株式日記と経済展望


派遣労働者が受け取る賃金は必ず正規以上と法定が、正規の半分以下
派遣のピンハネ率は10%未満と法定が、ピンハネ率は平均40%以上


2008年6月15日 日曜日

欧米の常識 vs 日本の非常識

1)派遣労働者が受け取る賃金は必ず正規以上と法定 vs 正規の半分以下
2)派遣労働が2年超だと直接雇用義務 vs 期限撤廃して無期限派遣
3)派遣のピンハネ率は10%未満と法定 vs ピンハネ率は自由、平均40%以上
4)企業が支払う総額はガラス張り vs けっして派遣労働者に教えないブラックボックス
5)派遣労働者の巨大全国組合がある vs 何も無い
6)派遣労働は事業拡大時などにのみ使うと法定 vs 正社員をクビにしてどんどん派遣に置き換えてよい

トヨタ工場は日本が1000円でアメリカが3250円。
ちなみにアメリカトヨタは3000円で黒人ライン工が働きたくないと
ただこねて3250円になった。
黒人ライン工はまだ時給3500円を要求してるらしい。


日本国政府は今こそ真摯に社会権規約を誠実に履行せよ! 負け犬のプライド

最初に結びだけ書けば、私は現在の日本の労働問題に関して言えば、国内法規において『現行法』が許す範囲での労働条件で派遣等労働者を働かせているのだから法的に問題はないとする、日本の企業観、また政府、政治家、すべてに対して「国際人権規約」上の締約国の義務を誠実に遵守していないと考えています。そんな考え方は、国際法上の理解からすればナンセンス極まりない。原則と例外の適用を履き違え、雇用者(=資本者<古く言えば>)に有利な制度を準備してきたこと、その責任は問題にせねばならないと思う。

どうでしょう。この世界人権宣言には、条約としての効力はありませんので、当然締約国などは存在しませんので、この人権宣言があっても国を縛る効力はないと言う人もいるでしょう。しかし、国際法の世界では大前提として「一般国際法としての『慣習法』」「特別国際法としての『条約』」という2つの属性によって効力は論じられます。つまり、たしかに『条約』であれば締約国に対してしか効力が発揮されませんが、一般国際法としての『慣習法』として認められる水準にまで達しているのであれば、それは国際社会において普遍の法的地位が与えられる法である、とされるんです。

つまり、このように考えられれば、慣習法であっても国際社会においてはその不履行は批判に値する、わけです。そして、世界人権宣言はその後条約としての『国際人権規約』に引き継がれる形となっていますので、今日的には既に慣習法の地位にあたると考えるのが自然だと思います。要するに、まずは世界人権宣言だけを根拠にしても日本の労働環境については問題を指摘することさえ可能なわけです。

この2つの属性によって考えられる国際法の理解は独特で、日本の国内法しか知らない法曹なんかじゃ全然分かっちゃいません。なんたって、今現在国際法領域は司法試験の選択科目からさえ削除することを考える人たちもいるくらいですからね。私はこの分野を専門に扱える法曹を目指す法科大学院生ですから、当然法曹になれば「慣習法」であっても法廷の場で根拠に戦うツモリです。ま、それはともかく。

この世界人権宣言は上述したようにその後の国際社会において大きな意義を持つことになりましたが、いかんせん慣習法としての地位は不確かで条約として文言として規定された強制力を持つことが、国際社会の中で大きく求められました。これを世界的には一般国際法(慣習法)の法典化と呼んでいる一連の流れで、今日までにおいて国連がもっとも機能的に意義を果たしてきた活動の一つです。代表的なのは外交関係ウィーン条約、国連海洋法条約などなど。

さてさて、やっと国際人権規約の社会権規約に戻ってこれました。
国際人権規約はこのような流れのなかで、1966年に国連で採択されました。日本が署名したのは1978年、翌年に国会承認を受け9月に効力を発生させてます。つまりは日本もこの条約の締約国であり、その条約に定められた義務を誠実に履行すべき義務を負います。ただし注意があって、日本が『留保』『解釈宣言』しているものがあるので、それについての適用はないことになります。これに関しては、私の上にリンクを示した記事を読んでください。簡単にですが、どのようなものについてか挙げてます。

はい、特に雇用問題として派遣労働者についての待遇を考える際に、6条の労働の権利についての規定、そして7条の労働条件についての規定、は大きな意味を持ってくることがわかってもらえるでしょうか。この条約ではここまでキッチリ明確にクッキリ、ハッキリと定められているわけですよ。もはや、日本での労働の実態がいかにナンセンスなのか、わかってもらえると思います。

それじゃ、最後になんでこんな条約にズバっと規定されてるのに、日本じゃこんなヒドい現状がまかり通るの?について答えて〆ましょう。

結論から言えば、日本の立法機関、政府が一貫して条約上の義務の履行について誠実でない態度が問題なのだと思います。一事が万事で、特定の問題のみを糾弾するようにみえるかもしれませんが、そうではなく労働問題一つとっても『派遣労働者』もあるけど『男女の雇用格差』も現実に存在するでしょう。

男女の労働問題に関してもこの国際人権規約は規定していますが、日本の現実とは大きくかけ離れた帰着をみせているでしょ?また、日本の企業側も法律上の根拠を傘にして、制限の適用には至らないまでの労働条件は許されるとの「誤解」をもとにして労働条件を決めていると思います。しかし、このようなことが『誤解』だと私が書くまでにナンセンスなことは、ここまでの流れを読んできてれば分かると思います。

フランクに書けば「法律がバカばっかなのを言いことに、労働条件はそんな法律上の限界までなら許されると解釈しちゃうわけです」。なんという負の循環。これじゃ30年たってもヒドいままなわけです。司法上の救済をもとめるにしても、法律上の根拠に妥当するのであれば、準則で要件をつくって基準を設定してそれに反しない場合は許され、反すれば問題(=違憲)とするのが関の山です。つまり、労働問題の解決にしたって安易に司法上の救済にも難しい壁がある。

じゃ、どうするのか。
一回日本国民として恥ずかしくても、白日の下に日本の雇用、労働の実態を明るみにみせてみるしかないと思う。

でなきゃ変わんないよ、一生。30年経ってもこれなんですからね。社会権規約上は実施措置が定められちゃいるんですけど、ちょっと押しが弱い。自由権規約では第一選択議定書の締約国国民が人権委員会に「通報」することを認めるという、国際法上の主体として「人」が出るという、ウルトラCな手段があるんですが、日本はこの選択議定書は採択していないし、(仮に採択してても)社会権の問題である『労働問題』を自由権規約の問題とするのはちょっと規定の上からムリがある。かといって、日本国内の司法的救済を考えるにしても上で書いたような問題がある。

(終わりに)
ここまでの規定を国際人権規約がもっていること知ってました?あと、国際法の理解についても。

国際社会においては、慣習という存在は重要視されますし、明文化されてる条約上の義務なんかを反故にした場合には「主権国家」としての正当性さえ揺らぐものです。現実に、メディアでどう伝えられるかはともかくとしても、世界中の国は国際法上のルールは誠実に履行するものです。では、日本のこの問題についての現状はどうだろう。私はもっと、この国際社会に共通するルールを正しく理解して、活用できる人間が増えないといけないと思う。

職場なんかで雇用条件に問題があるって思ったら、思い切って上司に突っ込んでみればいいんです。「社会権規約にはこういう規定があるし、云々と。」目を丸くされることうけあいですよね。だって、日本の企業は全然国際的な本当の知識の血肉を知らないのだから。法律相談に行くのも一つの手です。

国際法は、国内法の妥当する関係についても、意味があるものです。ゼロではありませんが、その専門領域についての理解がないとなかなか主張するのも難しいものですが。日本がどれだけ(経済的に)先進国であろうと、目を背けるばかりで『現実の問題』として意識できない人は多い。

たとえば私、研修で『公益弁護活動』のPTに入ろうかと思ったのですが、周りの知人に「儲からない」とか言われましたよ。うーん、院として学究するなかで一環として実施されるんだから、そういう将来のことなんか考えないで、貴重な経験を得ようとは思わないのだろうか。うーん、理念と実務の架け橋、というKWは日常に使われるのに、法曹を目指す最前線も痛々しいもんですよ。このような記事を書きあげるキッカケになったサイトについては、私も全面的に応援をしたいと思います。村民から村に入ってくる人たちに向けて、そして国へ、世界へ。

英語を喋れるだけが国際人じゃないんです。世界の人と、普遍的な物事(ex.権利関係)について共有する考えをもてていることが、国際的な感覚だと私は思う。今回のような労働問題なんて、そのような感覚からすればまさにナンセンスで、日本の現実はこの程度か、と思われるものです。しかしその構造上の問題は、間違っても「労働者」自身にある問題じゃない。その構造を生み出させた者の責任だ。だから、この「タイトル」になる。


(私のコメント)
桝添厚生大臣が日雇い派遣禁止法案を出すといっていますが、どうも最近の政治家や役人は労働現場の状況把握がなってなくて、とんでもない法律が量産されています。マスコミにしても日本の派遣労働の現状を報道しているのはNHKぐらいで、数年前に特番で報道されている。しかしほとんどの国民はバラエティー番組しか見ない。

国会でも、秋葉原の無差別殺人事件が起きる前から派遣労働の実態は共産党などから告発されているのですが、福田総理などは我関せずと言った反応であり、この事を放置していたらどのような事が起きるかといった事までは考えもしないのだろう。しかし二十代前半の若者の半数が非正規雇用であり、劣悪な環境から抜け出せずに社会からドロップアウトして行く。

秋葉原の無差別殺人事件は派遣労働の不安定性が事件の引き金になっているのであり、原因のすべてではないが無差別殺人事件を続発させている温床になっている。しかし政治や行政はこのような弊害が出てこないと動かないのであり、いくら国会内で審議がされようと、マスコミはこのような審議は報道しない。

2/8 派遣法改正し"労働者保護法"に 志位委員長が質問/衆院予算委員会(全編)

私も技術系の仕事をしている時に、派遣社員と一緒に働いていたときがあったが、彼らは好きで派遣社員をやっているのではなく、資格や年齢などで撥ねられて正社員への道が閉ざされているから派遣をしているのだ。白石真澄関西大学教授が言うように時間の有効活用で優雅に働くといった派遣はよほど特殊な場合だろう。

派遣労働法が出来た当初は、特殊技能を持った人の派遣であり、正社員よりも高い給料が支払われる業務に限定されていた。ところが小泉構造改革によって単純低賃金労働分野にまで派遣が認められるようになり、トヨタやキヤノンといった大企業は次々と正社員から非正規雇用に切り替えて行って、人件費を半分以下に削った。

ところがテレビなどのマスコミはこのような実態は報道しないし、NHKだって社名などは伏せて報道するから実態が分からないまま問題が放置されてしまう。負け犬のプライドでも書かれているように、日本の派遣は国際労働規約の原則からますます離れたものとなり同一労働同一待遇といった事は守られていない。

日本の非常識の記事に書かれているように、日本の人材派遣会社は給与のピン撥ね率が高くて、10%以内という規約が日本では40%もあるそうだ。これではヤクザの手配師と変わらないし、日雇い派遣は要するに日雇い労働者の事であり、もはやセーフティネットからも外れてしまった人たちだ。

共産党に志井委員長は労働者派遣法が労働者ではなくて派遣会社を保護する法律となっていると告発しているが、トヨタやキヤノンなどが偽装請負などの違法行為を行なっても処分はされず公表もされていない。しかし国会でこのように告発されるとトヨタやキヤノンは慌てて偽装請負を切り始めた。

秋葉原の無差別殺人を犯した加藤容疑者は、トヨタの子会社への派遣社員だったが、6月いっぱいで切られる事が事件の引き金になった。加藤容疑者の切れやすい性格が事件の原因でもあり、派遣労働以外にも事件の原因となったことはある。しかし状況が重なれば第四第五の無差別殺人事件は起きる状況が現代の日本にはある。

このような雇用形態を放置していれば、企業だって短期的には業績は上がるだろうが、技術の蓄積は行なわれず、ベテラン社員は定年で退職して行き、若い社員は皆派遣社員で技術の受け継がれない社員ばかりとなって、日本の製造業は立ち枯れして行くだろう。トヨタやキヤノンが日本をそのように変えてしまったのだ。

トヨタやキヤノンはいろいろ規制をかけるのなら日本から出て行くよと脅迫しているのでしょうが、トヨタやキヤノンは日本から追放して、奥田名誉会長や御手洗会長は日本国籍を剥奪して中国に追放処分すべきだ。日本からトヨタやキヤノンが無くなっても新しい自動車会社やカメラ会社が出来てトヨタやキヤノンのシェアを奪っていくだろう。

日本の国際優良企業はソニーやニッサンのように外人が社長となって日本企業ではなくなっていく。トヨタやキヤノンももはや日本企業ではなく、アメリカの手先となって日本をアメリカのような市場原理主義の国にしようとしている。それで日本が良くなればいいのだが、国際優良企業にとっては日本市場は一つの市場に過ぎず、そこで働く従業員も外人だろうが日本人だろうがどうでもいいのだ。奥田や御手洗は日本人の顔を持った外国人である。


◆「NHKスペシャル・フリーター漂流」
(2005年2月放映) 日研総業の現場

http://jp.youtube.com/watch?v=aKHAaGe4mQs
http://jp.youtube.com/watch?v=mKSEaogvmIA
http://jp.youtube.com/watch?v=8DKISTpdswg
http://jp.youtube.com/watch?v=EZaaXlxMzp8
http://jp.youtube.com/watch?v=LOr2HknPvck
http://jp.youtube.com/watch?v=cN810Tj2x2k


テレビとトヨタやキヤノンはズブズブの関係だ

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    /:::::;;;ソ         ヾ;〉
    〈;;;;;;;;;l  ___ __i|
   /⌒ヽリ─| -・=-H -・=-|!    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | (     `ー─' |ー─'|  < 派遣関連は報道するなよ。
   ヽ,,  ヽ   . ,、__)   ノ!     \_____________
      |      ノ   ヽ  |
      ∧     ー‐=‐-  ./
    /\ヽ         /
  / \ ヽ\ ヽ____,ノヽ

       ∧_∧
       (Θ-Θ=)  もちろんですww トヨタさま!
     ._φ 経⊂)   “犯人はオタク” の 路線で押切ります!
   /旦/三/ /|  
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .|   
   | 拝金主義 |/





GCCがドルペッグをやめたら、今日まで事実上、米英の植民地だった
中東諸国は、GCC産油国を中心とした地域覇権国の一つになるか?


