく単純化して説明すると、次のようになる。5億円の商業用ビルを運営するとしよう。このとき、リーマンは投資家から1億円だけ集め、残り4億は銀行から借りる。すると、商業用不動産だから当然家賃が入るのだが、投資家は1億しか出していないのに、5億円分の家賃が入ることになるわけだ。

 そういうシステムにして、3年後に売却して清算するという証券をつくれば、超高利回りの証券が出来上がる。借入金は低金利の日本から借りれば利息はただ同然。それでいて総収入は5倍入ってくるのだ。

 ところが、これはひどく危険な商品でもある。利益が5倍になるということは、損失も5倍になるからだ。もし、このビルが2割値下がりしたらどうなるか。5億円が4億円になるから、1億円の損失となる。こうなると、1億円投資した投資家は全損になってしまうわけだ。

 ところが、こういう危険な証券に対して、米国の格付け会社は高い格付けを与えていた。わたしに言わせれば、証券会社も格付け会社もグルなのだが、そうやって内外の金融機関を安心させて証券を売りまくったのである。

詐欺に満ちあふれていた米国の金融システム

 格付け会社のインチキぶりもあきれるばかりである。驚くことに、リーマンが破綻する直前まで、リーマン自身が出している無担保の社債に対して、格付け会社はA(シングルA)を与えていた。これは、日本国債と同レベルである。こんなバカなことがあるだろうか。

 すでに市場もリーマンの社債を見放していて、金利が2桁になっていたほどである。そんなジャンク同然の社債に、Aをつける人間がいるとは信じられない。

 さらに、サブプライムローンを組み込んでいたCDOという証券にいたっては、AAA(トリプルA)を与えていたのである。これを詐欺といわずになんと言おう。

 リーマンに限らず、米国の証券会社は、そうしたインチキ商品を山のように作りあげて、右から左に金を稼ぐというやり方をしていたのである。言い換えれば、米国全体の金融システムが詐欺に満ち溢れていたのである。

 今回の金融危機はそうしたインチキが破綻したことが原因なのであって、サブプライムローンが問題なのではないのだ。

 そのインチキぶりは、そうした証券会社の給料からもうかがい知れる。ゴールドマンサックスの社員の平均年収は、7000万〜8000万円だと言われている。聞いたところによると、新入社員でいきなり1000万円近くをもらえ、2年目で早くも3000万円。5年目で年収1億円に達するという。大手のモルガンスタンレー、リーマン、メリルリンチの給与体系も似たりよったりだろう。

 しかし、入社して5年目の社員が1億円分も稼いでいるとは、とうてい思えない。5年目といえば、一般の中小企業なら主任になれればいいほうである。ひがんで言うのではないが、そんな社員が億単位の給料をもらうということ自体が、どこかおかしいではないか。

 ちょっとでもビジネスをやったことのある人なら、まともなことをして平均年収7000万〜8000万円など払えないということくらい、すぐに分かるだろう。テレビ局のような、規制に守られている企業でさえ、そんな給料は払えない。

 ではなぜ、そんなに給料が払えるのか。それは、まともじゃないことをやっているからにほかならないのである。(後略)



(私のコメント)
「株式日記」ではアメリカの投資銀行が編み出してきた金融工学を詐欺的商品でありペテンであると指摘してきた。デリバディブに関しても早くから触れてきましたが、当事者しか分からない仕組みであり、外部から全くチェックできない仕組みは問題だと書いてきた。確かにアメリカの投資ファンドは利回りもよく世界中から投資資金を集めて運用されてきた。それが今崩れたのだ。

アメリカの五大投資銀行は姿を消して、残ったゴールドマンサックスやモルガンスタンレーは銀行に転換した。この二つの投資銀行はアメリカ政府ときわめて密接であり、ポールソン財務長官はゴールドマンサックスのCEOだった。いわばアメリカの国策会社のようなものであり、アメリカの国家戦略を担っていた。それが清算されたのだ。

投資銀行の社員は、アメリカにおけるエリート中のエリートとして、わずか数年で年収1億円を越える給与を貰っていた。しかしこれはまともな職業で出せる金額ではなく、ヤクザな商売でしか考えられない水準だ。女性でも1億円の年収を貰う社員が1万人もいたということです。しかしその栄光は長くは続かなかった。

アメリカの不動産証券化ビジネスは、「ねずみ講」によく似ている。住宅をローンで買って値上がり益をさらにローンで借りて消費する。その仕組みは銀行が住宅ローンを貸し出しているうちは上手く回転する。アメリカではセカンドハウスでも住宅ローンが使えるから節税にもなる。なかには何軒もの住宅を所有する資産家も沢山出来た。

昨日紹介したマイケルムーアの「ウォール街救済法案」においても、そのような富裕者たちに税金をかけろとアジテーションしている。このような仕組みは住宅購入層が広がっているうちは上手く機能するが、人口3億人の大国アメリカでもいずれは限界が来る。そして最終的には住宅が買えないサブプライム層にまで住宅ローンで住宅を買わせたから焦げ付きが多発するようになった。「ねずみ講」が破綻したのだ。

バブルが発生する原因としては余剰マネーの発生があるのですが、銀行は投資先がなくなると住宅ローンに活路を求めるようになった。日本も80年代の住宅バブルで飛躍的な経済拡大を続けた。それと同じ現象が2000年代にアメリカやヨーロッパにも広がり、去年から住宅バブルが弾け始めた。

余剰マネーの発生は1971年ののニクソンショックから始まり、ペーパーマネーとなったドルや米国債がアメリカの最大の輸出商品となり、アメリカ国民は世界から物を買いまくった。日本は紙切れに過ぎないドルや米国債を膨大に貯めこんでいますが、ドルはアメリカでしか使えないからアメリカの還流して投資銀行によって世界に再投資された。

それによってアメリカには膨大な住宅やビルが残りますが、日本には紙切れに過ぎないドルや米国債しか残らない。日本は1兆ドルの外貨準備がありますが国内投資には向けられずアメリカに還流している。なぜアメリカに還流するのかというと1985年のプラザ合意で3%以上の金利差を密約したからだ。だからアメリカが経常赤字である限り日本は超低金利を強いられる結果になる。

だから日本政府は、日本の景気が回復しかけると増税して意図的に不景気にして金利を上げないように調節しているのだ。日本は景気が良くなると金利も上がるとアメリカとの金利差が無くなるから、金利を上げて景気を引き締めるのではなくて増税で消費を減らして不景気にして資金需要が出ないようにしていると思われる。

なぜそこまでしてアメリカにドルが還流するようにしなければならないのかというと、アメリカの国家戦略だからだ。アメリカン還流したドルはゴールドマンサックスなどの投資銀行で運用されて新興国などに投資される。米中との間でも密約が行なわれて中国はアメリカのドルや債権を買って還流させている。

アメリカの投資銀行は還流したドルを中国やインドに再投資して、日本には構造改革を迫って株を少し買う程度だ。だから世界的なバブル景気なのに日本だけは取り残されて不況が長引いている。皮肉な事にそれが幸いして日本の金融機関はサブプライムローンに巻き込まれずに済みましたが、投資銀行を主体にしたアメリカの国家戦略は破綻した。

リーマンブラザースは韓国に再投資を行なってきましたが、リーマン破綻でドルの供給が止まってしまってドル債券の満期償還金などが手配できない危機が迫っている。日本にも数年前から不動産にも投資銀行の投資が入るようになりましたが、今回の金融破綻で新たなるミニバブル崩壊が始まっている。

アメリカの金融破綻は投資銀行の経営戦略の破綻でもあり、新興国に重大な影響がこれから出てくることだろう。だから中国やインドやロシアなどのBRICSの株価の値下がりが一番酷い。田中宇氏などの言う多極化戦略はゴールドマンサックスの戦略でもあり、ゴールドマンサックスなどが親中派なのはそのためだ。

日本がなぜ15年に及ぶ長期不況を強いられて、超低金利政策が行なわれるのか疑問であったのですが、プラザ合意で密約があるらしいことが分かってきた。密約したのは当時の中曽根総理と竹下大蔵大臣であり、プラザ合意という日本にとってきわめて不利な密約を交わすことで中曽根内閣は5年の長期政権を認められた。

おそらく中曽根氏は密約の存在を認めないだろう。沖縄や安保にもいろいろ日米間の密約があるらしいのですが、自民党はこのような密約にがんじがらめにあって律儀にそれを守っている。米中間にも密約があってキッシンジャーと周恩来との密約で日本を米中で封じ込める密約を交わしている。ゴールドマンサックスの中国への投資戦略もそれに基づいているのでしょうが、6ヵ国協議も米中による日本封じ込め戦略なのですが、その中心には常にゴールドマンサックスなどの投資銀行の存在がある。

このような投資銀行には年収1億円以上ものアメリカのエリートがかき集められてきた。しかし今度の金融破綻によってかけ離れた高額な年俸をもらう事は制限されて人材も集まらなくなるだろう。リーマンブラザースはゴールドマンやモルガンなどに追いつくためにかなり無理な経営を行なってきた。だからリーマンは潰されたのですが、リーマン会長のファルドCEOにはその自覚が無いようだ。

森永卓郎氏が言うように投資ファンドの金融商品は詐欺的商品であり、だからこそこのようなビジネスモデルは破綻したのですが、日本人がこのような金融商品に飛びつかなかったのはバブルの教訓が効いていたからだ。一番このような金融商品を買ったのはヨーロッパの金融機関であり、ヨーロッパの投資家は頭の悪い連中が沢山いるようだ。次の標的はUBSだろう。




年収100万ドル以上の全ての夫婦と、年収50万ドル以上の独身納税
者は、5年間10%の追加所得税を支払え。 マイケル・ムーアの救済案


2008年10月6日 月曜日

個人預金、国が全額保証=不安沈静化狙う−ドイツ 10月6日 時事通信

【フランクフルト5日時事】ドイツ政府は5日、個人の預金に対し全額国家保証を付けると発表した。同国では、資金繰り難に陥った金融大手ヒポ・リアル・エステート(HRE)救済が暗礁に乗り上げるなど、銀行システムへの不透明感が高まっている。そうした中、政府は個人預金の全額保護で預金者の不安を取り除く狙いがあるとみられる


ペイオフ解禁は自民党議員への踏み絵だ! 2002年7月29日 株式日記

バブルの原因を探っていくと、その原因はアメリカ金融資本による、日本金融への破壊工作があったことがわかってくる。先日紹介したマイケル・ハドソン著「超帝国主義国家アメリカの内幕」にそのことが書かれている。売国奴である日本の政治家と御用学者や御用評論家はさぞかしあせっていることだろう。ペイオフ解禁はアメリカ金融資本家の指令の一つである。それを小泉首相は断行すると公約している。その目的は日本の企業や資産をアメリカのハゲタカ・ファンドに売り渡すことである。


「マイケル・ムーアのウォール街救済プラン」 10月6日 地球が回ればフィルムも回る

400人のアメリカの最裕福層、そう、「たったの400人」が底辺の1億5千万人を全部合わせた以上の財産を持っています。最裕福400人が全国の資産の半分以上を隠匿しているのです。総資産は正味1兆6千万ドルになります。ブッシュ政権の8年間に彼らの富は「7千億ドル近く」膨らみました。7千億ドルはちょうど救済資金として我々に支払いを要求しているのと同額です。彼らはなぜブッシュの下でこしらえた金で自ら救済しないのでしょうか!

勿論彼らにそんな積もりはありません。少なくとも自発的には。ジョージ・W・ブッシュはクリントン政権から1270億ドルの黒字を引き継ぎました。それは我々国民の金であって自分のものではないので、裕福層が求める通りに後先も考えずに支出しました。その結果国民は今9兆5千億ドルの負債を背負っています。そもそも我々はなぜたとえ少しでもこんな盗人貴族に追い銭を与えねばならないでしょうか?

