株式日記と経済展望

ページを繰り越しましたのでホームページからどうぞ。


竹島問題とは韓国政府が日本の領土を武力で占領している問題で
あり、これに対する日本政府の曖昧な態度が北方領土にも波及する。


2008年7月31日 木曜日

アメリカ政府が竹島を韓国領と認定! テレビ朝日
日本政府の曖昧な態度がかえって問題を拗らせてしまった!


「竹島は無主の島」で韓国大騒ぎ 米、韓国の主張を拒否 7月28日 産経新聞

【ソウル=黒田勝弘】竹島(韓国名・独島)問題で反日・愛国ムードが高潮している韓国で、今度は米政府機関の「地名委員会(BGN)」が島に対する韓国の領有権主張を退けていることが判明し、大騒ぎになっている。BGNの公式資料によると、島の名称は中立的な「リアンクール岩礁」を基準とし、領有権については「主権未確定」としている。

 韓国のマスコミはこのことを連日、大々的に報じ、韓国政府の対応不足を激しく批判。同時に「この背景には日本政府の執拗な工作がある」と日本非難を展開している。韓国政府は緊急対策会議を開き、在米大使館を通じ経緯の把握に乗り出すとともに、米側に韓国の立場を伝達するよう指示。さらに各国での実情調査も進めるという。

 「リアンクール岩礁」は19世紀にこの島を“発見”したフランス捕鯨船の名称からきたもので、海外の文献にしばしば登場する。BGN資料には「竹島」や「独島」などいくつかの名称も“別名”として記載されているが、韓国マスコミは「独島」より前に「竹島」が紹介されていることにも不満が強い。

 BGNは、領有権が対立しているという客観的な事実にのっとり中立的な措置を取ったものとみられる。しかし韓国では政府、マスコミをはじめ官民挙げて「あの島はわが国固有のもので紛争の対象ではない」という建前と思い込みが強いため、今回のような国際社会の“中立的態度”にも極度に反発する結果となっている。

ブッシュ大統領も竹島を韓国領と認定した! テレビ朝日


韓国軍が独島防衛演習 マスコミは日韓戦争論 7月29日 産経新聞

【ソウル=黒田勝弘】韓国軍は29日、日韓が領有権を争っている竹島(韓国名・独島)周辺で30日に「独島防衛訓練を実施する」と発表した。海軍の艦艇6隻やP3C哨戒機、対潜ヘリなどのほか空軍からもF15戦闘機が参加するという。韓国軍が島周辺で軍事演習を事前に公表し「独島防衛」と銘打って公然と行うのは初めてで、竹島支配を内外に誇示しようとするものだ。

 発表によると今回の演習は「仮想勢力が独島の領海を侵犯するというシナリオの下に、海・空軍と海洋警察(海上保安庁に相当)の合同作戦で仮想勢力の独島進入を遮断し退去させるもの」という。

 一方、独島反日ムードを主導しているマスコミも「独島をめぐる日韓戦争」を仮想した記事を大きく掲載し、双方の軍事力を比較しながら勝敗分析に余念がない。韓国では先年、100万部を超えるベストセラーになった「ムクゲの花が咲きました」など大衆小説には日本の「独島侵攻」を仮想した日韓戦争モノが多く、週刊誌などにも似たようなストーリーがしばしば登場している。

しかし今回は「独島で韓日全面戦が勃発(ぼっぱつ)すれば?」(26日付、朝鮮日報)や「今、独島で(日韓)空中戦が展開されれば」(29日付、中央日報)など大手の一流紙が堂々と報道しており、マスコミの高揚ぶりが目立つ。

 ちなみにこれら仮想記事の勝敗予想は「海・空軍力に大きな格差。半日ももたず強奪される可能性」(朝鮮日報)とか「初期は韓国が有利だが、イージス艦や空中警戒管制機などを持つ日本に押される」(中央日報)などと不利を強調し、日本に対抗できる軍備強化を訴えている。

 また韓国政府は29日、韓昇洙首相を、首相としては史上初めて竹島に上陸させるなど、マスコミ世論にあおられるかたちで“独島愛国”をエスカレートさせている。李明博政権は大規模な反政府運動を誘発した米国産牛肉問題をきっかけに、支持率低迷や政権不信などで政治的苦境にある。このため世論受けのする“反日愛国策”を取らざるをえない状況にある。

NHKも、米政府が竹島は韓国領と認めたことを報道!
これに対して日本政府は何の抗議もしないようだ。


ブッシュ大統領:「独島データベース、7日前に原状回復」 聯合ニュース(韓国語)(2008/07/31 06:28)

ジョージ・ブッシュ米大統領は30日、米国地名委員会(BGN)が独島を「主権未確定地域 (Undesignated Sovereignty)」に変更したことについて、「独島に関するデータベースを7日前の状態に戻す」と表明した。

ブッシュ大統領は、来週の韓国・タイ・中国訪問を控えて30日午後1時(米東部時間)にホワイトハウスで 聯合ニュースなどアジアのメディアと行なった共同インタビューの中で、「独島問題に関する内容はをよく 理解しており、ライス長官に既に検討を指示した」と語った。

ブッシュ大統領は特に記者たちに、韓半島と鬱陵島、独島などが表示された地図を直接持ってきて、独島 問題に対する関心を表明した。ブッシュ大統領は特に、「何よりすべての紛争(dispute)は韓国と日本との 間で解決されねばならない」と強調した.

これに関連して李泰植(イ・テシク)駐米大使は30日午後にワシントン特派員らと行なった記者会見で、この ようなブッシュ大統領の方針をジェームズ・ジェフリー国家安全保障会議(NSC)次席補佐官を通じて伝え られたことを確認した。

李大使は、「(ジェフリー次席補佐官の通知内容は)独島に関する紛糾が発生する以前の状態へ原状 回復するというものだ」としたうえで、「ブッシュ大統領が直接決断を下し、それを直ちに実行するように した」と語った。

この日のホワイトハウスでのインタビューには、聯合ニュースのほか韓国の朝鮮日報、中国の人民日報、 香港のサウスチャイナモーニングポスト、タイのバンコクポストなどが参加した。


(私のコメント)
日本政府の曖昧な態度がかえって国際問題を拗らせてしまった例を挙げるのは数限りなくありますが、日本政府に対しては強く出れば日本政府は折れてくるという習慣をつけてしまうことになる。これは韓国のみならずロシアも中国も北朝鮮もアメリカも同じだ。

日本の外務省はこれを外交的配慮と言っていますが、配慮すれば相手が分かってくれると言う思い込みがあるからだ。竹島問題が竹島問題だけで片付かない問題である事は明らかだ。竹島がこのままずるずると韓国領土だと言う既成事実を積み重ねて国際的にそれが認められれば、日本は島を一つ一つ外国に取られて行く事を認めることになる。

今日のテレビ朝日のニュースで、アメリカ政府が竹島を韓国領土と認定したかのようなニュースが報道されていましたが、日本のぐずぐずした態度が日韓の二国間の問題からアメリカ政府を巻き込んだ国際問題としてしまう。

日本は国際的にアメリカの植民地とみなされているから、日本政府と外交交渉をするときにはアメリカ政府に根回しをしておくと有利になるという癖をつけてしまった。日本政府はアメリカ政府にはNOとは言えない立場であり、アメリカにNOと言った政治家はスキャンダルを流されて失脚するのが通例だ。

だから最近の中国や韓国は日本に対してはアメリカを絡めて交渉してくるのが通例であり、今回の竹島問題も韓国政府はアメリカ政府を絡めてきた。韓国としてはアメリカ政府に竹島は韓国領と認定してもらう事で既成事実化させるつもりのようだ。

日本としては原理原則ははっきりさせる態度が必要であり、福田首相は「竹島は日本の領土」と言う文言を省く事で韓国をつけあがらせてしまった。騒げば騒ぐほど日本政府は折れてくると韓国は思い込んでいるのだ。従軍慰安婦もアメリカで政界工作が進んで連邦下院議会で日本非難決議がなされましたが、アメリカを巻き込めば日本に勝てると見ているのだ。

韓国は韓国で国内政治問題を抱えており、国民の関心を竹島問題に向けさせることでナショナリズムを煽って支持を得ようとするのはノムヒョン以来の伝統となっていますが、李明博政権もノムヒョン政権と変わりがないようだ。これも中国の日韓分断工作なのかもしれませんが、ローソクデモでも米韓分断工作が進んでいる。

ブッシュ大統領が異例の速さで竹島は韓国領と指示したのも韓国訪問を控えた配慮なのでしょうが、このようにずるずると既成事実を積み上げられてしまうのはまずいやり方だ。結局日本は韓国政府にも配慮してアメリカ政府にも配慮してはっきりした態度表明はしない。最後にははっきりした態度表明をしないことが相手の誤解を招いて余計に外交を拗らせる。

これは福田総理のキャラクターなのでしょうが、はっきりとものを言わない。結局何を考えているのか分からないから相手は強硬な態度をとってくる。韓国国民は非常に激しやすい民族であり、事あるごとに韓国の日本大使館前で日の丸を焼いたり首相の肖像を焼いたりと激しいのですが、火病という民族的な病気だ。

日本も国際会議などではサイレントコーナーと言われるような意思表示をしないクセがある。国際会議などでは何も言わないことは相手の言うことを認めたような事であり、主導権をとられてしまう。外交交渉を丸く収めるには妥協も大切ですが、日本は最初から妥協してしまうから交渉術が大変下手糞だ。

韓国や北朝鮮のような大国に囲まれた国は外交が生命線だから捨て身でやってくる。北朝鮮の瀬戸際外交は有名ですが韓国もそれにひけを取らない。韓国政府は竹島に警備隊を常駐させてしまっているからいまさら引くに引けない立場に追い込まれてしまっているわけで、警備隊を駐留させておくだけでも費用の負担はかなりのものだろう。

日本も釘を指すぐらいのことは言っておいたほうがいいのですが、例によって日本はアメリカに対してものを言わないようだ。アメリカ政府と十分に協議が出来ていればいいのでしょうが、事なかれ主義で沈黙しているのだろう。


【竹島問題】町村長官「抗議は必要なし」 米の竹島「韓国領」表記再変更 7月31日 産経新聞

米政府機関が竹島(韓国名・独島)の帰属先を再び「韓国」に戻したことについて、  町村信孝官房長官は31日午前の記者会見で日本政府としては特別のアクションを  起こす考えはなく、米国の新たな判断に期待する考えを示した。

 町村長官は「米政府の1機関がやることに、あまり過度に反応することはない」と言明。同時に「(米政府の)結論ではない」とした上で「(竹島問題の帰属先について)米政府は中立的な立場を強調している。今回は米国の立場の変更を意味するものとは受け止めて いない」と述べた。

 また「(米側は)改めて全体を精査すると(言っている)。精査する過程でとりあえず 『中間的』な表記に戻したということなので(今後)どのような表現になるか、またいずれ出てくるのだろう」との見通しを語った。

 一方、帰属先を韓国に戻したことがブッシュ大統領側の指示だったことを踏まえ、福田康夫 首相が抗議を行う意思があるかどうかについては「ない。なぜ必要なのか」と反論した。


(私のコメント)
このように韓国の外交戦術はアメリカを巻き込んで決着させようとしている。アメリカとしては迷惑な話ですが、韓国としては捨て身の外交だからなりふり構ってはいられない。日本政府としてはそんなに事を荒立てまいとして無言の態度をとるのでしょうが、そのような態度が相手には傲慢に見えて余計に怒らせる。

日本の外交は、相手が言うことを聞かなければ実力を行使して決着をつけてきましたが、アメリカに対しては返り討ちを食らって負けてしまった。外交交渉をするよりも戦争で決着させたほうがすっきりしますが、核戦争の時代ともなると外交戦で勝敗をつけなければならない。

だからアメリカに対してもはっきりとものを言うべきであるし、配慮したものの言い方は相手に対して失礼になり誤解を与えることにもなる。最初からはっきりと自分の立場を表明しておけば相手もそれに応じたことを言ってくる。もし相手が配慮したことを言ってきたら本音は何か分からなくなり、困惑させることになる。

日本から見れば竹島は単なる岩礁であり放置していればいいのでしょうが、韓国から見れば政権の命運をかけた命がけの外交だ。アメリカ政府にしてもいい迷惑なのでしょうが、韓国人には通用しない。「株式日記」としては朝鮮半島や中国などの大陸とは関わりにならないほうがいいと主張していますが、竹島や尖閣やガス田などけんか腰で仕掛けてくるから拗らせない事が大切だ。




「無差別殺人」に手を染めたのは無職や派遣社員という、「格差社会」
でいうところの「底辺」と呼ばれる人たちが突出して多いのが実情だ。


2008年7月30日 水曜日

「だれでもよかった」無差別の連鎖、秋葉原以来すでに7件 7月29日 読売新聞

公共の場で通行人や買い物客が刃物で襲われる事件が相次いでいる。

 東京・八王子の駅ビルでは女性店員が殺害され、神奈川県平塚市のJR平塚駅では7人が切りつけられるなど、先月8日の東京・秋葉原の無差別殺傷事件以降、少なくとも7件の事件が発生した。

 「だれでもよかった」「うっぷんを晴らしたかった」。容疑者たちの供述がよく似ているのも特徴だ。

 警察庁は当面、街頭などに多数の制服警察官を配置することで同種事件を抑止する方針だが、警察内部からは「対策には限界がある」との声もあがっている。

 今月15日夜、東京都青梅市のスーパーで女性店員(53)が突然、バタフライナイフで右胸などを刺されて重傷を負った。近くに住む会社員大越粒巧容疑者(22)が間もなくナイフを持って交番に出頭、銃刀法違反の現行犯で逮捕された。大越容疑者は「仕事のことで社長に文句を言われた。誰でもいいから刺して騒ぎを起こし、社長を困らせたかった」と供述。当初は近くのコンビニエンスストアで人を刺そうとしていたが、客が多かったため断念していたことも判明、26日に殺人未遂容疑などで再逮捕された。

 翌16日には茨城県東海村石神外宿の河川敷で散歩中の会社員の男性(61)と長女(25)が包丁で背中や腕を刺されて重傷を負い、付近にいた同村の無職寺島喜一容疑者(32)が殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。寺島容疑者は被害者親子とは面識がなく、「仕事がなくてムシャクシャしていた」などと供述している。

 25日には甲府市内の路上で飲食店従業員の女性(35)がペティナイフで刺される事件が発生。傷害容疑などで逮捕された調理師桜林清容疑者(37)も取り調べにこう語ったという。「上司から仕事で注意され、うっぷんを晴らすために刺した。だれでもよかった」

 さらに27日、北海道名寄市の名寄短大敷地内の公園で、散歩中の男性(53)が刃物で刺された事件で、無職三浦義将容疑者(20)が銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された。三浦容疑者は調べに対し、「腹が立って人を刺した。だれでもいいから刺そうと思った」と話し、北海道警は殺人未遂容疑で調べている。

 警察庁は秋葉原事件後、全国の警察に、パトロールの強化などを通達。その後も見ず知らずの人を刃物で襲う事件が続発していることを受け、24日には繁華街に制服警察官を配置する「見せるパトロール」を徹底するよう改めて指示した。ただ、逮捕覚悟の犯行には効果が薄いのが現実。7件の事件の容疑者は過去に同種の事件を起こした前歴はなく、警察庁は今後、事件の傾向を分析し、政府の犯罪対策閣僚会議で総合的な対策を検討する方針。



(私のコメント)
秋葉原の無差別殺人事件以来立て続けに同じような傷害事件が起きていますが、今週は毎日のように起きている。しかし事件の原因を小泉内閣の規制緩和と関連付ける見方はネットなどでは盛んですが、福田総理や町村官房長官はそのような見方はしていないようだ。毎日のように連続して起きているにもかかわらず個別的な原因があると見ているのだ。

人材派遣業法の改正により製造業にも人材派遣が認められるようになり、トヨタやキヤノンなどの製造工場では非正規雇用の労働者が半数にもなった。それだけ若い人の正規雇用の道が閉ざされて派遣社員として低賃金労働から抜け出せない人が沢山増えた事は確かだ。

今までは人生に絶望した若い人は車の中で集団自殺したり、トイレや風呂場での硫化水素自殺したりしていた。おとなしく自殺してくれれば死人に口なしで政府は何もしないが、秋葉原で起きたような、破れかぶれになって無差別殺人するようになり政府もようやく動き始めました。

だから「株式日記」でも自殺から無差別殺人へと事件は進化していって、やがては政府要人へのテロが起きるようになるかもしれないと何度も警告してきた。しかし政府の反応は鈍くナイフの規制や警官のパトロールを増やす程度のことしかしないようだ。


「ナイフ抹消するわけにいかない」八王子事件で町村長官 7月23日 産経新聞

町村信孝官房長官は23日午前の記者会見で、東京都八王子市で起きた無差別殺傷事件について、「(凶器は)どこの家庭にでもあるような包丁で、これを規制するのはちょっと考えられない。世の中からナイフのたぐいを一切抹消するわけにはいかない」と述べ、無差別殺傷事件対策としての刃物規制には限界があるとの考えを示した。
 その上で「(人の命の大切さの教育など)地道なことをしっかりやっていかないとなかなか問題への答えは出てこない」と強調した。
 また「フリーターの人が事件を起こすと、やっぱりフリーターが悪いんだと、わかりやすいから理屈を付ける。世の中からフリーターがいなくなれば一切こういう事件が起きないかといえば、そういうわけにはいかない」とも述べた。


(私のコメント)
無差別殺人事件が起きた原因が非正規雇用労働者が増えた原因だとすると政府は小泉内閣の過ちを認めたことになるので、個別的な原因で起きていると言いたいのだろう。しかしこのまま放置していれば無差別殺傷事件は、これからも起き続けることになるだけだ。

安倍内閣でも小泉改革の修正は行なわれず参院選挙では「改革続行」などとやってしまったから大敗してしまった。自民党は国民世論の流れが全く見えなくなっているのだろう。しかしネットなどを見れば世論の流れは大体掴める筈ですが、自民党などにとって見ればマスコミやネットは利用するものであり、世論は広告代理店に任せればどうにでも動かせると見ているようだ。小泉内閣では成功したからだ。

小泉内閣は終始高い支持率を維持しましたが、発足当初の90%もの高い支持率は異常だった。小泉総理自身のキャラクターによるものでしょうが、「株式日記」では小泉内閣の経済政策に終始反対し続けてきた。構造改革すれば景気は良くなるというが、景気が良くなったのは大企業のみだった。その歪みが今出てきているのだ。

冷血漢の小泉首相は「75歳以上は早く死んでくれ法案」を強行採決で可決して、人材派遣法も大企業に有利に改正されて格差社会を形成してしまった。老人や負け組の若い人は早く自殺してくれたほうがいいとでも思っているのだろう。だからテロに走って無差別殺人を犯す加藤のような若者が出てくるのは必然だ。


新自由主義構造改革とのたたかい@ 2006年2月 大門みきし

日本で政府の政策はどう進められているかというと、今は全く様変わりしていて、経団連がいろいろな意見書・提言を小泉内閣に出します、医療の構造改革をやれとか、人材派遣を自由にしろとか、規制改革の要望をつぎつぎに出します。問題は、二つのとんでもない会議が小泉内閣の下で出来ました。一つは「経済財政諮問会議」、もう一つは「規制改革民間開放推進会議」です。「経済財政諮問会議」の中には、民間委員といって4人の学者・研究者と財界代表が入っています。これはただの諮問委員会議ではありません、小泉さんが引き取って「やりましょう」となります。直接その会議で決められたことがすぐ閣議決定をされて、法改正とか予算案に入り込む、ダイレクトに財界の要求が入る仕組みになっています。「規制改革民間開放推進会議」の方も同じで、これには規制改革で儲かる民間の代表が入っています。それが直接閣議決定になる。他の省庁とか自民党の派閥とか族議員か何もものを言えない世界、異常な財界いいなりの政策決定の仕組みが小泉内閣によって作られているということです。アメリカはアメリカで直接、内閣の政策に関与するようになっています。

 今の国会がどうなっているかというと、総選挙の後、国会も様変わりいたしました。自民党は「構造改革政党」に純粋化いたしました。したがって構造改革がものすごいスピードで押し寄せているということです。自民党の中には抵抗勢力といわれる人たちがいましたが、私がおります参議院がその牙城だったのですが、そういう人たちが現場に戻って、この4年2ヶ月構造改革で徹底的に痛めつけられてきましたから、地元の声を受けて、やっぱりこの構造改革「ちょっとやり過ぎだ」あるいは「いい加減にしろ」と思ってきたわけです。切れちゃったのがあの郵政民営化です。そこまでやるのか、特に地方出身の議員が怒ったわけです。何も問題が起こっていないものを、財界アメリカの意図ということで解体してしまうのかというところで切れてしまったわけで、参議院でそういう人たちの造反があって否決されたわけです。


(私のコメント)
小泉首相の狂気が最高潮に達したのが9.11総選挙ですが、まさに日本全体が小泉チルドレン化して、自民党は300議席もの大勝利をおさめた。ネットにも小泉信者のブログが多数出現しましたが、今では多くが休眠ブログになっている。自民党もいまさら小泉改革を否定するわけにも行かず、歪みが表面化しても動きが鈍いのは仕方のないことなのだろう。

何度も言いますが、私はテロを肯定はしない。しかし絶対的な弱者を徹底的に追い詰めてしまえば窮鼠猫をかむでテロに走る者が出てきてしまったのだ。イラクでは女性の自爆テロが頻発していますが、夫や子供がアメリカ軍に殺されてしまえば、自暴自棄になった女性の自爆テロリストが出てくる。アメリカのやり方を真似ていれば日本もアメリカのようにテロの脅威に怯えて生活するようになってしまうだろう。




日本の大手企業は、中国の恐ろしさをすっかり忘れて、ビジネスに
集中するあまり、中国の政治の実態と中国人の品性を甘く考えている


2008年7月29日 火曜日

「中国の独禁法の恐怖」 7月28日 中韓を知りすぎた男

中国が8月1日に独占禁止法を施行する。

この中国独禁法を安易に考えていると とんでもない目にあいます。中国の独禁法は、どのような行為が違反となるかを具体的に示されていない。

ある日突然、独禁法に抵触したとして巨額な制裁金を課せられる恐れがあります。

普通の国の法律なら裁判で どうどうと戦うことが出来るが、中国の法律は正悪を決めるために存在していない。自国の利益のみだけで存在している。

中国にとって法律とは外国を攻撃する武器としてしか考えていない。

もちろん独禁法は公平な競争を保護するという市場経済体制にとって不可欠な法律だが、共産国家 特に中国では国有企業が長年、市場独占を許されてきており、自国の国営企業には目をつぶり、主に外国企業の攻撃に使われる可能性が高い。

ここで中国のホンネを分析して見ます。

中国はこの20年間 「経済開放政策」でまんまと資本主義国家の資本と技術を無料で取り込むことに成功した。しかし外国も技術のコアの部分は警戒して中国に教えることはなかった。

中国から見れば各国は中国の安価な労働力を利用するだけ利用して、各企業は太った。その代わり中国経済も大きくなったが中国はここに至って悔しくて仕方がない。何故なら

当初は各国の大企業やハイテク企業を優遇して投資を引き出してきたが、中国企業がそれらの多国籍企業のように最先端の企業になりえなかった。

例えば中国最大の家電メーカー・ハイアールは2004年以降、大幅な赤字に転落した、そのほかの家電メーカーも相次いで経営危機が伝えられています。

その原因を中国は、各企業が 技術のコアの部分を教えなかったと身勝手な解釈をした。どこの企業だって自社で開発した技術をただで教えるような企業はどこにも存在しない。

そこで中国は独禁法を施行させて、提訴するぞと脅しをかけることよって、技術のコアの部分を手に入れる戦略をとろうとしています。

欧米の企業はいわれなき提訴については それぞれの政府がバックアップしてくれるが、日本の場合は政府が中国に圧力をかけるような、力をかしてくれない、土下座外交が得意な日本政府ではあてに出来ない。

と なれば日本の企業中心に独禁法に抵触したとして巨額な制裁金を科せられる可能性があります。

いいがかりと脅しが得意な中国政府にとって日本企業は格好の餌食にされてしまいます。

中国企業の国内の実力はまだ弱く、いまだ外国の企業と太刀打ちできる段階にはない、その結果、短期間で外国企業が中国国内でシェアを握るケースが増えている。

品性劣悪な中国は努力して外国企業に追いつくのではなく、法律を武器にして、外国企業の技術をただで取り込み、言うことの聞かない企業に対しては巨額の制裁金を科するつもりです。

世界経済のメーンプレイヤーであるトップ500社のうち、300社余りがすでに中国に投資している。法律を自由に解釈するのが得意な中国政府は今後これらの企業にいいがかりをつけて、自由にコントロールするつもりである。

日本の大手企業のなかには、再販価格の維持を指示しているところがあり、真っ先に摘発される可能性があります。

明らかな独占行為として、コンピューターのOS、感光材料、タイヤ、ネットワーク設備、カメラ、ソフトウエアパッケージなどは、直ぐにでも提訴されます。

中国で多くの業界関係者から米マイクロソフトを『適用第一号』にとの声があがっています。中国の国産「EIOficce」を開発した曹総裁はライバルのマイクロソフトを提訴すると息巻いています。

技術的に勝てないと見ると法律を武器にして攻撃してきます。

中国政府は多くの投資をしてしまった大企業はいまさら逃げ出さないと高をくくっていますが、大手企業の一件でも独禁法で摘発されて巨額な制裁金を科せられたら、一目散に逃げ出すことは必定です。

今後大手企業は、留まるリスクと逃げ出す経費と中国市場を天秤にかけて判断を迫られることになります。

情報の遅い日本企業は痛い目に遭わないと、気がつきませんが、早く逃げたほうが勝ちです。

法律があってないような国でのビジネスはリスクが余りにも大きすぎます。

チャイナリスクは怪しげな法律だけでなく、本当のリスクは、食料不足、水不足、環境破壊、資源、エネルギー、政治的腐敗、少数民族の離反、貧富格差の拡大、農村の衰退、年間約8万件に及ぶ住民の暴動、社会的治安の悪化です。

中国はこれらの基本的な問題をほとんど無視しています。

日本の大手企業は、中国の恐ろしさをすっかり忘れて、ビジネスに集中するあまり、中国の政治の実態と中国人の品性を甘く考えて、います。

北京五輪以降、中国は深刻きわまる経済危機に直面し、それが全国的な暴動を誘発して、中国全体の社会秩序を破壊させていきます。

後10日に迫った北京五輪が何事もなくできるかどうか、日本選手の無事を祈らずにはおれません。


(私のコメント)
「株式日記」では何度も中国へ進出すべきでないと書いたし、どうしても進出する時は、ボストンバック一つでいつでも脱出できるようにすべきだと書いてきました。しかし日本の大企業はマスコミが振りまく「中国の巨大市場」の幻想に目を奪われて、数千億円もかけて工場を建設してしまった。

しかし、中国の人民元は切り上げられて行くし、安い労働賃金も引き上げられて行く事は時間の問題だった。だから輸出拠点としてのメリットは無くなったし、中国の国内市場を販路とせざるを得なくなってきている。中国を市場とする場合は日本から輸出したのでは高い関税をかけられるし、中国資本との合弁会社による製造販売しか認めてくれないだろう。

中国資本との合弁といっても中国側は土地を提供するだけであり、工場の建物から製造機械設備から付帯設備は全部日本側が提供する事になる。それで資本比率は中国が51%で日本が49%の合弁となる。つまり中国は資金ゼロで後は全部外資がやってくれる事になる。

当初は税金も免除してくれたし労働者の賃金も安かった。しかしだんだんと地方政府に許可や認可を受けなる事が多くなり、その為には地方政府高官に賄賂などが必要になり、目に見えないコストがかかる事が分かるようになり、停電や従業員のストライキも頻発するようになって環境が悪化した。

中国はプロレタリアート独裁国家なのだから労働者のストライキは無かったはずなのですが労働争議は年中行事のようにあるらしい。だから中国に転勤を命ぜられた日本人幹部の自殺や病死は多いらしい。日本の大企業の幹部があまりにも中国に対して無知であり、単に人件費が安いから利益が上がるだろうと言うことで中国進出を決めてしまうからだ。


中国で邦人自殺者が増加 2006年06月19日 吹浦忠正

たしかに中国で仕事をするサラリーマンの方々は、ストレスが多いと思います。とくに人材不足の中小企業が、関係先が中国に進出したため、進出せざるをえなかった場合には、もともと中国には好きで進出したわけではないですから、その会社から派遣された駐在員にとっては、まさに「中華人民共和国と『本社共和国』の2つの共和国に挟まれている」といえましょう。

  ではなぜそんなにストレスが多いのかといえば、今まで課長、部長職であった方が、中国に赴任して、いきなり社長(=総経理)をやらなければならないのですから、まずはそこで大きなストレスとなるでしょう。

  次に日本で社長をやるのならば、同じ言語で、同じ生活習慣、同じ考えをもった日本人の部下が、真面目に指示を受け、真面目に実行してくれますが、ここ中国では、そんなに甘くありません。まず言語、中国語が話せない、たとえ話せた(普通語)としても上海語等の地方語でしか通用しない、というように言葉の問題は深刻です。同じ会議を開くにしても、中国では3倍以上の時間と労力がかかります。それは日本人の話す言葉を中国語に翻訳する、中国人の言葉を日本語に翻訳する(これで2倍)、お互いの言葉に翻訳された内容に考え方の違いがあまりにもあるためそのギャップを埋めるために摸索をする(これで3倍以上)。