2008年6月14日 土曜日

為替のちょっとした感じ  6月13日 厭債害債

米国の三役揃い踏みみたいな為替口先介入で明らかに雰囲気が変わっているドルですが、やはりどうも違和感ありまくりです。よく言われるようにもともと連銀議長が為替に言及すること自体異例である上、財務省の関与をはじめからにおわせるというのはよほどのことです。ある人はこれに関するバーナンキのステートメントに違和感を持ったといいます。それは為替に関するコメントのパラグラフが前後のパラグラフとのつながりをやや欠いているのではないか、ということのようで、その方はこの部分は直前に無理やり挿入したのではないか、と言う疑問を持っていました。

いずれにせよ米国の大統領まで巻き込んだドル支持政策は間違いなく政治的な背景があります。インフレ阻止だけだとここまで言うこともないでしょう。あくまで推測ですが、すでにかんべえさんのところで指摘されているのですが、産油国も多く含んでいるドルペッグ国との関係が疑われるところです。まさにドルは高くしておくからお願いだからドルペッグはずさないでね、ということでしょうか。

ドルペッグ国にとってドル安は金融政策の自由度を大きく毀損しています。本来引き締めが必要な場面であるのに、金利を引き上げて引き締めればますます海外の投機資金の流入を招き所定のペッグレンジをこえる危険を生むという矛盾を生じてしまう。そのためにドル買い自国通貨売りオペレーションが必要になりそれがまた金融政策の負荷となる、ということです。かれらにとってドルペッグはもはや外貨準備が不安定だった過去の遺産でしかなく、それから外れようとするインセンティブはきわめて高い。ドルペッグがはずされると相対的に成長の高いこうした国々にとって自国通貨売りドル買いによって為替を調整する必要がなくなり、結果として米国債やドル資産への投資の必要が大きく減ります。為替もさることながら、今後国内金融システムや景気浮揚のために膨大な資金が必要となると思われる米国にとって、ファンディングの問題が浮上することは相当危機的な状況を招く(長期金利の急上昇)とおもわれます

もちろんインフレもテーマでしょう。オイルとドルの逆相関がつよまっている昨今ではドル高に持っていくことであわよくば原油などを下落させる効果も狙っているのかもしれません。いずれにしても、最近産油国との連携を深めていることはこういう背景もあるとおもっています

しかしながら、いうまでもなくこれは劇薬です。景気の下支えとして唯一ドル安で潤っていた輸出部門にとってはマイナスとなります。本当に介入まで匂わせておいてドル安が止まらなかったらそれはまた恐ろしいことです。ワタクシの記憶する限りここまで米国がイニシアチブをとって自国通貨を引き上げる方向での介入まで口にしたことはほとんどなかったと思います。また今後の金融政策はますます難しくなってきそうです

まあテクニカル的に明確にブレークしてしまっているので当面は政治の意思を確認すべくついていくしかありませんし、ショートカバーを誘発すれば結構なレベルまでドルは上がる可能性もあります。ちょうど今日はアイルランドでリスボン条約についての国民投票があり、否決の可能性も結構高いためユーロドルで波乱が生じる可能性もあります。かつてフランスでユーロ憲法が国民投票で葬り去られたときもユーロはかなり落ちたと記憶しています。この辺EURO SELLERさんはどのようにお考えなのか興味あるところです。

最近ばたばたしているのでちょっとメモ程度ですみません。


金融危機の再燃  6月9日  田中 宇

▼マスコミを使った延命策

 米連銀は昨年秋以来、一貫して、不況対策と金融機関救済という2つの目的のため、短期金利を引き下げ、金融界への資金供給を拡大し続けてきた。しかしその結果、インフレがひどくなり、ユーロ圏や、通貨をドルにペッグ(連動)しているアラブ諸国(GCC)が、ドルに連動して自国通貨を弱体化させる政策を放棄し、通貨の対ドル為替の上昇を容認する政策に転じる可能性が出てきた。

 ドルに対する信用不安を回避しようと、連銀のバーナンキは6月3日、インフレを増大させるドル安を回避したいと表明した。ドルの為替については財務省の専管事項であり、連銀がドル安への懸念を表明するのは異例である。連銀がインフレ回避のためにできることは利上げである。市場では、連銀はインフレより不況を懸念する従来の利下げ政策をやめて、不況よりインフレを懸念する利上げ方向に転じそうだとの観測が広がった。(関連記事

 当初は、ドル高と利上げ傾向で、世界の投資家にとってアメリカに投資することの魅力が回復するとの見方から、アメリカの株価は上昇した。だが、利上げは金融機関にとって調達資金コストの増大となり、金融危機を増大させる面がある。利上げは、不況色を強めている米経済の景気にもマイナスだ。これらの要因から、6月6日には株価は急落に転じた。バーナンキのドル高発言の好影響は2日ほどしか続かず、その後は悪影響の方が大きくなった。(関連記事

 私から見ると、FT(フィナンシャルタイムス)など、米英の金融専門のマスコミでは、3月末の危機が回避された後、相場を下げる方向の分析記事の掲載をできるだけ避けている観がある。

 たとえば6月4日にOECDが発表した経済見通しについて、FTは「先進国は経済危機を良く乗り切っているとOECDは見ている」という記事を出したが、フランスのAFPは「米経済は今年いっぱいひどい状況だとOECDは見ている」、中国の新華社は「OECDは、先進諸国は経済難が続くと予測した」と報じている。OECDによる世界経済の多角的な分析の中のどの部分を見出しにとるかによって「良く乗り切っている」から「ひどい状況が続く」まで、いくつもの論調の記事ができあがる。(関連記事その1その2その3

 経済の状態をできるだけ楽観的に描こうとする圧力が、マスコミに上の方からかけられ続けていれば、悪い統計数字が出ても、大して悪くないとみなす記事が多くなり、個人投資家などの多くに影響を与えられ、金融相場の下落をある程度防げる。国際政治の記事で「イスラム=悪」の図式が貫かれ、アメリカによる虐殺的侵略戦争が「独裁者を倒す良い戦争」として描かれるのと同様のメカニズムで、金融市場の延命策が採られている。

 しかし、大手の投資家はもっと冷徹な分析をしており、彼らによる売りがかさんでくると、延命策は続かなくなる。延命策を採っている間も、米英の財政・貿易・家計の「三つ子の赤字」は拡大し、矛盾は潜在的に増大している。次に延命策が尽きたときの崩壊度が大きくなる。先週以来、3月末以来の延命策が尽きつつあるのではないかという懸念が高まっている。今回は、まだ延命策の効力が続いたとしても、この先いつ尽きるかはわからない。

▼経済と覇権

 今のところ、世界各国の通貨当局は、ドル下落に合わせて自国通貨の価値を下げているが、これを続けている限り、各国のインフレはひどくなるばかりで、政府支持率の低下や暴動など、政治不安につながっていく。各国はどこかの時点で、自国通貨の対ドル為替の切り上げ容認に転じざるを得ない。

 6月5日には、EUの欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が、インフレがあまりにひどいので、来月にユーロ圏の金利を引き上げるかもしれないと発言し、ドル安ユーロ高を引き起こした。2日前のバーナンキのドル高発言の効果は、トリシェの発言によって打ち消された。(関連記事

 6月2日には、ポールソン米財務長官が中東訪問中に「アラブ産油国(GCC)のインフレは、通貨の対ドルペッグ(為替連動)をやめたらおさまるものではない」と発言し、GCCはドルペッグを維持した方が良いという姿勢を見せた。(関連記事

 昨年末以来、投資家の間では「GCCは、ひどくなるばかりのインフレを抑制するため、近々ドルペッグをやめるだろう」という見方が広がっているが、ポールソンはその見方に冷や水を浴びせかけ、ドル安を防止しようとした。FTなどのマスコミも、ポールソン発言に呼応し、ドルペッグは外れそうもないと主張する記事を出し、米当局に協力した。(関連記事その1その2

 しかし、その数日後には、アメリカの金融危機が再燃しそうだという流れに乗って、再び「GCCはドルペッグをやめるのではないか」「やめるべきだ」と主張する記事が、またもや湧き出てきた。GCCがドルペッグをやめたら、今日まで事実上、米英の植民地だった中東諸国は、GCC産油国を中心とした地域覇権国の一つになっていきうる。世界の政治的な地図が塗り変わる可能性を秘めている。関連記事その1その2

 ドルはアメリカの覇権を支える大黒柱である。ドルに対する信用不安は、アメリカの覇権が崩壊しかけているという政治的な問題でもある。日本人は国際政治の素養が低く、経済にしか興味を持たないよう教育されているので、ドル安は日々の相場の問題としか思わないが、実はドルの信用失墜は、戦後の60年間のアメリカの覇権(もしくは産業革命以来200年の英米覇権)が崩れ、世界の政治構造が変わりかねないという、政治的な問題として重要である。50年100年単位の大きな動きである覇権の問題からすれば、短期的な景気や相場の問題は些末だ。



(私のコメント)
ECBのトリシエ総裁とFRBのバーナンキ議長との金利をめぐる駆け引きは、微妙なところに来ていますが、石油の価格がこのまま上昇していけばECBは金利を引き上げざるを得なくなるだろう。そうなるとドルも金利を引き上げないとドル安となるので金利の引き上げ合戦が起きて株が暴落する可能性がある。

アメリカは中央銀行が資金供給を続けているから、だぶついた資金が石油投機に向かっている。米連銀は2006年春以来、主要な通貨供給量(M3)の発表をやめているのはインフレを助長するからでしょうが、麻痺してしまった債券市場やコール市場に資金を供給し続けなければ大型の金融機関の倒産が起きてしまう。

このようにしていれば当面は破局は回避できますが、いつまでもこのような非常体制は続けられない。ドルがだぶついてドル安となり石油の高等や商品市場の高騰となってインフレを招いてしまうからだ。ドルペッグを取っている中東産油国にとってはアメリカからインフレが波及してきて物価高が国民の不満を爆発させる恐れがでてきた。

だからアメリカの政府高官によるドル高への口先介入が行なわれていますが、やっている事と言っている事は矛盾している。口先介入の効果が無くなればアメリカは金利を引き上げなければならなくなりますが、金利を上げればまたしても金融不安が再燃してきてしまう。

アメリカにとって一番の焦点は、中東産油国のドルへのリンクからの離脱ですが、ブッシュやポールソンが相次いで中東を訪問したのはドルペッグ離脱阻止の為でしょう。ドルで石油が買えなくなればアメリカにとって致命傷になりかねない。このためにインフレ抑制のスタンスを取り始めるようにアメリカは舵を取った。

アメリカはいままで口先介入以上の為替政策はとっていませんが、政府の意向で動く天下無敵のファンドが相場をコントロールしてきた。アメリカのゴールドマンサックスやモルガンスタンレーはアメリカ政府そのものであり、国家ぐるみでインサイダーを行えば取り締る機関もない。いわばGSやMSはアメリカの政府系ファンドだ。

農産物の高騰も石油の高騰もブッシュが去年の年頭教書で予定されていた事であり、アメリカ政府がシナリオを書き、FRBが金融機関に資金を提供し、ファンドが石油や穀物相場を吊り上げる。いわば住宅バブルの次は石油・穀物バブルでファンドは一息ついている。日本でこのような政府系ファンドを作っても日本には情報機関も分析機関もないからファンドは相場を仕掛けられない。だから日本は政府系ファンドを作っても機能しないだろう。

最近の日本はテレビでエコロジーの大キャンペーンを行なっているが、これも欧米の情報操作の一つであり日本のファンドはカモになるだけだろう。6月7日の「株式日記」で記事を紹介したように、商品ファンドに流れ込んでいる資金の24%が日本からの資金であり、アメリカの「政府系ファンド」は日本からの買いに売りをぶつけて売り逃げている。ジャパンマネーが出て来た時が相場の終わりなのであり、日本人は欧米のこのような情報操作が読めないのだろうか?