さて私の救済プランを提唱したいと思います。下記の私の提案は「金持ちは自分のプラチナの踏み台に乗って自分を引っ張り上げるべき」という単純明快な考えから自然に導かれるものです。

金持ちさん、済まないがこれはお前さん達がいやと言うほど我々の頭に叩き込んだものだよ。タダ飯ハ食ワセナイ…。生活保護で生きる人達を憎むようにし向けてくれて有難う。だから我々からお前さん達に施しは出来ないのだよ。

上院は今夜急遽金融救済法案を採決に持ち込もうとしています。これは阻止しなければなりません。我々は月曜日に下院でこれを成し遂げました。今日上院でも出来るのです。

ところで、我々は徒に抗議し続けるだけではなく議会がなすべきことをきっちりと提案しなければ埒が明かないのは明らかです。そこでフィル・グラム(共和党・ジョン・マッケインの参謀)より賢い人達と相談の上、「マイクの救済計画」と題してここに私の提案をします。明快・単刀直入な10項目です。

1.【ウオール街で、承知の上で今回の危機到来に加担した者を犯罪者として起訴するため、特別検察官を任命せよ
何らかの新たな支出をする前に、議会は責任を持って、我が国の経済の略奪に少しでも関わった者を刑事犯として起訴することを決議すべきである。即ち、インサイダー取引き、証券詐欺その他今回の崩壊に何らかの寄与をした者は投獄されるべきである。この事態を出現させた全ての者と、今後も社会を欺く全ての者を精力的に追求するための特別検察官を招聘すべきである。

2.【救済経費は富裕者が自ら負担すべきである
彼らが住む邸宅は7軒から5軒に減るかも知れない。乗る車は13台から9台になるかも知れない。飼い犬のミニテリアの世話係は変える必要もあろう。しかしそもそも、ブッシュ政権下で世帯当たり収入を2,000ドル以上も減らされた勤労者や中流層が、彼らのもう1隻のヨットのために10セントでも払ってやるいわれなどありはしない。もし彼らが必要だと言う7千億ドルが真に必要なものならば、それを簡単にまかなう方法を提示しよう。

  a) 年収100万ドル以上の全ての夫婦と年収50万ドル以上の独身納税者は、5年間10%の追加所得税を支払う。(これはサンダーズ上院議員の案である。彼は[訳注:ケンタッキーフライドチキン創業者の]カーネル・サンダーズのようだ。彼だけが正しいチキンを揚げている。)これでも富裕層はカーター政権の時よりも税負担が少ないのだ。これで3千億ドルが出来る。

  b) 殆どの民主主義国家のように、全ての株取引に0.25%を課税する。これで毎年2千億ドル以上が出来る。

  c) 株主はみな愛国的米国人であるから、四半期の間配当の受領を辞退し、その分を財務省による救済資金の足しにする。

  d) 米国の大企業の25%は現在連邦所得税を全く払っていない。企業からの連邦税収は現在GDPの1.7%であるが、これは1950年代には5%であった。もし企業の所得税を1950年代の水準に戻せば更に5千億ドルが出来る。

以上を組み合わせればこの惨状を十分に終わらせられるはずである。富裕層は豪邸や使用人を持ち続けられるだろうし、我らの合衆国政府(「国が第一!」)は多少の余剰金で道路や橋や学校の建設も出来るだろう。

3.【緊急救済すべきは住居を失う人々だ。8つ目の住宅を建設する連中ではない。】
現在130万軒の住宅が抵当として取り上げられている。これこそが正に問題の核心なのだ。だから資金を銀行に贈与するのではなく、1人当たり10万ドルでこれらの住宅ローンを払いきるのだ。そして住宅の持ち主が時価に基づいてローンを返済するべく銀行と再交渉できるように要求する。この救済措置の対象は持ち主の現住住宅のみとして、家転がしで儲けを企んでいる者や投機家を確実に排除しておく。この10万ドルの返済と引替えに政府はそのローンの債権を共有して幾らかを回収できるようにする。このようにすると住宅ローンの焦げ付きを(貪欲な貸し手を巻き込まずに)その根っこで解消する費用は7千億ドルではなく千五百億ドルですむ。

さて記録は正しておこう。住宅ローンの返済不能に陥った人々は「不良リスク」などではない。彼らは我々の米国民仲間であり、我々の全てが望み、殆どの人が持っているもの、即ち自分たちの家を彼らも望んだに過ぎない。しかしブッシュ時代に何百万人もがそれまでに就いていた良い職を失ったのだ。600万人が困窮し、700万人が健康保険を失った。そして全ての人の年収が2,000ドルも減少したのだ。つまずきの連鎖に見舞われたこれらの人々を見下す者は恥を知れ。我々が皆自分の家に住める時社会はより良く、より強く、より安全で幸せなものとなるのである。

4.【あんた達の銀行や会社が我々からの「救済金」を少しでも受け取れば、我々はあんた達の主人だ
気の毒だがそれが世の決まりなのだ。もし我々が家を買うために銀行から資金を借りれば、全額を利子も付けて返済するまでは銀行がその家を「所有」する。ウオール街についても同じだ。もしもあんた達が良い生活を続けるために何らかの資金を必要とし、また政府があんた達を低リスクで国家のためにも必要な者だと判断したら、ローンは得られるが、我々があんた達を所有することになる。もし債務不履行があれば我々はあんた達を売却する。これはスエーデン政府が行って成功した方法なのだ。

5.【規制は全て回復しなければならない。レーガン革命は死んだ】
今回の悲劇は狐に鶏小屋の鍵を持たせたことが原因である。1999年に、フィル・グラムがウオール街と銀行を支配する全ての規制を撤廃する法案を起草した。法案は成立してクリントンが署名した。その署名の時、マッケインの主任経済顧問であるフィル・グラム上院議員が言った言葉は次のようであった。曰く、

  「1930年代、 …政府が答えであった。動いている市場を政府が支配することで安定と成長がもたらせられると信じられていた。」
  「今日我々はそれを撤回する。我々は政府が答えではないことを学んだからだ。自由と競争こそが答えであることを学んで来た。我々は競争と自由を手にすることで経済成長を促進し、安定を推進する」
  「ここに立っていることを誇りに思う。これが重要な法案だからだ。規制撤廃法案なのだ。私はこれが未来の波であると信じている。その実現に参加できたことをとても誇りに思う」

この法案は撤回されなければならない。ビル・クリントンはグラム法案を撤回して財政機構に一層厳格な規制を復活させる努力を主導することで貢献できるはずだ。これらが達成されたら、航空会社、食品検査、石油業界、職業安全衛生管理局、その他日常生活に影響する全てのことに関する規制の回復も出来る。どのような「緊急救済」を管理する規定も、資金の裏付けと全ての違反者の刑事処罰が伴わなければならない。

6.【失敗が許されないほど巨大なものは存在も許されない
超大型合併の出現を許す一方で独占法やトラスト禁止法をないがしろにする現状によって多くの企業が合併で余りにも巨大になりすぎて、その破綻を考えるだけで一国の経済全体が破綻に至るほどになってきた。1つや2つの企業がこれほどの威力を持つことがあってはならない。いわゆる「経済的真珠湾」は、人々の資産が何千何百の企業に分散していたら起こりえないことである。自動車会社が1ダースもあれば、その1つが倒れても国家の惨事にはならない。もし町に別々の経営による3紙の新聞があれば1社だけが情報を独占することはない(分かってます、自分は何を言っているのだ?!今時誰が新聞など読んでいる?あの合併と買収の嵐で、確かに強力で自由なプレスが一つ出来て嬉しいことだ!)企業が余りに大きく独占的になりすぎて、片目にぱちんこの一撃を受けただけで倒れて死ぬようなことがないように、企業の肥大化を防ぐ立法が必要である。又、どんな機関にも誰も理解できないような資金運用計画を作らせてはならない。2行で説明出来ないならば、どんな資金も受け取ってはならない。

7.【いかなる会社重役も、従業員の平均賃金の40倍を超える報酬を受け取ってはならず、会社のための労働への妥当な給与以外にはいかなる「落下傘」(訳注:墜落する企業から退散する時の巨額の退職金など)も受け取ってはならない
1980年には米国の平均的な最高経営責任者は従業員の45倍を得ていた。2003年には自社従業員の254倍を稼いだ。8年のブッシュ時代が過ぎて、今では従業員の平均給与の400倍を得ている。公的な会社でこのようなことが出来る仕掛けは正気の沙汰ではない。英国では平均的な最高経営責任者は28倍稼いでいる。日本では17倍に過ぎない!最近聞いたところではトヨタの社長は東京で優雅に暮らしていたらしい。こんな少額でなぜそんな暮らしが出来ているのか?真面目な話、これは非道である。我々は頂点の連中が何百万ドルを操って信じがたいほどに膨れあがるのを許して今のような大混乱を創ったのだ。このままにしてはならない。役員は誰もこの混乱から脱出するために受ける援助から利益を得てはならないのは勿論、会社の破綻に責任ある役員は会社が何らかの援助を受ける前に辞職しなければならない。

8.【連邦預金保険公社を強化して、国民の預貯金にとどまらず年金と住宅の保護のモデルとせよ】
昨日オバマが国民の銀行預金に対する連邦預金保険公社による保護の範囲を25万ドルにまで広げるよう提案したのは正しかった。しかしこれと同様の政府系保険で国の年金基金も保護されなければならない。国民が老後のために支払った掛け金がなくなっていないかと心配することがあってはならない。これは、従業員の年金の基金を管理する企業を政府が厳格に監督することを意味する。…或いは企業が基金とその運用を政府に委ねるのも一案だが…。国民の退職基金も保護が必要だが、基金を株式市場という博打に投資させないことを考える時かも知れない。我が国の政府は、何ぴとも年老いて赤貧に投げ込まれることがないことを保障する厳粛な義務を負うべきである。

9.【深呼吸をし、落ち着いて、恐怖に日々を支配させないことが誰にも必要だ】
テレビを消そう!今は「第二の大恐慌」などではない。天は落ちては来ない。評論家や政治家が余りにも矢継ぎ早に、おどろおどろしく嘘をついているので、我々は降りかかる恐怖の影響を免れるのが困難になっている。私でさえ、昨日、ダウ平均株価が過去最大の1日の下落を示したとのニュースを聞いて皆さんに記事を送り、その内容を繰り返した。それはその通りだが、7%の下げは1987年に株価が1日で23%暴落したブラックマンデーにはほど遠いものだ。80年代には3,000の銀行が閉鎖された。しかし米国は破産しなかった。彼らは絶えず上がり下がりの波に遭いながらも結局は何とかなった。そのはずだ。金持ちは自分たちの富を粉々にしたくはないのだから!彼らは事態を沈静化させたり、再び奔流に投げ返したりすることに元々関心が深いのだ。
[事態は狂ってはいるものの]今週何万人もが自動車ローンを組んだ。何千人もが銀行でローンを借りて家を買った。大学に戻った学生達を15年の学生ローンに取り込んで銀行はほくほく顔だ。日々の営みが続いている。銀行預金や手形、定期預金証書の形である限り誰一人金を失わなかった。そして何より驚くべき事は米国民が恐怖キャンペーンに乗らなかったことだ。人々はひるむどころか議会に救済法案を葬らせたのだ。それは真に印象深い出来事だった。民衆が大統領やその一味が繰り出す恐怖に満ちた警告に屈しなかったのはなぜだろうか?そう、「サダムはその爆弾をもっている」などと何度も言えるのは人々に大嘘つきだと見破られるまでのことでしかない。長い8年のあと、国民は疲れ果ててもう我慢の限界なのだ。

10.【民衆の「国民銀行」を作ろう】
どうしても1兆ドルを印刷するとしたら、それは一握りの大金持ちに与えるのではなく我々自身に与えようではないか。フレディーとファニー(2大政府系住宅金融会社)が我々の手に落ちた今こそ、国民の銀行を作ろうではないか。自宅の購入、小規模事業の起業、通学、癌治療、或いは次の大発明のための資金を望む全ての人に低金利の融資を行う銀行である。また、米国最大の保険会社AIGも我々の手に落ちたのだから、次の段階に進んで全ての人に医療保険を提供しよう。全国民にメディケアーだ。これで長期的には大きな節約が出来るだろう。又、平均寿命が世界12位とはならないだろう。もっと長生きをして政府が保障する年金を享受し、やがて、非常な惨状をもたらした企業犯罪者達を許して出獄させ、我々の助力で市民生活に再順応させる日を生きて迎えるだろう。…素敵な家1軒と、国民銀行の援助で発明されたガソリンを使わない自動車1台を持つ市民生活にだ。


(私のコメント)
アメリカの金融機関が相次いで国営化された意味は、私営企業から国民へ経営権が移ったということであり、国民の税金で救済された以上はそれなりのペナルティーが課せられるべきだ。アメリカ政府による市場原理主義の放棄であり、新自由主義経済の破綻だ。

6年前の株式日記にも書いたように私はペイオフにも反対してきましたが、小泉・竹中構造改革でペイオフは強行された。しかしいったん金融恐慌が襲ってきたら、ペイオフはかえって混乱を大きくしてしまう。一つの銀行が潰れるだけならペイオフも機能するのでしょうが、今現在ペイオフを維持するとなると取り付け騒ぎが起きて混乱を大きくしてしまう。だからドイツも全額補償に踏み切った。

ペイオフを実施していると預金者は現金を引き出してタンスにしまってしまう。アメリカの金融安定化法案でも預金者保護拡大が決められました。2002年の日本のペイオフ解禁はアメリカからの圧力で決められたのですが、株価も1万円割れ寸前であり金融業界も一番厳しい時期だった。

そんな状況でペイオフを解禁すれば、取り付け騒ぎが起きて銀行が潰れてハゲタカ外資が買収するという目論見があったのかもしれない。しかし日本国民は冷静であり取り付け騒ぎは起きなかったが、マスコミは次がどこかと連日書きたてていた。当時の株式日記を見ても当時の雰囲気が分かるのですが、住民基本台帳法など訳の分からない法律を小泉内閣は次々と作っていった。

個人情報保護法もそうなのですが、結果的には公務員が犯罪を犯しても個人情報だとして名前が発表されなくなった。裁判員制度も知らないうちに作られているし、後期高齢者医療制度も強行採決されて法律が作られていく。しかし国民にはマスコミが怠惰な為に知らされないのだ。官僚組織とマスコミは記者クラブ制度で一心同体であり、官僚にとってマスコミは国民を誘導する手段にしか思っていない。

これは戦後においてGHQは日本を統治する為に、国家総動員体制の官僚組織をそのまま残したためであり、官僚組織のバックにはアメリカ政府が天皇の代わりに収まる事になった。その証拠として日本全国にはアメリカの軍事基地が存在したままであり、金融制度改革もアメリカ政府の言いなりになってペイオフなども実施されたのだ。