  このように日本ではなにげなく進んでいたことが、中国ではそのひとつひとつにエネルギーを費やして行なわなければなりません。

  一方、日本本社では、安い人件費の中国だから、利益はすぐにでるだろうと決め込んでいることも、駐在員にはストレスに感じます。安い労働力(とはいっても近年の上海における人件費の成長率は恐ろしいものがあり、コスト高でさらに苦しんでいる)の含意には、安い労働力を真に会社の戦力にさせるために、時間をかけて教育を施さなければならないのです。もし日本からたった1人しか派遣されなければ、この教育だけで自分の1日が終わってしまうでしょう。日本人駐在員は、こればかりでなく、顧客対応や本社との対応もあり、とても教育だけに時間を割くわけにもいきません。

  しかしながら多くの日本本社は、即戦力の労働力が廉価で入手できると考えているようです。社長という肩書きを与えておきながら、実質的権限は、日本にいるときと同じ部課長クラスといったケースがあまりにも多く見られます。


  悲劇なのは、中国人従業員にとって、総経理とは、絶大なる権限を投資者から委譲されて、会社を成功に導く指導力を有している人と思っています。総経理が部課長クラスの仕事(いちいち決済を本社に仰ぐ)をしていれば、この会社にいても先が見えないということで、優秀な従業員ほど他社に転職してしまいます。

  このような自社内における労務問題や本社との温度差に加え、さらに役所との折衝や売掛債権の回収等の苦労もあり、まさに日本人駐在員は、孤軍奮闘の毎日であると思います。

  このように現地に派遣された駐在員の会社生活を癒してくれるのは、家族帯同者であれば、家族との団欒でしょうが、単身赴任の方にとっては、日本式居酒屋での愚痴のこぼしあいやクラブのホステスでしょう。商売といえども「お疲れ様」と片言の日本語で笑顔で声をかけてくれるおねぇさんに溺れていく人がいてもおかしくはないかと思います。自殺者の中で女性問題があげられているのも、それだけ彼らには、自分のことを理解してくれる人間を追い求めた結果であるように思えます。


(私のコメント)
このような中国に不都合なことはマスコミはほとんど報道しないし、大企業の幹部達は中国政府の甘い言葉に乗せられて中国進出を決定してしまう。おそらく今回の北京オリンピックが大きな転回点となり、中国政府は外資に対して強圧的になってくるだろう。既に税制面での優遇策も無くなってきたし、労働法が改正されて簡単にクビに出来なくなった。

中国市場を相手に商売をしようと思っても、商習慣も違うし中国人従業員を教育しても一人前になると直ぐに中国資本にスカウトされて転職してしまう。最近では中国からベトナムなどに脱出している企業が増えてきましたが、状況が変われば直ぐに対応するだけのフットワークが大切だ。

しかし中国側も直ぐに移転されないように様々な制約をつけているから、夜逃げを覚悟しないとなかなか倒産することもままならないようだ。韓国企業なども夜逃げが相次いでいるようですが機械をぶっ壊して行かないと同じものが作られてしまうから夜逃げも大変だ。

このように工場を中国に進出させても上手く行かないから、工場の日本回帰が進んでいる。その代わりに中国から労働者を連れてきて安く働かせようとしているようだ。それが自民党の中川元幹事長の1000万人の移民計画ですが、中国で上手く行かないのなら日本でやっても上手く行くはずがない。

もし移民が1000万人やってくれば言葉を覚えて日本の社会習慣に馴染んでもらう必要がありますが、中国人や韓国人は中華意識が強くて同化が難しい。アメリカなどでもコロニーを形成して国家内国家を作ってチャイナタウンやコリアンタウンがアメリカの大都市に出来てしまっている。だからアメリカ人とのトラブルが絶えない。だから日本にも同じ事がおきるだろう。

大企業の経営者にとってはグローバル化は好ましいことであり、御用学者などをテレビなどに出してグローバリズムに乗り遅れるなと訴えている。しかし末端で働いている労働者は賃金が限りなく中国並みの低賃金になり、役員は業績が上がればストックオプションなどで収入が上がる一方だ。その結果、世界各国で賃金格差が広がり中国でもテロや暴動が広がり始めている。

確かに中国やインドなど人口大国がグローバリズムで一部の人間は非常に豊かになり億万長者が続出している。その反面では先進国でも非常に貧しい国民が出てきて不満が高まり、日本では自殺者が毎年3万人を越えるようになり、無差別殺人のようなテロも度々起きるようになった。政治家や経営者はこのような弊害には目をつぶり、グローバリズムを推し進めようとしている。「株式日記」ではこのままでは日本でもテロが頻発するぞと警告しているのですが、政治家達の反応は鈍いようだ。




高齢化と飼料高。今後、廃業する生産者は増えていく。それに応える
ために、はざま牧場のような大規模農家におのずと集約が進む。 


2008年7月28日 月曜日

高齢化という逆境が農業の未来を切り開く 7月28日 NBオンライン

「いやあ、去年はほんとに厳しかった。会社が潰れると本気で思ったよ」。眼鏡の奥の目をまん丸に見開いた間和輝社長はこう言うと、ソファから身を乗り出した。畜産王国、宮崎県都城市で養豚業を営むはざま牧場。エサにきなこを混ぜたブランド豚、「きなこ豚」でその名を知られる。

 都城周辺にある30の農場で牛や豚、野菜の生産などを手がけている。飼育する豚は約12万頭、親牛を含めた牛の数は7500頭に達する。畑の総面積は約200ヘクタール。ここでコメやゴボウ、ホウレン草、サツマイモなども栽培する。2008年2月期の売上高は60億円超。国内でも有数の農業法人である。

 大規模複合農業を実践している間社長。その彼をして、倒産を覚悟させたのは、畜産業に吹きつける猛烈な逆風だった。

大規模化のメリットを吹き飛ばすほどの飼料高

1つは、穀物価格の高騰に伴う飼料高だ。3〜4年前、トン当たり1万3000円ほどだったエサ代。それが、6月下旬には5万円に急騰した。約4倍の上昇。牧場には10万頭を超える豚がいる。エサ代の値上がりによるコスト増は半端ではない。

 さらに、昨年は宮崎県で豚の病気が発生した。この病気で全体の25%に当たる3万頭が死んでしまった。通常の事故率が3〜5%。その影響度合いが分かるだろう。「大きくなって死ぬ“エサ泥棒”もいますから」と間代表。豚の卸売価格が上昇したことや豚の死亡保険に加入していたこともあり、最終的に黒字は確保したが、エサ代と病気によるコスト増は15億円に上った。

 実は、養豚業は国内農業の中で大規模経営を実践する数少ない分野である。1970年に14頭だった1戸当たりの飼育頭数。それが、1990年には272頭、2006年には1233頭に増加した。これは、諸外国に比べてもかなり数が多い。

 2003年のデータだが、米国の816頭、英国の445頭、フランスの327頭に対して、日本は1031頭を数える。これは、オランダの1166頭、デンマークの1041頭と比べても遜色ない。自給率が低下している1つの要因ではあるが、輸入の配合飼料を活用し、効率的な生産をしているためだ。

 昨今の飼料高はこうした大規模化のメリットを吹き飛ばさんばかり。それでも、間社長はこう言って笑う。「ピンチはチャンス。早く激動の時代が来てほしい」。

間社長の言うピンチとは、深刻な問題と捉えられている担い手不足のことだ。農業就業者人口は312万人(2007年)。その59%を65歳以上が占めている。その一方、農業への新規参入者はわずか8万人強。うち39歳以下は1万5000人に過ぎない。

 急速に高齢化が進む農業。食料生産を維持するために、担い手の確保は喫緊の課題だろう。だが、世間の喧噪をよそに、間社長の目は違う方向を見つめている。「後継者不足でやめていく。これは残念なことだけども、若手のやる気のある人が大きな農業経営体を作る機会でもある。今からが本当の出発点じゃないですかね」。

「やめる時はひとこと言ってね」

 この言葉通り、今年に入って都城市内の畜舎を3つ買収した。後継者がおらず、養豚業を続けられなくなった同業者から買い取ったのだ。来年以降、同様のケースはさらに増えると見ている。これは、養豚だけでなく、田畑でも変わらない。

 「やめる時はひとこと言ってね」

 間社長は暇を見つけては、近隣の生産者に声をかけて回る。声をかけるのは70歳以上の農家である。戦後の食料不足を経験した70歳以上の生産者。農地はその家の財産であり、代々守っていくべき物という意識が強い。だが、その子供である40代、50代は兼業農家が大半だ。世代が変われば、はざま牧場のような企業に農地を貸そうという人も増える。間社長は、こう考えている。

 そして、規模の大きな生産者のところには担い手も自然と集まる。約260人の従業員が働くはざま牧場。20代、30代の若者が毎年、農場の門を叩く。彼らの多くが、豚の世話や野菜作りに汗を流している。労働時間は労働基準法で定められた週40時間、給料も人並みにある。こういう企業には、農業であっても若者が集う。

 高齢化と飼料高。今後、廃業する生産者は増えていく。だが、安全でおいしい国産農作物に対する国民のニーズがなくなることはない。それに応えるために、はざま牧場のような大規模農家におのずと集約が進む。「担い手不足」という激動が切り開く農業の未来。それを見越した間社長は予言する。

 「3年か5年かしたら夜明けが来る」



農地法改正案の提出見送り 2008年03月02日 北海道新聞

農林水産省は二十九日、昨年十一月に取りまとめた農地政策改革案に基づく農地法改正案について、今国会への提出を見送る方針を決めた。十分な審議時間の確保が見込めず、衆参の「ねじれ国会」の状況下では、合意の取り付けは難しいと判断した。若林正俊農水相は同日の会見で「与野党間で接点が出てこないと(改正案を提出しても成立は)なかなか難しい」との認識を示した。

 同省は農地の有効利用に向け、耕作放棄地の解消や農地情報のデータベース化を先行させるが、現行の法制度が当面維持されることで、農地政策の抜本改革は遅れることになる。二〇○八年度にも新制度を始めたい考えだが、○九年度にずれ込む可能性もある。



(私のコメント)
昨日に続いての農業問題ですが、農業従事者の高齢化が進んで耕作放棄地は増える一方のようだ。ならば、やる気のある農家に耕作地を貸して大規模化が進んでいるかと言うと進んでいない。農地法の改正が進んでいないからだ。

農業を大規模化しようとすれば農業を法人化しなければなりませんが、現在は農業生産法人に限られて株式会社などは農地を借りて農業が出来ない。それを改正しようと言う法案が見送られたと言う事ですが、自民と民主で大きく対立するような法案なのだろうか?

農業人口は59%が65歳以上であり、39歳以下の農業就業者は15000人に過ぎないそうです。日本の農家は兼業農家がほとんどであり、農業収入はほとんどが50万円から100万円くらいで、規模としては中途半端な農家が多いようだ。耕作機械が普及していなかった頃は人手に頼った農業はこれでよかったのでしょうが、耕作機械の普及で大規模化が可能になった。

しかし65歳以上の農家が6割では、あと数年で大幅に農業従事者が減る事になる。40代30代の後継者がいないのだから、やる気のある農家にとってはチャンスなのであり農地法の整備などを行なうべきなのですが放置されている。昨日も書いたように日本には農業戦略が無いのだ。

日本には農林水産省があるのですが、農林官僚は天下り団体を作る事は熱心でも農業戦略を考える事はしないようだ。農業も株式会社化が進んで家庭単位の農業経営から法人化を進めて専門の農業経営で生産性を上げていく必要がある。今はそのチャンスなのですが法律の整備がダメだ。

日本では農業の大規模経営が出来ないと言うのが常識ですが、畜産業などは大規模化が進んでいる。卵などは物価の優等生と言われるくらいですが、養豚業も昔は14頭程度だったのが今では1233頭にまで大規模化が進んでいる。だから豚肉などは海外から輸入している物は見かけない。

鶏肉なども年々輸入量が減っているのは養鶏業の大規模化が進んでいるからだろう。牛肉などもいずれは大規模化が進んで輸入しなくても済むようになるかもしれない。牛乳やバターの生産過剰も数年前に起きましたが、コストはまだ高いものの生産量的には国内で間に合うようになって来た。

このようの農業の大規模化が日本では出来ないというのは限られた分野であり、アメリカやオーストラリアには広大な農地があっても農業用水の不足で慢性的な旱魃が起きるようになってきている。その点では日本の農地は灌漑設備が整備されて水不足の心配が無い。

コメなども量的には100%の自給率であり、問題はコストが高い事だけだ。コメは大変生産性の高い作物であり、タイなどはコメの三期作四期作で世界一のコメの生産国だ。日本だってやろうと思えばコメの二期作などは可能ではないかと思うのですが、減反政策で農地が放置されている。

農家の若い人が農業を継がないのは規模が小さくてダサいと思われているからですが、やる気さえあれば一人で規模を拡大して3000万円も稼いでいる若い農家もある。コメなどは大規模農業に適した作物であり、兼業農家で作っても採算に合わない。問題はコストが高い事であり、安く出来れば余剰があっても海外に輸出が出来るから減反政策のようなことはやらなくて済む。

記事に紹介したはざま牧場はやる気のある農家ですが、養豚や肉牛や畑作で年間60億の年商がある。やる気さえあればいくらでも規模の拡大が出来るのですが、日本の農林行政が時代に合わないために農業の近代化が遅れている。しかし農家の高齢化で大規模化のチャンスが巡ってきている。

若い人にとっても農家は嫁の来てがないダサい仕事というイメージがあるが、ダサいのは農家自身の意識であり、卑屈なまでの田吾作根性だ。昔は農業しか産業が無かったから規模も小さく貧しいのが農業の代名詞だった。しかし近代農業は機械化と大規模化が進んで品種改良などのバイオ産業も組み込んだハイテク産業になりつつある。

都会で背広とネクタイを締めてパソコンを相手にした仕事のほうが、派遣などに取って代わられて年収200万円のダサい仕事なのにあこがれるのはなぜなのだろうか? IT産業だの金融産業などと言うのは製造業などの派生産業であり、それだけで国家を支えていく事が不可能なのは金融立国を目指した国が金融破綻で滅んで行くのを見れば分かるだろう。金融産業が倒産したら何も残らない。


農業がハイテク産業というのは、農産物の市場価格の変動が激しいために、来年の作付けをどうするか様々な情報を分析して決めなければならない。養豚業にしてもピッグサイクルと言う需給変動がありますが、そのような需給変動に上手く乗った所が勝ち残って行く。

地方は農業の振興こそが地方の活性化の切り札であると考えるべきなのだ。もはや工業団地を作っても工場はやってこない。地方は若い人には仕事が無いと言うが、道路作りももはや限界だ。企業家精神のある若い農家ならば、高齢化の進んだ農業を一気に近代化するチャンスが来ている。ところがマスコミは大変だと危機意識ばかり煽り立てている。ピンチが無ければチャンスもやってこない。




食糧自給率39%の日本が、なぜ輸入食糧に多額の関税を掛けるのか?
関税によって農業を守るのではなく、政府の財源となってしまっている!


2008年7月27日 日曜日

<ドーハ・ラウンド>裁定案で日本窮地に 支持する国なく 7月26日 毎日新聞

世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の非公式閣僚会合で、ラミー事務局長が25日提示した大枠合意の裁定案は、日本にとって農業分野のさらなる市場開放を迫る厳しい内容になった。特に日本が問題視するのは、例外的に関税削減幅を低く抑えられる重要品目の数。だが、日本の主張を支持する国はほとんどなく、裁定案をくつがえすのは容易ではなさそうだ。

 裁定案は、先進国の重要品目数を全品目の4%とし、低関税の輸入枠を拡大した場合に2%の上乗せが認められる。これに対し、日本は8%を譲れない線としてきた。

 日本の全農産品は1332品目。日本が主張する8%が認められれば、現在200%以上の高関税を課している101品目は少なくとも重要品目として大幅な関税削減は避けられる。だが、6%の場合、対象になるのは約80品目。コメ類だけで17品目あり、これに麦や乳製品類を加えると96品目になり6%のラインを超えてしまう。

 重要品目以外は関税を7割削減しなければならず、現在1706%の高関税を課しているコンニャク芋が重要品目から外れれば、税率は一気に約510%に下がる計算だ。そうなれば中国など低価格のコンニャクの輸入量が急増するのは必至で、国内約4200戸のコンニャク農家には死活問題となる。

 現地で交渉に当たる若林正俊農相は裁定案を「非常に不満だ」とし、今後も8%を強く訴える構えだが、米国や欧州連合(EU)は重要品目数について異論はなく、日本は孤立状態になっている。

 閣僚会合には「(決裂すれば)世界経済に大変な影響を及ぼすので、そういうことがないよう努力していこうとの空気がある」(若林農相)といい、自国の主張だけを押し通すのは難しい状況で、日本は極めて厳しい立場に追い込まれている。【行友弥、平地修】


小麦が値上げで自給率がどうと言うけど  2月17日 Big River not Small River

輸入小麦の政府売渡価格を4月から30%引き上げ=農水省

このニュースを受けて、いろんなアナウンサーやコメンターが「日本は自給率が低いから国際価格の上昇によって影響を受ける。こういう目にあわないように国内の自給率を上げなければ」と言いますが、冗談じゃないです。
正確に言うと「国内自給率を維持するために、我々は国際価格以上の小麦価格を受け入れなければならない事態に追いやられているのです」
小麦の輸入については、民間が独自に輸入しようとすると約250%もの輸入関税がかかってしまうために、実質政府が独占的に取り仕切っています。 政府は海外からの調達価格に、港湾諸経費(2102円/トン)と国内生産者への補助金となるマークアップ(16,868円/トン)を上乗せした上で、国内製粉会社に売り渡しています。
4月からの輸入小麦価格は69,120円/トンとなりますが、その価格は輸入調達価格の約4割増となっているのです。
日本の小麦の自給率は10%ほどですが、この10%を維持するために、我々は国際価格の4割増の価格を払わされているわけです。
欧州では、以前紹介したように(http://blogs.yahoo.co.jp/eisaku35/52208217.html)、国際価格高騰による消費者のダメージを和らげるために輸入関税をゼロにしているのに対し、日本は国内小麦農家を保護するために、うどん屋やパン屋といった中小の食品業と消費者にダメージを与え続けているわけです。
本当にこれでいいのでしょうか?
小麦価格は国際価格で輸入して、小麦農家には戸別の所得保障を行う方が良くないですか?
皆さん騙されちゃいけません。


なぜ食糧の輸入関税は下がらないのか? 5月8日 Big River not Small River

前回バター不足に関してバターに関する輸入関税について書きました(http://blogs.yahoo.co.jp/eisaku35/54781355.html)。
また、小麦の輸入に関して、政府が国際価格にマークアップを上乗せした売り渡し価格で民間に小麦粉を販売しているとの説明をしました(http://blogs.yahoo.co.jp/eisaku35/53493791.html)。

日本に限らず先進諸国は国内の農業保護のために外国産農産物の輸入に関して輸入障壁を設けています。
しかし、EUは穀物の国際価格の上昇に応じて輸入関税を撤廃するという国内の消費者の利益を考えた政策を行っている(http://blogs.yahoo.co.jp/eisaku35/52208217.html)のに、日本では輸入関税などの輸入障壁を一時的にでも撤廃しようという議論が起こらないのは何ででしょうか???

それは結局はガソリン税と同じ構造なんです。

つまり、政府は財源を離したくないんです。バターの関税収入も小麦のマークアップによる収入も農水省にとっては貴重な財源なわけです。
そんな貴重な財源一時的にも撤廃することできるわけないじゃないですか。
だからこそ、色々な理由をつけて国際価格上昇の負担を国民に押し付けているわけです。
ガソリン税の撤廃を嫌がって環境問題を出すように、農産物価格の高騰は中国や世界経済の性にしているだけなんです。


以前、アメリカからの牛肉の輸入再開について、NewsWeekでこういう記事がありました。
牛肉の輸入再開に関して、一般的にはアメリカからの輸入再開圧力に日本側が屈したとなっていますが、実際には、日本側から輸入再開を積極的にアメリカ側に要請したのだと。

なぜか?

それは、アメリカからの牛肉の輸入禁止を続けると、牛肉の輸入関税を財源とする農水省の天下り特殊法人の収入が不足する事になるからなのです。輸入禁止していると輸入関税の収入は入ってこなくなりますからね。

NewsWeekはアメリカの雑誌だから、あまり鵜呑みにするのはどうかと思うのですが、僕は実際ありえる話なのではないかと思います。

このように農作物の貿易を考える時には財源を求める政府の行動を考えることは忘れてはいけないと思います。


(私のコメント)
公務員の天下り問題がなぜ問題なのかと言うと、働かずに税金で生活している人が増えれば国や地方の財政赤字が大きくなる一方だからだ。輸入関税も税金の一種なのですが500%とか1000%の税金をかけていても、輸入関税だと農家の保護のためだと納得してしまって、最終的には消費者が関税を払っている事に気がつかない。

高い関税で農業が守られているにもかかわらず、日本の食糧自給率は年々低下していまや39%だ。つまり高い関税でも守っても効果が上がっていないわけでして、農業の生産性が上がっているわけではないようだ。むしろ高齢化が進んで農業従事者は減っている。

欧米でも農業は戦略産業であり多額の政府補助金が出ている。それは即ち国民の税金ですが、日本の関税とは違って農家に直接支払われている。日本の農産物輸入関税は政府の天下り団体が輸入関税を独り占めしてしまって農家に行く分は少ない。だから日本の農産物輸入関税は多品種にわたっている。品種ごとに天下り団体が作られて官僚たちは働かずに高給をもらい続けている。

このような実態はマスコミはほとんど報道しないし、マスコミは中央官庁とズブズブの関係だ。ただ単に天下り反対と言ってもどんな弊害があるのか指摘しなければ効果が無い。毎日新聞の記事ではなぜ重要品目が101品目もあるのか解説されていない。コメ類の17品目も全部に関税を掛ける必要があるのだろうか?

本来ならば国際価格が上がれば関税を撤廃してもいい農産物が増えるはずですが、日本では国際価格が上がるとその分が値上がりする仕組みになっている。本来ならば国際価格が上がって国産品が競争力が付けば農家の生産量も上がるはずですが、日本では世界的な農産物高騰でも自給率の向上には結びつかない構造になっている。

日本の農産物保護が多品種にわたっている事は、農林水産省が天下り対策で行っている事であり、農家の保護にはあまり役に立ってはいない。高率の関税を掛けて消費者に負担させるよりも、農家への所得補償のほうが消費者にとっては安く上がる。民主党は小沢代表がこの政策を掲げて参院選で大勝利して多数となりましたが、これは農林水産省は大反対だろう。

問題なのは農家が輸入関税によって守られていると思い込んでしまっていることであり、いくら高い関税を掛けてもそれは農家への直接の補償にはならない訳であり、政府の天下り団体がピンはねをしてしまって農家には直接には行かないのだ。最大の農産品目であるコメにしても、所得補償方式なら1兆円で済むのに、農業補助金は5、5兆円も使っている。


日本の農業の実態 6月14日 うなぎを見れば日本が見える

●農業関税率
日本・・・・・・50%
アメリカ・・・・12%
EU・・・・・・・30%

*日本は、米や落花生、こんにゃくなど関税500%以上、バター、砂糖、大麦、小麦など200%以上の品目がある。
これら、禁止的に高い税率であれば、輸入されないので輸入額で計算した平均関税率は低くなる。
だから、実態は上記の「農業関税率」に近いと思われる。
特に米の800%近い関税が「農業関税率」を押し上げている。
OECDの推計では日本の国境保護は国際価格の1.592倍。
つまり関税が0になれば、輸入品の価格は現在の約60%になる計算。

4)農業補助金

補助金予算5.5兆円
(補助金;2.7兆円、価格維持;2.8兆円)

5)日本の農業総生産・・・・・・4.9兆円(ピーク時は7.9兆円)

6)「農業を守る」ための負担

5.5兆円(補助金)+2兆円(輸入関税による輸入品価格への転嫁)=7.5兆円
この額は国民一人当たり平均6万円。
1世帯当たり16万円。
これにより全人口の4%(世帯数比率)の農家を支えている。

その他)

国内総生産額512兆円に対して農業総生産は4.9兆円と1%に満たない。
一方、労働人口からみると、総就業人口6151万人に対して312万人と約5%。

耕地面積465万haなので、農業労働者一人当たり、1.5haの耕地を利用して、年間157万円の農業生産を行っている。
農業補助金を除くと、実質生産額は50-100万。
価格維持費などを除くと、マイナス。

日本の農業は
莫大な補助金を出しながらも、いや出したからともいえるが、衰退してしまった。
補助金予算ばかりが増え、生産額が減っている実態もある。


経済合理性だけで判断できないのは当然だが、
かといって今までのやり方で、農業を守り、伸ばしていく施策が良いはずはない。


(私のコメント)
日本の農業の生産性が上がっていかないのは、ちゃんとした農業戦略が無い為であり、安い海外農産物を高い関税を掛けて輸入して国産価格で売っている。これでは国内農家も輸入物に押されて利益が上がらず、天下り団体は高い関税分を利権として確保してしまっている。それなら単純に欧米のように国内生産コストと輸入価格の差を補償金で買い上げたほうが安く付くのだ。農家にとってもそのほうが利益になる。

これならば、国際価格が上がれば補助金も少なくなるはずですが、日本では天下り団体がピンはねしている為に消費者価格に上乗せされる構造だ。バター不足も同じ構造であり、政府が買い上げて余剰分は海外に輸出できるように、欧米のような補助金をつけて輸出すればいい。それくらいの事をしないと国内自給率は上がらないだろう。

農業補助金に5,5兆円も使われているのに、農業総生産は4,9兆円だ。本来ならば農業総生産に1兆円か2兆円の農家への所得補償金支払えばすむのに、4兆円も無駄にどこかに消えている。それは天下り団体であり農業基盤整備事業という土木工事代金に消えているのだ。つまり農家には回らない仕組みなのだ。




2000年6月に施行された大規模小売店舗立地法の影響は、東京
から1500キロ離れた本土最果ての地でも本格化し始めました。


2008年7月26日 土曜日

イオンとノスタルジーの関係 2008年1月30日 プレジデント編集部 九法崇雄

さて、年が明けて1カ月が過ぎようとしていますが、みなさま、どのような年末年始を過ごされましたでしょうか? 私は故郷・鹿児島に帰省していました。正月を実家で迎えるのは3年ぶりのこと。しかし、やすらぎは束の間でした。一昨年結婚し、嫁を連れて帰ってきた弟と比較して、「オレが定年で辞める前には、結婚しろよ!」という父。第一子が生まれたばかりの従兄弟には、「早く親孝行してやれよ!」と言われる始末。悪気のない攻撃は、一番ダメージが大きい。両親には、「結婚するまで2度と帰らない!」と捨て台詞を残し、3日の午前中には鹿児島を後にしたのでした。

 それはさておき、久方ぶりに戻った我が故郷・最大のニュースは、ショッピングセンター・イオンの誕生でした。全国どこへ行ってもみかけるこの巨大艦隊が鹿児島に初上陸を果たしたのは、昨年10月。元日のテレビでは、イオンの初売りで福袋を抱え嬉々とする主婦の映像が流れていました。なんと平和な正月の光景であることか!
 正月2日、特にやることもなかった私は、早速ネタづくりにと行って参りました。まずは、その大きさ(敷地面積110,656平方メートル)に唖然。そして、客層に驚愕。中年夫婦はもちろん、来年30の大台に乗る私とほぼ同年代とおぼしき子連れ夫婦、それよりさらに若い女子校生の集団までもが、"巨大艦隊"のトリコとなっていました。無印良品、ユニクロ、紅虎餃子房など東京でもおなじみの店を中心とした約200の専門店は、大いに魅力的に映るのでしょう。
 2000年6月に施行された大規模小売店舗立地法の影響は、東京から1500キロ離れた本土最果ての地でも本格化し始めました。地元の商店街は戦々恐々としています。「イオン進出を機に地元は結束を固めつつある。県内一の商業集積を誇る天文館地区は、JR鹿児島中央駅のアミュプラザ開業に次ぐ試練を前に『We Love 天文館協議会』を発足させ、まちの活性化に取り組み始めた」(南日本新聞2007年10月4日 社説)とはいうものの、成果はいつになることやら。今や、中心市街地にあった3つの映画館も消えてしまいました。もはや、集客装置は、飲み屋とパチンコ屋しかなくなりつつあります。

「この街ではジャスコに行くと必ず旧友に会える」とは、北海道出身の漫画家・滝波ユカリさんが描く人気漫画『臨死!江古田ちゃん』の主人公のぼやき。かつて一番の繁華街に行けば、中学・高校時代の同級生に必ず出会ったものでした。今や、それが郊外のショッピングモールに移ってしまったのです。
 もちろん、この状況は鹿児島ばかりではありません。昨日、劇作家・本谷有希子さんの取材で訪れた石川県・金沢市の郊外でも、金沢駅から20キロほどの道中に3軒のショッピングセンターが覇を競っていました。(この模様は、小誌の巻頭連載「クローズアップニッポン」に掲載します。季節が変わるころ、みなさまへお届けできる予定です。)