アメリカの金融帝国はCIAやNSAや「政府系ファンド」のGSやMSが中心となった金融帝国であり、ドルが基軸通貨である限りは金融帝国は安泰だ。しかし中東産油国のサウジアラビアがドルと石油とのリンクを外した時がドルの基軸通貨体制の終わりの時であり、金融帝国も落ち目の始まりとなるだろう。

アメリカは海外から毎年100兆円もの投資を呼び込んで、その資金が様々な市場で売り買いされている。政府日銀もアメリカ国債を買ってはドル安で借金が棒引きされてしまっていますが、ドルが基軸通貨だからこのような事が出来る。

もし石油とドルとのリンクが外されたら日本はアメリカの農産物しか買うものがないからドルはそれほど必要は無くなる。むしろサウジが円で石油を売ってくれれば円がアジアの基軸通貨になりうる。あるいは中国の元かもしれない。

サウジが求めているのは外交的な国防力であり、アメリカが超軍事大国だから石油とドルとをリンクさせてドル基軸通貨体制を支えているのですが、オバマ政権が出来てイラクから米軍を撤退させれば、中東における軍事的覇権は失われてサウジも石油とドルのリンクを外すだろう。

アメリカ軍は、イラク戦争において陸上戦闘力の弱体化を印象付けましたが、イラクから米軍が撤退すれば政治的には敗北を意味する。だから共和党のマケイン候補はイラクに100年間駐留すると発言している。イラクに石油がある限りアメリカ軍はイラクから撤退はしたくないだろうが、国内経済がサブプライムなどでガタガタになれば強力な軍事力は維持が出来ず、サウジもアメリカを見捨てるかも知れない。

アメリカにとっての最重要同盟国はサウジアラビアと日本ですが、この二つの国から見捨てられればアメリカはおしまいなのだ。アメリカはサウジを失う事で石油を失い、日本を失う事で海の支配権を失う。そうなった時はアメリカはただの大国となってしまう。




『反貧困』 湯浅誠:著 昔は貧乏でも家族や地域があった。
いまは経済的に頼れる人間関係や精神的な“溜め”のレベルが違う。


2008年6月13日 金曜日

『反貧困』:湯浅誠:著

湯浅誠さんの講演「“溜め”のない若者と貧困」 ひらのゆきこ 2008/05/20

 これまでは、失業者や高齢者といった労働市場から排除された人たちが相談にきていたが、いまはすでに働いている人たちが相談にきているそうです。いまのところ、正規社員の相談は1つもないが、正規労働者も一枚板ではなく、労働環境が劣悪な名ばかり管理職や、正規でも収入が生活保護基準以下の人たちもいるので、相談に来はじめてもおかしくない状況であるとの認識を示しました。

 なぜ相談にこないのか。正規で働いている自分が生活できないはずはない、との思いがあるからではないか、と推測しながら、「正規は勝ち組、非正規は負け組みというのが嘘っぱちであることがわかってきた。いずれ相談にくる」と述べ、貧困が拡大している状況に警鐘を鳴らしました。

生活と労働の両方の問題を抱えている
 連合や全労連は非正規の人を仲間にいれるための働きかけをしているが、現在は、働いているのに食べていけない、生活と労働の両方の問題を抱えており、この二つを切り離すと現状に追いついていかない、と述べ、現場で起きていることに目を向け、労働問題だけでなく生活の問題にも対応できるかどうかが問われている、との認識を示しました。

(中略)

若い人たちの貧困化は構造的な問題
 湯浅さんは、若い人たちが貧困化した理由について、「若い人たちはセーフティネットから落ちて行く構造になっている。そこで貧困が生産された」との考えを示しました。去年、テレビで報道された「ネットカフェ難民」や「ワーキングプア」に言及しながら、若い人たちの貧困化は構造的な問題であり、「なるべくしてなった」と述べ、非正規で働いている人が全員そうなるのではなく、(貧困化しているのは)セーフティネットがきいていない人たちであると語りました。

 月収10万でも親と同居している人は貧困状況にあるという自覚はないが、頼れる人がいない人が10万の場合は最低生活で、アパートを出てネットカフェで暮らす人が生まれます。家族が社会的セーフティネットの肩代わりをしているため、家族に異常な負担がかかる。鬱病や引きこもりの場合、親子関係が険悪な場合が多く、家にいると余計悪くなるが、(生活ができないので)出られない。家族の負担も増える。児童虐待が問題になっているが、児童虐待の問題と結びついているのは貧困であり、家族が全部抱え込む。

湯浅誠さんのお話 4

自立とは介護保険を使わずできるだけ家族で介護をすることなのか
 福田首相が総理大臣になったとき、「自立と共生」についてコメントを求められ、「自立」について「(介護保険を使わないで)できるだけ家族内で介護をすること」と答えたことに対し、湯浅さんは、「介護保険はなんのためにつくられたのか」と疑問を呈しながら、総理大臣自ら露呈したように、老老介護の問題など、セーフティネットの脆弱さのしわ寄せを家族が受ける社会になっていることに警鐘を鳴らしました。

 湯浅さんは、貧困の背景として「五重の排除」があると述べ、こういう視点をもつことが必要であると主張しました。公的扶助のネットから落ちて行く人は、穴をまっさかさまに落ちて行く。貧困の問題は、「落ちて行く人の身になって考えることが必要」と述べ、そのためには、マクロだけでなくミクロの視点が必要であると強調しました。

自己責任論は本質を見誤る
 テレビで貧困の問題が報じられていると、頑張って働いているのに生活ができない人を見て、可哀相だと同情しながら、隣で一緒にテレビを見ているフリーターの息子に対しては、「お前は自己責任」と切り捨てる父親がいるが、そのようなとらえ方は本質を見誤る、と湯浅さんは指摘しました。組合はあるが脆弱であり、相談にくる人はテレビに出ているような立派な人ばかりではないので、相談員のシニアのおじさんが、本人の精神状態や現れ方を理解しないと、上記の父親のように「自己責任」と切ってしまうことになりかねないと述べ、危惧していることを明らかにしました。

五重の排除
 「五重の排除」というのは、「教育課程」「企業福祉」「家族福祉」「公的福祉」「自分自身」の排除であると述べ、この中でとくに問題なのは「自分自身」の排除であると語りました。

 生活保護の申請をすると追い返される。わらにもすがる思いで相談に行くと、けんもほろろに追い返される。そのような体験をした人たちの話を聞くと、だれもが「尊厳を踏みにじられた」「人間扱いされなかった」と語るそうです。正社員の採用試験に何度も落ちた男性は、落ちるたびに社会から要らないと言われているような気になると語っていたそうです。

 最近はベンチに横になっているだけで、警備の人がやってくる。隅田川では24時間ガードマンが巡回しているので、横になることもできない。追い込まれていくと、最後は「自分自身」の排除。生きていてもしょうがない、どうでもいいという気持ちになる。弱いとかガッツがないとかそういう問題ではなく、人間、だれでも4つの排除を受けると、最後はそういう気持ちになる、と湯浅さんは訴えました。

弱者を追い詰め、死に追いやる社会
 自殺者3万人(年間)のうち、1万人は経済的理由による自殺だそうですが、湯浅さんは、「生活が逼迫すると、生きていてもしょうがないという気持ちになって自殺をする」と自殺に追い込まれる人たちの心情を代弁しました。

 去年、北九州市で「おにぎりが食べたい」と言い残して餓死した52歳の男性は、「生活困窮者は早く死ねということか」とノートに書き残していました。現在の「姥捨て山制度」と言われている「後期高齢者医療制度」について、自民党の堀内光男議員は「高齢者は死ねということか」と言っています。生活困窮者や高齢者など弱い立場の人たちを追い詰め、自ら死に追いやるような現在の日本の政治と、それを許している社会に対し、湯浅さんは次のように述べました。

 「だれかが、お前なんか死ね、と言ったのではない。本人の受け止め方がそうなっている。働いても暮らせない。死ねと思うように、社会が仕向けている。それが、自分自身の排除になる」


(中略)

貧困は“溜め”がない状態
 湯浅さんは、貧困問題について考えるとき、“溜め”がない状態として考える必要があるのではないか、との見解を示しました。

 人間は“溜め”に包まれており、大きい人も小さい人もいるが、お金の“溜め”、親や親戚など人間関係の“溜め”、自分に自信がある精神的な“溜め”。全体としてそういうものが失われるのが貧困であるとの考えを示しました。「貧乏と貧困は違う」としたうえで、“溜め”が小さくなった状態から“溜め”を大きくしていくことが必要であるとして、次のように述べました。

“溜め”を増やしていく社会をつくる
 「“溜め”は目に見えない。一人ひとり“溜め”の大きさは違うが目に見えない。成功している人は自覚がない。頑張ればなんとかなると平気で言っちゃう。子どもを大学まで行かせた場合、だいたい2000〜2500万円かかるといわれている。私立はもっとかかる。日本の公的教育費は29位で先進国のなかでは最低。親が出さないと出てこない。貧困が世代間で受け継がれていく。

 条件のない人に言っても暴力になる。その人にはその条件がない。本人が自分の“溜め”を自覚してから、お前も頑張れと言ってほしい。団塊の世代の人は、昔はみんな貧乏だったと言う人が多いが、昔はお金がなくても人間関係が現在のように脆弱ではなかった。大企業は住宅や福利厚生が充実していたし、中小企業や零細企業なども、たとえば、住み込みの従業員などに対しては、結婚の相手を世話するといった、煩わしい面もあったが、周囲の支えがあった。

 昔は貧乏でも家族や地域があった。いまは経済的に頼れる人間関係や精神的な“溜め”のレベルが違う。昔はみんな貧乏だったとか、頑張ればできる、という話で終わる。そういう話で終わらせると社会的サポートをする必要がないということになる。“溜め”を大きくしていかないし、自己責任も問えない。選択肢のない人に対し、あたかも等しく選んだかのように言うのが自己責任論の嘘である。

 “溜め”を増やす長いプロセスをどうやって増やすか。生活保護、信頼できる友人、空間、温かく見守っていくことが必要。一般論でただケツを叩くだけでは、自立から結果的に遠ざける。“溜め”のない人に“溜め”を増やしていく社会を作っていくことが大事。

 イギリスで始まったニートの問題は、この人たちは社会のセーフティネットがないという反省から始まったもの。それが日本に輸入される過程で、自己責任論に引っくり返った。条件を社会的にどうつくるのか。学校やNPOなどで取り組みを始めないといけない。「お前、なにやってんだ」、ということでは、切り捨てられる状態をとめることはできない。


(私のコメント)
バブル崩壊以降、日本では国民生活もだんだんと過去の蓄積を食い潰して預貯金なども減って来ている。国民一人当たりの年間所得もじりじりと落ち続けている。企業業績が回復して景気は上向いているとテレビなどでは言っているが、人件費を削って利益を上げているのであり、それに反比例して給与水準は下がり続けている。

これではGDPの6割を占める消費が伸びないのであり、石油などの一次産品が値上がりしても商品価格に転嫁できない状況が続いている。つまり景気が回復したといっても輸出企業の業績は回復しても、国内企業や消費に波及しないから景気の回復感はあるわけがない。

企業は業績を上げるためにリストラに取り組み続けていますが、正社員を首にすることは難しいから、新規採用をストップして穴埋めに派遣社員やパート従業員に切り替えて行った。その結果、業績のいい輸出企業も半数が非正規社員となり給与も半分に減らしてバブル期並みの好業績を上げている企業もある。

このような企業経営の犠牲になっているのが若年労働者であり、特に若年層は半分近くが非正規雇用であり、フリーターなどの生活を余儀なくされている若者も少なくはない。日本は豊かな国なのだからフリーターなどは好きでやっているような事を言う人もいますが、大企業で正社員になる道はごく限られた割合でしかない。

非正規雇用が最多 労働者の32.9% 若年層46% 2005年11月30日(水)「しんぶん赤旗」

私自身は銀行勤めをしていたのはバブル前の入社であり、その頃から過剰雇用ではないかと感じていた。男子の銀行員の多くが営業と称する預金集めをしていたのであり、護送船団方式で預金高を競い合う事が銀行経営のバロメーターになっていた。土地を担保に貸していれば回収は確実であった。

しかしバブル崩壊で土地担保貸出は機能しなくなり、だから銀行は土地担保でも金を貸さなくなった。だからバブルから脱却するのは土地の値段が底を打って上がり始めるまで無理だろうと直ぐに分かった。しかし政府は土地税制を改める事はせず、固定資産税も高くなったままだ。

だから銀行もメガバンクに集約されて、今では預金集めをしている銀行員を見かけることはあまりない。窓口も派遣と思われる女子従業員が多くなり職員の合理化は進んでいるようだ。しかし正社員であっても1人で何人分もの仕事をこなす為に身体を壊して辞める人は多い。

赤旗によれば三分の一が非正規雇用であり、二十代前半の若者は半数が非正規雇用だそうだ。秋葉原で無差別殺人をした加藤容疑者も非正規雇用であり例外的な若者というわけではない。だから年金を納められる人も半数しかいないわけであり、年金の崩壊も健康保険の赤字も若者の非正規雇用が原因なのだ。

独身男性で年収600万以上の男性はわずか3.5%しかいなかった 2006年9月3日 「株式日記」

私自身も銀行を辞める時は年収600万以上あったから3,5%の内に入っていたのですが、今ではバブルの崩壊で年収は銀行返済でほとんどが消えてしまう。最悪の時は冗談だが加藤容疑者のような自暴自棄になり大蔵省へ自爆テロを考えた時もあった。

加藤容疑者も数百万の借金を抱えていたようですが、職も無く借金を抱えていれば自爆テロを考える事もあるだろう。これからは、どうせ自殺するのなら無差別殺人で世の中に復讐してから死んでやろうという自暴自棄な加藤容疑者のような若者が次々出てくるだろう。今年はすでに無差別殺人テロが3件も起きている。

このように若者の雇用状況は悲惨なものですが、公務員だけは別格であり、地方公務員の平均年収は730万円だ。いまや地方でまともな収入のある職業は地方公務員しかないのであり、タクシーの運転手の300万円と比べるといかに現実離れしているかが分かる。これでは日本の経済がおかしくなり、回復が遅れるのも無理はない。

湯浅氏の「反貧困」という本は読んではいませんが、昔は貧しくても家族や社会で支える仕組みがあった。だから昔に比べれば今の若者は恵まれているように見えるが、いったん人生のコースから外れればいくらもがいても這い上がる事は難しくなる。加藤容疑者もトヨタの正社員を目指したようですが競争が厳しくて落ちた。

私も銀行を辞めたからドロップアウトした気分はよく分かる。これからはまともな人生は歩めない事は覚悟した。昔は家族や親戚が支えてくれたが、今では家庭に引き篭もった若者は160万人にも及ぶと言う事ですが、非正規雇用で働いている若者はまだましなのだ。親が元気な内はまだいいが親がいなくなったら誰がヒキコモリの面倒を見るのだろうか?