官僚支配の小泉内閣は不況が大好き 2002年7月19日 株式日記

「最近の小泉政権の官僚主導政治の傾向がますます強くなっている。メディア規制法案や有事法制など満足に検討されることなく国会に提出され、各方面から問題点を指摘され、政治家諸氏もそれに気付き継続審議となりそうだ。官僚たちが自分たちの都合の良い法律を勝手に作り、無能な政治家たちを丸め込み、形ばかりの国会審議で法案を通そうとしている。

国民生活に深くかかわるこのような法律が、国民に知られることなく次々と国会を通過していくケースが増えている。野党が野党としての機能を果たしておらず、官僚と与党の連合体は、マスコミを操作して国民の愚民化政策を行っている。朝から晩までバラエティー番組を流し、報道番組は報道規制だらけで、国民には知る権利は保障されていない。今週もテレビ朝日の「スクープ」という番組が、各方面からの圧力で潰された。」



最近になってアメリカの金融がおかしくなってきた事で、「株式日記」で長年私が主張してきた事が正しかった事が証明されて、アメリカも時価会計制度や投資銀行の形態も改正されて、高すぎるCEO達の報酬にも批判が高まってきている。日本もアメリカの真似をして役員報酬などが倍増して、従業員の非正社員化が進んで格差社会が広がった。

マイケル・ムーアは民主党系の過激な映画監督として知られていますが、独自のウォール街救済プランを発表している。今のアメリカ政府はあまりにも金持ち中心の資本主義社会であり、市場原理主義ということで社会主義的な政策は政治に反映されなかった。それを日本にも押し付けてきたわけですが、その為に日本でも自民党は地方を切り捨てて自民党支持が落ちて、政権が交代しようとしている。

ウォール街の混乱で相次いで金融機関が国有化されたことで、社会主義的な政策にアメリカは舵を切ろうとしている。マイケル・ムーアのプランは至極当然のプランであり、高額所得者に対する増税も「株式日記」で主張してきた政策だ。日本でも法人税が減税されたのに個人に対しては減税も無くなり、医療や福祉費は削られて生活は苦しくなっている。

マイケル・ムーアの「国民銀行」にしても、日本では小泉内閣は郵便局を廃止して地方から郵便局が消えている。保険制度もAIGが国営になってアリコなどの外資系保険会社が売却されるようですが、簡易保険も民営化された意味は何だったのだろうか? 小泉内閣は何から何までアメリカの言いなりでありアメリカの代理人であったのだ。だからいたたまれなくなって小泉元首相は政界から引退するのだ。これは「株式日記」の勝利でもある。




FRBのデータをみると、ドル資金追加供給量はすさまじい。垂れ流され
続ける通貨の価値をだれが信じようか。超インフレ、通貨暴落が来る。


2008年10月5日 日曜日

低金利の米国債を買うのはFRBと外国政府がほとんどである。
民間で買うの者はおらず、米国債が暴落すればFRBは倒産する。


いくらドル札刷っても足りない米金融危機  10月5日 田村秀男

米国はこの9月一ヶ月だけで、もう一年分以上のドル札を増刷したことをご存知だろうか。

いくら供給しても「まだ足りない、助けて、振り込んで」という電話が米連邦準備制度理事会(FRB)にはひっきりなしにかかってくる。振り込め詐欺のことではない。

米国ばかりではない。英国、アイルランド、フランス、ドイツ、ルクセンブルグなど欧州からもかかってくる。日本でもその恐れが強い。そこで、米欧日の中央銀行が協調して、ドル資金を流す取り決めもした。

なぜ国際的に市場ではドル資金不足が続くのか。金融商品バブルが崩壊したためで、歴史的には前代未聞である。

それは金融のグローバル化によりドル建ての金融商品が世界に出回っている。それらの金融商品の多くがサブプライム関連の証券化商品で、その値打ちが下がっている。金融機関の資産は大きく目減りする一方、清算してドルの現金に替えなければならないが、手元にドルがない。金融商品を叩き売れば、同種の金融商品を中心に投げ売りが連鎖してしまう。欧州では特にそれがひどい。とりあえずは、資金が金融機関の手元にふんだんにあり、融通し合えるという通常の姿に近づけるしかない。

いくら国際協調してもドル札はFRBでなければ刷れないから、FRBへのドル資金需要は高まるばかりだ。
皮肉なことに

ドル資金は不足しているのだから、ドルが今のところ暴落するはずはない。ドルは見かけ上、まだ強い。FRBは金融機関から米国債を買い上げては刷ったドルを供給するのだから、米国債相場は堅調なのだが、それは台風の目の中にいるようなものだ。サブプライム危機がおきた昨年8月以降ことし6月までのドル資金供給で生み出された余剰ドルは原油・穀物先物市場になだれ込んだ。輸入国は高騰したドル建ての原油、穀物をドルで払わなければならないので、ドル需要が高まり、ドル相場は強含んだ。

垂れ流され続ける通貨の価値をだれが信じようか。

それもまた、歴史的には超インフレ、通貨暴落というあまたの事例がある


FRBのデータをみると、ドル資金追加供給量はすさまじい。10月1日時点でのFRBの融資などによる資金供給残高は1兆5331億2800万ドルで、住宅公社、リーマン危機の始まる前の8月28日時点の9437億2500万ドルに比べて、5894億ドル、64%増。前年同期比で5271億ドル増だから、この一ヶ月余りで一年分をはるかに上回るドル資金を刷っては市場に流したことになる。
では、この資金はきちんと市場で回り、金融不安を和らげているか、というと疑問符が付く。

ここにもう一つのFRBデータがある。9月24日時点で、FRBが市中銀行に貸した資金のうち4分の1強は市場で使われず、FRBでの市中銀行の口座に戻っているのだ。資金は消えたわけではないのだが、ドル資金不足に悩む金融機関に回らない。理由ははっきりしている。

金融機関がすっかり疑心暗鬼になってしまい、いくらFRBからドル資金が提供されても、焦げ付きを恐れておいそれと他の金融機関に融通しないからだ。

結局、根本問題は腐った資産を抱えた金融機関の財務にあるわけだ。そこで、ブッシュ政権は7000億ドルに上る財政資金を使って不良金融資産を買い上げることにしたが、大統領選挙と同時の議会(下院は全員、上院は3分の1)総選挙を控え、「ウォール街の強欲どもを救済するなんて」という有権者の声に押されて議員たちが浮き足立っている。

この救済法案(「金融安定化法案」)が成立しても、さらに難題が待ちかまえている。というのは米政府自体巨額の財政赤字を抱えている。赤字国債を発行して資金を調達するしかないが、一体だれがその国債を引き受けるのか。

ここでもFRBが最終的に買い上げればよいと簡単に言っても、FRBはいい加減、経営不安にある証券会社など金融機関に救済融資している。さらに市場経由とは言え国債を引き受けたら、中央銀行としての信頼が揺らぐのは必至だ。

最後の貸し手を助ける究極の「最後の貸し手」が必要になる。それはだれか。黒字国の日本か、というと、かつてと違い郵貯も民営化が進み、政府の意向でおしそれと米国債投資というわけにいかない。民間の銀行や生保も下落するドルの資産に投資するわけにいかない。


巨額のマネーは、いったい誰が支えているのか  10月5日 田村秀男

最大7000億ドル(約70兆円)の公的資金で金融機関から不良資産を買い取る米国の金融安定化法案が3日、米下院で採決され、賛成多数で可決された。ブッシュ大統領はすぐに署名し、9月29日に米下院で否決され世界の金融市場に大混乱を引き起こした法案はやっと成立した。これで米当局がサブプライム住宅ローン問題に絡む金融危機対策として表明した公的資金・支援は、最大1兆3140億ドル(約140兆円)に達する=表。これはカナダやスペインの国内総生産(GDP)を上回る莫大な金額だ。

これほど巨額のマネーは、いったい誰が支えているのか。米国は恒常的な財政赤字国であり、その赤字は米国債をひたすら買い続ける海外のマネーが穴埋めしてきた。そしていま、米国債の最大保有国は中国だ。考えてみると、米国発世界金融危機の奔流を押し止める防波堤「the last resort(最後の貸し手)」は、中国マネーなのではないか…。こうした世界経済の構造をEX連載「国際政治経済学入門」で産経新聞の田村秀男特別記者・編集委員が説き起こす。
◇ 
「最後の貸し手(the last resort)」という金融用語をご存じだろうか。

「降りこめ詐欺」で孫を装った詐欺犯がお年寄りに「最後に頼るのはおばあちゃんだけ、助けて」とだます手口のことだと答える読者は満点というわけにはいかないが、センスがよい。

最後の貸し手とは、中央銀行のことである。不良資産を大量に抱え込んだ金融機関に対して、中央銀行がお札を刷って資金を供給する。そうしないと、金融機関 が手元資金を融通し合って過不足を調整している金融市場で、金融機関が疑心暗鬼になって余剰資金を出さず、経済の血液であるカネが回らなくなる。そこで、 最後の貸し手がおカネを刷って金融機関に供給し、金融市場の機能が回復するというわけである

今回の昨年8月の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機以来、ニューヨーク・ウォール街発の金融危機では、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)がその役割を果たしている。特に、9月に入って表面化した連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)など米政府系住宅金融2社の経営危機とそれに続く老舗証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)、大手生命保険のAIGの経営不安で、FRBは膨大な量のドル札を刷っては市場に流し込んでいる。

ところが、いくら供給しても「まだ足りない、助けて、振り込んで」という電話がFRBにはひっきりなしにかかってくる。

FRBのデータをみると、ドル資金追加供給量はすさまじい。10月1日時点でのFRBの 融資などによる資金供給残高は1兆5331億2800万ドルで、住宅公社、リーマン危機の始まる前の8月28日時点の9437億2500万ドルに比べて、 5894億ドル、62%増。前年同期比で5271億ドル増だから、この1カ月余りで1年分をはるかに上回るドル資金を刷っては市場に流したことになる。

ここにもう一つのFRBデータがある。9月24日時点で、FRBが市中銀行に貸した資金のうち4分の1強は市場で使われず、FRBでの市中銀行の口座に戻っているのだ。資金は消えたわけではないのだが、ドル資金不足に悩む金融機関に回らない。理由ははっきりしている。

金融機関が焦げ付きを恐れておいそれと他の金融機関に融通しないからだ。

結局、根本問題は腐った資産を抱えた金融機関の財務にあるわけだ。そこで、ブッシュ政権は7000億ドルに上る財政資金を使って不良金融資産を買い上げることにしたが、大統領選挙と同時の議会(下院は全員、上院は3分の1)総選挙を控え、「ウォール街の強欲どもを救済するなんて」という有権者の声に押されて議員たちが浮足立っている。

仮にこの救済法案(「金融安定化法案」)が成立したとしても、さらに難題が待ちかまえている。というのは米政府自体巨額の財政赤字を抱えている。赤字国債を発行して資金を調達するしかないが、一体だれがその国債を引き受けるのか。

ここでもFRBが最終的に買い上げればよいと簡単に言っても、中央銀行としての信頼が揺らぐのは必至だ。

最後の貸し手を助ける究極の「最後の貸し手」が必要になる。それはだれか。黒字国の日本か、というと、かつてと違い郵貯も民営化が進み、政府の意向でおいそれと米国債投資というわけにいかない。民間の銀行や生保も下落するドルの資産に投資するわけにいかない。

結局、まとまった巨額の資金を動かせるのは、半年間で2800億ドルを積み上げ、この6月末で1兆8088億ドルの外貨準備を持つ中国しかない。

金融恐慌研究で知られる故チャールズ・キンドルバーガー教授(1910〜2003年)は「1929年の大恐慌は最後の貸し手がいなかったために起きた」と断じている。中国共産党という異質で巨大な政治機構に米国はもとより世界経済の命運がかかっているかもしれない。(特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)


(私のコメント)
インターバンク市場でドルの貸し手が無くなり中央銀行だけが資金供給している状態が続いている。欧米の金融市場では何時何処でどの銀行が潰れるかわからない状況であり、このような状況は何時まで続くのだろうか? アメリカでは時価会計制度が徹底しているはずだから大手銀行の経営の透明性も確保されているはずだから、問題は無いはずだ。

ところがアメリカでは住宅ローン一つとっても証券化されているからいくらで評価するかが分からない。一つ一つの住宅は評価額を査定できても、証券化されているものは売買が停止しているから査定の仕様が無い。日本の銀行では株式資産を大量に持っていたから株を売れば流動資金は確保できた。それに対してアメリカの銀行はすぐに現金化できる資産が無いからインターバンク市場が停止している。

アメリカ政府は75兆円の金融安定化法案を可決成立させましたが、銀行が持っている買い手の無い証券化ローンを買い取るのでしょうが、いくらで査定するのだろうか? 証券化されたローンには焦げ付いたものがだんだんと増えてきて不良債権はますます劣化してきている。金融を安定化させようと思えば額面に近い金額で買い取れば銀行は助かるが、国民が怒るだろう。

アメリカの金融機関も一生懸命自己資本を増強させているが焼け石に水状態だ。だからアメリカ政府としては時価会計制度から離脱せざるを得ない状況であり、90年代にアメリカが日本に対して様々な金融改革を迫りましたが、アメリカのほうが間違っていたのだ。