 どこへ行っても同じ風景では、故郷へ帰ってもノスタルジーさえ感じることができません。そう考える人が増えれば、帰省客も減るでしょう。地方自治体にとって、盆・正月の帰省客が及ぼす経済効果は相当なものになると思うのですが……。


(私のコメント)
日本全国に張り巡らされた高速道路網と巨大ショッピングセンターは日本全国を郊外化しました。つまり東京の郊外も日本最南端の鹿児島の郊外も同じ風景になったということです。高速道路網が建設されると言う事はそれだけ自動車の普及が進んで、日常生活に欠かせないものと成っている。

これは日本だけではなくフランスでも同じ風景が見られると言う事で、メキシコやチリでも同じ光景が見られると言う事です。それだけ自動車が安くなって地方では一家に一台ではなくて一人に一台という家も多い。もはや地方都市は鉄道と駅前商店街の時代ではなくなり、幹線道路と巨大ショッピングセンターの時代になっている。

これには2000年の大店法の改正が大きなきっかけになっている。東京近辺でも続々と巨大ショッピングモールが作られて近県から自動車で買い物客がやってくる。都内に住んでいる私には縁の無い生活ですが、アメリカ的な車を中心にしたライフスタイルが定着している。

もはや鉄道は過去の遺物であり、都内の路面電車はとっくの昔に撤去されてしまった。モータリゼーションの時代が来れば駅前商店街が寂れるのは時代の必然であり、家庭の主婦も車で買い物に巨大スーパーに行くのが当たり前になった。車で買い物をすれば沢山の物を買っても車に積んで帰るからまとめ買いができる。

食品なども冷凍物などが中心となって毎日買い物に行かなくてもよくなった。そして各家庭には大きな冷蔵庫に冷凍食品が保存されて、調理は解凍して暖めるだけでよくなった。このようなライフスタイルが九州から北海道までまったく変わらない生活を定着させた。

もはや東京も地方も生活のスタイルは差が無くなったし、地方のほうが物資的に豊かなのではないかと思う。日常生活品はショッピングセンターに行けば何でも揃っているし、生活空間は都内のマンションよりもゆったりしているから電化製品なども置き場所に困らない。

だから大店法の改正は時代の流れでもあるし、地方の消費生活を豊かに変えた。しかし地方には中心となる商店街が解体して、散在する住宅があるだけになりつつある。幹線道路も車の往来はあっても人影を見かけることは無い。テレビドラマや映画などで見られる地方の日本的風景は過去のものであり、ハリウッド映画的なネオンサインが24時間点滅する光景が当たり前になった。

地方においてもコンビニが24時間営業しているし、大都会の不夜城が地方においても変わりがなくなった。だから夜中に未成年者が出歩いて事件や事故が起きていますが、ライフスタイルの変化は家族関係も変えつつあるのだろう。犯罪にも自動車が使われるのは当たり前であり、よそ者がどんどん入り込んできて地方と言えども犯罪が増加した。

東京では車を持っていても、車を止めるところも無く、駐車違反の取締りが厳しくなり、スクーターでも止めていると違反切符を切られる。だから最近では自転車で都内を出歩いていますが、地方では駐車場がない所は無いから車の普及はますます進む。

このような郊外型のライフスタイルはこのまま定着して行くのだろうか? 自動車なしでは生活できないと駐車場が無ければ生活できなくなり、駅前商店街が寂れたのも駐車場が無かった為だ。その結果地方都市も駐車場の確保が必要となり市街地の半分近くを駐車場が占めるようになる。その結果中心市街地も虫食い状に駐車場になって寂れて行ってしまう。


車社会の行き着いた先で考えたこと 2005年08月01日 佐藤研一朗

私が今住んでいるロッチェスターは車社会の行き着いた先だ。このコダックの本社がある人口20万の地方都市であるロッチェスターは、ニューヨーク州の北のはずれにあり、中心部は非常にさびれている。

しかしこのロッチェスターも、40年前までは、非常に栄えていて一時期は人口が30万人に近づいたこともあった。繁華街はひとであふれ、歩くのに苦労するくらいだったのだ。1950年代までは、このロッチェスターには路面電車が走っていて、街の端から端までこの路面電車で移動できたのだ。

しかも、驚いたことに、その上ロッチェスターには地下鉄まで走っていたのだ。アメリカで地下鉄をもった一番小さな市だったそうだ。しかし、車社会の到来とともに路面電車がクルマのじゃまだということで、廃止された。もともと赤字運行だった地下鉄は、路面電車が廃止されたため乗り継ぎができず、その利便性をうしなって、60年代には廃止されてしまったのだ。

この間、この閉鎖された地下鉄のトンネルに、懐中電灯をもって、見に行った。まるで猿の惑星にでてくる人類が滅んだ後のニューヨークの地下鉄の場面のようだった。なんと愚かなことをしたんだろう。何千億もかけていながらと思わずにはいられなかった。「懐にやさしい交通手段でないと長持ちしない。」大内教授のコメントを思い出すようではないか。毎年赤字を出している仙台の地下鉄が、こうならないと誰が言えるのか。

この後、地下鉄を廃止したロッチェスターがしたことは、道路の幅を広げ、郊外への幹線道路整備に全力をあげた。そのおかげで、幅の広い高速道路はきれいに整備され、半径2キロの市の中心部の周りをりっぱな環状線が走っている。ロッチェスター人の自慢は、高速道路にのれば、クルマで、市内どこでも15分から20分でいけること。ラッシュアワーといっても、仙台で言う渋滞というのはない。でも渋滞がない本当の理由は、道路が立派だからではなく、もう誰も中心部にいくひとがいないからだ。

ロッチェスター市が道路の整備の他に力をいれたこと、それは市の中心部に駐車場を沢山作ること。すべての人が車で中心部に乗り言えるのだから、それだけ大きい駐車場が必要だ。それで、どんどんビルをつぶして駐車場をつくった。その駐車場からオフィスまで、外にでずにいけるようにと、スカイウエーという、ビルとビルの間に通路をつくった。その結果、人はとおりを歩かなくなり、小売店はつぶれ、中心部はガラガラと音をたてるように、さびれていった。人が行かなくなったので、中心部にあった三越のような立派な百貨店は郊外のショッピングモールに移っていった。そして取り残されたように空っぽなビルだけのこった。

そうしていくうちに、基幹産業のコダックの業績不振もあり、中心部にあったオフィスもどんどんなくなっていった。オフィスもなくなり、小さな商店もなくなり、百貨店もなくなった。中心部は加速的に衰退していった。私はこのロッチェスターの中心部にすんでいる。ここには人もあまり住んでいなく、スーパーマーケットの一つもない。クルマのない私は、食料品を買いに行くためにはバスに20分もゆられなくてはならない。中心部のアーケード街なんてなく、ぶらぶらと買い物もできない。バスにのって40分、郊外のショッピングモールまでいってやっと買い物ができる。

市は何とか街を立て直そうといろいろやっているが、やることなすことうまくいかない。この間、鳴り物入りで登場したカナダ行きの高速フェリーもたった3ヶ月でつぶれてしまった。「なんて、あほな街なんだろう。」ロッチェスターの数々の失敗を見るたびに、そう、私はつぶやく。

ロッチェスターの人はたまに自嘲気味にこんなことをきいてくる。「おまえ、なんでこんなロッチェスターにきちゃったの?」と。「私もお金があればこんな所にいないんだけどね。。。」ロッチェスターは、街の中心をうしなって、自分たちの街に誇りをうしなった。そして自分自身にいつも自信なくこう問いただしている。「なんで、おれはこんな所にいるんだろう。」かと。

こうして、中心部は、この空っぽのビルと、空っぽでだだっぴろい駐車場だけがのこる街の抜け殻になった。眺めのいい私のアパートのまどから街をみおろす。この日曜日の午後ひとっこ1人もあるいてはいない。ばたんと言う音がしてそちらの方向をみると、だだっ広い駐車場で、少年がひとり、スケートボードの練習をしている。「ばたん、ばたん」と乾いた音がむなしく響き渡る。

こんな風景をながめながら、仙台の未来をかんがえ、今回の特集記事を書かせてもらった。国がついているから大丈夫とか、税金だから問題がないとかいって、自分の身の程もわきまえず、需要もない、そして巨額な建設費をかけ交通機関をつくれば、いつしか財政が破綻し、地下鉄を廃止せざる得なくなる。その時、僕らは、広い道路もなく、公共交通機関もなく、道路はいつも渋滞し、中心部は寂れ、教育費も捻出できなく、誇りを持つこともできないような仙台に住むことになるだろう。

仙台人よ。もうすこし、自分たちのことを考えてくれ。自分には関係ないとか、誰が政治家になても同じだとか、ナニをやっても変わらないとか、ふざけたことばかり言っていないで、自分でいろんなことを調べて、考えて、人にあって議論をして、自分の意見をどうどうと発言して、どうか自分に自己規制しないで、どんどん行動してほしい。

結果は結果。原稿用紙にして100ページ。言いたいことはいった。提案できることは提案した。自己規制をしないでやれば、このくらいのことが自分にできることがわかったから、いい機会だった。

これからも自己規制せず、どんどん文章をかいていくことにする。それがいくら、仙台人にいやがられてもだ。仙台には批判がないのだといことが今回よくわかった。



(私のコメント)
今でも地方では道路を作れと国会議員が騒いでいますが、自動車中心の生活は市街地を破壊していく。国も地方も今やらなければならない事は、車がなくても生活できる都市づくりであり、まったく日本の政治家は正反対の事をしているのだ。高速道路と巨大ショッピングセンターの生活は確かに地方の消費生活を豊かにしたが、駅前商店街を始めとして地方都市を破壊して行く。

地方都市などいらないという人がいるかもしれないが、ならばどうして地方から東京などへ人が集まるのだろうか? 地方にも都市がなければサービス業などの仕事も出来ないだろうし、農業だけではやっていけないのだ。地方の人は活性化のためにイオンなどの巨大ショッピングセンターを誘致するのでしょうが、消費生活は豊かになっても仕事が無い。

鹿児島では三つあった映画館も無くなり中心市街地の空洞化も始まっているようだ。人が集まらなくなり散在するようになれば産業も起きなくなりロッチェスター市のようになる。地方都市が衰退するからますます若い人は東京に集まってくるようになる。だから地方都市においても車がなくても生活できる都市づくりをすべきなのだ。




米国の真の危機は、中長期的に基幹産業たる金融産業が
衰退し、それに伴って潜在成長率が低下していくことにある。


2008年7月25日 金曜日

米国の金融産業は衰退し、潜在成長率低下という本質的危機を迎える 7月23日 ダイヤモンドオンライン 辻広雅文

米国の真の危機は、目の前で激しく軋む金融システム危機ではなく、中長期的に基幹産業たる金融産業が衰退し、それに伴って潜在成長率が低下していくことにあるのではないだろうか。

 サブプライムローン問題が暴きだしたのは、30%や40%ものリターンを得られるという投資銀行とその出資者が抱き続けた野望が今や幻想に過ぎない、という事実である。とすれば、その金融産業に支えられてきた覇者米国の経済成長は、砂上の楼閣と化すのではないだろうか。(中略)

21世紀に入って、そもそも投資銀行やヘッジファンドがハイリターンを得るのは難しい局面に至っていた。その焦りがサブプライムローンに深入りした原因ともいえる。

 金融取引は、市場の歪みを利用して利益を得る。それを、裁定取引という。その歪みが大きければ大きいほど、成功したときの利益は巨額になる。

 有名な2つの例を挙げよう。

 1992年、英国は景気低迷に陥っていた。当然、通貨であるポンドは弱含んでいたのだが、欧州通貨制度(EMS)に加盟していて他通貨と連動義務があったために、実力以上の高値がついていた。時価と実力値が乖離していたのである。

 英国政府はいずれポンドを切り下げ、EMSから離脱せざるをえないと読んだジョージ・ソロス氏は、その価格の歪みに付け込んだ。英中央銀行(BOE)を相手に膨大なポンドを売り浴びせ、BOEが買い支えきれなくなり、目論み通りに下落すると底値で買い戻し、20億jもの利益を上げたのだった。

 1998年、ドル連動制によって高止まりしていたアジア各国通貨がヘッジファンドの猛烈な空売り攻勢で暴落し、アジア危機が発生したのも、英国と同じ構図である。

 このように、投資銀行やヘッジファンドは大きな歪みを求めて世界中を徘徊する。短期的利潤を獲得できる場を強引に作り出すさまは、「焼畑農業さながら」(池尾和人・慶應義塾大学教授)である。投資家から30%もの収益期待を負うから、並みの歪みでは満足できないのである。

だが、歪みを利用した金融取引、裁定取引は、それが繰り返されることで金融市場の歪みが解消され、効率化が進むという性質を持っている。また、各国政府や大企業などのメインプレイヤー、いわばプロたちは過去の教訓に学び、金融知識と実践的技術を習得した。金融機関と対等なほどに、金融取引に洗練した。

 世界の金融、資本市場で効率化が進むと同時に、もはや、1990年代のBOEやアジア各国のように、へまをしてくれる政府も中央銀行もいなくなったのである。

投資銀行やヘッジファンドにすれば、この10年で“焼畑”に適した耕地、つまり収益機会は大きく減ったことになる。

 そこに、金融に無知、金利に鈍感なアマチュアの集団――住宅ローンの消費者金融版、サブプライムローンの購入者たちが登場した。米国住宅バブルに酔い、彼らは自らの返済能力を見失い、借入額を膨らませた。返済能力と借入額の関係は大きく歪んだ。

 サブプライムの購入者にすれば、得られるもの(住宅)に比べ、失うもの(元利返済金)のほうがはるかに大きい。金融機関にすれば、与えるものより、得られるもののほうがはるかに大きい。日本で問題になった消費者金融も同じである。つまり、金融に無知なるがゆえに不等価交換、無理な取引に応じてしまう。金融機関は、そこに付け込む。経済学では、「略奪的取引」と言う。

 ローンを貸し込み、その証券化商品に、ここを先途と世界中のヘッジファンドや投資銀行が群がり、深入りしたのは、世界中でビッグビジネスのチャンスが減った焦りが背景にあろう。サブプライムローンは最後の焼き畑農業だったのだ。

 ところが、それすらも幻想であったと、今は言える。住宅市場の悪化で金融機関は損失を拡大する一方だ。それは、何年かの間にサブプライムローンとその証券化商品で稼ぎに稼いだ利益を、吐き出す過程ともいえる。そうして利益と損失を通算すれば、サブプライム関連ビジネスは、30〜40%ものハイリターンを生むビジネスどころか、ひとケタ代前半の極めて平凡な金融取引、もしくは赤字取引として総括されるだろう

新興国に投資しても真っ当な投資であれば、せいぜい10〜15%のリターンしか望めまい。世界のどこを探っても大きな歪みなど見当たらなくなったところに、当局の経営監視機能が働く。もはや、米国の投資銀行は高収益のビジネスモデルは保てない。機関投資家などの高い期待を収益化することはできなくなる。

 預金貸出し中核である商業銀行の業務は極めて退屈で、有名大学のMBA取得者などは相手にしないといわれてきた。投資銀行も、今後は似たような存在になってしまうかもしれない。

 問題は、金融産業が米国の基幹産業であり、米国流のグローバリゼーションを世界的拡張に乗って成長を続けてきたことである。その中核であるハイリターンの巨大な金融機関群が平凡な利益水準に落ち、凡庸な経営しかできず、存在感を小さくしていけば、米国の金融市場、資本市場に影が差し、ウォールストリートは活気を失い、機関投資家も個人投資家もおカネの投資先に困る。

 それら総体からなる金融産業が衰退すれば、現時点で数値的なシミュレーションはできないが、米国の潜在成長率の低下は確実であろう。

 潜在成長率が低下すれば、国内のあらゆる経済システムがそれに適合(アジャスト)しなければならない。それがどんなに大変なことか、バブル崩壊以降に潜在成長率が低下し、年金をはじめとして数多くの制度設計に狂いが生じ、いまだに適合不全に苦しんでいる日本が証明している。

 中長期的に渡って進む潜在成長率の低下と、それに伴う経済システムの変容こそ、米国の本質的危機ではなかろうか。



(私のコメント)
GDPと金融資産の関係は以前にも書きましたが、金利との兼ね合いを考えれば一定の比率を保っていなければならないはずだ。分かりやすくいえばマンションの家賃が10万円なのに、マンション自体の価格は3000万円から1億円に値上がりしているような状況が生まれている。

3000万円のマンションが10万円の家賃ならば利回りは4%ということになる。ところが1億円のマンションで10万円の家賃では1,2%の利回りにしかならない。こうなるとマンションは暴落するか、家賃が30万円ぐらいに値上がりするかして調整される。

経済が成長して30万円の家賃を支払える人が多くなれば1億円のマンションも正当な価格ということになる。GDPが毎年二桁成長しているのなら、マンションの価格も2倍3倍に値上がりしても不思議ではない。日本の高度成長期もGDPの増大とマンション価格の値上がりは実需がともなっていた。

ところがバブル期になるとGDPの伸びが3%、4%程度なのに株価や不動産価格は2倍3倍に値上がりした。株式も不動産投資も利回りは1%程度になり、値が上がるから買われる様な状況になった。アメリカもこのような状況になり、返済能力の無い人も住宅ローンで家を買うような状況になった。家の値上がりは必然であり住宅ローン会社はローンを証券化して売ってしまうからリスクは無い。

このような状況で1億円のマンションは1億円の価値があると言えるとどこで言えるのだろうか? その値段を決めるのは利回り採算だ。30万円とか40万円でも借りる人がいれば1億円の価値のあるマンションと言えるが、10万円の家賃でないと借り手が現れないようなマンションは良くて3000万円の価値しかない。

このように家賃がGDPであるならば金融資産はマンションの評価額だ。それがアメリカではGDPの10倍にも金融資産が膨らんでいる。アメリカは金融産業が基幹産業であり30%の利回りや40%の利回りで稼いできたのだから、アメリカを見習えと日本の経済学者やエコノミストは称賛した。

アメリカのゴールドマンサックスやモルガンスタンレーと言った投資銀行は日本には無いものであり、役員や経営者などが元政府高官などがなっているから政府系金融機関のようなものであり、ポールソン財務長官はゴールドマンサックスのCEOだった。これではアメリカの金融政策はGSに筒抜けだろうし、GSにとって良い事はアメリカにとっても良い事であるといえる。

即ち、国際金融資本の利益はアメリカの国益でもあり、アメリカは本来のアメリカではなく国際金融資本に乗っ取られた国家である。金融産業は国策産業となりGSやMSの社員はエリート中のエリートが成り、新入社員でも億単位の年収がもらえた。このような金融産業に、キッシンジャーのようにアドバイザーとなって外国との仲介ビジネスで稼ぐ仕事がアメリカ政府高官の天下り先となった。

だから、ライスやヒルのように退任まじかになると中国や北朝鮮に擦り寄って政府高官とのコネ作りに夢中になる。日本はこのような国と同盟を組んでいるのだから、日本がカモにされて金を騙し取られやすくなるのも当然だ。アメリカはドル札を刷り散らかして日本や中国から物を買いまくった。

日本の政府日銀は円高を防止すると国民を騙してドルを買い支えてアメリカに利益を供与した。日本にあるドルや米国債は売ることはままならず、いずれ金利すら払ってもくれなくなるだろう。

アメリカの金融産業は新興国への投資で大きな利益を稼いできた。特に中国への投資は実を結んで、中国はオリンピックを開くまでの国家に成長した。中国は世界の工場となり、労働賃金は日本の20分の1で日本国内の工場は閉鎖されて中国に移転した。日本ばかりでなく台湾や韓国やシンガポールなどのアジアからも工場を進出させたから中国のGDPは毎年二桁の伸びとなった。

このように中国の経済発展はアメリカの国益と合致していた。このまま中国がアメリカに利益配当をもたらせば「米中の経済同盟」は順風満帆となる。このように経済から見ればアメリカにとって中国は味方なのであり日本は敵ということになる。日本はこの事にまだ気がついていない人が多い。

ポールソン財務長官は中国に80回も訪問して中国政府高官とは関係が深い。このような状況になりようやく日本でも米中同盟の存在に気がつく人も増えてきました。7月20日に「米中に挟撃される日本」というシンポジウムの模様を紹介しましたが、日本の戦略はいかにして米中の挟撃から身を守る事ですが、日米同盟で政治家達は撹乱されている。

アメリカにとって中国が敵でないのならなぜ日本国内に米軍基地が存在するのか? 日本はあまりにも東西の冷戦構造に囚われすぎて冷戦崩壊後も中国が日米にとっての敵であると思い込みがあった。中国が共産主義国であるにもかかわらずアメリカの金融産業は中国と手を組み利益を上げている。

中国が順調に経済発展をして成熟した民主主義国家になるのなら日本の利益にもなりうるが、軍事大国として太平洋の西半分を管理下に置こうとしている。アメリカの軍部は危機感を持っているが、ウォール街は中国をステイクホルダーとしてアジアを米中で共同管理していくつもりだ。

日本人は中国が近代的な民主主義国家になるとは誰も思ってはいませんが、アメリカ人にとっては中国人も日本人も見分けがつかないから、日本が近代的な民主国家になったのだから中国もなれると考えているようだ。しかしオリンピックが中国人がいかに野蛮な国民であるかを知る機会になるだろう。その時になって中国への投資が失敗であったとアメリカ人も気がつく時だろう。




結果的にドイツのバランスシート不況は、スペインやフランスの
住宅バブルで乗り越えようとした形になってしまったのである。


2008年7月24日 木曜日

日本経済を襲う二つの波』  リチャード・クー:著

グリーンスパンの失政

では、サブプライム問題とは、結局は誰の責任だったのだろうか。先述したように、グリーンスパンFRB議長のマスタープランの前半部分(ITバブルの崩壊を住宅バブルで乗り切り、GDPを落とすことなく好況を維持して、バランスシートの修復を終えた企業部門にバトンタッチするというシナリオ)は非常にうまく機能した。

しかしグリーンスパンは、バランスシートが傷ついた企業が資金を借りなくなるということを想定できなかった。この事態を想定できなかったのは、もちろんグリーンスパン一人ではないが、彼の問題は自分の想定が狂っていると気づいた時点でも何の行動も採らなかったことである。

実際にグリーンスパンは、二〇〇四年時点で議会証言において何回も「このような景気局面なのになぜ企業はお金を借りにこないのか」と自問自答しているが、その時点で彼の当初の計画はすでに狂っていたのだから、グリーンスパンはこの時はっきりと「これは危険なバブルになりかねない」と警戒するべきだったのである。

もしグリーンスパンが、「これはバブルだから注意しなければいけない」と強く主張していれば、当時は"マェストロ〃と言われて神さま扱いだったのだから、みんなが心して事態に対処したはずである。そうすれば、おそらく今の傷は半分程度で済んでいたかもしれない。

しかし彼は、任期の最後の日まで「バブル」とは言わなかったし、何ら警告を発することもしなかった。それどころか、いろいろな人から「これはバブルではないのか」と聞かれていたにもかかわらず、彼は「局地的にはそういう部分があるかもしれないが、その程度の問題だ」と一言ってずっと否定し続けたのである。

これは中央銀行マンとしては失格である。グリーンスパンは当初のシナリオが狂ったとわかった時点でスタンスを変えるべきであった。それを今ごろになって、グリーンスパンは「これはバブルだ」とさかんに発言しているが、何をかいわんや、である。しかも、「住宅価格はマーケットの想定よりもさらに下がる」などと、数年前に彼が言っていたこととはまったく逆の発言をしているのである。

ワシントンではグリーンスパンの評価は地に堕ちたと言われている。中央銀行マンとしてバブルが実際に発生している最中、それに徹底的に警告を発することを怠ったグリーンスパンの責任は極めて大きいと言わねばならない。

世界中が住宅バブルになったと言い逃れするグリーンスパン

ところで、グリーンスパンは、自伝や最近の講演で、住宅バブルは自分のせいではないと盛んに主張し、その証拠として住宅バブルは世界的に発生しており、米国だけの現象ではなかったことを挙げている。実際、同時期にアイルランド、フランス、スペインなどのユー口圏でも住宅価格が急騰し、イギリスでも住宅バブルが発生した。また一部の国の価格上昇率は米国のそれを上回るほど高かった。

これらの欧州における住宅バブルをグリーンスバンのせいにするわけにはいかないが、欧州で住宅バブルが発生したからと一言って、米国の住宅バブルはグリーンスパンと関係がなかったとは言えない。

なぜなら、欧州の住宅バブルは米国と同様で、欧州中銀(ECB)の低金利政策がその背景にあり、そのECBも、実はFRBと同じように、域内のバランスシート不況に対応して金利を下げていたからである。

つまり欧州でも、一九九〇年後半のITバブルは猛威を振るい、EU最大の経済であるドイツは完全にバブルになってしまった。そのバブルが二〇〇〇年に崩壊すると、ドイツのナスダックと言われるノイマルクトはピークから九六%も下がるという大変な事態に陥った。

そこから、ITバブルに乗っていたドイツの企業も家計も、一斉にバランスシート修復モードに入り、二〇〇〇年に名目GDP比で六・九%の資金調達をしていたドイツの企業部門は、二〇〇五年には同一・八%の借金返済に回っていた。

つまりこの間に、ドイツの企業部門だけで名目GDP比八・七%分(=六・九%+一・八%)の需要が失われたことになるのである。しかもドイツではこの間、家計部門も大幅に貯蓄額を引き上げた。その結果、ITバブル期の二〇〇〇年にはGDP比で三・七%だったドイツの家計貯蓄は、二〇〇五年には六・三%にまで二・六%ポイントも拡大したのである。

その結果、企業と家計部門を合わせるとITバブルのピーク時に比べGDP比で一一・三%(=八・七%+二・六%)の民間需要が失われることになり、ドイツは戦後最悪と言われた長期不況に突入した。

これはまさにバランスシート不況であり、ドイツ国内における資金需要は激減した。このことは図11にあるように、ドイツ国内におけるマネー・サプライの伸びが、同じ金融政策下にあった他のユー口圏諸国に比べ顕著に低迷したことに表れている。マネー・サプライが伸びるには銀行の与信が伸びる必要があるが、他のEU諸国に比べてドイツの資金需要が激減したため、ドイツのマネー・サプライだけは伸びなかったのである。

ドイツの不況に対応した利下げが欧州に住宅バブルをもたらした

このドイツの不況は他のヨーロッパ諸国にも当然悪影響を与え、慌てたECBは短期金利を二%にまで下げた。この金利は戦後のドイツ・ブンデスバンクが到達した最も低い金利を下回っていた。

その当時ECBのトリシェ総裁は、フランス人が総裁を務めているECBが、ドイツ人がやっていたブンデスバンクよりもインフレ率と金利を下げることに成功したことを喜んだが、それは単にドイツが深刻なバランスシート不況に陥ったことが原因だった。

結局ECBは、ドイツのバランスシート不況に対応して金利を下げたことになるが、そのことはスペインやフランスで住宅バブルに火を付けた。またこれらの国々は、ユー口導入前はドイツに比べずっと金利が高かった。それが、ユー口を導入したことで以前のドイツ並みの低金利ということになり、そのことが、人々が借りられる住宅ローンの元本額を引き上げ、これらの国々の住宅バブルを加速させた部分もあったと思われる。

つまりECBは、結果的にドイツのバランスシート不況をスペインやフランスの住宅バブルで乗り越えようとした形になってしまったのである。

一方、ドイツの不動産価格は、一九九〇年代に統一フィーバーなどで先んじてバブルが発生したこともあって、二〇〇〇年以降のECBの低金利政策にはまったく反応せず、九〇年代の日本や昨今の米国と同様にその価格は直近まで下がり続けた。

また、スペインやフランスの経済が住宅バブルに支えられている間、ドイツは企業側が不況を理由にリストラを進め、賃金カットを進めることで域内での輸出競争力を強化した。

その結果、ドイツは域内の輸出を大幅に伸ばし、二〇〇一年には日本を抜いてなんと世界最大の貿易黒字国になってしまったのである。二〇〇六年頃にはドイツ企業のバランスシートも修復され、そこから同国の回復が始まった。またそれに合わせてECBも利上げに動き出したのである。

つまり欧州には、欧州の「ITバブル崩壊との戦い」があったわけで、バブル崩壊自体は、かなりドイツに限定されていたものの、そこから来る不況への対策として低金利政策が導入され、その低金利政策がドイツ以外の国々で住宅バブルを引き起こしたと言えるのである。

その意味では、グリーンスパン前FRB議長だけでなく、ドイセンベルク前ECB総裁やトリシェ現総裁も住宅バブルをつくったという点では同罪であるということであり、欧州でも住宅バブルが発生したから、グリーンスパンには住宅バブルの責任がないことにはならないのである。

ECBが低金利政策に走つた元凶はマーストリヒト条約

ECBは、ドイツを中心に広まった不況を、結果的にはスペインやフランスの住宅バブルで克服しようとしたわけだが、ある意味でこれは、必然的な部分があった。

つまり、ドイツのバランスシート不況というユー口圏全体で見れば局地的な問題は、本来ドイツ独自の景気対策で対応すべきであった。ところが、マーストリヒト条約はドイツの財政赤字がGDP比で三%を超えることを禁止した。

その結果、ドイツは自己の問題解決能力を失い、結局、その尻拭いを同じマーストリヒト条約の産物であるECBが金融緩和でやるしかなかったと言えるのである。

しかし、ECBの金融政策はユー口圏全体に効くことになり、そのことがフランスやスペインで大きな住宅バブルを引き起こしてしまった。しかも、すでにバランスシート不況に陥っていたドイツでは資金需要はなく、ECBの低金利政策は前述のマネー・サプライの伸びを見ても、直接的にドイツ経済にほとんどプラスにはならなかった。

それでは、何が「正しい」対応だったかと言うと、それは(金融政策が効かない)バランスシート不況に陥ったドイツに対して、ECBは財政出動を要請(または強制)し、ドイツの問題がECBの欧州全体に対する金融政策を狂わせてしまうことを避けるべきだったということである。そうすれば、スペインやフランスが住宅バブルやその崩壊に直面するのを防げただろう。

トリシェ総裁の○八年六月五日の発言は、依然としてユー口参加国がマーストリヒト条約の財政規律を守ることが重要だと言っているが、皮肉にもバランスシート不況に陥ったドイツにマーストリヒト条約を守らせようとしたことが、結果的にECBの金融政策を狂わせてしまったのである。

そしてこれらの問題の根底には、マーストリヒト条約がバランスシート不況をまったく想定していなかった欠陥条約であるという事実があり、ここが是正されるまでは、今後ともこのような形でECBが金融政策を誤ることはあり得ると言えよう。
(P145〜P153)


(私のコメント)
2000年のITバブルの崩壊は世界的な規模でしたが、アメリカではグリーンスパンが住宅バブルで切り抜けた。ドイツにおいてはフランスやスペインの住宅バブルで輸出景気で切り抜けた形になった。しかしアメリカやEUの住宅バブル崩壊は金融機関に大きな損失をもたらす事になるのだろう。

90年代の日本のバブル崩壊は100兆円にも及ぶ公共投資などでGDPなどの落ち込みはなんとか防ぐ事ができたものの、橋本内閣のビックバンや小泉内閣の財政再建路線が金融や景気の足を引っ張るような悪影響をもたらしてしまった。

本来ならば企業などの倒産も、アメリカが現在しているように、時価会計など無視して簿価会計で評価していれば、日本の金融も大混乱は避けられたはずだ。ところが竹中流の金融庁の厳格査定が企業を余計に借金返済に走らせてバランスシート不況を長引かせた。

ドイツなどもITバブルの崩壊の影響で企業はバランスシート不況に陥って超低金利政策で切り抜けようとしましたが、それがフランスやスペインの住宅バブルを生んでしまった。日本やドイツのような経済力の強いところは超低金利政策でバランスシートをきれいにできる能力がありますが、アメリカは超低金利政策が出来るだろうか?