このように日本社会はガタガタな状況であり、秋葉原の無差別殺人事件は起こるべくして起きた事件であり、昨日の勝谷氏が言うようにこれからこのような事件が起き続けるだろう。それに対して政府や国会議員たちのゴタゴタは見るに耐えない。世の中がどうなっているのか分かっていないのだろう。だから秋葉原のような事件が起きるとビックリして驚くのだ。




秋葉原の無差別殺人は日本でも「貧困テロ」が起きたということだ。
今年すでに3件の貧困テロが起きたが、連鎖的にテロが起きるだろう


2008年6月12日 木曜日

6/11(水)コラムの花道

6/11(水)コラムの花道は勝谷誠彦さんです。
秋葉原で起こった無差別殺人について、勝谷さんが斬ります!

6/11(水)コラムの花道×勝谷誠彦をダウンロード



日本の制度、世界的には非常識…派遣残酷物語 ZAKZAK 2008/06/12

派遣社員という隠された「格差社会」。派遣社員から「もう生きていけない」など多数の相談を受けている「派遣ユニオン」書記長の関根秀一郎氏は「派遣が絶望の温床となっている。このままでは、ほかにも許されないことを考える人が出てきても不思議ではない」と警鐘を鳴らす。

 関根氏は「彼(加藤智大容疑者)のような行為は絶対に認められない」としながらも「誰でも希望が持て壊したくないと思うような将来が見えれば、あのようなことはしない。いつクビになってもおかしくない今の派遣労働者に将来を考える余裕はない」と語る。

 関根氏の元に駆け込んできた1人は仕事中に指を骨折したが、「辞めたら食べていけない」と骨折したまま1カ月間働き続けて指がパンパンに腫れ働けなくなった。「労災隠しなんて頻繁にある」(関根氏)。

 派遣問題に詳しい龍谷大学の脇田滋教授も「日本では派遣元が企業に、正社員1人のコストで2人使えるなどと売り込んでいたりする。ほかの国では『同一労働同一待遇』が原則で、派遣の差別待遇は禁止されているのに日本の常識は世界の非常識だ」と指摘する。

 日本では「身分が下の労働者という意識もある」といい、正社員がいじめて暴力までふるった派遣社員を、派遣元が守らずに「一緒になっていじめた」ケースや暴力団のクレーム処理を押しつけられた派遣の女性が自殺するなど悲惨な話も後を絶たないという。

 脇田教授は「1986年に労働者派遣法が施行されて以来、国は規制を緩和し続け、こんな状況を放置、容認してきた。防ぐには仕組みを変えないといけない」と語る。関根氏も「法律を見直して、絶望的な働き方はなくさないといけない」と訴えている。



規制緩和の諮問委員だった白石真澄関西大学教授(スパモ二より)
このような御用学者がテレビに蔓延るのは世論操作のためだ

派遣とかアルバイトパートを含めて働く人の三十数パーセントが
非正規なんですね、それを規制強化すると企業活動として
なりたたないと思うですね。ですから流動的な働き方で働く
女性なんか時間をコントロールして働く働き方があって当然
ですから、それを規制で済まそうというのはいかがなものか。
こういった人たちが犯罪確率が高いという科学的根拠はない
わけですよね。派遣そのものが悪いとして規制する方向と
いうのは間違っていると思います。


(確かに正論だが同一労働同一待遇の原則を外したのはなぜか?)



(私のコメント)
秋葉原の無差別殺人事件の加藤容疑者が派遣労働者であったということで、派遣に問題の焦点が当たっていますが、もちろん加藤容疑者自身に一番の問題があるようだ。勝谷氏の番組でも言っていましたが、青森の有名な進学校に進んで、両親も非常に教育熱心な家庭だったようだ。息子はその期待に押しつぶされてドロップアウトしてしまった。

その両親が謝罪会見をしていましたが、服装が異様でありシャツも出しっぱなしの普段着姿だった。銀行員の家庭で一般常識のある家庭なら喪服を着て謝罪するのが常識ではないか。教育熱心な家庭の息子の犯罪として有名なのが奈良の家族3人を放火殺人した事件が思い出されますが、加藤容疑者も似たような環境だったようだ。

奈良家族3人放火殺人事件の犯罪心理学

しかしそれだけだったら恨みが両親に向かうべきであり、秋葉原で無差別殺人事件にまでは行かなかっただろう。事件の引き金になったのは不安定な派遣労働におけるトラブルが原因には違いない。マンションでOLをバラバラにした星島容疑者も派遣労働者だったが、派遣労働が容疑者の精神を蝕んでいく。

もちろん白石真澄関西大学教授の言うような時間を有効に活用して働いている優雅な派遣労働もあるのでしょうが、ほとんどの派遣は使い捨ての現代の奴隷だ。正社員の首を切ってどんどん派遣に切り替えて賃金を半分以下にすれば企業の業績は回復して、マスコミは景気が回復したと大宣伝する。しかし労働者の賃金は小泉改革で下がりっぱなしだ。(公務員は別)


日雇い派遣 原則禁止に踏み切れ 6月12日 中日新聞

日雇い派遣大手のグッドウィル社幹部が逮捕され会社も書類送検された。東京・秋葉原の無差別殺傷事件も派遣問題と無関係とは思えない。労働者派遣法を改正し日雇い派遣は原則禁止すべきだ。

 社名とは裏腹の悪質な行為にあきれた人は多かろう。幹部らは当初の契約とは違う職場に労働者を派遣する二重派遣を手助けしたとして職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)ほう助の容疑で逮捕された。

 二重派遣は労働者をモノ扱いするに等しい。派遣元から派遣先、さらに別会社へと送られるため労働者はマージンを二重取りされたり労災隠しに遭ったりする。今回の事件では派遣法が禁止する港湾運送業務に送り込まれていた。

 こうした違法行為は日常的に行われていたとの証言がある。グッドウィルだけでなく他社も偽装請負や違法派遣を行っていた。もはや個別企業ではなく派遣業界全体の責任が問われている。

 昨年末に事件が発覚後、厚生労働省はグッドウィルに対して四−二カ月間の事業停止命令を出した。その後、文書による就業条件の明示など派遣元企業の責任や、派遣先にも責任者を置くなどの「指針」を決め四月から施行した。

 日本人材派遣協会が先月「意図的な一日単位の細切れ派遣は行わない」とする自主ルールを決めたのも、危機感のあらわれだ。

 だが行政指導や業界の措置だけで、不安定雇用や低賃金といった根本問題が解決できるのか。

 厚労省の調査では日雇い派遣労働者約五万一千人の平均月収は約十三万三千円。また派遣労働者百三十三万人の平均年収は百万−三百万円程度である。これらがワーキングプア(働く貧困層)の温床になっていると指摘される。

 同省は現在、学識者による研究会で日雇い派遣問題を検討している。港湾など危険業務に限って派遣禁止の方向という。通訳やガイドなど一日だけの派遣業務もあるため全面禁止は困難との立場だ。

 これに対して連合は「指針」の実効性は疑わしく、雇用は直接雇用が原則として日雇い派遣を禁止すべきだと主張している。

 一九八五年に制定された労働者派遣法は「雇用の多様化」の掛け声のもと九九年、二〇〇三年と大幅に緩和されてきた。その結果、日雇い派遣も出現し社会不安の一因となった。政府は今、雇用政策を転換すべき時だ。日雇い派遣禁止はその第一歩である。



(私のコメント)
私自身は派遣労働という雇用形態は否定はしないが、同一労働同一賃金の原則は守られるべきだと思う。それならばトヨタやキヤノンなど正社員をリストラして派遣に切り替えただろうか? 企業は派遣に切り替えて人件費を半分にしたから業績は回復して役員報酬や株式配当を増やした。

白石真澄大学教授は御用学者であり政府の広報屋なのだろう。雇用の多様化は確かに正論だが同一労働同一賃金の原則は知らなかったようだ。世間知らずの大学教授が政府の諮問委員会の委員になってとんでもない改革が実行されていく。最近は役人が天下って大学教授になることが多いのですが、白石氏も美貌を生かしてニッセイの研究所から東洋大学や関西大学の教授になりましたが、学問的な業績はなきに等しい。テレビのコメンテーターにはうってつけだが特別なコネがあるのだろうか?

勝谷氏が放送で言っていましたが、最近の親の躾けは勉強させる事であり、礼儀作法といったことや生命や倫理の大切さなどは教えていないのだろう。だからポロシャツも出しっぱなしで謝罪会見も出来るのだ。この親にしてこの子ありですが、教師もバカ親達と大して変わりがないから子供がおかしなのが出てくる。

小泉総理が壊したのは自民党だけではなく日本の労働倫理なども壊してしまったようだ。アメリカが日本の弱体化を狙って構造改革で日本社会を破壊工作なのかもしれないが、その結果が、最近相次ぐ貧困テロが続発するようになった。これからは日本でも無差別殺人テロが続発するだろうし、手段も大型ダンプで人混みに突入するといった大量殺人が起きるだろう。

町村官房長官は刃物を規制するといっているが、車を凶器に使えば10人くらいは簡単に殺せるだろう。だからテロを物理的手段で予防する事など無理であり、テロを根絶するにはテロの温床を無くなさなければ中東のように貧困者のテロは無くならない。

小泉総理は「75歳以上は早く死ね法」を強行採決してまで作った。そして派遣労働法を改正して製造業まで認めた。その結果、無差別殺人を犯すようなテロリストを生み出してしまった。企業も業績を上げるために正社員を切り、派遣社員にして使い捨てにしている。

トヨタは派遣を認めなければ工場をたたんで中国に工場を移転すると脅しているのだろうが、トヨタやキヤノンは日本から追い出してしまったほうが日本の為だろう。日本の倫理やモラルがトヨタやキヤノンによって破壊されるよりかは、日本から追い出したほうが、長期的に見て日本のためになるだろう。




関東自動車は最初に述べた通り、派遣労働をすべて切ろう
としている。親会社のトヨタそのものがそういう意向である。


2008年6月11日 水曜日

【秋葉原無差別殺傷】人間までカンバン方式 6月10日 何かごにょごにょ言ってます

関東自動車はトヨタの関連会社で、下請けではなく、トヨタ車の生産ラインそのものを請け負っている。自動車部品工場という表現をするマスコミもあったけれど、それは正しくない。

トヨタ車として売られている自動車のプレスをし、組み立てをし、塗装をする。トヨタ本体の一部だと思っても間違いではない。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080609k0000e040040000c.html

工場での担当は塗装ライン。月曜から金曜の週5日勤務で1週間交代で日勤と夜勤についていたが、勤務態度はまじめで、公休以外は休まなかった。時給1300円で月約20万円の収入があった。契約期間は今年3月31日までだったが、1年間更新されていた。

 派遣社員を6月末で200人から50人に減らす計画があったが、加藤容疑者は、自分が対象ではないことを派遣会社から知らされていたという。


この部分、私が電話で父親から聞いていた話と食い違う。少なくとも工場の正社員は6月30日付けで派遣はすべてクビと認識していたようだ。期間工は契約更新しない形で順次数を減らすということ。 最終的には、正社員以外はすべて解雇する。

理由は、原油高による材料費高騰。しかも国内需要も伸びないので、引き続き好調な海外需要については、人件費コストの安い海外工場で生産する。なんというか、これがトヨタのやり方か。トヨタの経営方針、在庫を抱えず、下請けからすぐに必要な分だけ部品を取り寄せるカンバン方式というのが有名だけど、まさに、人間までカンバン方式なのだ。

自分たちが、労働者を買い叩いたせいで、若年層を中心に収入が減り、国内需要が減ってしまったら、海外市場は好調なのでとっとと生産拠点を海外に移転してしまう。

しかも、東富士工場は非常に広く、人の配置もまばら。親父いわく、「隣の人と100mは離れている」ウチの親父はいつだって大げさなので、そんなに離れちゃいないだろうけど、数十メートル単位で離れていると見ていいだろう。

休憩時間や出入りの時間などに意識しなければ人と会話をすることも無いそうだ。 しかも、ハケンは出入りが激しすぎていちいち顔も覚えていない。親父いわく、ハケンのことだから知らないだそうだ。まったく(怒)

犯行前に、ツナギがロッカーから消えていたことで、解雇されると思い込み激怒したとの報道があった。字面だけ追えばそんな小さなことで解雇なんて、と思う。だが、彼の状況を鑑みるに、まともにコミュニケーションが成立していないので、ちょっとしたことにも過敏になってしまうだろう。

しかも、派遣会社の言ってることと現場の言われていることに食い違いがあり、クビにはならないと派遣会社が言ったところで、会社側が希望する日まで働いてもらうための方便に見えてしまうだろう。 クビにすると言ってしまえば、本人がバックレたり、やる気がなくなったりして生産性が落ちてしまう。

そもそも、数ヶ月で人が入れ替わってしまうので、職に対するこだわりや企業に対する忠誠心が薄くなる。ウチの父親によると4本閉じなければいけないボルトを、面倒になったある派遣労働者が2本しか閉めないで出荷してしまい、大騒ぎになったこともあったらしい。

また、多少契約期間が伸びたところで、経営方針として最終的に派遣を切るという方向性に変わりはない。モチベーションの上がらない労働をさせられる時間が増えるだけであり、それはそれで苦痛である。

そういう状況下でツナギが無くなったとしたら、極めて非人間的な方法で、陰湿に解雇を告げてきたと勘違いしてもむべなるかな、だとは思う。 その上、派遣会社の日研や関自がマスコミに言っていることは本当なのか。犯人のクビは決定していたが、保身のために嘘をついている可能性はないか