「株式日記」ではBIS規制にも時価会計制度にも反対してきましたが、金融はそれぞれの国で異なった文化や歴史があり、それを一律に規制するのは間違っている。それに対してアメリカは自国の会計制度がグローバルスタンダードだとして日本に押し付けてきた。しかしアメリカ自身の会計制度が空洞化して機能が停止してしまっている。

アメリカの金融機関の再編が行なわれていますが、金融機関の資産査定も不良債権の金額も証券化で複雑化して売買事例も無いから査定の仕様が無い。焦げ付いたローンも切り刻んでミンチにして証券に混ぜられているから商品価値がなくなってしまった。まさにアメリカの金融工学によって作られた金融恐慌なのだ。

日本のエコノミストや経済学者からは日本の金融制度は旧体化して遅れており、アメリカの会計制度や金融工学を進んでいるとして日本も見習えと言ってきた。だから日本でも不動産の証券化も進んできましたが、それが日本のサブプライムローンになりつつある。

世界的に金融恐慌が起きているのに、日本の銀行だけが投資余力や流動資金を確保しているのは、金融革命に乗り遅れたという人もいますが、健全性を確保しながら保守的な経営してきたからだ。バブルの教訓が生きていたともいえますが、日本の保守的な金融のやり方こそが正統なのではないだろうか? 金融工学は一種のペテンなのだ。

アメリカ政府は7000億ドルの公的資金を使って金融恐慌を抑えられるのだろうか? 田村秀男氏のブログを見ても指摘しているように、9月だけで1年分のドル資金を供給している。それだけドルの需要が大きいからですが、ドルを供給できるのはFRBしかない。米国債を買ってドルを供給している為にFRBの米国債の保有は増える一方だ。

米国債はFRBの他には外国の政府機関などが買って持っていますが、金利が低い為に民間で売れるようにするには金利を上げる必要がある。アメリカ政府が今一番しなければならない事は米国債の価値を維持する事ですが、FRBが米国債を買っているから価値があるが、FRBも外国政府も買わなくなったらアメリカは破綻する。

しかし格付け会社によれば米国債はAAAの最高のランクであり、日本国債は1Aのアフリカのボツワナ並みだということです。0,5%の最低金利の国の国債がこのように低く評価され、95%も外国政府に買ってもらわなければならない米国債が最高級のランクですからアメリカの格付け会社もいいかげんなもんだ。

現在、米国債を一番買っているのが中国であり、中国は外貨準備を1兆8000億ドルも持っている。だからアメリカが破綻するかしないかは中国が米国債を買ってくれるかどうかにかかっている。中国も輸出で稼ぐしかない国だからアメリカが中国製品を買ってくれないと工場が倒産してしまう。

しかしアメリカも住宅も自動車の売れ行きも大幅にダウンして中国から物を買えなくなってきている。となると中国も米国債の買いを止めるかもしれない。今まではアメリカと中国は共存共栄で来ましたが、最悪の場合はアメリカと中国は共倒れしかねない。

FRBはいま紙幣印刷機をフル回転して刷りまくって供給していますが、数年後にはこの反動が来て超インフレになる可能性がある。そしてドルは暴落するだろう。イラク戦争だけでも戦費で財政赤字は火の車ですが、すでに国債を140兆円も金融危機のために使っている。まさにアメリカは破綻寸前の状態であり、中国に国債を買ってもらえるかが運命の分かれ道になっている。




10月コールローン27億ドル・長期物5億ドル 下半期に入って長短期
外貨供給源が詰まって、計画のとおり資金調達が予測不可能な状況。


2008年10月4日 土曜日

【韓国経済】10月ドル危機説!!現実化されるか?★6[10/02] 2ちゃんねる

[10月コールローン27億ドル・長期物5億ドル満期到来・
「国内金融会社は皆ショートポジション…チキンゲームの様相」]
域外から入るお金が最初からありません。10月は予測不可能な状況です。」

 10月ドル大乱憂慮が大きくなっている。今月には国策銀行が都市銀行に提供した短期外貨資金の中で27億ドル(推定)程度の満期が到来する。 ここに5億ドル規模の外貨債権満期も帰ってくる。

 しかし国際金融市場条件はますます悪化していて長期債券はもちろん、1ヶ月以上の外貨資金供給源を探すのが難しい状況だ。

◇国策銀行短期ドル資金回収の可能性

 国内都市銀行らはこの間、産業・輸出入・企業銀行・農協中央会などの国策銀行を通じて必要な短期ドル資金を運用してきた。

 産業銀行や輸出入銀行などが都市銀行に比べて信用等級が高くて外貨借入に有利なためだ。実際にリーマンブラザーズ危機以後、長短期外貨供給が切れた状況でも産業銀行と輸出入銀行は銀行間ローン市場とマネーマーケットを通じて6億ドル近い外貨を借入れる事もした。

 ところが国内マネーマーケットで絶対的比重を占めている産業銀行と輸出入銀行もやはりグローバル信用危機余波から自由になれない。 産業銀行は先月10億ドル規模の外貨債権を発行しようとしたが市場条件悪化で発行を無期限延期し、輸出入銀行もやはり10億ドル規模の債権発行を保留した。

 産業銀行と輸出入銀行は長期外貨債権発行を通じて今後満期到来する長短期借入れ金を償還する予定だったが、資金償還日程に支障が不可避になった。

 今月中に満期到来する産業銀行と輸出入銀行の外貨債権規模は各々2億ドル・2億5000万ドル水準だ。産業銀行と輸出入銀行はこれら債権に対しては償還に必要な資金を確保しておいた状態だ。

 問題は短期借入れ金だ。産業・輸出入・企業銀行と農協中央会など4大国策銀行が今月中に返さなければならない短期外貨資金は27億ドル (推定値、オーバーナイト除外)に達する。産業・輸出入・企業銀行などはこの間ユーロ企業手形(CP)発行を通じて短期借入れ金を償還したりロールオーバー(満期延長)をしてきた。

 しかし最近になってユーロCP発行が切れ、リーマンブラザーズ危機によって期間物も痕跡をなくした。 既存取引関係を基礎にした銀行間ローン(Bilateral Loan)や(club deal)形態の資金調達もリーマン危機以後では難しくなった。 全世界の金融会社らが現金確保に非常事態になったためだ。

 だから国策銀行らでは都市銀行に貸した短期外貨資金を回収し、満期到来資金を償還しなければならない境遇に追い出されている。

 ある国策銀行関係者は「長期物の調達が詰まり、満期到来する借入れ金の償還日程に支障が生じた」として「国内金融会社が皆ショートポジション(現金保有して運用しない状況)なのでチキンゲーム(金融会社らが皆お金を貸さないで皆お金が不足するようになる状況。

 どちらか一方が譲歩しない場合は両者が皆破局に突き進むことになる極端なゲームの理論)のような様相」と最近の雰囲気を伝えた。

◇外貨債権満期到来ぞろぞろ

短期外貨流動性の事情悪化は当然で、既に発行した長期外貨債権満期が年末までずっと帰ってくるという点も市場不安要因だ。直ちに今月だけで7億ドル以上のドル表示債権満期が到来して翌月には9億ドルを越える。今年の年末までの全体外貨債権満期到来規模は20億ドルに肉迫する水準だ。

 だが下半期に入って長短期外貨供給源が詰まって、計画のとおり資金調達が可能なのか予測不可能な状況だ。都市銀行資金部関係者は「域外から入るお金が最初からない」としながら「一週間で運用した資金も今は超短期でしていて10月は全く予測が不可能な状況」と話した。

 他の銀行関係者も「今月も新規外貨調達が出来ないならばマネーマーケットにばら撒かれたお金で償還を受けて、借入れ金を償還する以外にない」としながら「短期借入れ金の満期が年末まで毎月到来する」と伝えた。
イーデイリー[韓国語]



韓国経済終了のお知らせ 5月19日 良い酔い日記

一昨年あたりからヤバくなってきた韓国の貿易収支ですが、とうとう昨年12月には単月で赤字(57ヶ月ぶり)となり、そのまま急速潜行に入ってるようですね。2008年の第1四半期で対日貿易赤字が83億700万ドルにもなり、4/20の速報ではとうとう100億ドル突破。GDPの貿易依存度が70%を超える韓国にとってこれは致命的と言えます。

実はこれって80年代末から小室直樹氏が予言していたことで、2〜3年前からは一般の韓国ヲチBlog等でも良く取り上げられていたので、このへんチェックしていた人にとっては「そんなの当たり前じゃん」的な話ではあるんですけどね。

要するに、特定品目の生産に資本を集中投下し薄利多売で市場を席巻するので見かけ上は破竹の勢いでシェアを拡大するものの、部品などの中間生産財を生産する基盤が弱いためにこれらを日本に依存せざるを得ず、その付加価値分が貿易赤字として日本に垂れ流されるという構図なんですよね(小室氏の言うところの「鵜飼い経済」)。日本にとってもこれは旨みのある話で、表面上は対米貿易黒字が減り韓国を迂回して日本に金が入ってくるので「ジャパンバッシング」を避けつつ実利はしっかり稼げるといういい循環だったわけです。上のグラフを見ても、韓国が稼いだ金の2/3は日本に流れ込んでいるわけで、実にオイシイ「ミツグ君」(←死語)と言えます。

思い返せば一昨年辺りに韓国経済が静かに崩壊を始めた頃、「強い韓国企業」「このままでは日本が負ける」と経済誌を中心に喧伝されてたんですよねぇ。日本の財界もしたたかと言うか、イジワルというか...まぁ、危機感を煽ることで体質改善を促してたんでしょうけど...私の周りでも真に受けてる人結構いたなぁ。「これからは韓国の時代だよね」とか。

そんなこんなで韓国を調子に乗せておいて稼ぎはガッツリ頂いてきたわけですが、このビジネスモデルは当の韓国が発展途上国に追いつかれてしまったら利用価値がなくなるという欠点があり、現に中国が韓国のすぐ後ろまで迫っています。こうなると高付加価値な市場は日本や欧米に押さえられ、低価格市場は新興国にさらわれていくので、今後中国などの工業化レベルが上がるに従い韓国の稼げる市場は縮小する一方なんですよね。つまり、世界経済にとって韓国はジリジリと「要らない国」になりつつあるワケです。

韓国もようやく自分たちの立場のヤバさに気が付いたようで(遅いっつの)、李明博大統領が訪日した際には韓国内に日本企業専用の部品素材工業団地を建設するプランなどをアピールした他、韓国投資の促進や韓国製品の積極購入と技術協力を要請した...そうなんですが、果たしてどれほどの企業がこの話に乗るでしょうかねぇ。韓国の労使関係がほとんど無法状態に近いことくらい日本の経営者はもう知ってますよ。アリアンツのように115日もスト続けたりしたら外資も逃げ出しますって。

そもそもこういった政治的な交渉で日本から何かを引き出そうとしてもそれほど実りはないんですけどね。関税にしても日本より韓国の方がずっと高いので「関税を下げて欲しいニダ!」なんて要求する余地すらないですから。経済通を自認する李大統領ならそのくらいわかってるはずですけど...とりあえず平身低頭「買って買って〜。お願い」と泣いて頼むくらいしか手はないんじゃないでしょうか。

...とはいえ、そもそもこの「鵜飼い貿易」の根本的な性質として

日本にとって韓国の代わりになる国はあるが、
韓国にとって日本の代わりになる国はない

という致命的な問題からは逃れようがないんですけどね。まぁ、せいぜい頑張ってくださいな。隣国として応援していますよ(棒読み)。


(私のコメント)
アメリカの金融機関が信用不安に陥っていて、コール市場にドルを供給してくれるところがなくなり、各国の中央銀行がドルを供給して緊急事態を乗り切っている。しかし長期にできる事ではなく、アメリカ政府がアメリカの金融機関の信用不安を収めなければならない。中央銀行が資金供給できるのは短期物だけで長期に借りようと思うととんでもない金利になってしまう。

アメリカの下院で金融安定化法案が可決しましたが、無いよりもましといった程度で、信用不安を解消できるものではない。日本みたいに一度地獄を見なければ根本的な解決策は打ち出せないだろう。

新興国も、アメリカの金融機関がドル回収に回っているのでドル調達に苦労しているようだ。アメリカがドルのブラックホール化して信用収縮が起きていて、中央銀行がいくらドルを供給しても、その穴は埋め切れない。アメリカ以外でドル外貨を持っているのが日本と中国なのですが、ドルがアメリカに還流するよりも出て行くドルが多くなっている。

つまりドルがアメリカ国内でも新興国でも消えてなくなっているのですが、それが信用不安の本質だ。今までならゴールドマンサックスやモルガンスタンレーが世界から投資資金をかき集めて新興国に投資をしていましたが、今はそれが逆流している。そして、リーマンブラザースが破綻しましたが、韓国に投資資金を還流させていたのがリーマンブラザースなのですがそれが潰れてしまった。

一時韓国銀行がリーマンを救済するといった話がありましたが、それだけ韓国にとってリーマンは重要な役割をしていた。しかし韓国銀行は裏切って救済しなかった。その余波が10月に現れているのですが、韓国にドルを調達してきたリーマンは今は無い。韓国の国内の金融機関がドルを調達できるかが問われていますが、それが韓国の10月危機の元になっている。