アメリカのドルは円やユーロとは違って弱い通貨だから超低金利だとドルが暴落する恐れがある。石油や穀物の高騰はその先駆けでもあるのですが、ドルが持ち直すかにかかっている。そうしなければ中国やサウジアラビアがドルにリンクするには止めてドルから離脱して米国債などを売り払うかもしれない。

だからアメリカはファンドの石油投機にブレーキを掛けていますが上手く行くだろうか? 金融立国のアメリカはITバブルから住宅バブルから石油バブルとつないで商売してきましたが、自転車操業であり新たなるバブルを作り出していかないと世界から資金を集める事ができずに資金が逃げ出してしまう。

アメリカから資金が逃げ出すようになるとFRBは金利を上げざるを得なくなるだろう。しかしアメリカも住宅バブル崩壊で超低金利でないと住宅ローンが破綻してしまう。FRBはドルを守るか住宅ローンを守るのかと言う二者択一を迫られる状況になり、ヘリコプターベンはドルをばら撒けなくなっている。ドルをばら撒けばまた石油が高騰する。

アメリカでおきている一番の問題は信用不安であり、ファンドもレバレッジを下げざるを得ないから、中国やインドなどへの投資を引き揚げている。だからドル高にもなりうるのであり、金利も下げられるが、中国が溜め込んだドルや米国債や政府機関債を売ればドルは暴落する。

日本やドイツは低金利で資金が供給されて世界的なバブル景気になりましたが、ドイツの資金はフランスやスペインのバブルを生み、日本に資金はアメリカや中国のバブルを生んだ。さらには石油バブルは中東にもバブルを生んでドバイはバブルに沸いている。しかし石油のバブルも弾けつつあるようだ。


NY原油は大幅続落、1か月半ぶり安値の124ドル台 7月24日 読売新聞

【ニューヨーク=山本正実】23日のニューヨーク商業取引所の原油先物相場は、米ガソリン需要の低迷を背景に大幅続落した。

 この日から取引の中心となったテキサス産軽質油(WTI)の9月渡し価格は、通常取引後の時間外取引で123・89ドルと約1か月半ぶりの安値水準まで下落した。通常取引の終値は前日比3・98ドル安のバレル=124・44ドルだった。

 原油価格は、7月11日の取引途中の最高値147・27ドルから、8営業日の間に23ドル以上も下落した。

 米エネルギー情報局(EIA)がこの日発表した週間統計で、ガソリン在庫が前週より284万バレル増えたため、需給逼迫(ひっぱく)感が後退した。



(私のコメント)
このようにIT株式から住宅から石油へとバブルによる急騰急落を繰り返しているのはアメリカのヘッジファンドが仕掛けているからですが、次は何を仕掛けるのだろうか? なければ資金の回転は止まり信用不安が噴出してくる。

7月15日に書いたようにアメリカのGDPは1300兆円ですが、金融資産総額は1京3000兆円にも膨らんでしまっている。それだけファンドが膨らませたともいえるのですが、資金の回転が止まれば金利の支払いなどは出来るはずもない。ファンドの運用資産が膨らんでいる間は利払いも可能だが、信用不安でファンドから金が逃げ始めてファンドのパンクが問題になるだろう。

日本やドイツはバブルが崩壊すればバランスシートをきれいにするだけの経済的体力がありますが、アメリカにそれだけの経済的体力があるのだろうか? 博打で大穴をあけた博打打が真面目に働いて借金を返せるのかと言う事ですが、博打の借金は博打で稼いで返すしか方法は無い。

リチャード・クー氏が言うように日本やドイツはバランスシート不況で借金返済にまわり国内需要が落ち込んでしまった。それに対してGDPを維持し続けるには国が借金をして需要を作るしかないのですが、小泉内閣から政府も借金返済に回ってしまったからGDPが停滞してしまった。

日本の公共投資は有効な投資先が見つからないせいもあったのですが、ドイツなどはエコロジー投資で風車発電設所や太陽電池発電設備などが盛んに行なっているが、日本ではエコロジー投資がほとんど行われていない。道路や橋ばかり作って維持費のかかるものでは地方財政が持たない。

石油バブルの次はエコロジーバブルになって風車や太陽電池発電や原子力発電が投資ファンドの対象になるのかもしれない。リチャード・クー氏が公共投資の必要性を訴えたのは正しい政策ですが、何に投資すればいいかを提案できなかった。いずれ石油が高騰するのは時代の必然なのだからエコロジー関係に投資することを提案していれば、公共投資も継続出来たかもしれない。

「株式日記」でも公共投資は橋や道路よりも宇宙開発のようなハイテク部門に投資すべきだと提案してきた。エコロジー投資もハイテク投資なのだから正しい政策提言をしてきたことになる。しかし国会では道路特定財源ですったもんだしていますが、適切な政策提言できるシンクタンクが無いことが日本の停滞に繋がっている。


ドイツでは90年代からエコロジー投資が盛んだが
日本では道路や橋ばかり作ってエコロジー投資が
行なわれなかったのはなぜなのか?
ドイツ東部クレトビッツに立つ巨大な発電風車





現代社会ではデモやストライキをやっても権力によって封殺されて、
労働者の保護政策は骨抜きにされていった。だからテロが起きるのだ。


2008年7月23日 水曜日

駅ビル通り魔女性刺殺 八王子、容疑の男逮捕 7月22日 日経新聞

22日午後9時40分ごろ、東京都八王子市明神町3、京王八王子駅の駅ビルの京王八王子ショッピングセンター9階「啓文堂書店」で、「女性が刃物で刺された」と119番があった。警視庁によると、女性2人が男に刺され、うち書店従業員の女性(22)が胸などを刺され、搬送先の病院でまもなく死亡した。もう1人の女性(21)は意識があるという。

 警視庁が通り魔事件として女性を刺した男の行方を追っていたが、現場近くで容疑者の男の身柄を確保、殺人未遂容疑で逮捕した。

 調べに対し、男は「31歳の派遣社員」と話し、被害者とは面識がないという。「仕事がうまくいかず、むしゃくしゃしてやった。誰でもいいから刺したかった」と供述しているという。



派遣社員10年の実態 7月22日 内田一ノ輔

ご存知のように労働者派遣法が1986年に施行された。

対象は、ソフトウェア開発、通訳、速記、秘書などの13業務に限定されていて、技術を持ち即戦力となる人材が対象である。間違いなく売り手市場であった。

派遣社員を依頼する会社は、派遣会社に対して「○○のソフトウェア開発の出来る人」、「ドイツ語の通訳の出来る人」といった、具体的な業務の内容を依頼するシステムとなっており、「性別」「年齢」などの指定は原則出来ない。

これは、労働者派遣法第26条で「派遣労働者を特定することを目的とする行為」は制限されているためである。

要するに、依頼する技術を持った人を派遣すれば契約は成立することになる。人を派遣してもらうのではなく、即戦力の技術労働力を提供してもらう契約である。

極端に言えば、派遣社員を依頼した会社は、派遣されてきた社員の技術経歴を除く経歴書の内容すら知らされないし、派遣社員は仕事以外について答える必要もないのである。

そして、派遣期間が1年を超える時には、依頼する会社が派遣社員を正規雇用しなさいという規定も定められていた。

上記の技術を持つ労働者は、自分の都合により期限付きの労働を提供し対価を得る事が出来る法律であり、お互いが納得すれば正規雇用の選択も規定されている。

間違いなく、労働者の保護のための法律であった。
 
1999年、この法律が改正され、「港湾運送」「製造業」「建築」「医療」「警備」を除き、原則自由化された。この改正を境に、雨後の筍のように派遣会社が増え始めてきた。

当時は、まだ派遣を受け入れる会社側も40〜60万円程度の額を派遣会社に支払っていた。しかし、実際に派遣社員に支払われる金額は、その半分以下であり、派遣会社は大もうけをしていたのである。
 
私のいた会社も派遣社員を雇用していた。

口外しない約束で、彼らにそれとなく派遣の実態を聞いたことが有る。技術者としての派遣社員であったが、彼らは、大学の工学部を卒業したが就職先がないため、派遣会社に登録したそうである。

しかし、彼らには実務経験がないため、最初の1年ほどは派遣先が実習であった。給料もかなり少なかったようである。

当時、彼ら派遣社員を雇うために派遣会社に支払っている額は、約60万円で、彼らが派遣会社から貰っている給料が20万円程度であることを聞き出した。

その会社では、社会保険もなく、雇用保険だけだそうである。酷いときは労災保険もない場合もある。

このような派遣の実態が判り、儲け話の実態が判ってくると、派遣社員を受け入れていた会社自体が、派遣会社を作り始めたのである。二重派遣の始まりである。

自社に来る派遣社員を、自社の派遣会社をくぐらせて、一部をピンはねするのだ。

また、同業者が増えてくると派遣会社も同業者同士のもたれあい経営を始めた。つまり、利益は低くても、各社が仕事にあぶれないように、お互いを絡ませた二重派遣を始めたのである。すなわち、そこでは三重構造の派遣形態となってしまうのである。

このような構造では、60万円で派遣契約しても、派遣社員に20万円渡れば良いほうなのである。勿論、派遣される派遣社員には、直近の派遣会社を名乗るよう指導する。

派遣社員の保護やプライバシーを守る法律が、実際は三重派遣の実態を隠すシステムとなってしまっているのである。
 
今でもそうであるが、この頃からハローワークの求人ネットワークシステムにおいて、求職者を募集している会社の数割が、人材派遣会社なのである。

世の中リストラブームであり、派遣利用で募集をしない会社も増えてきたので、求職者は老若男女が大量にいるのである。とにかく人を集めさえすれば、人材派遣会社は金になる時代となった。
 
2004年には、さらに派遣法が改悪され「製造業」への派遣が解禁された。この改悪により、労働者保護の法律が完全に、企業保護の法律になってしまった。

今までは、派遣の受け入れ期限が、おおむね1年と設定されて、さらには正規雇用への道も規定されていたが、その期限は3年に延長され、やり方次第では無期限に派遣社員として雇用できるという、受け入れ企業にとって有利な法の改定がなされてしまった。

「製造業」、即ち工場内作業のように、誰でも出来る仕事となれば、完全な買い手市場である。少しでも気に入らなければ、即クビだ。企業のわがままし放題のシステムとなってしまった。
 
究極の企業保護のための労働力確保システムであり、労働者にとっては究極の不安定雇用が、日雇い派遣である。

派遣会社に登録し、1日単位で派遣会社と雇用契約を結び、仕事があるときだけメールで連絡を受けるシステムである。明日の仕事があるかどうかも分からず、毎回、働く場所も仕事内容も異なるケースが殆どだ。

仕事の内容といえば、おおむね肉体労働である。昔のニコヨンと同じである。1日限りの使い捨ての労働者。このように豊かな日本人に生まれてはいるが、その扱いは夢も希望もない奴隷そのものである。

まさに、政府による企業のための雇用制度といえる。企業が抱える問題の、賃金、首切り、労働問題等々をすべてクリアしてくれる、夢のような制度だ。
 
派遣ユニオンの推計では、日雇い派遣労働者が100万人を超えたそうである。

そこには、スキルアップとかを考える余裕もなく、当然、そこから正社員への道はないに等しいと言っても間違いではない。

彼らの夢は、どんな企業でも構わないが、正社員となり年収300万円になることだそうである。正に、新しい階級層や意識が生まれてしまったのだ。
 
厚生労働省の「日雇派遣指針」では、「日々または30日以内の期間を定めて雇用されるもの」を日雇い派遣労働者としている。

このような日雇い派遣、ネット難民の実態が明るみに出たため、政府も日雇い派遣禁止を口にし始めた。日雇い派遣を禁止する方法として、雇用契約期間を規制する案が出ている。

しかし、「30日以内の雇用契約禁止」など、契約期間を規制しても、現在の売り手市場では、契約期間の途中で「もうこなくていい」などと、契約を打ち切られることが容易に想像できるのが実情である。
 
1999年以前に戻すことは無理であっても、「非正規雇用労働者保護のための法律」という原点に戻らなければ問題の解決にはならない。この解決無くして日本の未来は、益々夢のない荒んだ暗いものになってしまうのではないか。

あのように抑圧された社会でも、市民が恐れず立ち上がる中国を見て、日雇い派遣労働者は何を感じているのであろうか。黙っていたら、騙され損をする社会なのだ。


(私のコメント)
最近の日本では労働争議がほとんど起きない。労働組合は御用組合化してストをほとんどしないし、中国や韓国で見られるような何ヶ月にも及ぶストライキは見かけない。それだけ労働組合運動が骨抜きになって、組合が無い企業も多くなった。さらに派遣社員などの非正規雇用には組合が無い。

このようなシステムは終身雇用、年功序列がしっかりしていた頃はそれなりの意味があったのでしょうが、いつ首が切られるような不安定な職場環境なら、ストライキを行なって待遇改善を要求するようになってもおかしくは無い。しかし派遣社員は組織化されていないし、ピンはねが酷いことも知らない派遣社員が多いようだ。

本来ならデモやストライキ闘争で待遇改善を勝ち取るのが筋なのでしょうが、連合など戦わない労働組合化して労働貴族になってしまった。その結果、大企業よりの法改正が行なわれて派遣労働の規制緩和が行なわれて若年労働者の雇用環境が非常に悪化してしまった。

つまり派遣労働などの低賃金労働者は社会的に孤立してしまって見捨てられたような存在になってしまった。彼らは政治活動にも無関心だし横のつながりも無く孤立している。フリーターと言うと学生アルバイトの延長のような感じですが、非正規雇用労働者のことであり、30代になってもフリーターのままなのだ。

秋葉原の無差別殺傷事件もこのようなフリーターの犯罪であり、「株式日記」でもこのような犯罪は社会状況を改善しなければ無くならないだろうと書いた。そして昨日また無差別殺傷事件が起きたわけですが、このようなテロ行為が社会的反響が大きいと分かると模倣犯が続出するようになる。

町村官房長官はタガーナイフを規制するようにしましたが、包丁などに持ち替えれば何の意味もない。つまり凶器などを規制しても意味がないのだ。しかし派遣労働法の規制緩和を行った事が、事件に関係があることなど自民党は認めようとせず、日雇い派遣の規制だけに止めるようだ。


「ナイフ抹消するわけにいかない」 八王子通り魔事件で町村長官 7月23日 産経新聞

町村信孝官房長官は23日午前の記者会見で、東京都八王子市で起きた無差別殺傷事件について、「(凶器は)どこの家庭にでもあるような包丁で、これを規制するのはちょっと考えられない。世の中からナイフのたぐいを一切抹消するわけにはいかない」と述べ、無差別殺傷事件対策としての刃物規制には限界があるとの考えを示した。

 その上で「(人の命の大切さの教育など)地道なことをしっかりやっていかないとなかなか問題への答えは出てこない」と強調した。

 また「フリーターの人が事件を起こすと、やっぱりフリーターが悪いんだと、わかりやすいから理屈を付ける。世の中からフリーターがいなくなれば一切こういう事件が起きないかといえば、そういうわけにはいかない」とも述べた。



(私のコメント)
通り魔事件は昔からあるわけですが、最近になって多くなったのは雇用情勢が悪くなったからだろう。無差別殺傷事件はテロ行為でもあり、犯人の人生はそれで終わりだ。いわば自爆テロと変わらないのであり、捕まるのを覚悟でやられたら事件は防ぎようが無い。政府が出来る事はこのような犯人が出にくい環境にする事しかない。

派遣労働といった低賃金労働者が無くならないのは、経済状況が好転しないからですが、小泉内閣は景気対策よりも構造改革を優先した。構造改革というのは規制の緩和であり、竹中平蔵氏によれば規制の緩和で景気が良くなると言う論理だ。しかし大企業の景気は良くなったが労働者の賃金は下がる一方だった。

派遣労働については秋葉原の事件の時にも書きましたが、自民党は自分の失政を認めたくないがために、無差別殺傷テロと派遣労働の関係を認めたくないようだ。しかしそれでは無差別殺傷テロはいつまでも無くならない事になる。非正規労働者はデモやストライキをするよりも一人一殺的なテロで社会に訴えようとするだろう。それが一番効果的だからだ。

「株式日記」はこのようなテロは認めるわけにはいかないが、政府に対する抗議の意味で一番効果的であることは認めなければならない。戦前の右翼も一人一殺のテロを行なって政党政治は死んでしまった。失われるものが何も無くなってしまうまで弱者を追い詰めれば弱者の中には無差別殺傷テロを行なうものが出てくる。


就職氷河期世代、小泉改革に期待
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小泉自民党、総選挙で圧勝
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格差社会深刻化
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硫化水素自殺ブームとなる
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硫化水素自殺対策進む
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死ねない自殺願望者による“通り魔事件”続発
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秋葉原無差別殺傷事件発生
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派遣社員やニートに動揺広がる
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加藤容疑者、宅間死刑囚支持者現る
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八王子通り魔事件発生 ← 今ココ
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“加藤=宅間教”成立、ネットで信者ふえる
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第二、第三の加藤・宅間が現れ凶行に及ぶ?


【右翼と左翼】 小林よしのり 在日朝鮮人 左翼と国家

【右翼と左翼】 小林よしのり 批判すること 国家と暴力

(国家が個人の生命と財産を守ってくれないのなら、派遣労働者は国家権力に対して暴力が許されるのではないかと言う、暴力肯定論が生まれてくるのではないだろうか?)




日本は必要な小麦、大豆、とうもろこし等、どこからも輸入できなくなり、
日本国民が食べるものがなく飢えに直面するという事態に陥ります。


2008年7月22日 火曜日

国民の負担なくして自給率は上がらない 7月22日 NBオンライン

フランスもスイスも、政府の直接支払いが農家を支えている

 農業所得に占める政府からの支払い割合という点では欧州はもっと極端です。フランスは大変な農業大国ですが、農業所得の8割が政府からの直接支払いです。ほかのEU(欧州連合)諸国も同じような割合でしょうか。EUではありませんが、スイスのような山岳国ではほぼ100%、政府からの支払いで農家の生活が成り立っている。

――生産調整で高い米価を維持しようとする日本のコメ政策と似たようなものですか。

鈴木 高米価維持の場合は消費者が差額を負担していることになります。EUの場合は政府の直接支払いですから、消費者の負担を減らして、税金の負担を増やすということ。このように、世界の農業政策は消費者負担から納税者負担に移りつつあります。ただ、その中で消費者負担の部分が大きいのが牛乳や乳製品の世界でしょう。

 牛乳や乳製品は圧倒的にオーストラリアとニュージーランドが強い。これを、自由市場に任せると、欧米といえども負けてしまう。ですから、今でも200%、300%の関税を課しています。もちろん、消費量の5%は安い関税で輸入するというミニマムアクセスは設定しています。ただ、米国のチーズ輸入量は消費量の2%ほど。ほかの国々もミニマムアクセスの枠いっぱいを輸入しているわけではありません。

余っているコメを律儀に輸入し続ける日本

 日本では、ミニマムアクセスを「最低輸入義務」と訳していますが、WTOの条文にはそんなことはどこにも書いていません。とにかく低関税の枠を設定しろ、と言っているだけ。国内に需要がなければ入れなくても構わない。

――日本だけが律儀にコメを輸入しているわけですね。

鈴木 もう、そこは米国との約束でやらざるを得ない、ということのようですけれども…。

 欧米のほとんどの国では、牛乳や乳製品の自給率は今でも100%近い。これは、政府が国内で相当高い価格で買い入れているためです。ただ、そうすると、必ず余りますよね。今度はそれを輸出補助金で安い価格にして、あるいは援助という形で外に出していく。

 この援助というのは、見方を変えれば輸出価格をゼロにする究極の輸出補助金とも言えます。援助は人道的な側面が強いですが、戦略的に考えれば輸出補助金と区別がつかないところがありますね。米国などは、多い年で援助だけでも1200億円の予算を使っている。こういった単純な援助のほかに、輸出信用という手段もよく取ります。

 例えば、ソマリアのように、カネがなくほとんど払えないと分かっている国に対する輸出に政府が輸出信用をつける。ほとんど焦げ付くわけですけど、輸出の保証人は米国政府。穀物商社のカーギルがソマリアにコメを売って、代金が回収不能になると米国政府がカーギルにカネを払う。初めから分かっていてやっているわけですが、こういう輸出信用が多い年で4000億円はある。

欧米の農業政策は「攻撃的な保護」

 先ほど、コメや小麦、トウモロコシだけの差額補填に米国政府は4000億円を投入していると申し上げましたね。それと、食料援助の1200億円、輸出信用の4000億円。ほかにも、牛乳や乳製品でも輸出補助金を使っていますが、それを入れなくても、実質的な輸出補助金だけで、多い年で1兆円近くの金額を農業に投入している。

――国内で作るだけ作らせて、輸出や援助などの「出口」を作る。それが、欧米の農業国の戦略ということですか。

鈴木 そもそも米国でバイオ燃料と言い出したのは穀物の出口を作るという意味合いもありました。今でこそ価格が高騰していますが、トウモロコシや大豆、小麦価格は長い間、低迷していました。低い市場価格と目標価格の差額を負担するのは米国にとっても重荷だったわけです。

何か新しい需要が必要という時に、原油価格が値上がりし、国民的な大義名分ができた。バイオ燃料を推進したのはこういった背景があったためです。これはEUも同じですよ。EUでは砂糖の輸出補助金をやめた結果、ビートがだぶつきました。それで、ビートを使ったバイオ燃料の生産を始めた。

 様々な形で増産が図られて、その結果として出てくる物を外に吐かせる――。こういった体制を整えて、自給率100%を達成しているわけですね。日本のようにコメを生産調整し、何とかしようという非常に内向きの、選択肢の少ない世界とは明らかに違う。いわば「攻撃的な保護」と言うべきスタイルです。

 まあ、今のような穀物価格の高騰を招くとは思っていなかったのでしょうが、穀物価格を上げるという意味では、米国の目論見通りになりました。これまで、どんどん増産し、貧しい途上国には「非効率な基礎食料の生産はやらなくてよろしい」と、「私が売って上げるから、商品作物を作って、そのカネで買いなさい」と言ってきた。にもかかわらず、価格が低すぎると思ったらつり上げてしまう。自己の利益で世界を振り回している感がありますね。

――「攻撃的な保護」。コメの生産調整に行き詰まっている日本の農業政策とはまるで違いますね。この現状、日本は食料自給をどう考えていけばいいのでしょう。

食料安全保障のためには水田の最大限の活用を

鈴木 日本には今、465万ヘクタールの農地があります。ただ、この農地だけでは今の日本人の食生活を満たすことができません。穀物や飼料の輸入などを考えると、1250万ヘクタールの農地を海外に借りているのと同じこと。今の食生活を前提に、自給率を引き上げることはとんでもなく大変なことです。

 そう考えると、トータルの自給率はあまり上がらない。だから、考え方としては、輸出規制などで食料が入手できなくなった時に、しのぐ体制を準備しておくことです。小麦や大豆、トウモロコシを自給するんだ、と言ったところで、耕地そのものが限られており不可能に近い。

 では、どうするか。現在、コメ作りを抑制するために、相当のカネと時間、労力をかけている。コメ政策で年4000億円ぐらいを投下していると私は見ています。でも、この間の2008年産米の作付け面積を見ても分かるように、生産調整がうまくいっていないわけでしょう。過剰生産が解消されないのであれば、そこにかけている金を有効活用すべきです。

 日本には水田の生産能力が豊富に存在しています。世界的に見ても、国内的に見ても、日本が食料の安全保障に貢献するには、この水田を最大限に活用し、できるだけ自由にコメを作る方がいいのではないでしょうか。その代わり、欧米各国のように出口の部分をもっと調整していく。

 よく言われていますが、米粉を作ったり、飼料用米を作ったり、というのは出口戦略の1つ。ほかに、日本の場合はバイオ燃料という選択肢もあるでしょう。それと備蓄。フィンランドは主食用小麦を消費量の1年分、備蓄しています。それに比べれば、日本は1.5カ月分に過ぎません。

 備蓄は援助にもつながります。今回のようにコメが暴騰した時、日本の援助が常に発動しますという体制を整えておけば、それがメッセージになって価格の暴騰を抑えることができる。日本の食料の確保にも、そして世界の食料安全保障にも貢献できる。まあ、備蓄増については国民が納得するかどうかです。

「ばらまき」でない有効な補助金の使い方を

――米粉、飼料用米、備蓄増。いずれにしてもカネがかかりますね。

鈴木 WTOに申告している農業の国内補助金を見ると、日本は6400億円です。それに対して、米国が公式に出している金額は1兆8000億円。実際は、3兆円ぐらいあると言われています。EUは4兆円ですね。

 こうして見ると、総額では日本は少ない。ただ、総額以上に、農業所得に占める政府の支払い割合が低い。どう計算しても、せいぜい2割というところ。補助金が農家に届いてないんですよ。

 もちろん、土地条件が悪い日本では基盤整備という土木事業も必要です。ただ、今みたいに、農家が疲弊している状況では、所得を形成できる支援がないと、農業が成り立ちません。相当、カネを出しているのに、どこに行ったか分からない、ということのないように、効率的な予算作りをする必要がある。



(私のコメント)
昨日のテレビで「たけしのTVタックル」を見ていたら、たけしが宮崎県の東国原知事に会いに行っていたレポートがありました。そこでたけしが農家のオヤジに話を聞いていましたが、建設会社では公共工事が減って、元の農業に転業していたと言う話です。

昔は食管制度で農業の保護政策を行なっていたのですが、アメリカからの圧力で食管制度は維持できなくなってしまった。そこで減反政策が行なわれるようになったのですが、その代わりに道路特定財源で農家に建設会社をやらせて道路作りに方向転換させた。

しかし国も財政赤字になって公共工事もカットされるようになって地方の建設会社は仕事が減ってしまった。仕方なく建設業から元の農業に戻っているわけですが、このように農業と土木工事とは関連性が高くて、ブルトーザーを畑に使うか道路工事に使うかの違いしかない。

日本は減反政策という内向きな政策をとったのに対して、欧米では輸出補助金で余剰作物を安く輸出している。アメリカも小麦や大豆などの余剰作物の捌け口として日本に輸出しているわけですが、今年のように高くなれば安く売ってくれなくなるような事態も起きる。

日本の農業政策はアメリカの言いなりだから、小麦や大豆はアメリカが保証しますから車や電化製品を作って買って上げますから米作りはやめなさいと言う政策にしてしまった。妥協の産物として農家に道路作りをさせてきましたが、その政策も限界だ。

幸か不幸か世界的な農作物の高騰で農業の見直しが進められている。アメリカにいつまでも小麦や大豆などの穀物輸出に頼る事は危険であり、世界的な穀物高騰で売ってくれない事態がやって来ることに備えなければならないだろう。アメリカは穀物輸出を日本に保証しているわけではなく余剰だから輸出しているに過ぎない。