だからと言って、無差別殺人に飛躍するのは、ムチャクチャである。許しがたい行為である。だが、一方で企業側のその非人間的な扱いに愕然とする。

派遣同士のつながりというのはどれほどあったのかは分からないが、(ニュースを見ていると同僚同士多少はコミュニケーションがあったようだが)希薄だったのではないか。

他者と関わりと持てず、漫然とモチベーションの上がらない仕事をしながら明日の生活に怯える。他者のいない生活の中で、自分ばかりが肥大してしまう。ツッコミすら入らないのだから。彼女がいない、ということに対して相当の劣等感を持っていたようだけど、承認の象徴が「彼女」だったのではないか。

無論、背景には恋愛至上主義もあるだろうし、若い男なのでそれ相当に性欲もあるだろうが、友達でも親でも、頼れる上司でも、あるいは猫だろうが、代替は可能だったのではないか。少なくとも道を踏み外すほどにはならなかったのではないか。

犯人は他人を巻き込まず、一人で勝手に死ねばよかった、そう言う人は多い。裾野市なので富士の樹海は近い。だが、犯人があのまま秋葉に行かず、一人樹海に向かったとしても、誰も探しに行かなかっただろう。

派遣会社も、派遣社員の同僚も良くあるバックレとしか思わず、社員はいなくなったことも知らない。そのことを思いついたとき私は全身が寒くなった。身震いするほどの孤独がそこには存在する。

人間としてみなされていない人は、他の人も人間としてみなさない。凶行の背景には、凍えるほどの孤独が生み出す負のスパイラルがある。繰り返すが、だからと言って、無関係な人を殺したことの言い訳にはならないが。

関東自動車でも他の会社と同様、派遣労働者を積極的に活用しはじめたのは、今から大体10年ほど前だと思う。 それまで、期間工として補充していた枠を派遣に変わるようになっていた。

父から聞いていた話だと、派遣会社によって賃金も待遇もバラバラで、おおむね期間工よりも賃金は安い。しかも雇用形態はきわめて不安定で、いつクビになるか分からない。

父からも、子供がいて派遣だけでは食べていけないから、工場労働の後に土方のバイトをしている人の話を聞いたことがある。 非常に優秀な人なのに、地元に職がない、学歴が無いなどの理由で派遣労働しか選択肢がない、わずかしか給料がもらえないなどの現状に父なりに歯がゆさを感じたらしい。一方で、職に対するこだわりの無い派遣を見下しているようなところもある。

ロスジェネ真っ只中の私も現在デスクワーク(ちなみに前の日記いろいろあって証券資格をとって、証券会社で働いてますはい。)の派遣だが、自分の会社の派遣の待遇を見ているせいか、ずっと正社員になれと言っている。

ウチの親父は高校卒業後、18で関自に入社して、あと2年で定年する。昼夜2交代の勤務で、キツイ仕事ではあったが、それなりに安定していた。

駅から遠い不便な場所ではあるが、家も建てたし、私も大学に行かせてもらった。不満を言いつつも、トヨタの技術力に誇りを持っており、車にはこだわりがあり、かなり頻繁に乗り換えていた。

数年前に横須賀工場が閉鎖になってからは、東富士工場に単身赴任になったが、毎週末横須賀に帰ってきている。自分の父親ながら相当タフだ。

父と同じ工場で働いていても、派遣労働者達は、派遣である以上、父と同じようには生きれない。 持ち家どころか、自分の作った車をローンを組んで買うこともできないし、子供を大学にやることもできない。まあ自分も似たようなもので、父のリソースに依存することで、犯人ほど絶望せずにいられる。皮肉ではあるけれど。

今回の犯行について、樹海に入っても誰にも気づかれず死ぬのは嫌だった。己の存在で社会に爪あとを残したかった。そう思うなら、こんな選択肢にはまりこんでしまった彼の愚かさを呪う。

貧困の問題に対して、5重の排除というものがある。教育、企業、家庭、公的福祉、そして最後が自分自身からの排除だという。 どうしょうもない絶望に追い込まれた人は、自分の不甲斐なさを呪い、自分を追い詰めてしまうという。理由は本当は外にもあるのに。

ほとんどの人が絶望を前に勝手に一人で死んでいるのだ。 絶望の背景を他者に見出すことができたなら、それをなぜ別の手段に訴えられなかったのか。歯がゆくて悔しくて、悲しく憎らしい。ああ、まったくお前はバカだ。バカすぎる。

トヨタと言って思い出す話がある、3月まで一緒に働いていた人がかつて、銀座でホステスをしていたという。 今は足を洗って派遣なのだけど、そのときの顧客にトヨタの幹部がいたそうだ。

銀座で湯水のように金を使い、ある日幹部は彼女にドレスを送ったらしい。ベルサーチの豹柄のダッサイやつ。だけど値段だけはやたらする代物だったそうだ。 高級な銀座では、アニマルプリントは着ないけれどVIP中のVIPなので仕方なく着たそうだ。

ここ数年、大企業幹部の収入は増え、一般労働者の収入は減った。 各地の工場で派遣労働者が買い叩かれるその一方で。 安易な手段に訴えても、嗤う奴は嗤ったまま素通りするのだ。

それからもう一点、ここ数年盛り上がってきた派遣労働をめぐる運動について、非常に悔しい点がある。関東自動車は最初に述べた通り、派遣労働をすべて切ろうとしている。親会社のトヨタそのものがそういう意向である。派遣労働をやめてしまうことで、派遣問題そのものが無きものになってしまう。

無論、国内需要が減ってしまったのも原因だが、コストがかかって組合とかが絡んでウルセー派遣使うなら、海外に移転してしまった方がいいと思われてしまったかもしれない。派遣はなくなるが、日本の雇用そのものが空洞化し、国外に移転する。

派遣がなくなった代わりに、失業者が増えてしまう。プレカリアート運動を密かに応援していた私としては「お前らが余計なこと騒ぐから」と後々言われないか心配でもある。

最後に亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。随分犯人に同情的な話になってしまいました。無論、犯人は許されてはなりません。その点は強調しておきます。会社から近いから秋葉に線香あげに行って来ようかな。


(私のコメント)
テレビなどでは秋葉原無差別殺人事件の加藤容疑者の人物分析が行なわれていますが、単なるオタクが起こした犯罪として処理されてしまうらしい。しかし土浦で起きた事件も無差別殺傷事件であり、その前にも池袋などでも無差別殺傷事件が起きている。大阪の池田小学校の事件も無差別殺人事件と見ていいだろう。

土浦8人殺傷の通り魔犯 典型的秋葉原「ゲームオタ」だった 3月24日

下関通り魔事件との類似点

池袋・通り魔殺傷事件

このように連続して起きる事件に対して、町村官房長官は刃物を規制する考えを持っているようですが、事件の本質が今の政治家には見えないのだろう。秋葉原の事件では車で3人が死んでいるが、車を規制すればいいのだろうか? 刃物も車も規制など出来るものではない。

それよりも事件を起こした犯人達の共通点などを分析して対策を立てていかないと、このような無差別殺人事件が次々起きることだろう。国会議事堂などへの車での突入事件や国会前で腹を切る事件なども多発しているが、国会議員たちはのほほんとして政局のほうに関心が向かってしまっている。

国会敷地で自衛官が自殺未遂 5月8日 

国会前で拳銃自殺 大阪の右翼活動家か 3月5日

霞ヶ関などの官庁街に行くと、あちこちに警察官が警備していますが、特に国会周辺は警備が厳しい。テロなどの警戒で警備しているのでしょうが、それだけ国会も官庁も国民の不平や不満が溜まって来て、いつテロが起きてもおかしくない状況が来ているのだろう。

秋葉原の事件などを分析してみると、トヨタなどの企業グループの生産現場などに大きな問題があるようだ。トヨタなどの世界的な大企業はもはや日本企業とは言えないのかもしれない。工場なども現地の生産体制を整えて現地化が進んでいる。トヨタから見れば日本市場も一つの市場でしかなく、売上げが落ちれば工場を閉鎖してしまう。

昨日も書いたように、日本国内に植民地が出来て派遣社員という奴隷階級が出来て支配層の生活をより豊かにしている。大企業の重役達は業績が上がれば賞与も上がりますます豊かになり、派遣社員は正社員の3分の1の給与で働かせてトヨタの業績は向上する。しかしこれでは客となる下層階級の所得は落ちて車も買えなくなる。

なぜ輸出大企業は業績が伸びても給与を上げず、工員の非正社員化を進めてコストダウンしようとするのだろうか? 短期的な業績は上がるかもしれないが技術の蓄積は進まずにリコールなどを受ける欠陥車が増えてくる。トヨタは特に欠陥車によるリコールが増えてきた。

だからトヨタも派遣社員を止めて期間工に戻そうとした最中に起きたリストラで、加藤容疑者も6月いっぱいで首になることになった。「何かごにょごにょ言ってます」のブログでも書いてあるとおり、派遣では職業モラルも落ち込んで4本締めるボルトも2本締めて手を抜くような事もあったようだ。

秋葉原無差別殺人事件ではトヨタの名前も関東自動車の名前も派遣会社の日研創業の名前も伏せられてニュースにになっていますが、事件とは無関係だから名前を伏せるのだろうか? 家庭内でも問題があったようですが職場のトラブルが事件の引き金になっていることは間違いない。

これは小泉構造改革における2004年の人材派遣法の改正によって製造業にも派遣労働者を使えるようにした。企業からの要求で規制緩和を行なったのでしょうが、従業員のモラルが低下して問題が続出したらしい。キヤノンなども偽装請負労働が問題になって正社員化を進めるようにしたらしいが、これで問題は解決するのだろうか?

キヤノン、偽装請負一掃へ 数百人を正社員に 2006年07月31日 朝日新聞

キヤノンは、年内をめどに請負業者との契約を見直して派遣に切り替えるなど、偽装請負の完全解消をめざした対策に取り組む。8月1日付で内田恒二社長を委員長とする「外部要員管理適正化委員会」を設置する。また、グループ全体で2万人以上いる請負や派遣労働者のうち、数百人を正社員に採用する方針だ。

 御手洗冨士夫会長は日本経団連会長を務める。財界トップ企業の偽装請負解消へ向けた取り組みは、他社にも影響を与えそうだ。

 キヤノングループでは、請負労働者が約1万5000人、派遣労働者は約7500人いる。合計すると、キヤノン本社の正社員約2万2000人に匹敵する規模だ。子会社の大分キヤノン(大分県国東市)では、約千人の正社員に対し、約4000人の請負労働者が働いている。(後略)



(私のコメント)
キヤノンでも請負が15000人で派遣が7500人というのはあまりにも多い数字だ。約半数が非正規雇用であり、このような実態はトヨタやキヤノンだけにはとどまらないのだろう。これで業績回復したというのは従業員の非正規雇用を進めた事によるものであり、小泉構造改革というのは非正規雇用化のことをいうのだ。

このような大手の輸出企業というのは、経団連をみれば分かるようにもはや日本を動かす主軸になっている。このようなグローバル大企業は日本に住み着いた寄生虫であり社長や会長は日本人であっても日本の支配者であり、彼らにとっては従業員は使い捨ての奴隷だ。日本が衰退する事があってもトヨタやキヤノンといった大企業は繁栄していくのだろう。

このような状況が長く続けば、加藤容疑者のような無差別な殺傷を試みるテロが続発するだろう。小泉構造改革は企業への忠誠心を破壊して労使は敵対的な関係となり、正社員対非正社員の対立は労働組合も無力化する。そうなれば日本本来の企業文化も破壊されて、アメリカの製造業のような自滅的破壊が進むのかもしれない。

トヨタの奥田元会長もキヤノンの御手洗会長も、日本人でありながら日本人を奴隷のような低賃金で働かせる支配者達であり、利害は国際金融資本家達と共通している。現代の派遣労働者という奴隷階層は税金だけは搾り取られて、教育も公的な福祉からも排除されて家庭も持てずに、政治家達は彼らを一部の落伍者としてしか見ない。しかしそれは少子化となって現れるが、政治家達は海外から移民を連れてきて働かせようとしている。

このような無差別殺人は次々と起こるだろう





自分を守ってくれるはずの国が、外国人ばかり優遇して、少子化が
進むから外国人を入れろという政治家や経営者は国賊に見えます。


2008年6月10日 火曜日

グローバル化の行き着く先はファシズムか 5月31日 ワイルドインベスターズ ブログ

最近の日本を見ていると、
「これって国が崩壊してゆく過程にあるんだよなあ」
と思うことがあります。

そして日本だけではなく欧米もそういった部分があること、また資本主義が行き詰るとファシズムが台頭してきたという歴史があります。

まあ、それに対する解決策を見つけたわけじゃなくて「イヤなことに気づいちゃった」だけなんですけど(笑)、何かを考える上で参考になるかもしれません。

では、どうぞ!

   ↓↓↓

グローバル化の行き着く先はファシズムか

目次
[1] 売国の理由
[2] グローバル化で日本国内に植民地が出現した!
[3] お互いの言い分
[4] 今のロシアはなぜ強い?
[5] ファシズムの誘惑

★★★★★
[1] 売国の理由

最近特に、日本政府は外国のためにばかり働いているように見えます。

もちろん、資源や市場を確保すると言う意味で、海外に働きかけをすることが悪いとは思いません。しかし日本の場合は国民を守ることよりも、搾り取ることばかりやっています。「投資するのはいいが、リターンがあるようには見えない」のです。

その原因がキックバックやハニートラップなどの工作であればスパイ防止法などで防げるかもしれません。しかし理由は本当にそれだけなのか? というのが今回の問題意識です。

日本国内では「格差」が広がり、「ネットカフェ難民」などが増えているそうです。しかし政治家や大企業は、彼らを助けようとはしないでしょう。助けたって何のメリットもないだろうからです。反対に、生活が苦しい国民は政府や大企業を恨むことになります。

同じ日本人であっても、立場や価値観がまったく違う種類の人間が対立しているわけです。

★★★★★
[2] グローバル化で日本国内に植民地が出現した!