韓国は何か困った事があると日本に泣き付いて来ますが、助けてあげても恩を仇で返すのが韓国人の国民性であり、それがますます韓国が窮状に陥る原因となっている。それは日本だけではなくアメリカやEUに対してもそうだから、韓国はますます孤立していってしまう。2ちゃんねるに分かりやすく解説してくれる投稿がある。


【5分で分かる】’97通貨危機の真実】  2ちゃんねる

タイ・インドネシアで通貨危機が発生、韓国に飛び火

<#`∀´>「Wonが暴落(暴騰)nida、イルボン、ウリを支援するnida!」
( ´∀`)「IMFを通して支援するよ。韓国だけ特別扱いできないよ。それに タイと違って、
      お前らが追い返したから、在韓日系企業、ほとんど居ないだろ!」


<#`∀´>「イルボン、日系金融機関が資金を回収してるnida! 止めさせろnida!」
( ´∀`)「あれは香港現地法人がカバーしている金融機関だよ。日本は口出しできないよ」


<#`∀´>「仕方ないnida、IMFに助けてもらうnida」
( ´∀`)「もっと早く頼めよ・・・」


緊急金融支援(超大型 w)
IMF           210億ドル
世界銀行        100億ドル
アジア開銀        40億ドル
日  ( ´∀`)「はい」 100億ドル
米  ( ´⊃`)「ほらよ」 50億ドル
その他           80億ドル

-------------------------------------------------------
合計 580億ドル


◆< `∀´>「ウェーハハハ これだけ金があるんだから Wonの暴落(暴騰)も止まるnida!」
( ´∀`)「・・・まあ 頑張れよ」

<#`∀´>「イルボン!おかしいニダ!WONの下落(暴騰)が止まらない、破産するニダ!」
( ´∀`)「?そんなばかな・・ あーっ!銀行が借金抱えてるじゃないか、返済期日は・・・月末かよ!」

<;`∀´;>「知らなかったnida、イルボン、何とかしてくれnida」
( ´∀`)「借金の相手は・・・日本とアメリカ、ヨーロッパの民間銀行か。 交渉してみるか」

( ´∀`)「なんとか待ってやってくださいよ、ちゃんと返させますから」
( ´日`)「えー、こっちも不良債権たくさんあるのに・・・キツイな」

( ´∀`)「日本は借金の返済を待つことにしました。 なんとか待ってやってくださいよ」
( ´米`)「あいつが逃げたら日本が払えよ」
( ´欧`)「日本が待つなら・・・・」

( ´∀`)「ふーヤレヤレ、借金、待ってもらえるように話しが着いたぞ」
< `∀´>「Wonの暴落(暴騰)も止まったニダ、感謝するニダ、イルボンマンセー!」

数年後・・・日本企業の市場を狙い撃ちした韓国は絶好調!
200○年
< `∀´>「イルボンはウリの支援要請を断ったニダ!」
< `∀´>「日本の金融機関が無理な回収をしたから危機になったニダ!」
< `∀´>「通貨危機は民族の団結で乗り切ったIMFは要らなかったニダ!」
< `∀´>「イルボンの支援なんて無かったニダ! それより、独島はウリの領土ニダ!」



(私のコメント)
「株式日記」では韓国や中国は日本にとっての鵜飼いの鵜だと書いてきましたが、日本は貿易摩擦を回避する為に韓国や中国やアジア諸国に技術のおすそ分けをして生産拠点を分散してきた。それがアジア全体の発展に繋がっているのですが、韓国人や中国人は自力で発展が出来たと思い込んでいる。

特に韓国人や中国人はプライドが高いからそのことを認めたがらない。逆に恩を恨みに転化して反日運動をして鬱憤を晴らしてくる。その点では中国人と韓国人はよく似ている。日本のマスコミの記者たちも中国や韓国の味方だから、日本が韓国や中国の発展のために尽くしても、この事は書かない。しかし2ちゃんねるを見れば分かりやすく解説してくれている。

韓国は隣国なのだから、韓国が破産したら日本にも大きな影響があるのですが、日本のマスコミは韓国経済のことは詳しく報道しないのはなぜなのだろうか? 日本大使館前で行なわれる反日抗議デモは詳しく報道するので、韓国は年中反日デモをしているような印象を持ちますが、朝日新聞は社内に韓国の新聞社の支局があるように韓国と一体だ。

しかし長期的に見れば韓国にとっても反日意識はマイナスになっている。結局は韓国が危機的状態になっても誰も助けてくれなくなり、中国に併合されていくのだろうか? 韓国も北朝鮮のようになって行くのが避けられないようだ。




日本政府は100兆円の外貨準備金を財源として使う事ができる。
日本政府は財源が無いというが、毎年10兆円使っても10年は持つ。


2008年10月3日 金曜日 

緊急特別テーマ:ついに、血の月曜日 9月17日 吉田繁治

●米国金融は、08年9月現在、総崩れです。日本の金融危機(1997年)より、はるかにひどい。

米国は日本と異なり債務国です。海外から2000兆円のマネーを、借りています。米国の対外総債務は、$20兆です。

この分の証券・国債・株(まとめてドル証券)が、海外の手持ちになっています。このうち日本がもつドル証券は、世界最大で、$6兆(600兆円)です。

加えて、後で述べる、4500兆円のCDS(債務保証保険)がからんでいます。あたかも、米(コメ)のように、米証券の価値が下がる「事故米」を売っていた。

米政府やFRBは、これが言いにくい。本当のことを言えば、世界の金融に、今日、(事故米のように)パニックが起こる。いや、実態では、政府もメディアも「本当のところが分かっていない」。

少なくとも、わが国財務省や自民の、世界の金融危機への認識への感度は弱い。だから、ドルを買う。そして100兆円の外貨準備(ほとんどはドル債)を保有したまま放置する。

08年10月、11月にかけ、米国が金融パニックになるかどうか? 可能性は、(直感で言って)40%でしょう。

40%なのは、世界がのんびりしていて認識が遅れるためです。しかし、債務(借金)は、一時は転がし飛ばせても、時間がくれば、必ず決済期が来ます。特に巨額に借りている、金融機関の社債の一度に来る満期です。社債は、一度に$数百憶の、満期が来るから怖い。

金融機関も貨幣も証券も、不動産価格も、信用されるという無形の信用の連鎖で、成り立ちます。財務内容と自己資本への、認識が変わると、金融はもろく崩壊します。

■2.CDS(債務保証保険)が問題になってきたことが深刻さの根底にある

米国金融は、サブプライムローン問題の露呈(07年8月)以降の1年で、
(1)総計1200兆円の住宅ローンのみならず、
(2)その4倍と契約額が大きいCDS(クレジット・デフォルト・ス ワップ:債務保証保険)の市場崩壊(保険料のスプレッド幅の急騰) により、崩御したと言っていい。

CDSを使った債務の保証額は、
・2005年以後急増し、
・2007年央での残高は$45兆(4500兆円)です。

金額のイメージ化に困る額です。以下のような、規模比較しかない。

CDS(債務保証保険)が発達した米国金融の、1世帯当たり換算では、4500万円の、信用保証額に相当です。無理な額であることがわかります。(注)データはInternational Swap & Derivatives Association(ISDA) 

CDSの残高($45兆)は、
・米株式市場($2.2兆:2200兆円)の2倍、
・米国債市場($5兆:500兆円)の9倍、
・米住宅証券市場($7.1兆:710兆円)の6倍で、
・世界のGDP($50)に匹敵します。

米政府(ポールソン財務長官とバーナンキFRB議長)は、65兆円の負債のリーマンを救済しなかった。

代わりに、世界の中央銀行(日米欧)はわずか1日で、36兆円の短期資金を、証券の下落と信用リスクの急騰のため決済資金が不足している金融機関に、国際協調で貸し付けています。

中国も、インフレ対策のため上げていた預金準備率を下げ、市場へ資金の供給を緩めました。アジアの他の諸国も同じ、即日対策をとった。

(注)これらは、また、07年8月以後のように、各国で過剰流動性になって、何かへの投機に向かいます。

【米政府に余裕資金はない】
今回、リーマン・ブラザーズに公的資金を出さなかった理由は、
(1)ベアスターン、フレディ・マック、ファニーメイに続き、リーマ ンにも公的資金を出せば、
(2)米政府・米FRBの信用下落も認識され、
(3)世界にばらまいた$20兆(2000兆円)の米国証券・株・国債が、投げ売られて、
(4)止めようのない米ドルの崩落(=ドル売り)が懸念されたからです。

出さなかったのではなく、出せなかった。AIGに公的資金を出すというのは、後で述べるCDS(債務保証保険)が巨額なためです。

全部を、公的資金に頼るのではないという米政府・FRBのメッセージでもある。しかし裏では、日欧の政府に、ドル買いのサインを出す。これが各国中央銀行の、協調的な、米国への資金供給です。

【個人資産:ペイオフは発動しない】
最終的に、公的負担になるのが「個人預託金」の救済です。

個人の預け金を救済しないと、損を恐れる解約が、パニック的に殺到します。これを、どうするのか? 

政府・中央銀行のマネー供出($増刷)しかない。となると、米ドルの崩壊は、必然です。

■4.$6兆の証券をもつ日本にとって、残された時期が切迫した

有料版の前号で述べたように、アラブ、中国、ロシアが米ドル建て証券を、売りに出すことが認識される前に、日本(政府+金融機関+個人)が保有するドル建て証券$6兆(600兆円)のうち、対外純資産である250兆円分を、売り抜けていないと、いずれの巨額損が日本にも来ます。これは、日本経済にとって不幸です。

米ドルが80円になれば75兆円、60円になれば120兆円以上の純損失が生じます。そして1997年に続く再びの「金融崩壊」が襲います。

日本政府は、まさかの時期、なぜ「のんびりしている」のか? 自民総裁選のマスコミ茶番は、画像を見れば、痛々しい。

5人の候補の、ノー天気な言動に、動機の品性の低さがある。金融への知識の、低さが原因でしょう。金融は市場も巨大で、国を超え貸し借りし、金融工学も絡むので、全体構造がわかりにくい。

ファニーメイとフレディ・マックへの公的資金投入は、米国の住宅証券を買っているアラブと中国が、米国に強く要請した結果のものです。日本は米国にどこまでも従順ですが、他国は、そうではない。

【ロシア:中国】
ロシアでは、米ドル下落による損失と、海外筋の売りによるロシア株下落に対し、強い政府批判が起こっています。

ロシア政府は、米国を脅し、米ドル証券を売るでしょう。中国も、ドル売りを武器にするのは同じです。

日本株は60%〜70%がガイジン売買(主は米国系ファンド)のシェアです。そのため、9月15日の、血の月曜日の下落率が最も激しいかった(1日で―5%)。

世界は、週替わりで動いています。理由は、借りた人や金融機関が、返せないからです。

【08年の8月、9月】
8月、9月は、すでに書いたように「金融で大きな何かが起こる」と思っていたのですが、第1幕は「米政府が公的資金を出す余裕がない。世界の、中央銀行の協調のつけ回しに頼る。」という決定でした。

要は、米国の負債と損の、奉加帳を回すという意味。

■5.重要:米国債は海外が94%を買っている

【重要な事実】
米国債は2004年以後、1年で約$4000億(40兆円)の新規発行分が、国内では買われていません。国内で売れない理由は、金利が低いからです。

実に、94%($3760億)を、海外の中央銀行、金融機関、機関投資家が買う。この点が、国債を国内消化する日本とは異なります。日本のほうが、本当はずっと強い。

1年50兆円の財政赤字の、米政府の資金とは、国債発行のことですが、これは海外(主は、日、欧、アラブ、アジア、ロシア)が、買って資金供給しています。

新発国債の94%を、外国政府や海外の金融機関に買ってもらわねばならない米国が、米ドルの価値を、$1=105円レベル、$1=0.7ユーロ付近で維持しているのは、「実におかしなこと」です。

こうした変なことは、どんなに工夫をしても持続性がない。半年もてば、最長でしょう。

90年代のように日欧だけが買えば、十分というのではない。貿易黒字の新興巨大国である中国、ロシア、アラブが、継続して米国債を買わねばならない。

原油1バーレルが$100でも、1年に150兆円の輸出マネーを集める産油国が、ドル建て証券を買うかどうか、ここが鍵です。買い手が多数必要なので、ドル価値は不安定になる。

不安定さの中で、他の、社債を含む証券合計で、1年100兆円規模のドル買い超過にいざなうには、どういう手段があるか。ここが、米国金融の根幹の戦略になります。事態は、ここでも煮詰まってきました。

新しく発行する、ドルの価値を上げる方法があるか? 価値を上げねば、その国の通貨や証券は、誰も買わない。損をするからです。

【重要1】1990年代は、米国の株価上昇が、ドル価値の裏付けでした。米国株を買えば(=ドル買いすれば)、利益があった。

【重要2】株価下落の後の2000年代は、1200兆円のローンの安易化(大盤振るまい)で、高騰させた住宅価格でした。

住宅証券は、6%と高い利回りで、デフォルト(支払不能)確率がゼロの、AAAの格付とされていた。

対米貿易黒字の余剰資金で、各国が、ドル証券を競って買っていた。(注)本稿では、国債、社債、住宅証券、株をまとめて「証券(security)」と言っています。

赤字通貨のドルの当然の下落は、1年100兆円の海外からの資金還流で、防止されていたのです。

米ドル証券が世界に売れたのは、
・90年代は、株価高騰(現在時価2000兆円)があり、
・2000年代は、住宅価格の高騰(現在時価3000兆円)があったからで
す。