欧米の食糧自給率100%と言うのは政府補助金によるものであり、日本はアメリカの圧力で補助金が減らされて、その結果が減反政策なのだ。EUみたいになぜアメリカの圧力を撥ね退けて農業保護政策ができないのだろうか? 以前にもアメリカは大豆が高騰したときに輸出制限をしたことがある。だから食糧をアメリカに全面的に頼る事は危険だ。

日本はアメリカという圧力団体があるお陰で自主的な農業政策が出来ない。アメリカも3兆円もの農業補助金を使って農作物を買い上げていますが、どうしても作りすぎてしまう。だからバイオエタノールをコーンで作ったりしたのですが、それが穀物高騰の原因になってしまった。

だから日本も減反政策などしないで余剰作物は輸出に回したり、バイオエタノールを作るようにしたらいいのだ。このような政策は欧米では普通に行なわれているのですが、日本では減反政策と言った内向きな政策が行なわれて、農地がどんどん荒れていく。日本の政治家は外国には妥協して国内にその皺寄せをしていく。

このようの農業は世界的に国家からの補助金で成り立っているので、経済大国ほど農産物の輸出競争力が生まれるのだ。日本も2年前に牛乳が過剰になり廃棄するような状況になった。廃棄するくらいなら安く海外に輸出すればいいのでしょうが、そうすると従来の乳製品輸出国が猛反発する。だから日本の農水省は生産調整をさせた。

その結果がどうなったかと言うと、今年はバター不足になってスーパーの店頭からバターが消えた。このような馬鹿げた政策が行なわれるのは農水省の天下り団体が絡んでいるからですが、農業補助金が天下り団体に使われてしまって利権化している。乳製品の利権団体が農家から買い上げたり海外からの輸入品を独占したりしている。

どうせなら欧米が行なっているように余剰が出たら海外に安く輸出すれば生産調整も行なわずに済み、今年のようなバター不足も起きなかったはずだ。もちろん農家もコストダウンを行なって国際価格に近づけるようにすべきですが、農業政策が利権団体の都合のいいように捻じ曲げられてしまっている。

マスコミ論調もアメリカの言いなりだから農業保護はケシカラン、高い関税は消費者を犠牲にするものだとさんざんキャンペーンを張って、日本の食糧自給率は39%にまで低下した。農地はいったん荒地になってしまうと元に戻すのに数年かかるし、農業従事者もいなくなっている。

中国やインドなのの人口大国の生活水準が向上すれば莫大な食糧需要が増大して穀物の高騰や乳製品の不足が起きることになる。このような状況になる事は何年も前から分かる事であり、日本の農業戦略も大転換を図るべきだった。しかし日本の農林官僚は天下り団体を作る事は熱心でも、長期的な農業戦略を作る頭脳は無い。それは自給率が高いバターの不足を見れば分かる。


バター上納金徴収+関税+従量税、高い輸入バターで消費者直撃・天下り機構・農畜産業振興機構

●最近スーパーに行くと、バターが売り切れでなかったり、あっても価格が高く、また「お一人様一個限り」となっている状況は強まっています。
●この春頃から、スーパーの店頭からバターが消てしまった。パン屋はバターロールやクロワッサンの生産を縮小したりしている。ケーキ屋さんはバターが無くって火の車である。ちょっとしたバターパニックが起こっている。
●これは日本が国内の乳製品の生産調整に失敗したためである。残念なことにバターはほとんどが国産なのだ。自給率が高くったって、こういうことは起きるときには起きるということです。
●ところでバターはどうして輸入が少ないのか。答えはもちろん、異常高値の関税のためである。この傾向は農林水産省のに係わる品目に共通している。この前も書きましたが小麦粉の高値もそのカラクリにあるように、バターもその例に漏れません。
●輸入バターには約35%の従価税(関税)に加えて、農畜産業振興機構への上納金(マークアップ)として806円/1kgがかけられている。
この農畜産業振興機構とは言うまでもなく、農水省の関連団体で天下り機構です。これが一般的な方法による輸入の場合。少量を個別に輸入する場合はもっとお高くて、基本関税は35%と従量制の税1,159円/kg、これに加えて生産者に渡るマークアップ806円/kgがかかる。
●上納金というのがミソで、農畜産業振興機構に納められて農水省の官僚の天下りの人件費事務費に半分以上が使われています。畜産農家に交付される奨励金はごく僅かになっています。

話は元に戻りますが現在のバターの国際価格は約354円/Kg、ポンドで159円ですから日本の半額ですねが、この方式で日本にくるとキロ2,443円に跳ね上がる。これではとても手が出ないことになります。
●従価ではなく、「従量」の課税は農産物では多用されているが、どれも非常に高い。どれだけ輸出元が努力しても、極端な話元値がタダであっても、絶対に国産価格を下回らないように設定されている、きわめて大きな障壁なのである。
●結果として、米の関税など、300ー500%にまで登る。要するに自給率を上げようにもこの様な障壁を撤廃しない限り自給率を上げれば上げるだけ価格は高くなる仕組みです。
役所の権益天下りの利権を守る為に国民消費者が犠牲にされているのです。農家を守るという言い訳を開陳しながら実は官僚政治家の利権を守る為に甘いするを吸われているのです。
●バターの受給も不測どころか、最新の政府統計(2008 年2月までの数値)によると、乳業各社はバターの輸入を2007年3月から前年同月比で2倍の勢いで急増させ、この勢いのまま今日に至っている。
●前年同月比で2007年には73.8倍、6月には60倍、10月には17.8倍という大量のバターを輸入した。通年では2007年のバター輸入量は、前年比で2.89倍に達した(この統計を参照)。
このバターの輸入は、民間の業者が輸入できるのでは無く、農林水産省の天下り団体?「農畜産業振興機構」しか輸入できない。また「農畜産業振興機構」が輸入したバターは入札で民間業者に売る。入札結果は公表されている。この価格に上納金がkg当たり806円が上乗せされているのです。
これを大手乳業メーカーは在庫として大量に抱えています。そして、乳業各社は2008年1月、国内市場へのバター供給量を意図的に絞り(前月9.1千トンから6.0千トンへ)、マスコミに向けてバター不足の情報を流しつつ、裏ではバター在庫を前月比で 24.6%も積み増した(15.8千トンから19.7千トンへ)。在庫を24.6%も積み増す余裕がありながら、マーケットへの商品供給を拒んだのである。
バターの国際価格は一頃の倍近くまで上昇しているので、乳業各社としては輸入バターを高値で売りたい気持ちを持っていることは当然です。
●こうして農畜産業振興機構は膨大な上納金を手に入れて,特別会計を膨らましているのです。

▲私は認識不足ですね。バターが高くなっていることは聞いたことがあります。しかしそんなに無くなっている事はしりませんでした。国民が困っているのに政府はどうしているのですか。国内生産の調整を早くやることですね。・・・・・EK



(私のコメント)
このような構造は乳製品ばかりでなく農産物全体に及んでいる。いくら自給率を上げろといっても補助金などは天下りの利権団体が独り占めして農家にはわずかしか行かない。国内で生産調整をしようとするから減反政策や乳製品の生産調整が行なわれるのであり、農家の犠牲が大きくなってしまう。牛乳だって乳牛を処分してしまうと生産は増やせと言っても増やせない。

外国からの農産物価格が異常に安いのは余剰生産物であり在庫調整のためなのだ。だから今年のような農産物が高騰すると一気に日本への輸入が減ってしまう。場合によっては輸出制限で買えない事態も想定できる。コメなどはフィリピンなどはコメ生産国の輸出制限で食糧危機が起きてしまった。フィリピンもまたアメリカの言いなりになって食糧自給政策を止めてしまったからだ。

マスコミも食糧価格高騰で大変だと騒ぐだけではなく、その裏にある「農畜産業振興機構」のような国家のダニを始末しなければ、農業補助金も天下り団体がみんな食ってしまう。これではいくら日本の農業の近代化は図れない。しかし地方経済の活性化は農業の再活性化しかないのだ。




サブプライム・排出量取引証券化ビジネスから国を守れ! なぜ、
サブプライムローンの様な「まやかし」の証券化ビジネスが生まれたのか


2008年7月21日 月曜日

原 丈人氏の「サブプライム・排出量取引証券化ビジネスから国を守れ」 6月3日 オンリーワン見聞録

なぜ、サブプライムローンの様な「まやかし」の証券化ビジネスが生まれたのか

それは、「会社は株主のもの」というアメリカ流の誤ったコーポレート・ガバナンスが盲目的に信仰され、「短期間に株主価値を最大化することが経営者の使命」という考え方が世界中でばっこしているからに他ならない。

さらに現在、多くの企業はストックオプション(将来の自社株を現在の価格で買う権利)を導入し、株価と相関関係の強いROE(株主資本利益率)を上げるため、中長期的な研究開発からは手を引き、ただひたすら工場・設備の売却による資産圧縮や従業員を解雇し、自社株買いをしている。 なぜなら、短期的な株価の上昇こそがCEO(最高経営責任者)及びファンドの双方の利益に資するからである。

その結果、多くの企業は在庫が発生する製造業から撤退し、「お金が商品である金融業こそ最も効率のよいビジネス」という風潮が強まり、本来であれば実業を支えるはずの金融業、が脇役から主役に躍り出てしまったのである。 事実、米国を代表する製造業の会社の中には、金融業をコアビジネスとして取り入れ、本業自体もM&Aを通じて金融的要素を駆使することによって業容を拡大し株価を維持させていた会社も多い。 そして、高度な金融工学を駆使し、「カネがカネを生む」商品を取引するマネーゲームが全世界に拡がったのである。

その象徴とも言うべきサブプライムローンは、返済能力が不確実な借り手に対する住宅ローンの他に、様々なローンを分解不可能に取り混ぜたものがひとつのパッケージとして証券化され、格付け会社が最高級のお墨付きを付与することによって、あたかも安全性の高い商品であるかのように仕立て上げた、サギまがいの証券化商品である。

にも拘わらず、米国型金融資本主義においては、これらが堂々と証券化商品として売買されたのである。 そして、これだけ世界に被害をもたらしたのにこれらを仕組んだ一部の人間だけが金儲けをし、貧富の差をますます拡大させている。 サブプライムローンはその格好のツールとされたわけである。

高度で複雑化した証券化ビジネスは、高度で複雑なバイオテタノロジーを駆使した遺伝子治療と同じくらい慎重に考えなければいけない。 何世代にもわたって副作用が出るかどうかわからない遺伝子治療にFDA(米国食品医薬品局)の承認が必要なように、証券化ビジネスも現実の世界で被害が出ないように一定のガイドラインが必要である。

その、まやかしの「証券化」が、排出量取引に乗り移ろううとしている

ここで一つの重大な問題を提起したい。 サブプライムローーンでは対象が不動産だったが、現状既にそうなっているように、石油や食料などあらゆるコモディティ(商品)が投機の対象となり、証券化されていくことになるだろう。

投機の対象を生み出し続けなければマネー・ゲームは成立しない。 従って、ウォールストリートが次に標的を定める対象は、間違いなく排出量取引やCDM(クリーン開発メカニズム)である。 現在CDMは、国家間の相対取引であるが、あらゆる排出量取引はいずれ証券化され、サブプライムローン同様、様々なものとミックスされた複雑な証券化商品として、中身も実態も不明のまま、全世界にばら撒かれることになるだろう。

周知のとおり、今年から京都議定書の約束期間が始まり、日本でもEU−ETSに似た国内排出量取引制度の導入が議論され始めた。 7月の洞爺湖サミットでは、ポスト京都議定書のフレームづくりが主要議題となる。 将来的には、排出量取引が全世界に広がり、森林などの吸収源を多く持ち、エネルギー効率の改善にも余裕がある、途上国の莫大な排出枠が、証券化などの金融工学的手法とあいまって盛んに取引される事になるだろう。

しかしながら、排出量取引そのものでは、排出量が「移転」するだけで、ニ酸化炭素などの温室効果ガスの総排出量は全く減らない。 総量ペースで現状の排出量より少ないキャップ(排出可能枠)を全世界の国や企業に割り当てることができれば、経済合理的に温室効果ガスを削減できるというのが推進派の理屈だが、米国、中国、インドといった排出大国が京都議定書に参加せず、日本が基準年の不公平性を主張していることから見ても、全世界に「合理的に」枠を配分することは不可能である。

しかも欧州(英国)が主導権をとるキャップ・アンド・トレード方式型の排出量取引制度の導入が、世界中で広がると仮定すると、省エネ技術革新は鈍ることが確実になる一方、公平な上限設定も難しくなる。

この様に、そもそも無価値である二酸化炭素に人為的に価格をつけて市場取引を進めていけば、それは必ず新たな投機対象となり、証券化につながっていくことになるだろう。そうなれば、サブプライムと同じ過ちを将来、排出量取引やCDMなどで犯すことになるのだ。

◇◇日本発の新たな資本主義のルールを提起せよ

世界は残念ながら「バスに乗り遅れるな」とばかりにあらゆるインデックスを証券化する方向にひた走り、「カネがカネを生む」新たな仕組みが着々と整備されつつある。もはや人々を幸せにするために生まれた株式会社の原点、資本主義の原点を完全に見失い、金融資本主義に洗脳されてしまっているのである。

しかし、間違っても日本はこの流れに追従するべきではない。 日本はアングロサクソン流の金融立国で生きるのではなく、モノづくりを原点とした産業立国で生きるべきなのだ。 なぜなら、日本には中国やインドにも決して真似できないモノづくりに支えられた技術力が蓄積されている。 これを土台にして中長期の研究開発を行い、すぐれた商品をつくり、社会に貢献していけば、現在の基幹産業であるITにかわる新たな産業を生み出していく力が十分に備わっている。

これこそが日本の進むべき道であり、ひいては日本の国益にも繋がる。そのためにも、次の2点を実現していく必要がある。1点目は、税制による支援である。 新たな基幹産業を育てるためには、時間もかかればお金もかかる。そこで、税法を変えて、中長期の研究開発や未来の基幹産業をつくりだすようなテクノロジーに投資する場合、その投資は損金として見倣し、その年度の利益から税額控除できるような仕組みを導入すればよい。

節税になるのであれば、多くの企業が前向きな投資を行うことになる。 更に、個人の投資家にも適用し、それらの企業に投資した場合は、税額控除や所得控除できるようにする。 シリコンバレー時代を築いた1979年より1985年までの米国におけるベンチャーキャピタルのポートフォリオヘの投資総額は、現在の首都高速道路13km分の建設費に相当する1.3兆円程度であったことを考えれば、そのぶんの国の無駄な予算を削って原資に回せばよい。

2点目は、中長期の研究開発を行っている企業を支援する新しい株式市場をつくる。 具体的には、5年以上保有する株主だけが取引できる市場を来京証券取引所内につくる。 そのためにも、会社法を改正し、中長期の視野に立つ企業経営を支える株主のみを「経営関与株主」と定義し、5年以上株式を保有しなければ株主議決権は行使できない仕組みにしていけばよい。

そして、将来の設備投資や研究開発に必要な内部留保を吐き出させるような圧力をかけたり、増配を要求するヘッジファンドなどの「モノ言う株主」への対抗措置として、配当増と同じ割合だけ従業員の給与や内部留保を上げるなど、株主だけが最優先で分け前をもらうようにしない仕組みをつくるのだ。

そうすれば「短期間での売却」というヘッジファンドのインセンテイブは消え、彼らを封じ込めることができるうえ、企業は短期的な時価総額の増減を気にせずに、本来の経営に専念することができるようになる。

これらは、全て夢物語ではない。単なるマネーーゲームではなく、本当の意味で中長期的な投資を行いたいと考えている経営者や株主は世界に必ずいる。 事実、世界全体の総資金量のうち1割程度は、短期的に株主価値を上げることを主目的とするタイプの会社ではなく、中長期の研究開発を行っている会社に投資されている。従って、新たな市場としても十分に成り立つはずだ。

前記2点を実現しつつ、一方で根本的に米国流の金融資本主義は誤りであることを日本が世界に先駆けて発信していく必要がある。 先述したとおり、会社は株主だけのものではない。 その他にも従業員、顧客、仕入先、地城社会など多岐にわたるステークホルダー(利害関係者)のものである。

しかし、アメリカで主流の理論経済学(者)は、従業員に対する会社の役割や地域社会への貢献度など証明しにくいものは除き、数値化しやすいROEや株価だけを指標として使っているため、相関関係を証明しやすい「会社は株主のもの」ということだけが論理的整合性を持って一人歩きしている。

従って、新しい理論経済学と新しい資本主義、すなわち会社は社会の公器であるという「公益資本主義」を日本から発信していく必要がある。 そのためにも、「会社は株主のもの」という考え方を否定し、現在、主流派とされている理論経済学(者)を屈服させるだけの理論武装をしなければならない。 これを論証していく仕組みをつくる研究部門をアライアンス・フォーラム財団の中につくり、他の財団や大学とも協力し、アメリカと日本のトップクラスの人材を集め、今後数年かけて、公益資本主義の理論体系を構築していく。 そして、公益資本主義の原理を、世界中に広め、同時に私が経営に関与する企業群から率先して実行していく。

金融資本主義に浸りきってしまった米国だが、株主の短期的な利益を追求する事こそが会社や資本主義の目的ではないと思う人々が、サブプライム問題を契機に増えつつある。 更に、アメリカ国内でもステークホルダー重視の経営を実践している会社が幸いにも存在している。

我々は、もう一度人々が幸せになる為に生まれた資本主義の原点に立ち返り、会社とは何か、幸せとは何かを改めて問い直す必要がある。 金儲けにひた走り、一握りの人間だけが巨額の富を得て、人が人を信じられなくなるような社会にしてはならない。 その為にも今こそ、日本から新たな資本主義をつくりあげるという国家意志を世界に向けて示すべきである。

原丈人(ハラジョウジ)  https://www.deftapartners.com/  

1952年大阪生まれ。 慶應義塾大学法学部卒業後、考古学研究を志し中央アメリカへ渡る。 スタンフォード大学経営学大学院、国連フェローを経てスタンフォード大学工学部大学院を修了。 29歳で創業した光ファイバーのディスプレイメーカーを売却後、主に情報通信技術分野で新技術を創出する企業の育成と経営に注力。

1990年代にソフトウェア産業でマイクロソフトと覇を競ったボーランドをはじめSCO、ユニファイ、ピクチャーテル、ウォロンゴング、トレイデックスなど10数社を成功に導き、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストのひとりとなった。

会長を務める事業持株会社デフタ・パートナーズグループは、現在アメリカ、イギリス、イスラエルでPUCというコンセプトのもと技術体系を構築。

2004年には東京とソウルに拠点を設けた。 2005年にはインテルと合弁したオープラス・テクノロジーをはじめ、ゾーラン、オーレン、XVDフォーティネットなどの企業群を育て、ポストコンピュータ時代の新産業を先導する。

アメリカ共和党のビジネス・アドバイザリー・カウンシル評議会名誉共同議長、国連経済社会理事会CISRI常任監視団大使兼UNONG WAFUNIF代表大使、財務省参与、税制調査会特別委員、産業構造審議会委員、(財)アライアンス・フォーラム代表理事、(財)原総合知的システム基金理事。 研究開発型ベンチャー企業の育成に適した税制や株式市場のあり方、新技術を用いた途上国の支援など幅広い分野で積極的な提言と活動を行っている。


(私のコメント)
最近のテレビなどの経済論調は外資系証券会社のエコノミストから受け売りしたような論調が多くなっていましたが、アメリカがサブプライムを始めとした金融危機が、アメリカの証券化ビジネスを始めとした金融革命に疑問を投げかける人が増えてきた。

「株式日記」では最初から経済市場主義経済に批判を浴びせてきましたが、ようやく証券化ビジネスやデェリバティブを駆使した金融革命に綻びが見えてきたことによって私の意見が正しかった事がわかってきただろう。アメリカで行われてきた金融革命は一種の詐欺行為であり、ホリエモンや村上ファンドに対しても批判してきた。

アメリカの市場原理主義では「会社は株主のもの」ということが原則ですが、日本ではそうではない。しかし小泉改革では急速なアメリカ経済構造を真似る風潮が蔓延して、正社員の首を切って非正規雇用に入れ替えて人件費を半分以下にして利益を上げて、株主に配当を回す風潮が蔓延した。

マスコミや御用学者たちは小泉改革を絶賛したが、2002年に製造業にも派遣労働を認めたことにより若年労働者は低賃金の非正規雇用労働者として使われるようになった。その結果、大手の輸出企業は業績を上げましたが、労働者の賃金は低下して国内消費は伸びなかった。

法律上は確かに会社は株主のものでありますが、原始的な資本主義の時代の法律概念であり、近代社会における会社は株主だけのものではない。その意味では、日本の資本主義はアメリカの資本主義より一歩先に進んでいるのであり、「会社は株主のもの」という原理主義はハゲタカファンドのスローガンに過ぎない。

テレビでは外資系のエコノミストが花形スターのように登場して「改革せよ」と連呼してきましたが、アメリカ資本主義のほうが原始的なのであり、日本でも戦前は会社は株主のものであり、労働者は蟹工船のように酷使されてきた。アメリカの現代の資本主義も同じであり、ファンドは会社を乗っ取ると資産を売却して、目一杯借金をして会社を食い尽くして転売してしまう。

これではアメリカではまともな企業が育つわけが無く、製造業などもGEのように金融業に鞍替えする企業が続出した。資本の原理から言えば金融業が一番効率的な経営が可能だ。有能なファンドマネージャー1人で金を動かすだけで莫大な利益を稼ぐ事ができるからだ。

日本のバブル当時もそのような風潮が満ち溢れていましたが、地道に働く事などは時代遅れのモラルとして捨て去られてしまった。サラリーマン達も自宅を担保にして株式投資や不動産投資に溺れていった。アメリカでも同じような事が行われていたようだ。まさに90年代の日本と同じ事がアメリカで再現されている。

日本では失われた15年を、黙々と膨らみすぎた過剰債務を償却してきましたが、アメリカ人がこのような試練に耐えることができるだろうか? 過剰債務を縮小するには地道に働いて返す方法と、国などが「徳政令」を出して過剰債務を償却してしまう方法がありますが、アメリカもアルゼンチンやロシアのようにデフォルト宣言するだろうか?

江戸時代でも徳政令は何度も出されましたが、結局は体制の崩壊につながってしまった。現代で言えば徳政令はデフォルトと言いますがアルゼンチンやロシアがデフォルトした。アメリカも近い将来デフォルトして海外の借金を踏み倒すかもしれない。そうすれば一時的にはピンチは切り抜けられますが、金融の信用は失われてハンデを背負うようになってしまう。

日本は経常収支は黒字であり経済力があったからデフォルトせずに90年代からの金融危機を克服しようとしていますが、アメリカは最終的にはデフォルトしてドルは基軸通貨から脱落するだろう。アメリカの金融資本主義は金融帝国主義でもあり金融で世界を支配しようとした。

1997年のアジア金融危機はクリントンがアジアに仕掛けた金融戦争ですが、タイやインドネシアや韓国までIMFの管理下に置かれてアメリカ金融帝国主義の植民地となった。中国も近い将来に金融危機が襲ってIMFに管理されるようになるだろう。それがアメリカ金融帝国主義のシナリオだった。

しかし金融資本主義はアメリカ本国をも蝕み続けて、サブプライム爆弾が破裂してしまった。中国も溜め込んだドルや債権を手放す時が来るだろう。そのときアメリカもデフォルト宣言を出さざるを得なくなるだろう。つまり米中が抱き合い心中をするような事態が来るかもしれない。米中の二大大国が沈没するから日本もその大波に巻き込まれるだろう。

だから日本は今のうちからアメリカ離れを模索するべきであり、今のままでは日本もアメリカと心中するようになってしまう。自民党にはアメリカの工作員のような議員が沢山いるからアメリカと心中をするつもりのようですが、小泉、竹中一派を日本から追放してでもそのような事は阻止しなければならない。しかしそのような動きは既に見られる。以下の記事がそうだ。


「米住宅公社救済協力へ外貨準備活用案浮上」 7月17日 産経新聞

7月16日、渡辺喜美金融担当相は訪ねてきた米政府元高官に語りかけた。

 「米住宅抵当金融公社の経営不安を憂慮しています。まず、日本は政府の保有分はもとより、民間に対しても住宅公社関連の債券を売らないように言います」

 うなずく米要人に対し、渡辺氏は続けた。「米政府が必要とすれば日本の外貨準備の一部を公社救済のために米国に提供するべきだと考えている」

 昨年8月の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライム・ローン)危機勃発(ぼっぱつ)後の金融不安は、最近表面化した連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2公社の経営危機でさらに深刻化している。米政府や連邦準備制度理事会(FRB)は公的資金注入など公社救済策を検討中だ。しかし、公的資金必要額は住宅価格下落に比例して膨張する。両公社の住宅ローン関連債権は米住宅ローン総額の半分近い5兆2000億ドル(約550兆円)で、日本の国内総生産(GDP)に相当する。

 両公社が発行している住宅関連証券が投げ売りされるようだと、米国のみならず欧州、日本、中国など国際的な信用不安になる。そればかりではない。米国債への信用は損なわれ、ドルは暴落しかねない。

 株式の低迷に加え、米国債とドルが暴落すれば、ドルを中心とする国際金融体制は崩壊の危機に瀕し、世界経済全体が根底から揺らぐ。

 渡辺案は、米国の自力による住宅公社再建には限界があるとみて、この6月末で1兆ドルを超えた日本の外貨準備を米国の公的資金注入の資金源として提供する思い切った対米協調である。

筆者はこの考え方について、在京米金融筋で米国務省のアドバイザーに感想を聞いた。彼は言う。「同盟国日本が率先して支援の手を差し伸べてくれると、われわれは日本にかつてなく感謝するだろう。日本は救済パッケージで主導性を発揮し、中国にも働きかけてくれればより効果的だ」

 中国の外貨準備は6月末で1兆8000億ドルに達し、米国債や米住宅公社関連債券の保有額でも日本をしのぐ世界最大の水準とみられている。中国は貿易や投機を含む投資で流入してくるドルを当局が買い上げ、主として米債券に投資している。ドルが暴落すれば中国も巨額の損失を直接被ることを中国政府は自覚しており、日本が国際協調を呼びかけると同調する可能性は高い。

 思い起こすのは、1997年のアジア通貨危機である。日本の財務省は通貨危機打開のために「アジア通貨基金」設立構想を推進した。ところが米クリントン政権が強く日本案に反対し、日本主導を嫌う中国と語り合って、アジア通貨基金構想をつぶした。今回の危機は米国を震源地とする巨大地震であり、中国も米市場の安定は自国経済の死活問題である。

 渡辺金融担当相は「まだ私案の段階だが、中国にも協力を呼びかけるつもり」と言う。米金融危機が今後さらに悪化すれば、有力案として浮上しよう。




シンポジウム「米中に挟撃される日本」 アメリカは中国を
ステイクホルダーとして認め、アジアを共同管理していくつもりだ。


2008年7月20日 日曜日

シンポジウム「米中に挟撃される日本」

司会 井尻千男
登壇 黄文雄、田久保忠衛、藤井厳喜、宮崎正弘

とき   7月19日(土曜日) 午後一時半から四時頃まで。
ところ  茗荷谷 拓殖大学キャンパス C館



【田久保忠衛】

田久保でございます。最初にご指名を受けましたので、この問題をどう考えているかということで15分ほどで申し上げて見たいと思います。私はアメリカの外交政策に対するとりわけ対中政策について傾注してきた者でございますけれども、いま井尻さんが言われた日本がその中でどうなるかという問題意識ですね。いまフォーリンアフェアーズと言うアメリカのもっとも権威のある国際問題雑誌に、中国側がバーグステン論文に注目していて、会うとほとんどの人が言うんです。

バーグステンはアメリカの世界経済研究所の所長ですけれども、こういうこと言ってるんですね、どうやら経済と言うのは三つのブロックになっている。一つはEUですね、アメリカが世界の人口の3,4%の国が世界のGDPの30%近くを持っている、しかも基軸通貨のドルを持っている。この国が簡単に潰れるかよと言う事です。つまりEUとアメリカともう一つ三番目は中国だ、今でも軍事大国経済大国政治大国の中国が世界大国になるのは時間の問題で、三つの山の中でそれぞれ何をやるかということになったということです。こういう大枠の話なのです。

このバーグステン論文には日本という国は登場しない。アメリカは中国をどういう風に言ってなにをしようとしているんだろうということですね。アメリカは中国の経済面と中国の軍事面、中国はという人がいるけれども中国のどこの面を見ているのか訳の分からない。アメリカは二つに分けているようでございます。

中国の経済面でございますけれども、これはどうにもしようがない13億の人口を抱えた大国になる以前に大国、どう仕様もないじゃないか。もう一つ軍事面、これはどういう風に見たらいいか、毎年毎年ペンタゴンが中国の軍事力に関する年次報告を出している。

ここでは脅威という言葉は使っていませんが、依然として危険な不透明なという言葉を何回も使っている。不透明な軍事費と見ているわけでございます。アメリカの中国の軍事力に関する年次報告と、ロンドンにIISSというところと両方が一致して言っているのは、中国が89年度以来公表している軍事費ですねこれはずっと二桁なんです。