「一億総中流」と言われた時代は、日本人に共通のものがありました。野球と言えば巨人だったり、車と言えばカローラだったり…。しかし今はみんなが同じチームを応援したりすることなどありえません。若者の趣味はドライブ(死語)どころか、車を持っていなかったりします。ライフスタイルも価値観も、昔とはちがって多様化してきました。

そのひとつの原因はグローバル化にともなって日本に階層が出現し、それが固定化しつつあるからなのではないかと思います。

言い方を変えると、
「日本国内に植民地が出現し、支配層と被支配層に分かれつつある」
ということです。

(a) 「一億総中流」時代

         ______
         / 先進国    \ 日米欧
     /−−↓−↑−−\       
    /   搾取 恨み     \
   /                      \
 /                           \
/       発展途上国         \
__________________

(b) 「グローバル化」時代

         ______
         / |   |   | \ 上層(結託)
     /− −↓−↑ −−\       
    /    搾取 恨み     \
   /     |    |      |       \下層(ライバル同士)
 /       |    |      |         \
/   米    | 日  |欧   | 途上国   \
__________________

 

★★★★★
[3] お互いの言い分

(i) 下層

グローバル化の中で、各国の庶民は厳しい競争にさらされます。時給1000円欲しいけれども、外国人の時給300円に負けて雇ってもらえないのです。給料がないのは苦しいですが、もっと苦しいのは業務経験を積めない事です。30歳40歳になってまともな職歴がなんじゃお先真っ暗です。

もちろん結婚もできないし、子供も育てられません。自分を守ってくれるはずの国が、外国人ばかり優遇しているように見えます。少子化が進むから外国人を入れろという政治家や経営者は国賊に見えます。

こいつら、外国からカネをもらって国を売ろうとしているんじゃないか?
日本人が子供を産めないように追い詰めているのはおまえらだろ?

このままでは国が乗っ取られる!
外国人に対する警戒感を強めます。

(ii) 上層

グローバル化が進めば、勝ち負けができるのは仕方がない。
同じ労働力なら時給300円の外国人を雇うでしょ。
会社が潰れたら給料だって出ないんだから。

ニートやネットカフェ難民は自業自得。
努力を放棄した人間が泣き言ばかりで、タカろうとするなよ。
おまえらががんばって消費して子供を産まないから、代わりに外国を開拓するんだよ。外国人を目の敵にするのは醜いぞ。

おまえらの考えは理解できないが、外国の上層部とは理解しあえるよ。国が違っても、価値観や立場は同じだからね。



移民、1000万人受け入れ提言…自民議連案 6月8日 読売新聞

自民党の「外国人材交流推進議員連盟」(会長=中川秀直・元幹事長)がまとめた日本の移民政策に関する提言案が7日、明らかになった。

人口減少社会において国力を伸ばすには、移民を大幅に受け入れる必要があるとし、「日本の総人口の10%(約1000万人)を移民が占める『多民族共生国家』を今後50年間で目指す」と明記した。

 週明けの会合で正式に取りまとめ、福田首相に提案する。

 1000万人規模の移民は、現在、永住資格を持つ一般・特別永住者(87万人)の約12倍にあたる。

 案では、これら移民と共生する「移民国家」の理念などを定めた「移民法」の制定や「移民庁」の設置を提言。地方自治体に外国人住民基本台帳制度を導入し、在日外国人に行政サービスを提供しやすい態勢を整えることなども盛り込んだ。

 入国後10年以上としている永住許可を「7年」に緩和するよう求めたほか、年齢や素行など様々な要件を課している帰化制度も、「原則として入国後10年」で日本国籍を取得できるように改めるべきだとした。



(私のコメント)
日曜日の秋葉原における無差別殺人事件は衝撃的ですが、このような事件はますます増えていくだろう。これは国内において身分差別化が進んで、上流階級と下流階級とがはっきり分かれてきて、国内に奴隷階級が出来てしまったのだ。無差別殺人事件が頻繁に起きるようになったのも奴隷達の反乱なのだ。

ワイルドインベスターズのブログで、日本国内に植民地が出現して支配層と被支配層が出来てしまったのだ。無差別殺人事件を起こした加藤容疑者は被支配層の人間であり派遣社員として不安定な職についていた。

このような被支配層が出来たのは2004年の人材派遣法改正で製造業への派遣が認められるようになったからですが、小泉構造改革は日本国内に派遣社員という奴隷を作る事が目的だったのだ。中川秀直元幹事長はそれでも足りずに、海外から1000万人の労働者を移民させようとしている。

支配層から見れば日本国内の下層民も、海外の下層民も同じ存在であり、奴隷的存在が無ければ上流階級は維持できない。日本の下層民が子供を産まなくなったから海外から奴隷をつれて来ようとするのは支配層からすれば当然の発想ですが、支配層は世界的なネットワークでそれを維持しようとしている。

日本は完全な民主主義国家のはずだったのですが、政治家や官僚や大企業経営者という支配層と、派遣労働者やパート労働者といった奴隷階層に分化が進んでいる。小泉構造改革は社会を階層によって分化させて、上流階層と下流階層の二つに分ける政策だ。日本国民はこのような政策を熱狂的に支持して9・11総選挙で自民党は圧倒的な勝利をした。

マスコミも年収が1000万円以上の上流階層に入るから政治家や官僚や大企業の味方だ。だから小泉改革を支持しようとキャンペーンを張った。彼らには派遣労働者がどんなに悲惨な生活をしているか知ろうともしない。30000人の自殺者が出ようが奴隷が死んだところで彼らには関係がない。外国から新たな移民労働者でいくらでも穴埋めが出来るからだ。

昨日の「株式日記」でも最近は訳の分からない法律が次々作られる事を述べましたが、後期高齢者医療制度も強行採決されて75歳以上の役に立たない老人は入院がしにくくなって早く死ぬように法制度が作られた。支配層は75歳以上になっても金があるから十分な医療が受けられるが、下層の老人は年金や保険料ばかりかかるので早く死んでもらおうと言うのだろう。

ワイルドインベスターブログでも書かれているように、日本国政府は日本国民の生命と財産を守る為にあるはずなのですが、税金を取り立てることしか考えていないようだ。それに対して外国にはやたらと金を配りたがり、外国の留学生は生活費から学費まで援助するのに国内の奨学金はカットするのか? 

今朝のNHKのニュースでも、大企業が中国の理工系の学生を確保する為に研究開発施設を中国に移す事を報じていましたが、大企業は工場ばかりでなく研究所も中国に移すようだ。昨日も書いたようにトヨタや日立の工場は6割を派遣労働者に切り替えて人件費を三分の一にカットした。研究者も安い中国人を使って開発しようというのだろう。

確かに時給が1000円の日本人を使うより、時給が300円の中国人を使ったほうが企業は儲かるだろう。工場も研究所も中国に移すよりも中国人を日本に移民させたほうが合理的かもしれない。福田内閣では外国からの留学生を10万人から30万人に増やすそうですが、大学に行きたくてもいけない日本人の高校生は見捨てるようだ。

支配層から見ればニートやフリーターは自業自得なのであり、努力しないから下層階層から抜け出せないと決め付けている。しかし政治家や官僚や大企業の経営者は世襲化が進んで努力しなくても政治家になれるし、公務員も地方ではコネがないとなれなくなっている。このように見えない階層の壁が出来てしまったのは政治家や経営者が下層奴隷を搾取の対象でしか見ていないからだ。

秋葉原の無差別殺人事件は奴隷の反乱であり、階層が対立関係になればテロが起きるだろう。戦前の五一五事件や二二六事件は時代背景を見ると朝鮮半島や満州などに開発資金をつぎ込みすぎて国内を疲弊させてしまったから起きた事件であり、現代も企業は国内の工場を閉鎖して中国の工場を移転させて国内を疲弊させている。

だから将来において五一五事件や二二六事件のような政治テロがおきるかもしれない。いわば下層階級の反乱が大規模化すればヒトラーのような人物も登場してくるだろう。ワイルドインベスターブログでもファシズムの登場を予想している。


◆ファシズムは今でこそ「偏狭なナショナリズム。外国人排斥。平和の敵」というイメージを持たれていますが、そもそも「階級対立している場合ではない!団結して国を守ろう!」という思想だったのです。

「自国民を守る」という意味では下層民にも優しく、左翼的ですらあります。
ナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)は社会主義です。右翼ではなく左翼です(笑)。しかも選挙によって成立した民主政権です(笑)。
敗戦に疲れたドイツ国民にとって、ヒトラーは国民を守ってくれる強いリーダーに見えたことでしょう。

そういえば、今の日本も戦前に似てきているなと思うことが増えてきました。

 

これはある意味、究極の選択ですよ。

国がなくなるのは首がなくなるのと同じ。
階級を超えて国民(民族)が団結しなければ、国が衰退してしまう。
自己保存の本能は、強いリーダーを求めます。
そうしなければ外国によって支配されてしまうからです。

しかし反面、その強いリーダーが国を破滅に追いやることもありえます。彼らが暴走を始めたとき、庶民が抵抗しても殺されます。貧して鈍した国民はうまく利用され、彼らの利益のために使い捨てられるだけなのかもしれません。

 

資本主義国家はグローバル化によって発展し、行き詰まり、いずれはファシズムに走る---

なんだかイヤな法則に気づいちゃったような気がします(笑)。





小泉総理の構造改革は「75歳以上は早く死ね法案」が象徴的で
さらに非正規雇用を増やし、絶望した派遣社員がテロで復讐する


2008年6月9日 月曜日

国民は改革の痛みが分かって小泉総理を支持したのだろうか?
フジテレビ報道2001より


派遣先でトラブルなし=車の塗装ラインで勤務−加藤容疑者・秋葉原事件 6月9日 時事通信

加藤智大容疑者(25)が派遣社員として働いていた自動車車体製造「関東自動車工業」の橋本直之庶務広報室長(54)は9日、静岡県裾野市内の同社施設で取材に応じ、加藤容疑者について「勤務態度はまじめで、周囲とトラブルを起こすようなこともなかった」と話した。
 加藤容疑者は昨年11月から同社東富士工場の塗装ラインで働いていた。勤務は朝夕の2交代制で、月曜から金曜まで。派遣元の日研総業(東京)とは、工程ごとに派遣を受け入れる契約で、加藤容疑者の契約期限は来年3月までだった。

刺されて倒れた人を救護する通行人 6月9日 毎日新聞
今後もこのようなテロ事件は続発するだろう


小泉「改革」で増える非正規雇用 2006年2月8日(水) 「しんぶん赤旗」

派遣・請負労働者給料は正社員の1/3

 「パート、アルバイト、フリーター、派遣・請負労働などがどんどん増えていることが『格差社会』の根本にある」。佐々木議員は三人に一人が非正規雇用となり、とくに若者の比率が高いことを示しました。(グラフ上)

 液晶テレビの生産で有名な家電メーカー・シャープの三重県亀山工場。小泉首相は昨年一月、視察しています。佐々木議員が、亀山工場に「非正規労働者は何割いるか」と聞いたのに対して、首相は「わかりません」。

 佐々木議員は、昨年八月時点で同工場の労働者三千三百人のうち、六割にあたる二千十六人が、請負中心の非正規労働者だと指摘。「六割というのは非常に高い」とのべ、トヨタ、日立など大企業が非正社員を増やしている実態を示しました。

 非正規労働者の募集の状況はどうなっているのか。駅などにある『フリーペーパー』に載っている派遣や請負の求人広告には「日給九千円」「月収三十三万円以上」などと書いてあります。しかし、実態は違います。トヨタグループの子会社「光洋シーリングテクノ」(徳島市)では、正社員と同じ仕事をしているのに請負労働者の賃金は三分の一。三カ月の短期雇用で、入社以来八年間で二十六回更新している例もあります。しかし七年たっても賃金が一円もあがりません。

佐々木議員が「こういう事態が広がっているという認識があるのか」とただしたのに対し、川崎二郎厚労相は、非正規労働の賃金が「そうじて低いということは認める」とのべました。

企業の違法行為罰則なく野放し

「八割が違反行為をしている無法地帯。罰則がないから野放しになっている」。佐々木議員は派遣・請負業者の違反行為が横行する実態を告発しました。

 労働者派遣法は罰則がなく、悪質な事業者は公表することになっていますが、公表した例は一件もありませんでした。最近やっと二件の免許取り消しをおこなっただけです。職業安定法は罰則がありますが、適用したことは一度もありません。

 佐々木議員は罰則がないこと以外に、違法行為が横行する二つの理由を指摘しました。

 一つは人材業者の売り込み競争です。ある人材派遣・請負会社の内部資料によれば、大手メーカーに対して違法ギリギリの提案をしています。製造業への一年を超える派遣契約は違法ですが、途中で三カ月だけ請負契約にした後でまた派遣に戻すというものです。

 もう一つは受け入れる側の問題です。企業は請負労働者を活用する理由として、「経費が格安なため」「雇用管理の負担が軽減されるため」「雇用調整が容易なため」をあげています(東京労働局・昨年十二月二十七日調査)。

 しかも大企業ほど請負労働者を多く利用しています。昨年九月の厚労省の「派遣労働実態調査」によれば請負労働者がいる事業所は、三十人以上百人未満のところは22%、百人以上五百人未満のところは53%、五百人以上のところは79%です。