しかし住宅は、2007年から、数年での、30%〜50%の下落期に入った。

2008年以降は、$価値を上げるために、戦争以外では、他に何があるか? エネルギーと資源のメッキは、はがれています。

(注)戦争も、政府が軍需産業と軍人の臨時雇用とその後の医療・生活保障に資金を出すため、ドル崩落の要素になります。かつてのような領土や富の略奪はできない。

戦争は経済的ではない。イラク戦費で、ベトナム戦争の60%(10年で300兆円相当:スティグリッツの試算)を使い、そのためドルが弱体化したことを見ても明らかです。


外準規模は大きすぎ、GDP比10%まで削減を=大塚・民主金融チーム座長 10月2日 ロイター

[東京 2日 ロイター] 民主党の大塚耕平・金融対策チーム座長は2日、財務省の視察後に記者会見し、外貨準備の規模が大きすぎるとした上で、現状で国内総生産(GDP)比で約20%に達する外貨準備の規模を、約10年間で10%程度まで半減を目指すべきとの考えを示した。

 大塚座長ら金融対策チームは同日、外国為替資金特別会計の実態と運用の実情の把握するため財務省為替市場課を視察した。いわゆる「埋蔵金」を財源として活用することを視野に、1)外貨準備の規模の圧縮、2)外貨準備の運用の透明性――について財務省から意見を聴取した。視察には、菅直人代表代行も同行した。

 財務省視察後に会見した大塚座長は、米欧に比べて日本の外貨準備高の対GDP比が高すぎると強調し「20%の比率を10%に半減することをターゲットに10年の計画は十分に立てられる」と述べた。ただ、大塚座長は、ドル売り・円買いを「いますぐ大々的にやることは必ずしも適切ではない」とも述べた。

 財務省によると、2007年末現在、日本の外貨準備高は9541億ドルで対GDP比は21.8%となっている。同時点の米国は740億ドルで同0.5%、英国が495億ドルで同1.8%。欧州中央銀行とユーロを導入している各国の中央銀行で構成するユーロ圏でも2349億ドルで同1.9%。

 ただ、財務省の杉本和行次官は同日の定例会見で、外貨準備について「適正規模についての国際的な意見の一致は見られていない」とし、「外貨準備を減らすと、外貨準備を売却することになる。為替市場に不測の影響を与えかねない。慎重に考える必要がある」と否定的な見解を示した。

 <外準の情報公開を>

 民主党は、外為特会による米政府系住宅金融機関(GSE)債の保有状況が非公開になっていることを問題視している。大塚座長は、外貨準備の規模圧縮を計画的に進めるためにも「外為特会の情報開示が重要だ」と強調した。

 また、金融対策チームの大久保勉事務局長は記者会見で、外為特会について「約100兆円の資金をわずか18人で運用している。大手金融機関のディーリングルームに比べて(財務省の)設備は貧弱だ」として、リスク管理体制の問題を指摘した。さらに、運用の手法について「米国債だけでなく、他にどんな運用ができるかがまったく議論されていない。これを明らかにして、専門家の知恵を入れながら、より正しいリスクコントロールが必要だ」と述べた。

 <埋蔵金として活用可能

 さらに、2006年度決算では、外為特会の利益部分となる剰余金は3兆5322億円。このうち一般会計に1兆6290億円を繰り入れている。大塚座長は、外為特会の「埋蔵金」の認識について、剰余金の約3.5兆円を指摘し、「フローの果実として財源になり得る」との認識を示した。さらに、約100兆円の外貨準備の残高部分についても規模が大きすぎるとして「ストックをスライスして減らす中で埋蔵金として使える」と述べた。

 菅代表代行は2日の記者会見で、外為特会の剰余金から一般会計への繰り入れを除いた積立金について「19兆円余りあると財務省も認めている。最終的に国会あるいは政府で判断すべきものということで、この活用は可能だということを確かめた」として、財源としての活用に前向きな考えを示した。



(私のコメント)
最近は霞ヶ関埋蔵金の事が話題になっていますが、日本政府は外貨準備金として100兆円あまりを保有している。しかしマスコミでも外貨準備金100兆円を埋蔵金として報道はしていない。100兆円といえば国家予算よりも大きな金額であり、10兆円づつでも使っていけば10年間使える金額だ。

しかし現実には、逆にドルの買い支えで中国と同じく外貨準備高は増える一方だ。GDPの20%も外貨準備として持っている必要があるのかといえばない。韓国みたいにウォンが下落して買い支えるといった事も考えにくい。円が安くなれば輸出が伸びて円の手取りが多くなるのだから、これほどの景気対策はない。

しかしこのような政策が行なわれることは自民党政府には無い。ロイターのニュースで民主党が外貨準備金を埋蔵金として使う事を提案しているが、ドル売りになるのでアメリカ政府としては認められない政策だ。しかし日本政府も赤字財政で大変なのだから使える金は使うべきだ。

吉田繁治氏が指摘しているように、アメリカは経常赤字の国であり、新発米国債のうち94%を外国に買ってもらっている状態だ。買う人がいたのは株式市場の堅調さや住宅市場の値上がりがあったためですが、住宅市場が値下がりし始めた事で、アメリカは金融危機が来てしまった。株も値下がりするような事があればマネーは一斉にアメリカから逃げ出すだろう。

日本の財務省は財源が無い事を理由に医療や福祉政策の支出をカットしてきましたが、それが自民党の支持低下に繋がっている。財務省は政権交代を望んでいるから医療や福祉の支出をカットしたのではないのでしょうが、100兆円もの外貨準備金が果たして必要なのだろうか?

現実には、アメリカ政府から強制的にドルを買わされてそれが貯まりに貯まって来たのだ。90年代に橋本総理が「米国債を売りたい」と言った事がありましたが、当時は日本しかドルを買い支える国が無かった。しかし現在では中国が世界一の外貨保有国であり中国にドルを買い支えてもらえば、日本は外貨準備高を使っても問題ないはずだ。

吉田繁治氏の記事によれば、日本は600兆円のドル証券残高があるということですが、ドルが紙切れになる前に半分ぐらい売り払ってユーロなどに換えて置くべきだ。90年代はドルしかなかったからドルで運用するしかなかったのですが、今はユーロがあるからユーロにも危険分散しておくべきなのだ。

今日のニュースで、民主党が外貨準備高を半分ぐらいにして残りを財政に使うというアイデアは、財政赤字に悩む政府としても良い政策なのですが、日本政府は消費税を増税して税収を増やそうとしている。間接的にはアメリカのために日本国民の税金を使ってドルを買い支えて、アメリカの財政に使われているのだから、日本国民はアメリカ政府に税金を納めているようなものだ。




CDSは、ならず者国家の核兵器のように世界中に拡散し、今は注意
深く秘匿されている。多くの金融機関を吹き飛ばすのも時間の問題だ。


2008年10月2日 木曜日

「CDS」−−ウォール街を破滅させた怪物 10月1日 ニューズウィーク日本版

金融危機の元凶はJPモルガンが生み出したモンスター、クレジット・デフォルト・スワップの無節操な濫用だ
マシュー・フィリップス(本誌記者)

 それは、米金融業界の大物たちの週末の儀式だった。太陽のあふれるリゾートで日ごろのストレスを吹き飛ばし、世界の支配者としての成功を盛大に祝う。ヨットパーティーにビキニ姿のモデルたち、1本1000ドルのシャンパンなどをイメージすればいい。

 なかでも、94年にJPモルガン(当時)のバンカーたちがフロリダのボカラトン・リゾート&クラブで過ごした週末は、ウォール街の伝説になっている。騒々しいパーティーもあったが、それだけではない。彼らはピンク色の壁のスペイン風リゾートで週末の大半を会議室に引きこもり、銀行業の歴史と同じだけ古い問題の解決に取り組んだ。誰かにお金を貸したとき、それが返ってこないリスクをいかに軽減するか、というものだ。

 当時、JPモルガンの資産は企業向けや外国政府向けの数百億ドルの貸し出しで膨張していた。問題は、連邦法の定めで、それらの融資の貸し倒れリスクに備える準備金として、巨額の自己資本を積まなければならないことだ。利益を生まない金である。

 バンカーたちが思いついたのは、ある種の保険商品だ。貸し倒れた場合の元利金の支払いを第三者に保証してもらい、代わりに銀行は保険料を払う。そうすれば、JPモルガンはリスクをバランスシートから切り離し、準備金を取り崩して商売に回すことができる。

 この仕組みが「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」で、デリバティブ(金融派生商品)の一種だ。CDSのアイデア自体はその2、3年前からあったが、大きな取引をしたのはJPモルガンが最初だった。同社は90年代半ばに「スワップデスク」を設置、CDSの市場を作るためにマサチューセッツ工科大学(MIT)やケンブリッジ大学から若い数学者や科学者を雇い入れた。

 数年後には、安定的な収益を確保しながらリスクを回避する手段として、CDSは最もホットな金融商品になった。「(原子爆弾開発のための)マンハッタン計画にかかわった人たちの話も聞いたことがあるが」と、当時JPモルガンの専務取締役をしていたマーク・ブリッケルは言う。「あのときボカラトンに集まったわれわれにも、何か大変なものの創造に立ち会っているという実感があった」

 だが、40年代当時のロバート・オッペンハイマーや部下の核物理学者たちがそうだったように、ブリッケルと同僚たちも、自分たちが開発しているのがモンスターだとは気づかなかった。今日、経済がよろめきウォール街が廃墟と化したのは、彼らが14年前に解き放った怪物に大きな責任がある。

■金融業界が作った「大量破壊兵器」

 アメリカ最大の保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は、投資銀行や保険会社などに対して保証していた140億ドルにのぼるCDSの支払いに行き詰まり、納税者のお金で救済された。この1年間の金融システム危機の原因の多くは、元をたどればCDSに行き着く。その市場は62兆ドルに達していた。ニューヨーク証券取引所に上場する全株式の時価総額の4倍近い額だ。

 著名投資家のウォーレン・バフェットがCDSを「金融版の大量破壊兵器」と呼んだのには理由がある。CDSは企業対企業の相対取引で契約されるため、政府の規制は及ばないし、取引報告を集約する場所もないので本当の市場価値を知ることができない。

 その結果、数十億ドルもの不透明な「暗黒物質」が金融市場の頭上に垂れ込めることになった。CDSはならず者国家の核兵器のように世界中に拡散し、今は注意深く秘匿されている。多くの金融機関のバランスシートを吹き飛ばすのも時間の問題だ。

 CDSのいちばん初期の取引の一つは、97年12月にJPモルガンが行った。同社はフォードやウォルマートなど大企業向けに実行した300件、計97億ドルにのぼる融資を調べ、最も貸し倒れリスクの高い上位10%を特定。それを投資家に売却した。

 それを可能にしたのは、MITを出てJPモルガンのスワップデスクで働いていた当時25歳のテリ・デュホンだ。この部門は、のちに世界的な大銀行の幹部を多く輩出し、「モルガン・マフィア」として知られるようになる。「銀行が信用リスクを資産から切り離し、保険会社や年金に肩代わりさせることに成功した」と、今はロンドンでデリバティブのコンサルティング業を営むデュホンは言う。

 その後まもなくCDSは、リスクの高い中南米やロシアなど新興市場への投資も怖くなくなる保険として使われはじめた。01〜02年にエンロンやワールドコムが粉飾決算の挙げ句に巨額債務をかかえて倒産すると、企業の内部崩壊に対する自己防衛の必要性も再認識され、CDSは打ってつけのツールになった。00年に1000億ドルだった市場規模は、04年には6.4兆ドルになった。

 そして住宅ブームがやって来る。FRB(米連邦準備理事会)が利下げを繰り返し、アメリカ人が歴史的なペースで住宅を買いはじめると、住宅ローン債権を担保にした証券化商品は新たな有望投資先になった。銀行やヘッジファンド、年金などあらゆる金融機関がこれを購入し、彼らの多くがその債務不履行に備えてやはりCDSを購入した。
「一連の仕組みはきわめて魅力的で、猫もしゃくしも利用した。その結果、CDSの市場は巨大化した」と、かつてシティグループのクレジット・スワップ部門を率いたロアン・ダグラスは言う。

 AIGのような会社の取り扱い商品はすぐに、火災保険だけではなくなった。彼らはCDSを売ることで、住宅ローンの保証もはじめた。AIGが政府に救済されたときまでに、同社のCDS保証残高は4400億ドルに達していた。

 AIGの決定的な過ちは、伝統的な保険の手法をCDSにそのままあてはめたことのように思える。従来の保険では、一つの事故と他の事故の間に相関関係はない。隣人が車を衝突させたからといって、自分もそうなるリスクが高まるわけではない。

 だが、債券の場合はまったく話が違う。一つが債務不履行になると、連鎖反応で他の債券も債務不履行に陥る確率が高まる。投資家は臆病になって資金を引き揚げ、市場はパニックに陥り、銀行は貸し渋りに走る。