中国が公表している数字だけ見ていると、日本防衛費を中国の防衛費が去年オーバーしてしまった。ところがこれは公表され数字でありまして、国防年次報告やIISSは実際の数字は二倍ないし三倍と言っています。おそらく他のシンクタンクいろいろありますが同じような二倍ないし三倍とこう言ってるんです。

皆さんご存知の平松茂雄君という杏林大学の友人でありまして、研究室がとなりにあったもんですから大変親しくしている。彼の言っている事に日本人は耳を傾けるようになったけれども、10年ほど前は平松は基地外だといわれた。平松さんは5倍ないし6倍というきちんとした計算を出しているんです。

他の名目に含まれたものを耳かきみたいに穿り出す、それを集めてくると五倍以上になるよという平松君の研究なんです。これは世界的にも認められている。こういうことになると中国は爪とぎが非常に尖っているね、ただし非常に痩せていると思った中国が改革開放以後今日に至るまでかなり肉好きが良くなってきたなあ、経済大国にもなってきたねと。かつては日本が経済大国、中国が軍事大国、中国なんて軍事大国というけれどたいしたことないさ、俺たちは経済でなんとかやって行くさと言っていたけれども、そのうち経済も軍事も追い越されて、日本はこのところを分かっている人と分かっていない人がいるけれども、日本は軍事力を持っているか持っていないか、これはわたくしは自衛隊は軍隊ではないと思っているんです。

戦前と戦後のシステムをですねよく考えないといけない。法体系がぜんぜん違うんです。警察法体系になっている。戦えない自衛隊なんですね。いま石破防衛大臣が一生懸命やろうとしているけれども、ようするにですね、世界に例を見ない重石が上にのっかているんです。シビリアンコントロールと称して文民統制と言いまして、シビリアン政治家がトップに立つんですけれども、制服の上に大学を出て公務員試験を受かっただけの軍事をほとんど知らないと言っていい内局と言うどっかと重石になっているんですよ。

世界で例を見ないんです。亡くなった来栖統幕議長が一番気にしていたのがこれ。いま石破大臣がこれを両方ミックスしたシステムを作るんだと言ってるんですけれども、上から押さえたシビリアン内局が制服の人事と予算を握っていると言う世界にまったく例がないこういうシステムを叩き壊さないと、ナンセンス、普通の軍隊にしなければならない。しかも普通の民主主義国といわないとシビリアンコントロールを誤解する人がいますが、日本は問題なんです。

アメリカの対中政策は歴史的に見ますと二派あるんです。中国の膨張政策に対してこれを封じ込めようコンテインメントポリシー派と、中国をいろんな国際機関に全部加盟させてしまうWTOだろがどんどん入ってきてちょうだいよ、それで世界にエンゲイジメント係わり合いを持たせてしまうと、次第に国際のルールに従わざるを得なくなる、あまり非常識な事はできなくなる、これをエンゲイジポリシー派というんです。

この二つがあって二者択一どっちかと、これは単純な話でコンテイメントとエンゲイジメント、時には同時に使い、時には片方を使い、これを適当に按配して対中政策をやってきたのが、アメリカの対中政策はどうなんですかと聞かれた場合の私の回答でございます。

もう少し詳しく言うとブッシュ政権はどうだったんだろうというと、一期と二期ははっきり言って違うと言う事でございます。一期は面白おかしくネオコンネオコンと言いますけれども、ネオコンの定義もしないで言う人が日本では非常に多いんですけれども、私はネオコンではないと思う。

チェイニー副大統領もラムズフェルド国防長官もネオコンではないんです。要するにあの人たちはセオドアルーズベルトやレーガンみたいに、外交政策をやる時にはバックには強力な軍事力が無ければならない、これを表に出してやってきただけの話。従って日本で言えばタカ派的かハト派的かと言えばタカ派というのが当たり前。これが良いか悪いかと言えば私はいいと思います。

背景に軍事力なしで外交をやってきて何も出来なかったのが日本だと考えると、どっちが良いだろうかというと、自ずから明らかだろうと思います。外交をやる場合に軍事力がないと考えるのは皆さんは別ですが日本人だけだと思います。その中で第二期目はどうか、今では8年ですけれども3年前にゼーリックという国務副長官、いま世銀の総裁になりましたけれども、国務省のNO2のゼーリックが2005年の10月全国米中経済委員会、アメリカのほうで貿易をやっている関係者が総会を開いた時の記念講演に言ったんです。

ステイクホールダーという言葉を使ったんです。中国はリスポンシブル責任あるステイクホールダーになってもらうしかない、なってくれよということです。これを言ったとたん、太平洋にインターネット電話ファックスが入りかったというくらいであります。その次の日の人民日報にステイクホルダーの意味は何通りあるという解説が一面にどっと出て、中国がこれにいかに注目を払ったかということを証明していると思います。

日本語ではリスポンシブル責任あるステイクホールダーというのが新聞界の統一用語ですけれども利害関係者、利害共有者と新聞が一様に訳している。つまりアメリカも中国も経済では同じ利害関係にあるんだよと、ステイクというのは掛けるホールダーというのは支える柱です。インディアンが貴重な首飾りとか台の上に乗せる博打をやるんです。

ホールダーというのは博打を管理する人、博打打はもういいよ、さんざんやったから管理を一緒にやろうよ、これがゼーリック長官の呼びかけで、これが現在のブッシュ政権に続いているし、オバマになろうと続いていくだろうと、ただしもう一つ、軍事面はどうかという事なんです。

軍事面では強く出て行くか弱く出て行くかという話になって、第二期のライス国務長官ですけれども、いま出ているフォーリンアフェアーズにライスが新しい現実主義外交という大論文を書いている。そこで言っているのは米中は仲良くなるんですよ、経済は半ば必然で良いとか悪いとかじゃなくて政策で両方の関係が深まる事は阻止することは出来ないが、どんどん進めるお互いのために。ただし軍事面ではこんな不透明な事があるかということで、さすがのライスもこぼしている。こういう事でございます。

そうすると不透明というのはさっき言ったように公表された軍事費がかなりデタラメである。みなさん1%や2%の誤差じゃなくて2倍ないし3倍という話がありますか。こういうことが公然と行なわれている、軍事面では毛沢東の大躍進の時代から文化大革命から、どんな苦労をしても一貫してやってきたのは核兵器を含めた通常兵器の増強、軍事力の増強であります。

二番目が海洋戦略、これは後からどなたかがお話になるし、井尻さんなどが触れますけれども尖閣列島から台湾から南沙諸島から、太平洋のどんどん出てこようとする海洋戦略の一環なんですよ。全体の海洋政策は第一列島線、第二列島線、ついこの間のキーティングという太平洋司令官は、ついこの間の5月に中国に行った時のカウンターパートが「キーティングさんどうですか、将来はハワイ以東をアメリカがコントロールしてください、ハワイ以西は中国がコントロールします。米中間に密接なコミニケーションさえあれば、ハワイから西は心配しなくていいんですよという」。

キーティングは上院の外交委員会で、自分の相手は冗談めかして言っているとは思うが中国の戦略の一端を垣間見たような気がしたと、キーティングが言った事が速記録にのっている。そうするとどうなるんだろうなと言う事です。これは通常路線、海洋戦略。もう一つあります、宇宙戦略なんですよ。

去年の1月衛星兵器を破壊する実験に中国は成功いたしましたよ。日本は宇宙飛行士以外関心が無いじゃないですか。政治家のトップは関心がなければいけないんだけれどもトップの人が一番関心が無い、残念ながら。

時間が少々オーバーいたしましたけれども、米中というのはいま申し上げたような関係の中で、その中で日米同盟の中で胡坐をかいているかということよりも、自分がやるべきことも自覚しないで、何かがあるとアメリカがやってくれて当然だと、アメリカが冷たい顔をすると裏切り者とこういうことを言ってくる。正面の敵がどこにあるか訳がわかんなくなっちゃっている。

先ほど申し上げましたように、日本の国家の体質の中で一番の欠陥があるのは私は防衛だと思う。防衛の大欠陥を議論しようともしないで、こういうダーティーワークをアメリカがやってくれるんだろう、アメリカがやらなければアメリカが裏切ったという、お釈迦様の手のひらの上で怒りまくっているという、お釈迦様が対決している悪魔になかなか気がつかない。これが私が抱いている全体像でございます。時間が来ましたのでこれで止めておきます。


(私のコメント)
昨日は拓殖大学で開かれた公開シンポジウムに行ってきましたが、前にも行ったことがあります。拓大も以前よりも建物が非常に立派になって会場も設備が整った所でした。エスカレーターまで付いているからまるでデパートのようでした。しかしこのような政治的シンポジウムでは関心が低く、特に若い人の参加者が写真で見るように少ない。

ネット世代の若い人は、このような講演会に参加することは少なく集会を呼びかけても百人か二百人ぐらいしか集まらない。政治的経済的なことは考えるのもいやというのが若い人の平均像だろう。特に中国や韓国などの若い人に比べて行動力に欠けるのは日本の若い人の特徴だろう。

ブログなどを見て回っても、このような講演会に行ってきたというような書き込みが少ない。今の若い人は芸能関係の事にしか興味が無いようで、選挙などでも二十代の棄権率が極端に高い。学校教育で政治的な教育がほとんどなされず、あるのは受験教育だけだから一般社会の事は無知であり、政治経済の事は判断のしようがないのだろう。

中国や韓国の若い人と日本の若い人の差が出てくるのは教育の内容の違いによるのでしょうが、政治に対する緊張感のなさが無関心になり選挙などの棄権率につながる。日本では政治に関心が持たれると学生運動が盛んになって学校が困るからなのでしょうが、これは一種の教育界の愚民化政策と言っていいだろう。

昔は学生運動が政治の主役でもあったのですが、教育界は学生運動を嫌って徹底的にノンポリ化してしまった。だから左翼活動も右翼活動も非常に低調であり、それが長い期間続くと日本の政治的レベルや経済的レベルの低下につながることになる。特に若い官僚たちのレベル低下は日本の政治経済の足を引っ張るほど悪化しているように思える。

昔は大学生と言えばエリートでもあったのですが最近は大学全入時代になりバカでも大学生になれる時代になった。だから拓殖大学で開かれるシンポジウムでも大学生の参加が非常に少ないのは仕方のないことなのだろう。それは先日のチベット弾圧反対デモで行った早稲田大学でも感じた事でもある。

さて、「米中に挟撃される日本」というシンポジウムの題目は、「株式日記」でも米中によって日本が封じ込められる事を書いて来ましたが、アメリカのブッシュ政権でも中国重視が露骨になってきて北京オリンピックにもブッシュ大統領が参加をする。要するにブッシュ共和党政権も前クリントン民主党政権でも米国の中国重視政策は変わりがないようだ。

最初の講演者の田久保忠衛氏の話をテキスト起こしをしてみましたが、アメリカからは日本がますます影が薄くなって見えるようだ。経済的結びつきが米中でますます深くなり、相互協力関係が大きくなってきている。軍事的に見れば中国が海洋戦略を進めて太平洋に進出するのは確かな事だ。

それに対してアメリカ海軍は日本の拠点を置いていますが、アメリカの国力が衰えればハワイまで後退する事はありえることだ。田久保氏もキーティング海軍司令官の話を例にしていますが、米中で太平洋の支配権を分割する事はありえる。その場合に日本はどうなるのか?

日本の政治は与党も野党も日米安保を前提にしている。日米安保を否定しているのは共産党ぐらいだ。社民党なども憲法を守れとはいっても安保反対とは言わない。むしろ最近では反米保守派が言い出していますが、自主防衛核武装派だ。米中連携が強まれば日本としてはポスト日米安保を視野に入れなければならない。

米ソ冷戦終決と日本の失われた15年とは深い関係があるのですが、日本人はいまだにそのことに気がついていない。アメリカの一極支配は日本も支配されるべき存在となり同盟者ではなくなった。アメリカはテロを共産主義に代わる敵として打ち出していますが無理がある。アメリカはもはや中国を敵とみなす事は放棄したように見える。

ならば日米安保の仮想敵国は無いのであり、日本にある80箇所の米軍基地は不要ではないかと思う。日本にとっては中国、北朝鮮、ロシアが一番の脅威であり、いずれも核武装国家だ。韓国も竹島問題では関係が悪化しており戦争にならないとは言い切れない。台湾も尖閣諸島を巡って問題の火種はある。

このような事は日本独自で解決しなければならない問題であり、アメリカが関与する事はありえない。にもかかわらず日本政府は外交や防衛をアメリカに丸投げしている状態が冷戦崩壊後も続いている。田久保氏の話もその事を言っているのでしょうが、日本の戦略が見えない。日本の政治家や官僚は一番厄介な問題はアメリカさんに任せて考える事から逃げ回っているのだ。

北朝鮮が核実験をした時も中川昭一政調会長が日本の核武装を議論しようと持ち出しても、緘口令が引かれてしまって議論が封じ込められる状態だ。これでは日本の戦略が立てられないのは自明の事であり、核武装しなくては戦略の立てようが無い。

中国、北朝鮮、ロシア、アメリカと日本が核武装国家に囲まれて動きが取れない。アメリカの核の傘は冷戦時代のものであり、米中蜜月時代では日本が中国から核攻撃を受けてもアメリカは中国に核で反撃する事は考えられない。抗議程度はするだろうが米国本土を犠牲にしてまで核戦争する事はない。つまり日米安保は賞味期限が切れているのだ。

日本には法律上は軍隊が存在していない。だから日本には軍法会議は無く警察が自衛隊を裁くことになっている。海上自衛隊も航海で問題が起きれば海上保安庁が裁くのであり自衛隊は軍隊ではない。日本では一部を除いて頑なに憲法を守り続けて軍隊を持つことに拒否し続けてきた。その事がかえって周辺国との領土問題を引き起こす火種になっているのですが、政治家と国民はいつその矛盾に気がつくのだろうか?

日本が竹島で譲歩すればロシアは北方領土を正式に領有するだろうし中国と台湾は尖閣諸島を占領するかもしれない。それに対して自衛隊は反撃が出来ない。法体系が警察法体系になっており、いちいち特別法を作らなければ作戦活動は出来ない。

日本が軍隊を持つことを日本国民がいまだに許していないのは、一つは危機感がないということであり、竹島や北方領土を占領されても日本国民は怒り出さない。自分には関係がないと思っているのかもしれないし、いまだに戦争に負けた精神的後遺症が残っているのかもしれない。それに軍隊が勝手に戦争を始めて国民を酷い目に会わせたという被害意識もあるだろう。だから軍隊を持つと勝手に戦争を始めるのではないかという恐怖感が憲法改正を阻んでる原因にもなっているのだろう。

だから日本政府はなぜ日本が戦争を始めたのかという十分な説明をいまだにしていないのだ。戦争を体験した人には口で言わなくてもわかっているのでしょうが、戦後生まれの人に対しては口をつぐんで黙っている。学校の歴史教育も大抵が明治維新程度で終わってしまって近代史を知らない。テレビドラマも大河ドラマでは明治維新以降のドラマがほとんど無いのはどういうことなのだろう。

戦争の結果から見れば日本はなんと無謀な事をしたという事で戦前派の人は現代の日本人には説明が出来ない。受けた被害があまりにも大きいので口を噤むしかないのですが、戦争に負けたことよりも戦後のアメリカとのプロパガンダ戦争に負けたことが戦争に負けたことより被害が大きい。

大東亜戦争は前線の軍隊が勝手に戦争を始めてしまって、大本営の不拡大方針を無視して戦争を拡大して行ってしまった。戦争を始めた軍人を処分せず出世させた事で軍としての体をなさなくなり、命令を聞かない軍隊にしてしまった事が今でも後遺症になってしまっている。だからシビリアンコントロールとして制服の上に官僚たちが防衛省の内局に出来てしまった。それだけ軍人が失った信用は大きい。

具体的に言えば大東亜戦争の総括が出来ていないことであり、東京裁判に歴史的評価を丸投げしてしまった。それが日本が戦犯国家ということになり60年たっても後遺症が残り続けている原因だ。それを克服しない限り憲法も改正できないし軍隊も持つことが出来ない。だから日本みずから大東亜戦争の軍事法廷を作り無罪判決を下すべきなのだ。

「株式日記」では大東亜戦争は植民地解放と人種差別撤廃の為の聖戦だと主張しているのですが、この主張をアメリカにも中国にも南北朝鮮にも台湾にも英仏蘭にも主張していく事だ。そうしなければ靖国神社の英霊も浮かばれないのであり、東京裁判史観の否定が無ければ憲法改正も再軍備も核武装も出来ないだろう。




米国は金融機関の決算について、時価会計ルールを早々と放棄し、
異なる会計処理を活用し、国を挙げて金融機関の粉飾決算している


2008年7月19日 土曜日

米金融危機:自己責任原則の放棄で米国は弱体化、ドルは凋落 7月18日 ロイター

 [東京 18日 ロイター] 信用バブル崩壊後の不良債権問題の深刻化で追い詰められた米国は、「自己責任原則」や「時価会計ルール」など米国社会の真髄を貫くルールを自ら放棄しはじめた。

 これは急場しのぎとしては有効かもしれないが、世界の信頼を損なうことで、米国の弱体化は加速し、基軸通貨ドルの凋落の歩みを早め、将来に取り返しの付かない禍根を残すことになるとの見方が世界の投資家の間で聞かれる。

 <自己責任原則の放棄>

 金融界に限らず、米国社会の根幹をなすルールは「自己責任原則」であり、これを法律に例えれば米国の憲法のようなものだ。

 しかし、3月に資金繰りに窮した米証券ベアー・スターンズに緊急融資枠を設定して救済をはかったことを皮切りに、このところ米国が様々な場面で自己責任原則を放棄するケースが目立ってきた。

 「インベストメント・バンクが先導した信用バブルが弾け、金融界が苦境に陥ったことで切羽詰った米国は、とうとう自己責任原則という『踏み絵』を踏んでしまった」とファースト・インターステート・リミテッド香港社長、中山茂氏は指摘する。

 自己責任原則は時価会計ルールと並んで、他国が米国スタンダードを受け入れる際に「フェアな基本理念」として認識され、米国スタンダードは世界的な広がりをみせた。

 「これを放棄することは、米国の自己否定を意味し一番の強みを捨てたことになる。今後、米国の信用は、国際的にも国内的に失墜し、弱体化が加速するだろう」と中山氏は予想する。

 ベアー救済劇の翌日には、米連邦準備理事会(FRB)が米証券会社に対する連銀窓口貸出(Primary Dealer Credit Facility=PDCF)の開始を発表したが、証券会社は本来FRBの監督外にある業態で、流動性供給はFRBの使命を逸脱した異例の措置だ。

 だが、バーナンキFRB議長は、当初は半年間の期限付きだったPDCFを年末を越えて延長する用意があるとまで表明した。

 今月14日、米政府は経営難が懸念されている2つの政府系住宅金融機関(GSE)、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)の救済に着手、現在は1公社につき22億5000万ドルの融資枠の上限を引き上げ、両公社の資本増強のために株式を購入する方針を表明。さらに連銀窓口貸出枠で資金供与する提案もした。

 米国が自己責任原則を放棄してまで、必死にウォール街を救済するのは、マイナス成長やリセッションを回避したいからだ。

 だが、著名投資家のジム・ロジャーズ氏は「リセッションはシステムに存在する過剰を取り除くという意味で『善』である」と言う。

 「米国が過剰(マネー)にまみれたウォール街を救済して、リセッション回避をはかることは愚かしく、米国は、実際にリセッションを体験するより、はるかに高価な代償を支払うことになるだろう」とし、「無分別な資金供給によって、FRBは自らの衰退を招くだけでなく、激しいインフレを招き、基軸通貨としてのドルの終焉を早めるだろう」とロジャーズ氏は警告する。マネーモーニングとのインタビューで答えた。同氏は米政府のGSE支援について「完全なる自己破滅的行為」と評している。

 都合に合わせてルールを変更するということは、米国が政治の世界で何度もやってきたことだ。これが経済の世界でも通用するのか、目下、金融市場に試されている。

 ドルに対するバスケット通貨(ユーロ、円、ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)の加重平均値であるドルインデックスは、2001年7月の120.90から4割超下落して3月には過去最低の70.689となった。現在は72台を推移している。

 ロジャーズ氏は、米国債はここ1―2年の間に現在のトリプルAから格下げされるだろうと予言する。

 <時価会計原則の裏技>

 米国は金融機関の決算について、時価会計ルールを早々と放棄し、違法ではないものの異なる会計処理を活用し、国を挙げて金融機関の粉飾決算の片棒を担いでいるとの批判が、米国以外の国々で上がっている。

 「かつて米国は、日本に対して時価会計ルールの厳格適用を声高に要求し、日本の金融機関を潰しておいて、自分が困ったときには、勝手にルールをネジ曲げるのは許しがたい」(本邦金融機関)。「時価会計のポイントは、ガラス張りで全体が見渡せることだ。少しでもルールを曲解すれば、全てが台無しになる。米国がフェアなアカウンティングとして世界に売り込んだものを、自らの都合で柔軟運用するとは、呆れて物が言えない」(アジア系金融機関)と絶句する。

 米財務会計基準審議会(FASB)は昨年、金融商品の会計処理における公正価値の算出基準としてFAS157号を導入し、米大手金融機関でも採用している。FAS157号の下では、時価会計が適用されるのは、レベル1と呼ばれる資産のみだが、米金融機関保有の金融資産のうち、レベル1に区分されるものは3割にも満たない。他方、時価算定が困難な資産であるレベル3資産は増え続けている。

 米国が政府を挙げて支援しているGSEの会計も柔軟運用の一例だ。

 「ファニーメイについてはバランスシートで資産の評価が甘いと言える。レベル3資産については十分な引き当て・償却を行っておらず、同公社が保証する債券の引当金(負債サイド)も全く十分とは言えない」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は指摘する。

 斎藤氏によれば、ファニーメイは資産がわずか2%目減りしただけで、株主資本を超える損失が発生するほど資本が脆弱な状態で、損失処理ができるほどの資本増強が早急に必要だという。プール前セントルイス地区連銀総裁は「両公社が破たん状態にあると認識するべきだ」と述べている。

 斎藤氏によれば米金融機関が活用する会計の裏技には少なくとも3種あるという。

 第1に、損失が出ている保有証券を「満期まで保有するつもりで、売却可能で流動性が高い」というカテゴリーに分類することで、「簿価」評価し、評価額の変化が永続的と判断されるまでは「その他包括的利益」に繰り入れる。これによって評価損は表面化しない。

 第2に、レベル3資産(流動性も指標もなく各社が独自の推定によって評価する資産)をヘッジするためのデリバティブ資産についてのみ未実現収益を計上し、損益計算書のトレーディング収益に入れる。実際、米投資銀行はレベル3資産から巨額の未実現収益を計上している。

 第3に、大きな損失を出した場合は、金融当局に時価評価を一時凍結してもらう。バーナンキ議長は「時価会計は、時に投げ売りを誘って市場を不安定にする側面がある」との認識を示し、「必要であれば一時凍結することもありうる」ことを示唆している。



長銀粉飾決算最高裁判決 “真の被告”は金融当局 7月19日 産経新聞

巨額の不良債権を隠した長銀旧経営陣の刑事責任は、起訴から9年を経て、最高裁に否定された。判決では、銀行に適切な情報開示を徹底させなかった旧大蔵省の無策さが判断の根拠とされ、当時の金融行政の責任の重さが改めて浮かんだ。

 長銀が債務超過を明かして破綻したのは、健全経営とする有価証券報告書を提出して約71億円の配当を行ってから、わずか4カ月後だった。企業会計の目的は、会社の業績を明示し、役員の責任を明らかにすることに尽きる。長銀経営陣の市場への裏切り行為は当時、厳しい批判を浴びた。

 ではなぜ、最高裁は経営者の罪を否定したのか。金融界が長年、「護送船団方式」と呼ばれた国家的保護の下にあり、大蔵省が「金融の安定化」を優先して、不良債権の処理を先送りさせるような施策を取っていたことが背景にある。

 先送り施策の証拠のひとつが、平成8年に大蔵省が長銀の検査に入った際の長銀側のメモだ。

 「場合により(不良債権の)分類に加減する気配が感じられた」とあり、検査官が検査に手心を加えるような発言も記されていた。

 こうした大蔵省と金融界の蜜月は、9年を境に終焉(しゅうえん)を迎えたが、不良債権の厳格処理基準は、10年の時点でまだ十分に定着しておらず、先送りは当時まだ「正しい」会計の部類だったというのが、最高裁の判断だ。

 「金融危機だけは絶対に回避しなければならない」としていた金融当局の立場も分からなくはないが、刑事責任を問われた3人は、無罪までに9年の月日を要した。

 検察もまた、巨額の血税が投じられた破綻処理の中で「国策捜査」を求められ、向こう傷を負う結果となった。

 捜査が行われた当時、バブル期に不良債権を膨らませた歴代経営陣は時効の壁で罪を問えず、破綻時の「幕引き役」となった最後の経営陣だけが責任を問われる形となったことに、違和感を示す声が出ていたのも事実だ。

 実態を反映しない会計を「正しいもの」とする異常な環境を許した金融当局だけが無傷のままだ。

 「結局、最も責任を問われるべきだったのは、金融当局だったんじゃないか」

 元長銀マンは、こう語った。


(私のコメント)
昨日は長銀の元経営者に無罪判決が出ましたが「国策捜査」であった。しかしロイターの記事にもあるようにアメリカ政府自身が粉飾決算を容認している。アメリカは日本に対して「自己責任」や「時価会計」を強要して置きながら、自分の事となると勝手にルールを変更してしまう。

日本政府はバカ正直だから厳格査定を徹底させて潰れなくてもいい銀行を潰してしまった。長銀はアメリカへの貢物として差し出されたようなもので、1200億円でリップルウッドに売却されましたが、4年足らずで再上場してリップルウッドに2000億円の上場益をもたらした。

「株式日記」では「時価会計」に対して終始反対してきましたが、日本の経済学者や評論家やエコノミストや経済記者は「時価会計」をアメリカ式の透明な会計システムを称賛して異議を唱えなかった。ならばアメリカ政府が行っている「時価会計」や「自己責任」の放棄に対して非難すべきだろう。

日本のバブル崩壊がこれほど拗れて長引いてしまったのも、アメリカに言われるがままに「BIS規制」を導入して「時価会計」を導入して会計ルールを変更してしまった。つまりバブル崩壊を長引かせた責任は日本政府にあるのであり、アメリカ政府のようにGSEの会計にたいして「粉飾」を認めているように柔軟に対応すべきだったのだ。


しかしそれが出来ないのは、「株式日記」で何度も言っているように日本政府は何でもアメリカ政府の言われるがままにならざるを得ない。アメリカからは年次改革要望書で数字を並べて「ああしろこうしろ」と細かな指示が下され、日本政府はそれに忠実に従っている。そしてそれに無批判に応じてしまっている。

アメリカ政府が今行なっていることは「護送船団方式」であり、結局は日本のやり方が間違ってはいなかったのだ。ベアー救済はまさしく護送船団なのだ。日本政府は外圧に弱くて外国の要求に屈してしまって皺寄せを国民に被せる。その結果が毎年3万人の自殺につながっているのです。

長銀が潰されたころは次はどこかと言う事が話題になった。もっぱら「みずほ銀行」がシティに売却されると言ううわさが立って、「みずほ」は外資から集中的な売り浴びせにあって株は暴落した。当時東京で行われていた事が今ニューヨークで行なわれているが、それに対してSECは空売り規制をかけている。日本とまったくやっていることは同じだ。


米SECの金融株空売り規制強化、一部のETFに恩恵となる可能性 7月17日 ロイター

[ボストン 16日 ロイター] 米証券取引委員会(SEC)が発表した大手金融機関の株式を対象とした空売り規制により、金融セクターの株式を空売りして好調なリターンを上げている一握りの上場投資信託(ETF)が恩恵を受ける可能性がある。

 21億ドルの規模を持つウルトラショート・フィナンシャルズ・プロシェアーズや、最近設立された1180万ドル規模のショート・フィナンシャルズ・プロシェアーズ、ライデックス・インベストメンツの950万ドル規模の2x S&Pセレクト・セクター・フィナンシャルズなどのファンドは、金融セクター全体が逆風下にある中で恩恵を受けることになる。

 株式を空売りする一部のヘッジファンドやその他の投資家と異なり、これらのファンドはスワップやオプション取引などのデリバティブ(金融派生商品)を通じて売りポジションを建てている。

 SECの規制強化により、投資家は今後自由に金融株を空売りできなくなる見通しであるため、こうしたファンドへの需要が高まる可能性がある。

 SECは15日、政府系住宅金融機関(GSE)の米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)を含む大手金融機関の株式について、借り株の裏付けなしに空売りすることを禁じる緊急規制を発表した。7月21日から7月29日まで実施されるが、最長で30日間まで延長される可能性がある。SECは、株式市場全体の空売り問題に対処する規制を今後検討するとしている。

 モーニングスターのETFストラテジスト、ポール・ジャスティス氏は「SECがこの規制を打ち出したからといって、投資家がなぜ金融セクターの株を空売りしたいかという根本的な命題は変わらない」と指摘。「従って、第1希望が取り除かれた場合、次の論理的な行動は常に、別の選択肢を模索することだ」と語った。