 佐々木議員は「こうして大企業の経常利益は近年急速に拡大してバブル期の二倍の水準に達している。その一方で労働者の雇用者報酬は毎年減り続けている(グラフ)。低賃金の非正社員が増えた理由は、このような大企業の雇用政策にあることは明らかではないか」と厳しく指摘しました。

 川崎厚労相は「だんだん正規雇用が増えていくような対策をうっていかなければならない」と答えました。

無法化すすめた政府の規制緩和

 佐々木議員は、正社員から非正社員への置き換えを加速させ労働環境を無法状態化したのが、これまで政府がすすめてきた労働分野の規制緩和だと追及しました。

 〇四年には労働者派遣法の改悪でそれまで禁止されていた製造業への派遣ができるようになり、九九年には民間の有料職業紹介が自由化され、〇三年の労働基準法改悪によって有期雇用の延長が可能となり、契約社員が増加しています。

 佐々木議員は、非正規労働者を増加させ、劣悪な労働条件においてきた原因である労働の規制緩和が、財界の代表が直接のりこんだ政府の「規制改革・民間開放推進会議」ですすめられ、企業の都合のよい仕組みをつくってきたことを批判。「非正規雇用が増えたのは、政府の政策に原因がある」と問いただしました。

 小泉首相は「正社員」が増えてパートが減っているなどとして、「柔軟性をもった労働環境を整備してきたからではないかと評価されている」とのべました。

 これにたいし、佐々木議員は、正社員が増えているという統計のごまかしを指摘し、最新の総務省の労働力調査では正規社員が昨年より減り、派遣、請負・契約社員など非正規社員は過去最高となっていると反論。「規制緩和ばかりをすすめてきた政策の根本的転換をしなければ違法と雇用不安がまん延し、日本の将来が大変なことになる」と厳しく指摘しました。


2006年の骨太の方針で削ってはならない医療費を削ったために
「75歳以上の老人は早く死ね法案」が作られ病院の倒産が相次ぐ


(私のコメント)
最近は自暴自棄になった若者の無差別テロ的な凶悪な事件が相次いで起きるようになりました。このようになる事は小泉内閣の当時から予測が出来たことであり、削るべき公務員の賃金カットや天下り団体の解散などは行なわずに、してはならない福祉予算などを削ってしまった。

要するに小泉内閣の構造改革とは、弱いところの予算は削り、肥大化して実権を持ってしまった行政府組織はますます強大化して、彼らを監視すべき政治家は法案の内容も分からずに強行採決して法案を通してしまう。だから訳の分からない法律が最近は次々と作られています。

2004年には人材派遣法の改正で製造業への派遣が出来るようになり、日立やトヨタといった大メーカーの従業員の多くが派遣社員となり、賃金が正社員の三分の一の賃金で働かされている。昨日、秋葉原で17人を死傷させた加藤容疑者も派遣社員として悲惨な人生を送っていたようだ。

国会議員は当選すれば国民の事などすっかり忘れて、特定の利益団体の族議員となり、彼らの望むような法律ばかりがいつの間にか作られて法案が成立してしまう。規制緩和の名の下に人材派遣法も改正されて、新規に採用される職員の多くが非正規雇用に切り替えられてしまった。

中国が日本の人件費の二十分の一から三十分の一の賃金で雇えるから、日本の製造業はいっせいに中国に工場を移転させてしまいましたが、だから大企業は日本の若年労働者を見捨てたのだ。確かに正社員から非正規雇用に切り替えれば賃金は三分の一に抑えられる。

しかしそれでは非正規雇用者の生活は1人が生活するのに手一杯となり、結婚して子供を作るような環境ではなくなってしまう。日本の経済状態をこのような悲惨な状況にしたのは政府日銀の経済政策がお粗末だったからだ。加藤容疑者も一昔前なら普通の従業員として働いていたのでしょうが、最近では派遣社員としてしか働き口がない。

日本は85年のプラザ合意で大幅な円高を認めましたが、中国はアメリカからの元切り上げ要求に対して5年以上も突っぱね続けている。中国に出来て日本はどうして出来ないのか? 西ドイツはインフレ予防として金利を引き上げてバブルを防ぎましたが、日本はアメリカの圧力で低金利を続けてバブルを発生させてしまった。

日本の政治家は日本国民に対しては強いが、アメリカからの圧力には弱い。だから言われるままに規制緩和や市場開放を行なって日本経済を滅茶苦茶にしてしまった。中国や西ドイツが出来ることをに対して、日本はどうしてアメリカの要求に屈してしまうのか? 現代でも必要もないコメをアメリカから輸入しているがアメリカの言いなりになるしか日本の政治家はないのだろう。それならば日本には政治家は必要がない。

小泉総理も強いアメリカのバックアップで成り立った内閣ですが、そのために何もかもアメリカの言いなりになって規制緩和と市場開放を行なってしまった。農業政策などその典型ですが、外交と防衛をアメリカに丸投げしてしまっている為に自主的な政治が出来ない構造になっているらしい。

加藤容疑者は青森出身であり、両親が借金で苦しみ家出して派遣社員となったらしい。すでに日本は親子二代にわたってバブル崩壊の影響をもろに受けてしまっていますが、ワーキングプアと呼ばれる下層階級が生まれて、底から抜け出せなくなっている。それに対して公務員の子は公務員となり国会議員の子は国会議員となるような階層の固定化が行なわれている。

悲惨な目にあっているのは若年労働者のみならず、最近は年金暮らしの老人層にも歳出カットの波が来て「75歳以上は早く死ね法案」ではわずかな年金からも天引きで健康保険料が支払われるようになった。これも小泉構造改革の政策の一つですが削ってはならない医療政策予算をばっさり削った。

そのために地方の病院が次々と倒産して、医師も次々辞めていって医師がいなくなってしまった。妊産婦も出産で救急車を呼んでも産婦人科医が地方にいなくなってしまった。小泉改革の三方一両損で医療費が削られて病院も医師も経営が成り立たなくなってしまったのだ。昨日のフジの「報道2001」でも医療問題をやっていましたが、日本は非常に悲惨な事になっている。

「株式日記」のホームページにも書いているように、小泉不況で2010年代には日本は滅亡しているかもしれない。小泉元総理はマスコミからの取材も受けずに逃げ回っていますが、国民の人気は相変わらず高いようだ。安倍総理や福田総理は小泉内閣の後始末をやらされて人気はさんざんですが、独裁者的な総理大臣を日本国民は求めているからだろうか?

世の中が閉塞感に閉ざされていると鬱屈した日本人の心は病んできて、昨日の秋葉原で起きたような無差別テロが起こるようになったのだろう。戦前のような五一五事件や二二六事件のような政治テロはまだ起きてはいませんが、鬱屈した心が内に向かえば自殺につながり、小泉内閣では自殺者が毎年3万人に定着している。やがては外に向かって無差別テロが起きるようになり、やがては政治テロにまで行くかも知れない。

今回の無差別殺人事件で分かるように、車などを使えば人混みに突っ込めば5,6人は殺せるだろう。アメリカのように銃乱射でもすれば30人くらいは殺せる。これでは警官をいくら増やしても予防は出来ない。自殺大国から無差別殺人大国となり、これを放置すれば政治テロにまで発展するかもしれない。経済失政が時代の背景としてあるだけに、若者が正社員として働いて人生設計が出来るようになれば、収まるのでしょうが、日本の政治家は内政は官僚に任せて外交と防衛はアメリカに任せて無責任そのものだ。

大東亜戦争も結局は政治を軍人に丸投げしてしまって、軍人は複雑な国際政治が分からないからバカ正直に戦争をはじめてしまった。内政の矛盾を戦争で片付けたようなものですが、これからの日本も同じような道をたどるのかもしれない。いわば日本という国が無差別殺人をするようなものであり、アメリカの言いなりになっているから内政に矛盾が生じておかしくなってしまうのだ。

要するに日本の政治家は外交を知らないのですが、誠意を尽くせば相手も分かると言う思い込みがあるのだろう。しかしそれは外交ではない。相手が無理な要求を突きつけてきたら切り返すのが外交ですが、国益を犠牲にしてでも相手に妥協して国内にその矛盾を押し付けてしまう。小泉構造改革もアメリカの要求を反映したものであり、後期高齢者医療制度も、健康保険制度を解体してアメリカの保険会社がその市場を狙っているのだ。




ECBの利上げは第二のブラックマンデーを呼びかねない。
はたして週明けの6月9日の株式相場はどうなるのだろうか?


2008年6月8日 日曜日

ECB総裁利上げ示唆、ドル安・ユーロ高 6月6日 ダウ・ジョーンズ

ニューヨーク(ダウ・ジョーンズ)5日の外国為替市場では、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁がインフレを抑制するためには来月に利上げする可能性もあるとしたことから、ドルはユーロに対して大きく下落した。

トリシェ総裁は、ECBは今月の理事会でも4.00%の政策金利を据え置いたが、食料品と原油価格が大幅に上昇するなかで、インフレ圧力は当初の見通しよりも長引くと予想されるため、7月の理事会では利上げする可能性があると語った。「(利上げが確実である)とは言わないが、その可能性があるとは言える」とトリシェ総裁は語った。

「インフレに関するトリシェ総裁の発言は、1カ月前よりも一段とタカ派的になったようだ。7月は利上げの確率が高いことを、トリシェ総裁は示唆したのだと思う」とBNPパリバのエコノミスト、ポール・モーティマーリー氏は語った。

ユーロは5日、1.5599ドルまで急上昇し、日中安値よりも0.02ドル以上上昇したうえに、4月に記録した過去最高値の1.6020ドルまであと0.04セント程度の水準に達した。ユーロは5日、円に対しても上昇し、今年の最高値と同水準をつけた。

トリシェ総裁の発言とユーロの急上昇は、為替市場にとって意外な展開だった。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が今週3日の講演で米国のインフレに懸念を示し、ドル安がインフレの一因と思われると発言したことを受け、投資家はドル買いに動いていた。

しかし、物価上昇圧力と闘うために来月利上げする可能性があるとトリシェ総裁が明言したことから、バーナンキ議長のインフレ懸念に対する口先介入について、中身に欠ける発言として投資家は考え始めた。FRBが早期に利上げする姿勢にあるかどうかについては、投資家は懐疑的だ。

厳しい状況にある米国経済の待望の回復を利上げが遅らせるおそれがあるため、FRBは今後数回の政策決定会合では、単に政策金利を据え置く公算が大きい。

「バーナンキ議長が口ばかりでトリシェ総裁は行動するならば、為替市場で行動が言葉に勝ると考えるのは当然だ」とRBSグローバル・バンキング&マーケットのチーフ国際ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は語った。

ドルは5日、ユーロに対して下落したが、米国株式市場の反発上昇を背景として、円に対して力強く上昇した。このため、リスクや高金利通貨に対する投資家の需要が回復し、低金利の円に対する安全逃避先としての買い需要が消え去り、円は全般的に急落した。

ドルは、2月末以来の高水準106円44銭まで上昇したが、その後は上げ幅の一部を解消した。


9.バブル発生の原因(三) ブラックマンデーとバブル景気

1987年10月19日の月曜日、ニューヨーク株式市場が過去最大の下落に見舞われました。当時2200ドル台だったNYダウ工業株平均は、10月19日の1日だけで-508ドル、率にして-22.6%の下げを演じたのです。1万ドルを超えている現在ならば1日で-2200ドルの値幅に相当するほどの暴落です。

これをきっかけに世界中の株式市場が一斉に急落し、日本でも10月20日(火)には日経平均株価が-3836円(-14.9%)の下げ幅を記録しました。この時の暴落によって世界全体の株式市場がこうむった損失額は1.4兆ドルにも達したとされています。これが歴史に名を残す「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」です。

ブラックマンデーがなぜ起こったのか、さまざまな解説が試みられています。直接的には株価が下落した時に損失を限定するプログラム売買が一斉に作動したとされていますが、それは結果であって原因ではありません。真の原因はやはりアメリカの双子の赤字にたどりつきます。

プラザ合意からルーブル合意を経て、アメリカは先進国と協調して不均衡の是正(双子の赤字の解消)のために努力を続けてきました。しかしその試みはすぐに具体的な成果をもたらすというものではありません。特に1987年はアメリカも景気がよかったために、ドル安で輸出は増えたのですが輸入も拡大してしまい、貿易赤字はなかなか減少しません。1987年のアメリカの貿易赤字は▲1703億ドルと史上最高額を更新し、経常収支も▲1540億ドルの赤字を記録しました。1987年末のアメリカの対外純債務額は▲3682億ドルに達しています。

1987年は先進国で協調的に金利が引き下げられた最後の年です。1月は西ドイツが公定歩合を3.5%から3.0%に引き下げ、2月には日本が5回目の公定歩合引き下げ(3.0%から2.5%)を行っています。しかし肝心のアメリカでは、ドル安を背景に再びインフレ懸念が広がるようになり、4月ごろから長期金利が上昇し始めました。

この年の8月11日にポール・ボルカー氏に代わって、FRBの新議長にアラン・グリンスパン氏が就任しました。グリンスパン新議長はボルカー前議長の採ったインフレ抑制のための引き締め政策を受け継ぐことを表明し、実際に就任から半月後の9月4日には、3年5カ月ぶりの公定歩合引き上げ(5.5%から6.0%)を実施しています。

アメリカの利上げから1カ月が経った1987年10月14日、8月の貿易収支額が発表され▲156億ドルを記録しました。この数字はマーケットの予想を大きく上回っており、世界中がドルの下落と金利上昇を再び強く懸念する事態となりました。折りしもこの時は、日本をはじめ他の先進国もアメリカと似たような状況にあり、どの国もそれまでの金融緩和政策を変更して金利引き上げを検討し始めています。そしてこの時期に、インフレに最も神経質な西ドイツが短期金利の引き上げに踏み切ったために、それがきっかけでルーブル合意の政策協調の枠組みにきしみが生じたとの憶測を招いて、ブラックマンデーという世界的な株価暴落につながったのです。