 そして住宅ローンの証券化商品が債務不履行に陥りはじめると、AIGは何十億ドルもの元利金を補償しなければならなくなった。AIGにそんな資金はないことは、たちまち明らかになった。

 政府が介入してAIGを救済したのは、AIGがCDS市場のいわば最後のとりでだったからだ。銀行やヘッジファンドはCDSの売り買い両方を行い、どちらか一方で損をしてももう一方で得をするポジションだったのに対し、AIGは保証を提供する一方だった。もしAIGが債務不履行に陥れば、AIGからCDSを買っていたすべての金融機関が損失を被り、信用危機に陥っていただろう。(後略)


戦犯、その名はグリーンスパン 9月24日 ニューズウィーク日本版

金融緩和を推し進めて規制を敬遠、住宅ローンバブルの最中もリスクを黙認−−「市場の神様」はこうしてウォール街を炎上させた
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

 アメリカ経済を大恐慌以来、最大の混乱に陥れた張本人は誰か。責めるべき人はたくさんいるようだ。

「ある意味で完全犯罪だ。いったい誰を捕まえればいいのか」と、オハイオ州カヤホガ郡のジム・ロカキス出納官は言う。「住宅ローン業者を逮捕すれば、道義上、銀行と格付け会社の関係者を逮捕しないわけにいかない」。多くの州の金融当局者は、混乱は何年も前から始まっていたが、FRB(米連邦準備理事会)が無視してきたと考えている。

 責任の大部分は結局のところ、サブプライムローン(信用度の低い個人向け住宅融資)を証券化したきわめて複雑な金融商品を売り込み、自らも大金を投資してきた金融業界のCEO(最高経営責任者)たちにある。

 実際、サブプライム問題の「パイプライン」に連なる誰かを名指しして責めることはできないという空気が広まっている。「すべての人を責めるべきであり、誰も責めるべきでない」というのが学者の一般的な見解だと、ドレクセル大学(ペンシルベニア州)のジョセフ・メイソンは言う。

 しかし、そうだろうか。とくにウォール街の貪欲さに主な責任があるという考え方に、私は賛同しない。共和党の大統領候補ジョン・マケイン上院議員は貪欲なウォール街を「治す」と言うが、貪欲さをどうやって治すというのか。

 ウォール街は自由放任のもと、常に本能的な貪欲さに駆り立てられて機能してきた。だから金融バブルが次々に生まれて消えていくし、それは今後も変わらない。

 一連の混乱は基本的に、規制の大失敗だ。そして責任の大部分は1人の男に帰する−−アラン・グリーンスパン前FRB議長だ。

 定評ある市場「感覚」で神様ともてはやされたグリーンスパンに対し、多くの人が、金融緩和が住宅ローンバブルを加速させた責任を問う。しかしはるかに大きな問題は、彼が「最小限の規制」を信奉したことだ。

 FRBは94年に住宅ローンを監督する権限を与えられたが、グリーンスパンはあらゆる規制を先送りにし続けた。事態が深刻になりはじめていた05年4月でさえ、サブプライムローンは公益にかなうだろうと語り、政府の介入は必要ないとした。「貸し手は融資案件の個別のリスクをきわめて効率的に判断できる」と。

 新しい規制ができたのは、市場が大打撃を受けてからかなり後の今年7月。後任のベン・バーナンキFRB議長が、返済能力を十分に証明する書類のない融資を禁止するなど、貸し付けに関する情報開示の常識的なルールを定めた。

■国レベルでリスク軽視

 グリーンスパンは、退任後に金融機関が次々に破綻しても、自己弁護を続けてきた。しかし昨年のCBSのインタビューで、「(サブプライムローンのような)融資慣行が多く行われていることは承知していたが、重大さはかなり後まで認識していなかった」と認めた。かつて私に、経済リポートの最高の楽しみ方は浴槽で読むことだと語った男が、そう言ったのだ。

 3月の証券会社ベアー・スターンズと、7月の政府系住宅金融大手、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の救済に続き、9月16日にFRBは米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に最大850億ドルを融資すると発表した。

 自由市場絶対論の伝道者グリーンスパンも、ようやく最悪の悪夢に気がついただろう。彼は1933年に始まったニューディール政策以来、最大級の市場介入を導いた張本人なのだ。

 もちろん、FRBだけの責任ではない。州の金融当局者は市場は万能ではないと考えていたが、「国レベルでは、リスクの多様化はいいことで、市場は大半のことを解決できるという考え方が広まっていた」と、クリーブランド州立大学(オハイオ州)の金融の専門家キャスリーン・エンゲルは言う。

 アイオワ州のトム・ミラー司法長官は、通貨監督庁(OCC)は州との縄張り争いに必死で、銀行によるサブプライムローンの証券化にほとんど注意を払わなかったと語る。「規制に関して州の権限が強すぎると言い続け、銀行には『(州当局ほど)強硬には出るつもりはない』と言っていた」

 これに対しOCCのロバート・ガーソン広報官は、「全国の銀行が(不動産を担保とする信用度の低い)略奪的貸付の問題をかかえているわけではないことは、ほぼすべての人が認めている」と弁明する。そうかもしれないが、実際にどの銀行も、略奪的貸付業者がつくりだした証券を大量に買い込んできた。

■証券細分化の落とし穴

 とはいえ、これらの連邦機関には言い分もある。サブプライムローンの証券化ブームは、細分化されていた金融部門のかなり多くにまたがっていたため、後れを取らずに対応し、総合的に規制することは誰にもできなかった。

 証券取引委員会(SEC)は「公募」証券を監督するが、サブプライムローンに基づく債務担保証券の大半は「私募」だから規制できないという主張もわかる。OCCが監督するのは銀行で、サブプライム問題の最大の犯人とされることの多い貸し手はノンバンク系だ。貯蓄機関監督庁(OTS)も貯蓄機関に対する権限しかない。

 つまり、住宅ローンをめぐる新しい事態の全体を監督する権限と能力があったのは、FRBだけだったのだ。そして積極的に行動するバーナンキの登場まで、FRBは事実上、何もしなかった。
(後略)



(私のコメント)
日本のマスコミにおける経済記事のレベルは低く、経済記者たちはもっぱら日銀官僚や財務官僚などから情報を得て記事にする。だから日本の経済記者たちは日銀や財務省に対する批判的な記事はほとんど書かない。いや書けない。

リチャード・ベルナーの「円の支配者」という本がありましたが、日本のマスコミは「トンデモ本」扱いして書評すら新聞には書かれなかった。「株式日記」では「円の支配者」を元に解説記事を書き続けましたが、本はかなり売れたにもかかわらず古本屋で見かけることは少ない。多くの人が所蔵して読まれ続けているからだ。

それに対して多くのエコノミストが書いた本は数年足らずして古本屋で1冊100円で売られている。日本の経済学のレベルが低いから仕方がないのですが、経済専門紙である日本経済新聞でも日銀や財務省の受け売り的な記事が多く、日本のバブル崩壊に対する分析は「株式日記」のほうが正しい。

アメリカで現在起きている金融恐慌は90年代に起きた日本の金融危機とよく似ている。アメリカ政府が1年足らずで金融安定化法案を出すのも日本の教訓が効いているからだろう。問題は公的資金で銀行を救済するにしろ、国民の理解が得られるかにかかっているのですが、日本のマスコミは銀行はケシカランと扇動するばかりで、公的資金の導入は大幅に遅れた。

バブル崩壊の原因は日銀や大蔵省にも責任はあるのですが、日銀や大蔵省はもっぱら銀行の乱脈融資にあるとされた記事をマスコミに書き続けさせた。しかしリチャード・ベルナーの「円の支配者」によって日銀による銀行への窓口指導によって過大な融資が行なわれるようになったのだ。

私がオフィスビルを建てることができたのも銀行から借りてくれという勧誘があったからですが、普通だったら借りる事は不可能だっただろう。そこ結果多くのオフィスビルが経営破たんしてハゲタ外資に買われる結果になった。日本は金利を引き上げるべき時に引き上げなかったのは、アメリカでブラックマンデーなどがあって圧力があったためですが、日銀や大蔵省は口が裂けてもそのような事は言えない。

1971年のニクソンショック以来、ドルは金との兌換性を失いペーパーマネーとなりましたが、日本政府日銀はそれ以来ドルを買い支えることに費やされている。日本に溜め込まれている外貨準備はほとんどがドルですが、ペーパーマネーに過ぎない。アメリカの軍事力や経済力がある内は価値がありますが、なくなればドルはまさに紙切れになる。

アメリカで現在起きている金融恐慌はドル基軸通貨体制の危機でもあるのですが、それを支えているのは日本と中国のドル買いだ。このドル買いがストップすればドルは暴落して紙切れになり、アメリカの金利は急上昇してアルゼンチンやロシアのようになって経済崩壊する。アメリカの製造業は空洞化して農産物しか輸出できる物がないからだ。

昨日はフィナンシャルタイムズで今日はニューズウィークの経済記事を紹介させていただきましたが、日本と米英の経済記者のレベルが明らかに違う。だから日本の新聞を読んでも時間の無駄であり、ネット上にある米英の新聞記事を読んだほうが事態がよく分かる。

ニューズウィークの記事によればCDSの成り立ちから現在の状況まで詳しく書かれていますが、AIGは火災保険の手法を金融商品にまで適用してしまった。火災は一箇所でしか発生しないが、金融商品は一つデフォルトされると他にも波及していく。すでのCDSの残高は6600兆円にもなり、それだけのカネはアメリカの銀行には無い。

まさにCDSはアメリカの銀行が作った「大量破壊兵器」なのですが、イラクには「大量破壊兵器」はなかった。アメリカを滅ぼす敵はアメリカ国内にあったのであり、ポールソン財務長官はオサマ・ビンラディンだったのだ。日本の経済記者のヒヨコたちはアメリカの金融工学を絶賛していたが、「株式日記」ではデリバティブなどを詐欺的商品と批判してきた。


グローバル主義と悪魔の秘密結社 2001年3月23日 株式日記

「バブルの崩壊の背景には自由化と規制の緩和が背景にあります。それによって外資系証券会社は策略により日本の株式市場を破壊しました。先物取引やデリバティブの恐ろしさを誰も知らなかったからです。今でも詐欺的商品を売っては市場を混乱させている。官僚や政治家は自由化を放任主義と取り違えているのだ。」



知能指数が170の金融工学のファンドマネージャーたちは、火災保険と金融商品との区別も分からずに世界に売り出していた。やり方は「ねずみ講」や「金融詐欺」と同じなのですが、破綻するまでその欠陥には気がつかない。数百年に一度の出来事が明日にも起きることが彼らには分からないのだろう。要するに学者馬鹿なのだ。

ニューズウィークではグリーンスパン前FRB議長のサブプライムローンに対する規制の甘さを指摘しているが、自由市場絶対論者のグリーンスパンでは規制は難しかったのだろう。しかし日本でも規制緩和が進んで弊害が現れるまで新自由主義経済は正しいものであると政府もマスコミも書きたてた。だから秋葉原でテロリストが事件を起こすまで規制緩和の弊害の誤りを認めようとしなかった。小泉元総理が政界を引退するのも自分の誤りに気がついたからだろう。




危機を乗り切るためにアメリカは今、自分たちが90年代に日本に
説教していた内容と同じことを、米国内でやろうとしている。FT紙


2008年10月1日 水曜日

強欲な銀行幹部たちのせいで階級闘争が 9月27日 フィナンシャル・タイムズ

アメリカは今週、階級闘争を発見した。7000億ドルの公的資金でウォール街のひどい借金を洗い流そうという米財務省の提案について、共和党のニュート・ギングリッチ元下院議長は、「ひどい、ひどいアイディアだ」と批判。ゴールドマン・サックス出身の経済顧問を抱えたホワイトハウスは、ゴールドマン出身者にだまされているのだと攻撃した。

共和党のジョン・マケイン大統領候補は、CEOたちの「強欲」を激しく罵り、政府に救済される企業のトップが、「最高給の政府職員よりも高い報酬をもらうなんてことがあってはならない」と批判した。ルパート・マードック氏が所有するニューヨーク・ポスト紙は一面トップに高さ5センチ大の活字でデカデカと「フロード(詐欺)・ストリート」という見出しを掲げた。右側からも、これだけの声が上がっているのだ。

左側の論調としては、たとえば23日のニューヨーク・タイムズ紙面に進歩派シンクタンク「米国の未来のための研究所」が掲載した意見広告が一例だ。このシンクタンクは、ウォール街がアメリカの納税者を「強要している」と非難し、「銀行関係者だけを救済するよりも、銀行の被害者になった人たちを助けるべきではないのか?」と指摘している。

民主党のナンシー・ペロシ下院議長もこれによく似た言い分で、「自分の会社をつぶしておきながら、高額の退職金という金色のパラシュートで脱出しようとするCEOたちに言いたい。もうパーティーは終わりだ」と厳しく批判した。