 これらファンドは、驚異的な規模のリターンを生み出している。リッパーによると、ウルトラショート・フィナンシャルズの年初来の運用成績は、15日時点で102.5%となり、米ファンド全体の中で最も良好なパフォーマンスとなっている。運用資産は2007年1月の設定以降急増し、現在20億ドルを超えている。

 ショート・フィナンシャルズとライデックスのファンドの7月の運用成績は15日時点で、それぞれ13.98%と32.03%。両ファンドは今年6月に設定された。



(私のコメント)
「株式日記」では以前に証券会社の「無限空売り」について書いた事がありますが、ジェイコム株誤発注事件を見れば分かるように発行株式以上の株を空売りできるシステムを持っている。外資家証券会社も日本の銀行を狙い撃ちして無限空売りを仕掛けてきて大儲けをしたようだ。SECもその手口を知っているから空売り規制をかけざるを得ないのだ。


自己売買部門の特権◆ 2006年6月3日 株式日記

非賃借銘柄を自社が保有する枚数を超えて無限に現物売り可能。
・空売り規制のチェックがされてない。
・逆日歩無し。
現物取引でも空売り可能、制限なし
・差金決済禁止などと言う概念は存在しない。
・余力チェックがされていない。
値幅制限に関係なく注文できる
・東証直通の特別回線で、板乗りも約定もほぼディレイタイム0秒。
・手口情報リアルタイム完全表示。
・板情報はS高からS安まで、上下完全気配。
・自己保有株をレーティング上下させて株価操作可能。
・出来たときに「指値売買」か「成行売買」か分かる。
・引け成り注文が分かる。
・機関投資家はバスケット売買ができる。
・インチキ売買が染み付いた内弁慶のため、外資にことごとく敗退する。


これでは素人がどんなにがんばっても証券会社の自己売買部門に勝てるわけがない。ハゲタカ達はアメリカ国内であろうとダメとわかれば徹底的に売り叩くから政府はPPTで徹底的に買い支えている。まさに業界ルール無視の仁義なき戦いが繰り広げられているのですが、株式専門家もこのような事は書かない。

長銀が「国策捜査」にかけられたのもルール無視の日本の検察ですが、日本の政治がアメリカ主導で動いている以上は、検察もアメリカの意向に逆らえない。ハゲタカ達は金のためなら殺しでも何でもやるから政治家や官僚も言う事を聞かざるを得ない。長銀と関係の深かったイ・アイ・イ・インターナショナルの高橋治則が59歳死んだ。口封じの為に殺されたのでしょうが、ハゲタカが関係すると「自殺者」が出る。


高橋治則が死去 「世界を動かす国際金融 2005年07月20日

新生銀行は平成16年3月15日、東京地裁に和解希望の上申書を提出、4月10日には預金保険機構の子会社・整理回収機構(RCC)を仲介役として「イ・アイ・イ」の破産管財人と和解交渉をスタートさせていた。この和解交渉は新生銀行の上場後の出来事であり、主役は高橋治則である。高橋の長銀に対する怨念から新生銀行の上場目前に意図して起こされた訴訟であることは明らかだろう。

和解は交渉最終日だった5月10日に成立した。追い詰められていたのはティモシー・コリンズを中心とするリップルウッド、そして外資から“リモコン操作”されている竹中平蔵大臣だったと推定できる。

もしも新生銀行が再破綻するようなことがあれば、8兆円もの公的資金を投入した日本政府の金融政策の基盤が大打撃を受けることから、小泉首相にとってもなんとかしなければならない問題だったであろう。同じように、旧長銀を買収したリップルウッドの背後にいたゴールドマン・サックスや米国政府にとっても最悪のシナリオは悪夢だっただろう。それぞれにそれぞれの思惑がある和解交渉だったのである。




W-CDMA + Andorid というグローバルスタンダードなプラット
フォームの日本のケータイが世界中で使われるようになります。


2008年7月18日 金曜日

iPhone が流行るわけがない、最終的に流行るのは…  7月18日 Weboo! Returns

巷で iPhone が話題です。僕も発売初日に手に入れたのですが、前々から iPod touch を使っていたこともあり、使い勝手も含めて特に予想外な点はありませんでした。初めて iPhone(2G) を触ったのは、キャズムを超えろ!の人がウノウに持ってきてくれた時なのですが、確かにその時は指で操作するインタフェースに感動しました。

PC用のWebサイトを見たり、動画を見たりとエンターテイメント端末という意味では本当に素晴らしいです。しかし、僕がメインの使い方だと思っているコミュニケーション端末としては、文字入力に改善の余地があって、まだまだその分野のエキスパートである女子高生の使用に耐えうるものではないと感じました

しかし、もちろんこの日本市場に iPhone が登場したことの意義は理解しているつもりで、僕が iPhone(とこれから登場するAndroid)に期待していることは次の4点です。

  1. 日本のキャリア主導型ビジネスの終焉
  2. アプリケーションの自由化
  3. PCからモバイルへの主役交代
  4. 日本の携帯電話メーカーの海外進出

2.アプリケーションの自由化に関しては、残念ながら iPhone では実現できません。勝手アプリは許可されていないので、必ずアプリケーションは App Store を通して配布しなければなりません。この App Store では売上げの30%を手数料としてアップルに納める必要があります。また、App Store で配布するに当たっては iPhone Developer Program に登録をしなければならず、たとえ公開しようとするアプリケーションが無料だったとしても10,800円を払ってデベロッパー登録をする必要があります。前に「クラウドコンピューティングは現代の小作農か?」という話を書きましたが、このアップルが提示している仕組みこそ現代の小作農です。

3.PCからモバイルへの主役交代は、日本では既に起こっています。総務省の調査によると、今やケータイからのネット利用がパソコンを上回っているそうです。今後はこの主役交代が世界規模で起こっていくものと思われます。世界の数十億人がいつでもどこでもインターネットに繋がる未来には非常にワクワクします。

昨年、インターネットの世界では、ブログ → Twitter というツールの変遷によって「他人の脳みそとの距離」が劇的に縮まりました。この距離は今後さらに縮まっていくものと思われ、それを後押しするために必要なのがより使いやすいモバイル端末です。 iPhone は現時点ではそれにかなり近いと思いますが、まだ完全ではありません。

4.日本の携帯電話メーカーの海外進出について。日本の携帯市場は鎖国だガラパゴスだと言われています。確かに、たかだか一億人のマーケットで既に市場は飽和状態、海外に進出するにしてもGSMとPDCの通信方式の違いから今までは海外展開することはできませんでした。 iPhone の参入は驚異だと言われていますが、この仕上がり具合とクローズさを見るに日本の携帯電話メーカーにとって逆にチャンスなのではないかという気がしています

1.日本のキャリア主導型ビジネスの終焉とも関わってくるのですが、W-CDMA + Andorid というグローバルスタンダードなプラットフォームの上で携帯電話メーカー主導で端末を作る。小型電子機器は日本人の得意とするところで、これだけで世界中で売れる可能性が広がります。同時に Android, WebKit というグローバルスタンダードは、日本のアプリ開発会社やコンテンツホルダーの海外進出も可能にしてくれます。日本のゲームアプリや漫画ビューワーなんかは、あっという間に広がっていくのではないでしょうか。

最近のWeb界隈では、 iPhone は日本で流行るか流行らないかという議論が繰り広げられていましたが、もううんざりです。はっきりと言います。iPhone は流行りません。一時的に流行ったとしても最終的には日本のケータイが世界中で使われるようになります。そう自動車やデジタルカメラのように

「日本の製品が売れないと僕らの生活は豊かにならない」ということをもっと真剣に考える必要があると思います。日本人は海外ブランドに弱くて、すぐに水戸黄門の印籠よろしく「ははーっ」となってしまいますが、本当は日本製品を誇りを持って買うべきです。もし、海外製品よりも劣っているところがあればメーカーに訴えるべきだし、メーカー側もやらせのブログ・マーケティングとかしている暇があったら、もっとケータイ先進国である消費者の意見を聞くべきです

近年のクラウド・コンピューティングの発達と iPhone や Android といったモバイル端末はとても相性が良いです。僕はこれからの10年はこの分野で仕事をしていくことに決めました。日本のケータイが世界中で使われるその日に向けて。



3G iPhoneを通して日本のケータイについて考えた  7月17日 環境・エネルギー事情

特に,私は,最大16GBと言う記憶容量と無線LANの搭載は,従来の携帯電話には無い大きな特徴だと思う。前者は,個人所有すべきデータは手元に置いておき,アプリケーションでネット上のサービスを利用する形態を強く後押しする強力なインフラです。後者は,通信手段の多様性と言うことで,もし3G通信網に不具合が生じた場合でも代替通信手段を持つという点で非常に素晴らしいと思っています。

でも,やはり,私は,それでも「PCの延長線でしかない」としか思えないのです。

PCを超えている日本のケータイ

単なる電話としての携帯電話を大きく超えていることから,「ケータイ」とカタカナで表記されることもある日本の携帯電話であるが,これは,「ネットに常時接続されているモバイル端末」をも超えている。

日本のケータイは,総合メディア端末とネットワールドとリアルワールドを結びつける強力な端末である。

確かに,iPhoneにもGPSや加速度センサーなど,デスクトップ用PCはもちろん,モバイル用のノートPCにも搭載されていない(そういう機種もあるのかな?)機能が搭載されている。これらは,現実世界での利用が主だ。16GBという容量を考えれば,通信なしで実質的にポータブルナビゲーションとしての利用も可能だ。

私の持っているケータイには,ワンセグテレビ,FMラジオ,そして,おさいふケータイが載っている。

iPhoneの欠点として語られる際の「ワンセグが使えない」と言う単純な問題ではない。「全てをネットを通じて」と言うPCメーカーの発想とは異なり,あらゆるメディアに対応しようと言うコンセプトそのものの違いなのだ

ネット主体の発想をすれば,「そのうち全ての情報はネットを経由して行くことになる」と考えるだろう。しかし,プッシュ型マスメディアの有用性は,まだまだ高い。また,iPhoneの無線LANを大きな長所と挙げたのと同じ理由で,オルタナティブの情報入手ルートを搭載している利点は大きい。

また,おさいふケータイは,まだまだ普及していない(機能として搭載されているケータイの数は多くても,利用者が少ないと言う意味)ようだが,実は,リアルワールドでの決済手段を装備していると言うのは大きな利点だ。

もちろん,落とした時のリスクは高くなる。何もかもケータイ1つで済ませようとするのは間違いだろう。しかし,少額の電子マネーを持っていることのメリットは大きい。

さらに,ドコモもauも健康志向のサービスを開始した。

iPhoneでも対応可能なサービスであることから,その気になれば,同様のサービスは登場するだろう。ただ,そこにあるコンセプトは,リアルワールドでの携帯端末の利用の促進である。

つまり,日本のケータイは,PCの延長でも携帯電話の延長でもない,独立したパーソナルデバイスとしての道をどんどん進んでいるのだ。この点で,実質的にPCを必要とし,PCの延長線にあるiPhoneと決定的に違い,私が日本のケータイを優れていると評している点である。


(私のコメント)
iPhoneの登場によって、日本のケータイとの比較がなされていますが、iPhoneにどっと利用者が変わってしまうということはないだろう。むしろiPhoneの登場でようやくケータイとの比較が出来る物が登場した。私自身はケータイは利用していないし、iPhoneも買う予定はない。

現在でもインターネットで毎月1万円近くも使っているし、さらにケータイを持てば通信料金で7000円もかかるのでは二重投資だ。しかし将来的にはインターネットツールとしてはパソコンからケータイに変わっていくだろう。同じことが出来るのなら小型で安いほうに利用者は移っていくだろう。

パソコンは既に限界に来てしまって、マイクロソフトのOSもVistaと言う欠陥商品を出して産業界の顰蹙を買っている。インテルのCPUも化け物のようなクーラーを取り付けるようになり、ノートパソコンも熱気を脇から排出し続けるようになった。中には水冷式のパソコンまで登場しましたが、電気バカ食いのパソコンは要らない。

むしろ最近はノートパソコンも小型軽量で安いインターネットマシンが出てきましたが、ハイパワーで高性能なパソコンは売れなくなってきている。もちろんもちろんパソコンでハイビジョンテレビが見たいと言うのなら最新のハイパワーマシンでないと見れませんが、それなら家電のハイビジョンテレビで見た方がいい。

それに対してケータイの高性能化が進んできて、日本ではインターネットはケータイで利用している人のほうが多い。これは日本ではパソコンがマイクロソフトとインテルによって利益が独占されてしまっている為に、日本の家電メーカーはケータイに開発の主力を移さざるを得なくなった為だ。

日本の通産省はアメリカの圧力に負けてアメリカから20%の数値目標を強制されてパソコン用OSとCPUの開発を断念させられた。NECのPC98はまさにガラパゴス状態になりDOS/Vパソコンの登場で滅んで行った。日本の家電メーカーもソフトハウスもなかなかDOS/Vに対応が出来ずに1,2年のブランクが出来てしまった。

ケータイもその失敗を繰り返すのだろうか? 日本の家電メーカーもそこまでバカではないだろうから、世界標準化戦略を立てているはずだ。ケータイでは通信方式のGSMとPDCの違いで日本のメーカーは世界に進出できなかった。GSMでは日本のような高密度社会では向かなかったのだ。

日本はいち早くケータイの通信スピードの向上のインフラ整備をしてケータイによるインターネット環境を整えましたが、海外ではG2が主力であり、まさに携帯電話そのものなのですが、日本のケータイはG3が主力のインターネット端末に進化している。

インターネットが出来るケータイはネットインフラを利用して、デジタルテレビからお財布ケータイまで出来るようになっている。音楽のダウンロードも当たり前となり音楽はCDからではなくケータイかiPodで聞くものとなっている。CDを買って聞いていたのではCDの山に埋もれてしまうからだ。

だからDVDもブルーレイも映像鑑賞の主流にはならず、iPod のようにシリコンディスクに大量にダウンロードして映像鑑賞するようになるだろう。ソニーはウォークマンという音楽鑑賞用のプレーヤーで世界をリードしましたが、アップルのiPod に取って代わられてしまった。ソニーがMDを棄て切れなかったからだ。

いずれにしても音楽も映画も将来は大容量シリコンディスクが主流になるだろう。ケータイも大容量のメモリーを積んでビジネスから娯楽まで何でもこなすパーソナルデバイスとして進化していくのだろう。問題はどのようにソフト開発して行くかですがOSを世界共通化して開発コストを下げて行く事だ。

日本のケータイメーカーも様々な携帯用OSで開発してきましたが、W-CDMA + Andorid がケータイの世界標準として採用されるだろう。問題は世界の通信環境の整備がなかなか進まずG2で留まっている事だ。PCからモバイルへの主役交代は日本が一番の先頭を切っているのですが、世界がこのスピードに付いて来れない。

パソコンが袋小路に入ってしまってビル・ゲーツもマイクロソフトを投げ出してしまった。これからが高性能化よりもエコロジー化を目指した軽量化したパソコンが主流になるだろう。それはケータイとほとんど同じようなものになるだろう。むしろケータイがパソコンに取って代わる事を意味している。

iPhoneではGPSが付いて探している所が直ぐに分かるようになっている。もちろんケータイにもGPSが付いている。これは宇宙衛星と通信しているからですが、通信設備も宇宙衛星を経由すれば携帯通信アンテナをそこいらじゅうに立てる必要も無くなる。人体への電波障害もデジタル技術で解消されるだろう。

iPhoneもネット端末として海外では画期的な物なのでしょうが、タッチパネルでは文字入力も片手ではやりにくそうだ。女子高生がどのような反応を見せるかが見ものですがiPhoneは支持されないだろう。海外ではスマートフォンが文字入力でキーボードを備えていますが、やはり片手では操作できない。モバイル機器では片手で操作出来るかどうかで利用価値が大きく変わってくる。

近い将来パソコンで出来る事はケータイでも出来るようになるだろう。ケータイにキーボードとディスプレイを接続すればパソコンになる。 iPhoneは限りなくパソコンに近いものですが、携帯電話から発達してきたケータイとよく似ている。しかしiPhoneはパソコンがないと使えない部分があるから女子高生には向かない。


元ドコモの夏野氏、iPhone早速入手 ひろゆき氏は「電話として不便」 7月18日

夏野 iPhone、3G接続だと遅いけどWiFiは速くて快適だねぇ。ビュワーとしては最高に面白い。

ひろゆき iPhoneずっと持ち歩く感じですか?

夏野 持ち歩く。

ひろゆき 1週間ぐらいで飽きたりしないですか?

夏野 分かんないけど。こういうの作りたかったんですよ。

ひろゆき 作ってたら大失敗しますよ。

夏野 なんで大失敗なのよ。

ひろゆき 1カ月後には使ってる人はほとんどいないと思いますよ。iPod touchも今、持ってる人見ないもん。

夏野 そうね、iPod touch持ってるとiPhoneと勘違いして女の子にモテるから。でもぜんぜん便利じゃないよね。

ひろゆき iPhoneは電話として不便じゃないですか。電話として結局使わないから持ち歩かなくなって、誰も持ってないという状態になると思うんですけどね。

夏野 でも格好いいよ。なんでこれが売れるかユーザー目線で分析すると、最新の携帯電話は5万円するけど、iPhoneは2万3000円。2万3000円は安いよ。

ひろゆき 確かにそう言われるとそうですね。おしゃれで半額。

 でも、企画を仕事にしている人がiPhoneを信じていると「バカじゃないの」と思う。Second Lifeがすごいと言っていた人を見る思いなんですよ。おまえちゃんと使ってるの? 不便だよ、という。

夏野 まぁそうだね。でもこういうものが日本にあってもいいじゃないですか。日本のキャリアやメーカー、携帯電話開発にたずさわる人間は真摯(しんし)に、なんでこれがアメリカから出てくるのかということを考えなくてはいけない。ま、他人の業界ですけどね。

ひろゆき 親心からの意見でした。





日本こそ金融大国? 円による資金調達が世界の資本市場を
席巻している様子は、金融市場の動きからも読み取ることができる。


2008年7月17日 木曜日

円安の陰に円調達 世界の資金調達を担う日本 7月16日 NBオンライン

今年6月は円安の月と言えた。対ドルで104円を上回るほどの水準から、一時108円を割り込んだだけでなく、対ユーロ、対ボンド、対豪ドルなどに対しても、円は、軒並み一方的な下落をたどった。金融市場の目が米欧の金融政策動向に注がれる中、ともすれば「蚊帳の外」に置かれても不思議でなかったはずの円相場が、振り返ってみれば、最も明確な方向感を示していたのは意外なことである。

 しかも、一方で原油価格は未曾有の高騰を続け、その背景にはイラン情勢やナイジェリア情勢など、いわゆる「地政学的リスク」の高まりがあった。原油価格の高騰が資源を持たぬ日本に不利なことは確かだが、「地政学的リスク」の高まりと投資家の「リスク回避」の動きは、従来であれば、むしろ円高を招いてもおかしくない要因だったはずだ。

 その円安の正体として、通貨市場で盛んに取り沙汰されたのは、6月が日本の「ボーナス月」という事実である。日本企業の多くが従業員に対してボーナスを支給するこの月に、日本の個人投資家の間から大量の外貨資産購入が持ち込まれ、それが円を押し下げたとの見方だ。

 この見方は、欧米のヘッジファンドなどの間で抜群の説得力を持った様子で、実際、我々の元にも外貨建て投資信託や売り出し債(個人向けの外貨建て債券)の動向に関する問い合わせが引きも切らなかった。

つながった点と点

 しかし、6月の円安をボーナスマネーのせいにするのは、我々日本人にしてみれば、そもそも不自然な発想ではないか。「ボーナス月」と言っても、ボーナスが支給されるのは、大抵の企業で、20日前後過ぎの給料日だ。支給されたボーナスが、間髪入れずに投資に回る割合がそれほど高いとは思われない。

 ましてや、支給前からその運用先として外貨資産が買い上げられることなど、考え難い。こんな釈然としない思いを抱え続けていた中で、1つの絵が浮かび上がってきた。

 「米シティ、個人向けサムライ債発行へ 最大1000億円(6月10日)」
 「サムライ債発行額急増 08年度9000億円突破(6月13日)」
 「邦銀協調融資、外国企業向け大幅増(7月1日)」
 そして、「世界の協調融資4割減(7月7日)」…。

 いずれも日本経済新聞からの記事の見出しだが、筆者には日を隔てて掲載されたこれらの記事と進む円安とが、1つの線でつながれた物語のように思えてならなかった。

円調達の隆盛

 サムライ債は、海外の政府や公社や優良企業などが、日本国内で発行する円建て債券だ。協調融資も邦銀が主役を務める以上、その資金の大半は円で調達されるものとみていいだろう。一方で、世界に目を転じれば、協調融資による資金調達は大幅に減少していると言うのだ。

つまり、一連の記事は、欧米の大手金融機関が、昨夏のサブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)危機以降、資金繰りに汲々とする中、日本、すなわち円市場が、世界の資金調達の主役に躍り出た事実を描き出している。

 円による資金調達が世界の資本市場を席巻している様子は、金融市場の動きからも読み取ることができる。下図は、円の変動金利と、ドルの変動金利とを、将来にわたって交換する、「ベーシススワップ」という金融商品の変動を示したものだ。今年6月に前後して、はっきりと円金利の「受け取り」圧力が強まっている様子を見て取ることができる。

債券発行にせよ、協調融資にせよ、通常、日本国内で円資金を集めた海外の主体(発行体/借り手)は、その資金の使途に合わせ、円をドルなどの外貨に交換する。その時、為替市場で円を売却し、外貨を購入すれば、話は簡単だ。

 しかし、それでは莫大な為替変動リスクを背負い込むことになる。そこで、実際には、将来的に外貨を円に交換し直すという約束で、集めた円を外貨と交換し、その間、円金利を受け取る一方で外貨の金利を払い続ける契約を結ぶ。

 こうした仕組みを通し、円資金を調達したはずの主体は、実質的には外貨資金を調達し、それに対し外貨で利息を払う格好になる。図中、「ベーシススワップ」が6月に前後して円金利の「受け取り」超に傾いているのは、このような仕組みを提供した金融機関の間で、将来的に支払う円金利をヘッジするために、あらかじめ円金利の受け取りを確保しておく圧力が高まった結果と見るのが妥当ではないだろうか。

「財布の紐が緩い」円市場

 何故そんな面倒なことをするのか。

 外貨資金を調達し、外貨で利息を払うのであれば、最初から外貨で資金を集めればいい。せっかく低金利の円で資金を調達しても、実際に支払う金利が外貨の金利では、低金利の恩恵にはあずかることもできない。しかし、円建ての資金調達が、昨今、隆盛を誇るのは、新聞記事を読む限り事実であるし、「ベーシススワップ」の値動きからも裏づけられる。

至極単純明快な答えは、「円=日本の方が潤沢な資金があるから」ということになろう。日本が資金調達の市場としてもてはやされるようになった経緯は、欧米に吹き荒れたサブプライム危機と無縁ではない。

 サブプライム危機の影響が比較的軽微であった日本の資金市場は、有り体に言ってしまえば、「財布の紐が緩い」市場と言えるわけだ。資金繰りに汲々としている市場よりも、「財布の紐が緩い」市場の方が、資金調達の条件が有利になるのは自然なことだろう。

円安圧力の正体?

 それでは、円市場の「財布の紐が緩い」のが事実として、円相場との関連をどのように解読したらいいのだろうか。上述の通り、円建てで調達された資金は、たとえ資金の使途が外貨であったとしても、通常は為替市場を通さずに外貨に転換され、論理的には、円相場に一切の影響を与えないはずだ。

 しかし、第一に疑われるのは、調達された円資金の一部でも、為替市場を通して外貨に転換されている可能性はないか、ということだ。調達資金の全額に対して為替変動リスクを負うのは、非常に大きな冒険と言えるが、その資金の一部だけなら…。

 そうすれば低金利の恩恵にもあずかることができる。つまり、円で資金調達した主体は、その一部で「円キャリー取引」をすることになるが、円建て資金調達の規模がこれだけ大きくなれば、一部といえども、円相場に与える影響は無視できないものになり得る。

 それ以上に気がかりなのは、「財布の紐が緩い」日本が、またぞろ世界の資金調達市場になっている事実だ。調達された円資金が、はっきりとした使途に向かって外貨に転換されていくのとは対照的に、外貨への転換を提供した金融機関などの手元に丸々残る運命にある円は、その調達資金が返済されるまでの期間、「余剰」資産として運用され、金融市場を巡り巡ることになる。

 およそ市場の価格形成の根本に、「需給」というものがあるのなら、一方に「財布の紐が緩い」市場で集められた「余剰」資産があり、他方に流動性の逼迫した、明確な使途が待っている資産があった場合、どちらの資産が強くなっていくかは、自明のことと言えよう。



アメリカが世界的資金供給危機に、とメリルリンチ警告  7月16日 テレグラフ

外国がぶち切れ寸前である…アメリカ財務省に手当する時間は数日しか残されていないかもしれない

メリルリンチが警告している。 ファニー・メイとフレディー・マックのモーゲージ騒動が世界中に広がった結果の結果、アメリカ合衆国は数ヶ月以内に外国の「金融危機」に直面するかもしれない、と。

この国は$7,000億の経常赤字をアジア、ロシア、中東の投資家の金に依存している。 おかげで、1990年代初頭に日経バブルが弾けた後の日本よりも、信頼破綻に対して遥かに体力がない。 イギリスや他のアングロ・サクソンの借金国家も、外国人投資家から似たような反撃を食らうかもしれない。

「日本は金利をゼロに出来たよね」とアレックス・パテリス。 メリルリンチの国際経済部長だ。

「アメリカがこれをやるのって、とっても難しいだろうね。外国人は資本供給、したがらないだろうね。どこがリミットかって、誰も知らないよね」。

ファニー・メイとフレディー・マックの救済策に本物の金を積むか、制御不能に陥るかもしれないヤバイ危機に直面するかするまで、アメリカ財務省に残された時間は2-3日ほどだね、とはグローバル・インサイトのチーフ・フィナンシャル・エコノミスト、ブライアン・ベシューン。

「今回は政策立案者も、金融システムへのシステミックリスクや経済への物凄いダメージを、またまた舐めてかかってる場合じゃないよ。果敢で攻撃的な行動が必要なのさ。今、必要なの」と彼は言った。

ベシューン氏は、財務省は最高$200億の新規資本を注入しなければならないだろうと言った。 これは次に更に民間資金$200億を引き出すかもしれない。 この規模の資金なら、両機関がアメリカのプライム不動産市場のメルトダウン寸止めシナリオを生き延びるにも十分だろう。

「モラル・ハザード」についての懸念(ホワイトハウスのアメリカ・メディアの口喧しい方面でタカ派自由市場主義者がぶち上げている)が解決策の足を引っ張っている、と彼は語った。 「躊躇ってる暇はないんだ。市場は冷酷になれるんだよ。信用がこてんぱんに破壊される前に汚染の連鎖を断ち切らなければならない」

世界の二大金融機関であるファニー・メイとフレディー・マックは、$12兆規模の米モーゲージ産業の半分近くを占めている。 しかしそれは、この緊急時にあたっての両機関の非常な重要性を軽視している。 両機関は今では、全ての新規住宅ローンの80%を提供する、住宅市場にとって最後の望みの綱、貸付業者という役割を担っているのだ。

現在、ファニー・メイとフレディー・マックのおよそ$1.5兆相当のAAA格付債務は、他のアメリカ「政府後援機関」同様、外国人の手の中にある。 大いなる謎は、損失が膨れ上がりドル安が進む中で外国人が切れるかどうか、ということだ。

日本のチーフ・レギュレーター、ワタナベ・ヒロシは昨日、日本の銀行と保険会社に米政府機関債を慎重に扱うよう迫って市場を動揺させた。 2つの金融機関は、これらの債券およそ$560億相当を保有している。 三菱UFJが$30億、日本生命が$25億である。

しかし殆どを握っているのは、中国、ロシア、産油国の中央銀行だ。 そうすることこそ自分達の戦略的利益であると決意すれば、これらの国々はあっさり現状でドルの大量処分に走り、アメリカ合衆国を跪かせるだろう。

保有資産を市場に放り出すことで大量処分の引き鉄は引きたいとはどこも思わないだろう、とパテリス氏。 その代わりに、彼らは恐らくアメリカとアングロ・サクソンの債務を出血大バーゲン価格で貯め込むだろう。 それだけでも赤字国家を資本ギャップを埋めるために四苦八苦させるには十分だ。 「現状が6ヶ月以上続くとは思わない」と彼は言った。

メリルリンチは、外貨準備が爆発的に増える中、外国政府はこの一年間で米政府機関債を$2,410億ほど買い増しており、これはアメリカの経常赤字(現在の総額は$9,850億)の1/3を占める額になるとした。 殆どの見積もりでは、中国が$4,000億、ロシアが$1,500億、サウジアラビア他湾岸諸国が少なくとも$2,000億抱えているそうである。

世界的インフレも今は物凄い勢いで広がっている。 アジア諸国の殆どは金利を攻撃的に引き上げなければならなくなっており、これは北米から金を吸い上げている。 アメリカ国債と債券のイールドを押し上げて、アメリカが既にアップアップしている時に信用の蓋をぎゅっとばかりに締め上げている。

ロシアの副財務相ディミートリ・パンキンは、両機関の債券は事実上アメリカ政府が救済策の下で保証しているのだから、この一週間のファニー・メイとフレディー・マックの株価暴落など関係ないと語った。

この状況がそれほどシンプルなんだろうか、と外交専門家は疑っている。 ロシアは$5,300億に上る準備を、恐らくアメリカがウクライナとグルジアをNATOに取り込もうとするのを止めさせるべく、外交大バクチの陰のバーゲン・チップとして利用しそうだ

現在ロシア首相のウラジーミル・プーチンは、ロシアはアメリカと新しい冷戦を闘っていると繰り返し述べていた。 そうする代償がロシアそのものにとって高過ぎるものでない限り、ロシア政府がアメリカを侮辱するためにあらゆるチャンスを利用するのは明白だ。

世界的安定への願望が強い中国の方が、まだ信頼出来るパートナーだと考えられている。 ハンク・ポールソン財務長官は、70回以上訪中したゴールドマン・サックス時代から付き合ってきた中国側上層部とは、親密な関係にある。

アメリカ外交問題評議会のブラッド・セッツァーは、中国側はファニー・メイとフレディー・マックに、特に両機関のローンが「期限までに満額完済」されるようにするという、利害関係があるのだと語った。

HSBCのカランシー・チーフ、デイヴィッド・ブルームは、先週FRBがインディー・マックの支配権を奪取した後、地方銀行が破綻し始めるかもしれないとの懸念が、今ではドルにとって最大の脅威だと言った。

「正真正銘のドル売りだ」と彼は言った。 「嫌い嫌い合戦だよ。今の所、ドイツのZEW信頼指数は完璧に救いようがなくなっているのに、市場はユーロよりもドルを嫌っている」。



(私のコメント)
昨日の株式日記では、金融業は製造業の派生的な産業と書きましたが、金融業は儲かる時は他の産業よりも3倍も儲かる。だから日本も金融立国を目指すべきと学者や評論家などが言いますが、本当にそうなのだろうか? アメリカもイギリスも金融がもっともも利益を生み出しており、アメリカでは全企業利益の40%を金融業が生み出している。

それに対して日本はバブル崩壊でリスクに対する積極性を失ってしまって手堅い投資しか出来なくなってしまった。だから世界中がバブル景気でわいているのに日本だけが蚊帳の外に置かれて、ついに日本は一人当たりの所得でアジアでシンガポールにも抜かれてしまうほど日本経済は低迷してしまった。

アメリカではGDPの10倍も金融資産が膨らんだことは一昨日書きましたが、実体経済に比べて金融資産が10倍の規模に膨らんでしまった。しかし金融資産には株にしても債券にしても金利の支払いがつきものだから、利払いが出来るのだろうか? 利払いが出来なくなった債権はデフォルトということになるが、当面は金をやりくりすれば金利は支払えるがいつかはパンクする。

実体経済に比べて金融資産の規模は4倍くらいが適正ではないかと思う。日本のバブル崩壊も実体経済に比べて金融資産が膨らみすぎて、利益が付いて行けなくなってパンクしたのですが、失われた17年で負債を返し続けてようやく過剰債務の解消に目処がついた。

だから日本は世界のバブル景気に乗れなかったのですが、そのお陰で日本の金融は、世界的なバブル崩壊の波に呑まれる事は免れた。通常だったら日本もサブプライムビジネスに手を出して欧米の金融機関以上の損失を被っていたかもしれないが、日本の金融機関は不良債権の処理に追われて証券化ビジネスに乗り遅れていた。

バブルの最中は皆が皆、強気になって堅実な経営を保つ事は難しい。土地神話にしても利回りからしてとても買えない値段で売買がされるようになり、バブルが弾けてその現実に気がつくようになる。証券化ビジネスもまさに金融革命なのですが、証券の中身がまるで見えなくなり、格付け会社の格付けで証券が売買されるようになった。

このような金融革命はIT技術の発達で実現されたのような論説が出回って、日本はその波に乗り遅れた。しかし証券化ビジネスは革命なのだろうか? 住宅ローン会社は返済がとても出来ないような人に貸し付けて、そのローンを証券化して売り飛ばしてしまえばノーリスクで金融ビジネスが行なえるようになった。それがサブプライムローンだ。

ローンが一件一件ならローンの信用ランクも計れますが、数百件ものローンがミックスされたローンをどうやって信用格付けするのか? その為に格付け会社は保険をかけることで格付けをAAAランクにしてしまった。その債券がダメになっても保険会社の保険で保障されるからと言うのがAAAランクの理由になった。しかし今はその保険会社自体が信用危機に陥ってしまっている。

ヘッジファンドのデリバティブも外部の人間には分からない不透明な投資法であり、飛ばしの一種のようなものだろう。様々なリスクの乗数を掛け合わせてレバレッジを効かせて数式的には合理性はあっても、詐欺的な金融商品なのだろう。アメリカの金融機関もデリバティブを利用して債務超過を先送りにしている。日本の金融機関もそれを利用して債務超過を誤魔化していた。

その為に東京以外の金融市場はマヒ状態になり資金調達が出来ない。そのために東京市場でサムライ債を発行して資金調達をしている所が増えた。まさに金融革命に乗り遅れたがために東京市場だけが機能していると言うのはまさに皮肉としか言いようがない。

新興国の経済はバブル真っ盛りですが、アメリカのバブル崩壊の波が押し寄せてくればひとたまりもないだろう。デカップリング論も言われていますが、新興国の経済は欧米のファンドや先進国の技術移転で活況なのであり、アメリカなどへの輸出が好調だったからだ。国内への波及は少なく自立的なものではない。中東やロシアの石油輸出も景気後退が本格化すれば暴落するだろう。

石油などの値段もファンドが作り上げた架空の高騰であり、商品バブルなのですが、欧米の中央銀行は無制限の資金供給で、その資金の一部が商品投機に使われている。むしろアメリカは金利を上げてインフレを抑えるべきなのですが、バーナンキFRB総裁は逆の事をやっている。まさに住宅価格の暴落と石油などの暴騰で政府は挟み打ちにあって、さいきんのFRBは精神分裂症にかかっているようだ。

それでもアメリカはまだ破局していないのは、テレグラフ紙に書いてあるように、アジアやロシアや産油国から金が集まってきているからですが、アメリカ政府やFRBが適切な手を打たなければこれらの国もアメリカから資金を引き上げるだろう。

このような状況で一番注目しなければならないのはAAA格付けの政府機関債に信用不安が生じている事だ。発行規模が米国債の3分の1もあり中国や産油国などが大量に買っている。アメリカ政府の保証があると思われているからですが、中国や産油国がこれらの政府機関債を手放し始めたらアメリカは倒産だ。

普通ならばこのような信用不安が広がれば金利は上がるのですが、金融市場が機能していないためにそれが見えない。欧米の銀行が貸し渋りや化し剥がして資金調達がままならないから東京で資金調達している。それが円安の背景にもなっているので円キャリーが世界の資金需要を支えている。

いずれアメリカ国債も円建てで発行される時が来るだろう。アメリカの景気後退は税収の落ち込みに成り、赤字を埋めるためには国債を発行しなければならない。今までならドル建てで外国に売ってきましたが、外貨建てで調達しなければならないときが来るだろう。アメリカ政府機関債が信用不安が起きているのはその先駆けだ。




わが国の日銀が量的緩和解除で、20兆円相当収縮させます。それで
2006年の6月には、米国に、住宅価格を5%下げる都市が出てきた。


2008年7月16日 水曜日

米英の証券化金融が極まり、転換する経済 7月14日 吉田繁治 (2)

【金融の自由化】
加えて、80年代までの金融には、対外資本取引を含め、様々な規制があったのですが、それらは順次撤廃された。

日本に、英国流の金融の自由化(ビッグバン)を求めたのも、その一環です。時の橋本内閣はそれを受け入れます。英国Financial Times紙は、英政府と金融機関の投資政策を広報してコメントする金融新聞のようです。

小泉内閣に、国郵貯・簡保の、民営化を求めたもの米英の政府です。300兆円余の資金が、欲しかったからです。郵政公社は、民営化で株価の想定時価は10兆円です。ヘッジファンドで、5兆円の株を買えば、300兆円の運用を支配できます。

【米英の金融業という活路】
米英は、自国製造業の空洞化(1980年代)の後の90年代経済において、金融の自由化と市場化に、活路を求めたと言っていい。その意味で、戦略的でした。

2003年のイラク戦争も、米英が、原油価格の決定権を、自国内の商品市場で、握る目的のものです。テニスのような、金融のウィンブルドン化を目指した。ウィンブルドンには世界の、テニスの強者が集まります。

グローバル化及び市場経済とならんで、これが、米英の政府政策でもあった。

米英では、かつての製造業の位置が、90年代に、金融業に振り替わったと言えば、その転換が、わかるでしょう。そのため、モノを作らなくても、GDPは減らなかった。所得も増えた。

モノづくりの日本が、低い賃金の中国の、工業化による価格下落で、ゼロ成長と賃金の下落に苦しむ間、米英は、金融業の利益で成長した。


「株主資本主義」と「ファンド資本主義」が、それを支えたイデオロギー(思潮)でした。ここから、巨額な所得格差も、生まれます。

金融では、1人で1年に10億円の所得を得る人も、多い。コンピュータ画面を見た、数字の投資だからです。元本運用が1000億円と大きければ、2%の手数料でも20億円の収益になります。

ロンドンのシティと、NYのウォール街は、日本、中国、アジア、アラブから余剰マネーを集め、手数料を収入とし、大きく発展します。もちろん、自己売買も多い。

そのインフラ・ストラクチャー(基盤)になったのが、
(1)画面の中で、世界を瞬時に動くマネーのデジタル化と、
(2)投機のプログラム化、つまり情報化です。
(3)そして、金融工学による、さまざまな金融先物商品の登場です。

【金融業の膨張の証明】
1980年には、金融サービス業の利益は、米国の全部門の、企業利益の10%に過ぎなかった。

2007年には、以下に示すよう、製造・流通・小売り・サービスの、全部の企業利益の、40%を占めるまでに「膨張」しています。これは驚くべきことです。

今、米英でもっとも大きな産業が、金融業になったと言っていい。

サブプライムローンの延滞の増加に端を発する米国、英国の金融機関の、巨額損失(現在は40兆円位とされています)は、原子炉における炉心の溶解に似た、衝撃です。

2009年までの最終的な損害は、住宅価格の30%の下落で、300兆円に達する可能性が高いからです。加えて、他の証券化商品の下落で、合計500兆円でしょうか?

90年代以後の日本経済と企業を、15年にわたって苦しめた100兆円の不良債権に相当します。(注)米欧のGDPを合わせれば、日本の約5倍です。日本にとって100兆円の不良債権の重みは、欧米にとっては500兆円の証券価格の下落です。

【金融業(Financial Service)の利益が、全企業利益に占める割合:米国】 (BCAリサーチ:英エコノミスト誌080319)

    全企業利益に占める割合  株価時価総額に占める割合
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1980年    全企業利益の10%    金融業で6%
1985年         15%
1990年         20%
1995年         20%
2000年         25%
2005年         30%
2007年         40%      同19%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2007年8月、サブプライムローン問題の勃発前のピークでは、金融業で稼ぐ利益は、全企業利益合計の、40%までを占めていました。2008年の今、これは、0%に向かい、急減しています。

例えばGE(ジェネラル・エレクトリック)と言えば、松下のような電器会社です。しかしGEは、ジャック・ウェルチの改革で、90年代に、その事業の50%以上がが保険・証券・不動産を取り扱う金融業に変身しています。

これら金融業の、米国のGDPに占める付加価値産出(粗利益)の割合は2007年で15%です。従業員数は、全米の労働者数の5%です。

生産性(=付加価値算出高)は、他の産業より、3倍高い。したがって、金融業の平均所得も、3倍になり得ます。1年数千万円の賃金は、普通です。

しかし、資産相場が下落した時の損害は、金融機関が連鎖し、巨大になります。これは製造業が潰れるときの、比ではない。それが、07年8月以後の、米欧英で起こっているのです。

欧米の金融機関とファンドの自己資本の合計は400兆円と言われます。今後、500兆円の損害が生じれば、合計で、債務超過になる。債務超過は、犠牲を払う増資か、自分の利益でしかうずめられない。

例えば、アルプスの金融大国であるスイスは、今、証券の損失の拡大から金融崩壊の前夜のような様相です。(注)アラブの巨額資金は、スイスとロンドンのシティを経由し、米国に流れています。

■6.利益も損も、倍数化する乗数金融

【レバレッジ】
乗数金融とは、レバレッジです。例えば、顧客から預かった元本が1000億円とします。

(1)これで1000億円の、価格変動がある国債や証券を買う。買った国債や証券の、担保としての掛け目が90%なら、他の金融機関から900億円を借りることができる。
(2)この900億円で、また国債や証券を買う。
(3)そしてそれを担保に810億円を借り、また買う。

こうした「レバレッジ」を繰り返せば、合計の運用額は、無限等比級数の原理で、10倍になります。貸し手になるのは、世界の証券会社や銀行です。

元本1000億円+810億円+729億円+648億円・・・・
             =1000億円÷(1―0.9)=運用総額1兆円

上記の例のように、10%が担保の欠け目(担保掛け目90%)なら、最初の元本1000億円を使うレバレッジによって、最大1兆円の運用を行うことができます。これがヘッジファンドの方法です。

運用の粗収益が7%であり、借入金利が5%なら、利益は〔1兆円×(7%−5%)=200億円〕になります。

1000億円の元本に対し、20%(200億円)の利益です。この利益は、株、証券、不動産の上げ相場のとき、もっと大きくなる。

このようにして、金融機関相互のレバレッジが積み重なり、金融機関・企業・世帯がもつFinancial Assetsの時価は、2007年で、GDPの10倍(1京3000兆円)にも、膨らんだ。

2000年に比較し、積極的な運用を行う8800本のヘッジファンドの元本も、50兆円から、その5倍の250兆円余になっています。

レバレッジを加えれば、実際の運用額はこの数倍以上でしょう。

【日本の10年間の超低金利】
低い金利は、資金調達コストの安さを意味します。90年代の日本は、不動産と株のバブル崩壊のため、金利を低くした。

特に、わが国の金融危機の1997年以降は、実質的にゼロ金利でした。これが、世界の、低い金利のアンカー(錨)になっていた。

1年40兆円の規模で増えていた個人金資産(主は団塊の世代)を背景にしたジャパンマネーは、英米の金融機関が借り、利用するものでした。キャリート・レードだけではない。日本の金融機関と政は、主に米国の金融機関に、低金利と量的緩和で生じた余剰マネーを預けています。

円相場は、財務省の介入によって、実質的に、米ドルにリンクしていたので、為替の変動も予測できていた。(注)下げるドル買いを嫌い、ユーロ買いが増えています。


【アラブマネー:中国マネー】
今、巨額の貿易黒字を出すアラブマネー(元本約200兆円)と中国マネー(元本約150兆円)が、使われています。

世界の外貨準備600兆円の、約60%(360兆円)は、ドル証券やドル債です。これは、米国への貸し付けと同じ意味をもつ。(注)外貨準備は、世界の貿易黒字の累積(=米国の貿易赤字)を示します。

米国の国債を持つことは、米政府に貸し付けすることです。国債は、買い手にとって金融資産ですが、政府にとっては負債です。民間企業が発行する証券(社債・株)も、そうした性格のものです。

例えば、日本の世帯の金融資産1500兆円は、政府が1000兆円を借り、企業・金融機関が500兆円の借りているという性格のものです。政府のバランスシートで、これがわかります。

米英の金融機関に、世界は、巨額の資金を預けた。その、負債を引いた純額が600兆円です。これが、米英の、ホットな運用資金になって、株、住宅を上げ、今は資源を上げる。BRICsやアジア等の新興国の株を含む、世界の投機に向かう。目的は、金融益です。

このホットマネーは、タンス預金のようには退蔵されず、上がるものを次々に求め、激しく動く。つまり貨幣の流通速度が、速い。MVのVが、流通速度です。(注)わが国で、バブル崩壊後、マネーの流通速度が低下しています。

大元を言えば、「希代の赤字通貨である米ドル」を、世界が基軸通貨として信任し、米ドルに、自国通貨を従属させる事実上のドルぺッグをとったことが原因です。

(注)ユーロだけが2000年以後、ドルペッグを離脱し、財政赤字をGDPの3%枠に押さえています。

1971年以後の変動相場は、貿易赤字国の通貨を下げることで成立するのですが、貿易黒字国からの買いで、米ドルは十分には下げなかった。その矛盾が、いよいよ、裏付けの資産でもあった米国の住宅価格の07年の下落によって、露わになったと言っていい。

【転換点】
さかのぼれば、「米国の2000年代の資産相場」の転換点は、2年前の2006年6月でした。きっかけは、わが国の日銀が、その日銀当座預金の残高30兆円を10兆円に向かい、一挙に、20兆円を吸い上げたことです。「個人金融大国」の引き締めは、世界に波及します。

06年の4月から6月に、ゼロ金利と量的緩和を解除する目的で、日銀が手持ちの国債を、20兆円分売ったのです。(注)現在の短期政策金利は、0.75%です。長期金利は1.8%付近を変動しています。

わが国の金融機関は、20兆円の現金(当座預金)を減らし、代わりに20兆円分の日本国債をもつことになった。

これが、日本からウォール街に向かっていたマネーを、20兆円相当、収縮させます。そのため、2006年の6月には、米国に、住宅価格を5%下げる都市が出てきた。

【2007年8月のサブプライム・ショック】
株、証券、不動産が、2007年8月以降のように下げに転じ、それにつれて、市場金利が上昇すると、金融機関に、レバレッジでの利益と全く逆の、巨額損失が出ます。

それが、現在です。

■7.30倍の、巨額レバレッジがある

●証券会社(=投資銀行)の大手ゴールドマン・サックスは、元本資金が$400億(4兆円:エクイティ)です。運用資産は、$1.1兆(110兆円)です。つまり、ロールドマンでのレバレッジの「信用乗数」は、27.5倍です。(08年6月)

●同業の、投資銀行メリル・リンチは、元本資金は$300億(3兆円:エクイティ)にすぎない。運用資産は、$1兆(100兆円)で、信用乗数は33倍ともっと高い。

この信用乗数の、高い水準は、1998年に破産したLTCM(ロングターム・キャピタルマネジメント)の33倍と同じです。

(1)信用乗数が33倍であると、市場金利の1%の上昇で、その33倍の33%分の、金利負担が増えます。

(2)証券価格の1%の下落も、元本に対し33%の下げに匹敵します。

この両方が重なり、わずかな金利の上昇や住宅価格の下落が、巨額な、信用倍率での損になる。

相場の上昇期にためていた自己資本(留保利益)も、市場金利(長期金利)の上昇があれば、レバレッジ金融の中では、わずか数ヶ月で、飛びます。

1兆円の元本(資本)で、32兆円の信用借りをし、33兆円分の株や証券を買っていれば、1%の金利上昇で〔32兆円×1%=3200億円〕の利払いが増える。

そして株価が1日で1%下げても、3300億円の含み損が出る。金利との合計で、6500億円の損です。これは、元本の1兆円のうち、6500億円を失うことと等しい。

2000年代の低金利と、アラブ・中国・日本・ドイツからの、貿易黒字のマネー流入(1年100兆円規模)を原因に、大きく増えたレバレッジ金融では、毎日が、激しく生死をかけた勝負です。

(注)ユーロの高さ(1ユーロ=170円)は、米ドルの下落を嫌うマネーが、ドル証券を売って、代わりの現金で、ユーロを買ったために起こっています。(注)2000年は1ユーロ=100円でした。

しかし、ユーロからは、ドル買いをしています。ドル買いの量が、ユーロが、産油国・中国・ロシア・日本から買われる総額より小さいためのユーロ高騰であることを忘れないでください。欧州経済が強いためでは、毛頭ない。

07年8月以降、3か月の決算サイクルで、金融危機が襲う理由が、これです。

世界の株価が上がり、米国の住宅価格下げ止まる時期まで、これが続きます。日本の金融危機が、1997年からの政府のゼロ金利、2003年からの株価の上昇、不動産価格の下げ止まりと上昇で、なんとか回復したのと同じです。

(注)2008年は、欧州の住宅価格も、下落期に入っています。欧米ともに、住宅ローン関連証券が、低利では売れず、ローン資金が増加供給されないためです。住宅ローンの審査は、優良な世帯にもおりないくらい厳しくなった。

■8.ヘッジファンドの損失と巨大投資銀行は一蓮托生

今、過去は15%から20%近い利益も出していた約8000本のヘッジファンドの平均運用益は、2008年の6ヶ月で〔−2.1%〕です。(英エコノミスト誌:080705号)

平均運用利益の〔−2.1%〕が意味するのは、ファンドの利益が〔−20%〜+18%位〕に分布しているということです。
(注)過去は、元本に対し、10%から20%の大きな運用利益でした。

半分のヘッジファンドは、新たな資本が投入されない限り、資金繰りに窮し「潰れます」。

ファンドを潰れるままに放置すれば、米欧の金融に、システミックなリスクが、発生します。連鎖倒産です。儲からないファンドからは、人は資金を引き揚げます。これが、膨らみきった信用(Financial  Assets)の収縮です。

元本資金1000億円で、33倍のレバレッジで投資しているファンドから、仮に200億円(20%)の資金が引き揚げれば、どうなるか? 

運用総額は、3.3兆円です。元本が200億円減れば、そのファンドは元本が減った〔200億円×33倍=6600億円分〕の、株・証券を、市場で売らねばならない。

市場に売りがあふれ、価格は一層下げ、損失は大きくなります。金融当局(FRB、ECB)は、これを、防がねばならない。

ヘッジファンドは、8800本でその元本が250兆円です。

この元本に対し、USB、メリル・リンチ、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行、シティグループ、クレディスイス等の、米欧の巨大金融機関が、ひとしく、レバレッジ資金を提供しています。その運用総額は不明ですが、5倍のレバレッジでも1250兆円の運用総額です。欧米の、主要金融機関は、相互リンクで一体です。

(注)主な金融機関の、ファンドへの貸し付額は、USB(70兆円)、メリル・リンチ(40兆円)、モルガン・スタンレー(40兆円)、ドイツ銀行(30兆円)、シティグループ(25兆円)、クレディスイス(25兆円)、JPモルガンチェース(20兆円)、リーマン・ブラザーズ(20兆円)、ゴールドマンサックス(20兆円)等とされています。
〔OECDの統計:07年12月〕

欧米の、証券化金融を推し進めてきた、上記巨大銀行(投資銀行)と、ヘッジファンドは、一蓮托生です。ファンドの損は、巨大金融機関の損と同じで、ファンドの破たんも、投資銀行の破たんです。

株価と不動産価格が上がらない、逆に下がるため、商品先物の利益で、お茶を濁しています。

原油と資源価格の高騰で、資源を海外から買うわが国からは2008年の、年率換算で26兆円の所得が、海外流失します。これは、いずれ、世帯当たりで1年50万円余の、生活水準の低下になります。

投資銀行の損失は、各種のデリバティブを使い、先送り(いわゆる「飛ばし」)されています。

デリバティブの代表であるCDS(クレジット・デリバティブ・スワップ:いわば債権・債務の保険)は、$45兆(4500兆円:英エコノミスト誌08年3月)になった。別の統計では$60兆(6000兆円)を超えています。

このCDSのプレミアム(いわば保険料)が、リスクの拡大から、どんどん上げています。(以下次号)

CDSのプレミアムの上昇は、証券の下落と金融機関の損を見込んだものです。


(私のコメント)
「株式日記」では日本が世界の金融に資金を提供してきたことを書いて来ましたが、それを証明するには実際に世界がどのように動いているかを見て証明しなければなりません。つまり日本が世界一金利が低いのは「円」が世界一信用がある通貨であると言うことであり、金利こそが通貨の信用のバロメーターなのです。

アメリカもFF金利は2%という事になっていますが、金融市場が麻痺している為に2%で貸すところは無く、シティやメリルリンチは10%以上もの金利で中東やシンガポールの政府系ファンドに増資に応じてもらっている。ユーロもインフレが酷くなってきたので利上げをしている。ところが日銀は利上げをする気配はない。

円は世界最強の通貨であるにもかかわらずドルを支える為に超低金利を強いられているのです。もし日銀が0,5%金利を上げると発表すれば、アメリカはショック死を起こすだろう。過去の0,25%の二度の利上げの時も世界同時株安を引き起こしましたが、アメリカをショック死させるには今なら0,5%の利上げで十分だ。

このように日本は金融超大国であるにも関わらず、サミットなどの国際会議では世界からバカにされ続けているのですが、日本の政治家があまりにも小者なので、そのイメージが日本の評価になってしまう。ブッシュ大統領が北朝鮮を指定解除するというのならば日本は利上げするぞと脅かせば、ブッシュが拒否すればアメリカ経済はショック死するから日本の言うことは聞かなければならない。

アメリカ経済が変調をきたし始めたのは、吉田繁治氏の記事にもあるように2006年6月の日銀の金融の引き締めからだ。アメリカのファンドは日本から超低金利の資金を調達して世界で運用してきました。それには利益を上げる為にレバレッジを目いっぱい上げているから、信用乗数は33倍にもなってしまっている。

このような事が出来るのも日本からいくらでも資金が入ってくるからですが、上手く回転している時は笑いが止まらないだろう。ゴールドマンサックスの新入社員でも7000万円のボーナスが出たというニュースもその頃聞かれた。日本のバブルの頃の証券会社でも同じような現象がありましたが、ハウス・オブ・ノムラと言われて飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

確かに金融業は人の金をかき集めてレバレッジを効かせて運用して大儲けをすれば笑いが止まらない。一度それで大儲けをしてしまうと勤勉に働くことなどバカバカしくてやっていられなくなる。そのような現象は日本のバブルの時も見られたし、米英などは国ごと金融立国を目指して、真面目に働いて稼ぐことを忘れてしまったようだ。

しかし金融業は製造業に伴う派生的な産業であり、金融業だけで金が金を生ませることなど論理的に不可能だ。アメリカやイギリスは金融業だけで経済を動かしてきたが、吉田氏が指摘するように金融業は製造業よりも3倍稼ぎがいい。米英のホワイトカラーの生産性が高いのも金融業が主力を占めているからだ。

日本の銀行も80年代は世界の銀行のベストテンを独占するほどの勢いがありましたが、今では見る影もなくなってしまった。つまり金融業はいったん倒産してしまうと信用も失われてしまって何も残らない。しかし製造業なら倒産しても工場などが残り再建も技術などがあればやりやすい。つまり金融業は製造業に成り代わる事は無理だ。

昨日の株式日記ではアメリカの金融資産は1京3000兆円もあることを書きましたが、それは評価額であり砂上の楼閣だ。売ればそれだけの金を出して買う人は誰もいない。しかし持ち続けても金利を支払っていくことは不可能だ。おまけにアメリカはイラクやアフガニスタンで戦争をしているから世界から借金をしながら戦争をしている。これではアメリカがいつかは倒産するのは目に見えている。

アメリカがこのようなことを続けてこられたのも日本がアメリカを支え続けてきたからですが、日本からの金を流れを止めてしまえばアメリカはショック死する。アメリカは1%の株の値下がりでも元本に対しては33%の値下がりに相当する。元本が200億円損すればファンドは6600億円もの含み損が生ずる。

アメリカは世界から金を集めて株などで運用してきたから、アメリカ等の株が値下がりすれば逆レバレッジで損出は莫大なものになる。今までは世界から毎年100兆円もの金を集めて投資に回してきたから大儲けができましたが、流れが逆転すればファンドは莫大な含み損を抱えて動きが取れなくなっている。金や石油で一息ついていますが石油も暴落し始めた。


<NY原油>急落 1週間ぶりに130ドル台に 7月16日 毎日新聞

【ワシントン斉藤信宏】15日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、米景気減速で原油需要が減るとの観測を受けて急落、指標である米国産標準油種(WTI)の8月渡しは前日終値比6.44ドル安の1バレル=138.74ドルで取引を終えた。1日の下げ幅としては湾岸戦争開戦直後の91年以来17年ぶりの大きさで、約1週間ぶりに130ドル台で通常取引を終えた。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が、議会証言で米景気の先行きに懸念を表明したことが原油需要減退の観測につながり、WTIは取引時間中に一時、1バレル=135.92ドルまで下落した。


(私のコメント)
吉田繁治氏の予想ではファンドの半数が破綻して、欧米の金融機関はファンドと一蓮托生であり、時限爆弾の導火線は刻々と短くなってきている。現状では各種のデェリバティブを使って誤魔化していますが、それを支えているのは保険だ。しかし保険会社もファンドが破綻すれば支払い保険料は莫大だから保険会社も一蓮托生だ。

当面は金融破綻は先送りすることは出来ても、アメリカから金は逃げ出しているのだからファンドがパンクするには時間の問題だ。アメリカが金融破たんすれば影響は世界に広がる。日本が出来る事は金融鎖国して世界の金融恐慌の影響を最小限にすることだ。ところが日本人はそのような現状認識が無いか、あってもどうしていいかわからない。

世界がバブル崩壊を迎えれば世界が90年代の日本のような過剰債務を返すために長い時間を費やすことになるだろう。日本はすでに17年も耐え続けてきたから債務返済は終えつつありますがアメリカは世界中からの借金をどうやって返すのだろうか? その時はドルは既に基軸通貨ではなくなっているだろう。ならばユーロか円で返してもらわねばならない。



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