アメリカにも階級格差はあるのだと、アメリカが気づいた。気づくのがあまりに遅いのではないかと、あなたは主張するかもしれない(するかしないかは、あなたの政治姿勢によるかもしれない)。なんといっても過去30年にわたって続いた米国経済の大きな特徴は、所得格差のすさまじい拡大なのだから。過去100年に遡って眺めれば確かに、経済全体が成長すると共に所得格差は縮小した。ゆえに1916年には全米人口のわずか0.01%にあたるごく一部の高額所得者たちが、国民の総給与所得の約4.5%を得ていたのに対して、金持ちへの財の集中は1971年には0.5%にまで減っていたのだ。しかし1970年代になってこの流れは、逆戻りしはじめ、1998年には再び、人口の0.01%が総給与所得の3%を得るようになっていたし、ほんの一握りの高額所得者たちはその後もさらに給与所得のシェアを増やしていった。

金持ちと貧乏人の格差が、グランド・キャニオン並みに広がっていたというのに、米国に根強くある社会や文化の伝統が、この問題の直視を妨げ、政治テーマとなるのを妨げてきた。

所得格差が広がっても、米国民は資本主義を支持し、資本主義の勝者となった人たちを英雄扱いしてもてはやした。ひらめきを働かせ、額に汗し、努力に努力を重ねれば、誰だって百万長者になれる??こういう国民的な信念が、その一端にはある。ニューヨークを拠点にしている欧州出身のヘッジファンド・マネージャーいわく、「ヨーロッパでは金持ちは妬まれるが、アメリカでは自分もああなりたいと思われるものだ」そうだ。

その結果、経済ポピュリズム(大衆主義)は投票箱で効果を発揮しなかった。2000年の大統領選で経済ポピュリズムを掲げたアル・ゴア副大統領は当選できなかったし、今回の選挙でも、この国には「2つのアメリカ」があると訴え続けた民主党のジョン・エドワーズ元上院議員は、予備選で3位より上になれなかった(ましてエドワーズ氏は民主党支持者に訴えかけていたのに)。

アメリカは、階級闘争を前提とした政治観を、ともかくも拒絶してきた。これは左翼にとって実に歯がゆいことで、例えば2004年の「What's the Matter with Kansas?」という画期的な著書でトマス・フランクスが論じたように、左翼は共和党の手口に危機感を抱いていた。共和党は、アメリカ中産階級の社会的価値観や文化的価値観に訴えかけることで、有権者が経済格差の拡大に気づかないよう仕向けてしまったのだと、左翼はこう懸念していた。

サラ・ペイリン知事はジョン・マケインの選挙戦をまるでバイアグラのように元気づけた。9月前半のマケイン支持率を見るに、今回の選挙戦でもまた「アメリカの伝統的価値観」が「階級」に勝つのかと思えた。しかし10日ほど前のウォール街暴落は(おまけに、納税者が費用負担する処理案は1兆ドルにもなるという提案は)、政治状況を大きく塗り替えた。そして、この経済危機は欲の皮がつっぱったCEOたちの責任だと怒っているのは何も、今回の大統領選で大注目されている有権者層「ウォルマートで買い物するお母さんたち」ばかりではない。ウォール街そのものでも、経営幹部ではない金融関係者はこぞって、一番上にいる上司たちをさかんに非難している。

ここ2週間ほどの混乱に巻き込まれた会社のベテラン社員によると、彼の会社のCEOに金色のパラシュートを諦めるよう、最大の圧力をかけているのは、メイン・ストリート(各地の中央通り、金融業界ではない一般市民の意)でもなければワシントンでもなく、社内の怒れる社員たちなのだという。

アメリカでこれ以前に所得格差がピークに達したのは、19世紀末から20世紀初めにかけて。この時は高まる国民の不満に勢いを得て、国民党が台頭した。それは米国史上、最も成功した「第三の党」運動だった。

当時に比べると、今のところアメリカの政治地図はそれほど極端には変化していない。しかし階級闘争は強力な魔神だ。そして実に久しぶりにアメリカは、魔神をランプから出してしまったのだ。


のろのろ「日本式」金融がまた流行するのか 9月30日 フィナンシャル・タイムズ

今や、立場は入れ替わった。野村ホールディングスがリーマン・ブラザーズの資産を、バーゲン価格で買い取った。わずかに生き残った米投資銀行のひとつ、モルガン・スタンレーには、三菱UFJが80億ドルを出資することになった。

運命の逆転はあっという間だった。しかしその割には、そら見たことかという批判はほとんど聞こえない。「アメリカにもう10年間も、ああしろこうしろと言われ続けてきたことを思うと、日本側の自制は見事だ」と言うのは、マッコーリー証券のエコノミスト、リチャード・ジェラム氏だ。「彼らは本当はこう言いたくて仕方がないに違いない。『空売り禁止で市場を操作したりするのは、実によくない。必要なのは透明性の低い救済策ではなく、自律的な問題解決だ』と」 日本はアメリカから再三再四、もっと活発な自由市場資本主義に移行するようしつこく求められていたのだから。

危機を乗り切るためにアメリカは今、自分たちが1990年代に日本に説教していた内容と同じことを、米国内でやろうとしている。日本が黙っているは、そのせいでもある。1990年代に米政府の関係者たちは、得てして容赦ない口ぶりで、日本の銀行はもっと素早く不良債権を認めなくてはならない、日本政府は公的資金を投入して流動性を回復しなくてはならない??と言い続けていた。

「日本に対する重大な不満は、時間がかかりすぎたということだった」とジェラム氏。「アメリカの長所を探すとするなら、危機突入からまだ1年弱の現時点で、すでに全力で取り組んでいるという点だ」

日本銀行のデフレ対策が想像力に欠けると批判されていた当時、田谷禎三氏は日銀審議委員だった。その田谷氏も決して批判を口にしない。「言ってもどうせ聞かないだろうし」と。

しかしITバブル崩壊の直後に公定歩合を大幅に下げ、またサブプライム危機の発生を受けて大幅に公定歩合を下げたアメリカのやり方は、日本のもっと慎重な対応と同じくらいまずかったのかもしれない。田谷氏はこう言う。

連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長がかつて日銀に対して、デフレ抑制のためにケチャップを(つまり何でもいいから資産を)買うよう求めたのは、有名な話だ。しかし日本当局者の多くは、表立っては言わないものの、今回これほど激しく崩壊したバブルをそもそも作る原因となったのは、過剰な低金利政策だったと見ている。日銀はかつて、中央銀行たるもの消費者物価にばかり注力するのではなく、いかにして資産バブルに風穴を開けていくかに取り組むべきだと主張して、あちこちで批判された。しかし今や日銀のこの姿勢が、世界中で再評価されつつある。

匿名を条件に取材に応じてくれた日銀幹部は9月26日、「バブルを事前に察知して崩壊を防ぐことができると言っているわけではない。しかしそれでも、できることはある」と話した。たとえば米住宅市場を落ち着かせるために、できることはもっと色々あったはずだと言うのだ。

田谷氏は米金融政策について、米当局が学んだつもりになっている教訓は、もしかして正しくないのかもしれないと指摘する。ある意味で、米当局の政策はきわめて成功したからだ。2001年以降、米経済は景気後退を回避してきた。しかし簡単な政策には副作用があることを忘れていたのだという。

一方で日本では、金融機関がそもそも慎重だったことが幸いしたと田谷氏。「日本はアメリカの投資銀行とは違う。アメリカの銀行は、借金で資産を買いまくっていた。そのビジネスモデルはすでに崩れてしまった」

だからといって、日本の金融機関がいま比較的に健全な状態にあるのは、別に日本の銀行がとりわけ賢かったからではないと田谷氏は言う。「日本の金融機関が遅れをとっていたのは事実で、そのメリットなど何もない。2005年まで日本の金融機関は不良債権処理に忙しかった。そして、そのあとちょっと一休みした。日本の金融機関が(アメリカの)真似をするだけの時間が、そもそもなかったのだ」

日本の財政幹部はもっと率直にこう認めた。「賢明だったというよりは、運が良かったのだ」と。


(私のコメント)
最近は外資系証券会社で働いている人のリストラが相次いで、フジテレビのワイドショーでも報道していましたが、彼らの時代は過ぎ去ろうとしている。最近では東大卒のエリート候補が官庁には就職せず外資系金融機関に就職するのがトレンドだった。もっとも以前から東大卒が入ってくるようになると、その業界はピークでありダメになるといわれていましたが、外資系もその例外ではなかったようだ。

フィナンシャルタイムズの記事を見ても、高給をもらうCEOに対する風当たりは厳しいものがあり、それが金融安定化法案の否決につながった。一般の会社や個人は経営が破綻すれば潰されるのに、金融機関だけは我々の税金でなぜ救済されるのかという不満が渦巻いている。自己責任の原則はどこに行ってしまったかと思えるような政府の救済策は最初から批判が多かった。

アメリカ政府は外国には厳しく自国には甘いダブルスタンダードの国であり、このような国の覇権が長く続くわけはないのであり、外国には寛容であり自国には厳しい国でないと覇権は長続きしない。ローマ帝国が1000年続いたのも植民地に対しては寛容であったからだ。それに対してローマの兵士に対する規律は厳しく、だからあれほどの広大な帝国を維持できたのだ。

アメリカも日本に対して1985年までは日本に対して寛容であったが、90年代のソ連崩壊以降は露骨にドルを買い支えを行わせるなど、帝国としての権力志向を強めていった。日本はローマ帝国に対するカルタゴに例えられて、太平洋をめぐる支配権の争いが150年続いているともいえるのですが、そろそろ覇権国の衰退が始まろうとしている。

アメリカも70年代以降は格差社会が広がり、勝ち組と負け組の格差が問題になりつつある。中産階級の没落と少数の高額所得者の登場は階級社会がアメリカにも定着し始めたのだ。日本も中産階級が没落して格差社会が定着しようとしている。日本は最も成功した社会主義国家と言われるほどだったのに、アメリカを真似て悪しき資本主義を真似ようとした。

「会社は誰のものか」という命題がありますが、アメリカのような原始的資本主義国家なら「会社は株主のもの」ということが出来る。しかし進化した資本主義においては会社は株主だけのものではない。9月17日の株式日記でも原丈人氏の「21世紀の国富論」を紹介しましたが、短期的キャピタルゲインねらいの株主が会社の持ち主でいいわけがない。

しかし日本にもホリエモンや村上ファンドが現れて、アメリカのハゲタカを真似る人が出るようになった。しかし現在のアメリカに起きている金融恐慌は、時価会計や減損会計が大きな弊害をもたらしているのであり、日本やドイツで行なわれてきた取得原価の会計制度のほうが正当性があるように思える。しかし日本はアメリカの植民地でありアメリカの会計制度を取り入れさせられた。

「21世紀の国富論」に書かれているように、アメリカには悪しきCEO達がアメリカ企業を食い散らかしていった。アメリカではこのようなCEOを資本主義の勝者として賞賛されてきた。ファンドとしてかき集めた金で株を買い占めて会社を支配して、お手盛りで巨額な配当とボーナスをもらう事がアメリカでは称賛された。日本ではハゲタカと呼ばれて敵視されてきたが、アメリカのポールソン財務長官もハゲタカのCEOだった。

アメリカやイギリスのような海賊資本主義は国内の獲物を採り尽してしまえばお終いであり、それは「ねずみ講」と大して変わりがない。しかしマスコミはこのような資本主義を金融工学を駆使したハイテク金融として持て囃した。しかし「ねずみ講」も論理的には間違いではないが詐欺的行為とされている。金融工学も数学的に計算されて論理的ではなるが数百万年に一度しかない事が明日起きてしまう。つまり詐欺なのだ。

フィナンシャルタイムズの記事にもあるように、現在のアメリカに起きている金融恐慌は90年代の日本に起きたバブル崩壊そのものだ。インターバンク市場では金融がストップして中央銀行が最後の貸し手となって支えているが、いつまでも続けられるものではない。次はどこかという信用不安が去らない限り金融恐慌は終わらない。

日本の銀行は含み資産が大量にあって体力があったが、アメリカは時価会計だったから金融機関はあっという間に倒産してしまう。だからアメリカ政府も1年足らずで金融安定化法案を出してきましたが、やはり国民のコンセンサスを得なければ税金は使えない。悪しきCEOはゴールデンパラシュートで逃げ切ろうとしていますが、逃げ切れるだろうか?

格差社会は国力を疲弊させてモラルを堕落させてしまう。ローマ帝国が亡んだのは肯定や貴族たちのモラル崩壊から起きたことであり、ローマ軍兵士もゲルマンの蛮族を金で買収して堕落して行った。ホリエモンも金で買えないものはないと豪語して自滅しましたが、アメリカ金融帝国も自滅して滅びようとしている。アメリカ国内はすでにハゲタカに食い尽くされてぺんぺん草も生えない。

日本はアメリカのハゲタカに食い尽くされる前にハゲタカが自滅してくれましたが、日本は幸運だったのだ。日本は時間をかけることで公的資金を最小限度にとどめる事ができましたが、アメリカで発生した不良債権は公的資金で賄いきれるのだろうか? 75兆円の金融安定化法案も焼け石に水だろう。金融工学と称して詐欺的商品を世界に撒き散らして、どれくらいの焦げ付きがあるのか分からないからだ。

不動産証券化もリスクを他人に売り払ってしまえば損はないから過剰に発行されてしまった。CDSも6600兆円もの金額になり、そんな金はどこの銀行や保険会社にも無い。しかし手数料欲しさに巨額の保険に応じてしまってAIGは国家管理になった。リーマンブラザースもそれで潰れたのですが、悪しきCEO達は経営責任を問われてはいない。



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