ブラックマンデーの直後、FRBは市場に十分な資金を供給することと宣言して、比較的短期間に株式市場の混乱を収めることに成功しました。金利引き上げを検討していた西ドイツも、ブラックマンデーが発生したことによって利上げを見送り、87年12月4日には再び公定歩合の追加的な引き下げ(0.5%)を行っています(西ドイツの利上げは翌1988年6月に実施されました)。

しかし日本は最大の経常収支黒字国でもあり、アメリカ議会からの批判の矢面に立たされていたこともあって、金融引き締めへの転換が先進国の間では最も遅れました。日銀は1989年5月末になってようやく公定歩合を0.75%引き上げるのですが、これは西ドイツの利上げから1年近くが経過しています。(後略)



(私のコメント)
世界経済はインフレと金融危機の板ばさみなっている状況ですが、日本はデフレ経済に苦しみ超低金利で金余りだ。政府日銀の金融財政政策がおかしいからですが、日本国内で投資が行なわれるような政策が行なわれればデフレも解消するし超低金利も解消するはずだ。

このように日本は欧米とは異なる経済状況なのですが、ECBのトリシエ総裁がインフレに対する政策を重視すると言うことでユーロが値上がりしてドルが下がった。そのドルに対しても円はさらに下がって106円台になった。石油も上がる、穀物も上がる状況においては通貨が安くなるのは好ましくはない。

最近の円はドルと連動して動くようになっていますが、アメリカと中国との関係を考えれば円がドルとドルにリンクされた元と連動するのは当然なのだろう。しかしそれは日本が超低金利で固定されていることの証明であり、最近の石油や穀物の高騰で金利の上昇観測が上がってきている。

1970年代に第一次、二次のオイルショックがあったわけですが、現代は第三次オイルショックを迎えている。石油は1バレル139ドルまで値上がりしていますが、ドル安で投機マネーがアメリカから逃げ出しているからだ。ECBが利上げをすればFRBも利上げを迫られるだろう。

このような状況を見ると、1987年のブラックマンデーの時のような状況が思い出されますが、当時の西ドイツはインフレを恐れて利上げを強行した事からニューヨーク株式が22,6%も暴落してしまった。当時の西ドイツと現代のECBを置き換えれば、ECBの利上げは第二のブラックマンデーを呼びかねない。はたして週明けの6月9日の株式相場はどうなるのだろうか?


<NY株>急落、394ドル安 1年3カ月ぶりの下げ幅 6月7日 毎日新聞

【ワシントン斉藤信宏】6日のニューヨーク株式市場は、米景気の先行きに対する懸念が再燃したことなどを受けて急落、ダウ工業株30種平均は一時、前日終値比412.39ドル安の1万2192.06ドルまで値を下げた。終値でも同394.64ドル安の1万2209.81ドルと、昨年2月末以来、約1年3カ月ぶりの下げ幅を記録。3月19日以来、約2カ月半ぶりの安値で取引を終えた。ハイテク銘柄主体のナスダック総合指数も大幅反落、終値は同75.38ポイント安の2474.56だった。

 米失業率の大幅悪化に加え、原油高が個人消費や企業業績に悪影響を及ぼすとの懸念が広がり、幅広い銘柄で売り注文が膨らんだ。

 また、ニューヨーク外国為替市場では、米株価の急落を受けて円買いドル売りが進み、午後5時時点の円相場は、前日比1円03銭円高・ドル安の1ドル=104円86〜96銭で大方の取引を終えた。米景気の後退懸念から株価が下がり、ドル売りと原油高の要因になるという悪循環が続き、米市場は終日大荒れとなった。


(私のコメント)
このような状況から見ればECBのトリシエ総裁の発言は、アメリカに対する第二のブラックマンデーへの引き金になりかねない。87年のブラックマンデーはプラザ合意以来の協調体制が崩れた事に対する市場の狼狽売りが原因ですが、ECBが本当に金利を上げれば第二次ブラックマンデーがやってくるかもしれない。

アメリカのFRBは、金利を下げて小切手をばら撒いて無制限の資金供給して金融危機に対して綻びをつくろっていますが、ECBが金利を引き上げればドルやNY株式に対して大きな影響が出るだろう。しかしEUにしても中央銀行が無制限の資金供給して金融市場を支えていますが、そんなことを続ければEUからも資金は逃げていってしまう。だからECBは金利を上げざるを得なくなる。

日本が0%に近い超低金利なのも、日本の円に対する信任がそれだけ強いからであり、日本は世界に対して資金供給国となっている。もしこのような状況で日本が金利を上げれば、みたび世界同時株安になるだろう。しかし「バブル発生の原因」でも書かれているように、日本は西ドイツのような利上げが出来ずにバブルを発生させてしまって1000兆円以上もの資産損失を招きましたが、アメリカの圧力を撥ね退けてでもインフレ予防で利上げをすべきだったのだ。

ブラックマンデーはプログラム売りなどのテクニカルな原因もあったのですが、アメリカは世界中から金をかき集めて国内で使いまくる体質は当時も今も変わりがない。アメリカは基軸通貨の特権を生かして、紙幣を印刷しまくり、海外に国債を買わせては自国の消費経済を賄ってきた。外国が金を返せと言われれば紙幣を印刷して返せばいいからだ。

だからアメリカは金融財政政策にルーズになりがちであり、EUはこれに対して苦々しく思っている。だからEUはユーロを作ってドルに代わる基軸通貨になろうと意欲満々ですが、いよいよEUはアメリカに対して挑戦状を叩きつけるのだろうか? ECBのトリシエ総裁の発言は意味深なのですが、アメリカのドルが暴落して株もクラッシュすればいよいよドルの単独基軸通貨の時代は終わるのかもしれない。




銀行マン、ついでに監督機関もそうだが、彼等が最悪の時は終わった、
などと言う時は、眉に唾して聞くが良いのである。信用危機はこれからだ


2008年6月7日 土曜日

NHK−BS1「地球特派員2008」より左より藤巻健史 金子勝 江上剛

日本の銀行経営者は資金調達も出来ずに右往左往していたが、アメリカの
銀行経営者は自分で資金調達してきてアレンジしたと話す江上氏

シティグループやメリルリンチはさらに大きな増資を求める可能性がある
と話す、大手金融機関と政府系ファンドの橋渡しをした弁護士の話。


油断するな!信用危機は未だそこに…  5月30日 テレグラフ 今日の覚書

JPモルガンのジェイミー・ダイモンやシティグループ会長のウィン・ビショフ卿から、BoE副総裁のジョン・ギーヴ卿まで、金融業界の錚々たる面々曰く、最悪の時は過ぎ去った、とのこと。 勿論彼等が言っているのは、経済への後遺症というよりも、信用危機そのものである。

そして確かに若干の希望の兆しはある。 銀行間金利はなんとなく安定した。 金融機関は損害を受けた証券の評価損を数十億相当発表し終え、ビジネスを支援するために新規資本を調達している。

この状況は、更に多くの銀行が救済されなければならなくなる可能性を減らすだろう。 また、資金を融資し経済の歯車に潤滑油を与え続けられるようにする可能性を増やすだろう。

確かに、英国銀行協会の最新データによれば、4月は企業融資が堅調に増加し、住宅価格の下落にも拘らず、モーゲージ貸付も増え続けたようだ。

だが、全ての悪材料が出揃った、と誰もが楽観的だというわけではない。 私が言っている悪いニュースとはモーゲージのデフォルト率や、小売業売上の軟調ではない(勿論これは更に悪化するだろうが)。 金融危機の経済コストの全容は明らかになりつつあるが、これはかなりわかり易いものだ。

これは市場に影響をもたらすが、昨年のサブプライム危機によって引き起こされたような、大規模なショックはシステムにもたらさないのが普通だ。

しかし、未だ更なる性質の悪いサブプライム・サプライズが出て来る可能性がある…つまり未だ我々は金融の嵐をやり過ごしたのではなく、その目の真っ只中にいるかもしれないのだ。 信用危機はアメリカのサブプライム・モーゲージ問題によって引き起こされたが、勢い付いたのは、銀行がこれやその他の債権をパッケージし直して安全なはずの証券として再販したからだ。 その後、金融システム全体の莫大なレバレッジの結果、当該市場の破綻のインパクトは倍増された。

今問題なのは、近年金融市場を悩ませている他の猛毒性かもしれないシロモノが、弾けそうかどうかということだ。 ジョーズ映画っぽい。海は(かなり)凪いでいる。我々は水中にサメが潜んでいることを知っているが、知らなければサメは飛び上がって足を食い千切るだろう。 どっちにしろ飛び上がったら食い千切られるが…。

最初の、そして一番怖くないサメはほぼ同じである。 つまり、銀行が既に件の証券で出してしまった多額の評価損も、十分ではないだろうということだ。 資産の価値が下ったら白状する義務を課すマーク・トゥ・マーケット会計規則に励まされて、殆どのアナリストは大手銀行はもう自分達の損失に現実的な見解を抱いている、と思っているようだが、現実はこんなところかもしれない。

保険会社やもう少し小型の銀行の場合は、話は別かもしれない。 本当に怖いのは、多くの金融機関が詳しい情報公開をしたにも拘らず、これらの資産が複雑怪奇過ぎて実態はほとんどわかってませんでした、という事態だ。

二匹目のサメはレバレッジ・ローンだ。 Dealogicによれば、その額は昨年は記録的な$1.8兆に上ったとのことである。 殆どはプライベート・エクイティ・グループの買収に使われたが、景気が後退する中で、今度は買収した企業がローンの金利を払うに十分な稼ぎをしてくれなければならない。 これらの企業の多くが背負わされた多額の借金の負担を思えば、かなりの数が沈没する可能性は、実はかなり高い。

このサメの方が実態ほど恐ろしくない理由は、恐ろしいことにならないからというのではなく、企業が資金難に突っ込む時には事態はがかなりゆっくりと恐ろしいことになる傾向があるので、ショック要素が緩和されるからかもしれない。

三匹目のサメはCDS市場だ。 企業破綻を保証をする民間市場である。私が今週CSFI(金融イノヴェーション研究センター)主催のエコノミストや金融家の集まりで発見したように、水の不思議な視覚効果で、巨大サメが本当にいるのかどうか、実にわかり辛いのだ。

『信用危機のドミノ』という主題で演説したアルケミー・パートナーズを設立したプライベート・エクイティ企業家ジョン・モールトンは、CDS市場を「恐ろしい円の繋がり」と評した。 これは「これはCDSの死のスパイラルだ。このゲームには恐ろしい数のそれが参加している」という、彼が財務省特別委員会で今月先に出したコメントの繰り返しだ。 他の者はもう少し楽天的だった。

ISDA(国際スワップ&デリバティブ協会)によれば、2007年末の未償還CDSの額は前年比+81%の$62兆だったとのこと。 だがISDAは、純リスク総額は$1兆にも満たない、とする最近のフィッチの格付調査を取り上げて、市場の実質額は遥かに小さいのだとを熱心に指摘した。

これは契約が相殺可能(過去デフォルトが起こった時に効果的に機能する様を見せてきたやり方)だからかもしれない。 市場の懸念対策の中、投資銀行のグループが昨日、これらの契約の中央決済制度(契約は払い戻される、ということを保証する本質的にかなり退屈な調査)を設立することに合意した。

一方、この市場にある本物の危機が、金融機関の間に更に深刻な苦境を引き起こすかもしれない、という可能性は少なくとも存在する。 モールトン氏が見取ったように「銀行は明らかに自分達で手に負えないものを扱っている」のだ。 興味深い逆「狼少年」物語だが、今では銀行が非常に複雑な金融市場は何のリスクも課さないよ、と言っても殆ど信じられない。

CSFI会議の或るスピーカーは、金融ジャーナリストはいつも酷く悲観的だと指摘した。 その通りである。 悪いニュースの方が良い記事になるから、というのがその理由の一部である。 それから、殆どのジャーナリストがかなり疑り深い、というのも理由の一部だ。 一般的に思われていることとは逆に、これは我々が単に愚痴の多い連中だからというのではなく、長く時には厳しい経験にも拘らず、ビジネス・ジャーナリストは銀行マンが都合の言いようにしか語らないと学んでいるからだ。

まあ、考えてみれば、彼らはそうするのが仕事なのだ。あんたたちの資産はジャンクの山だよ、などと警告したところで、株主には何の役にも立たないだろう。というわけで、銀行マン、ついでに監督機関もそうだが、彼等が最悪の時は終わった、などと言う時は、悲観主義者のジャーナリストよろしく、眉に唾して聞くが良いのである。

最低でも1兆ドルを上回る損失規模になると話すルービニ教授
日本のバブルに対して講釈して回ったが我々は奢っていたという。

金融資本主義で皆が浮かれていたのがサブプライム問題の性格だ
金融に対する信用を失ってしまったのが大きな問題だと話す西村教授


(私のコメント)
NHKのBS1で「地球特派員2008」でアメリカのサブプライム問題を放送していましたが、実際に取材した江上剛氏によれば問題はまだまだこれからのようだ。大手の銀行が開けた穴はまだまだ埋まっていなくて、シティと政府系ファンドの仲介をしたコーエン弁護士によればシティもメリルリンチも増資を必要とするようだ。

欧米の金融界と言うのはジャングルのようなもので、英国のテレグラフ紙の記事によれば金融は落ち着いたように見れるが、信用危機の本質問題は一向に片付いてはいない。日本のバブル崩壊も91年に崩壊しても96年頃までは一部の信用組合が潰れただけで武村大蔵大臣も二信組で終わったと答えていた位だ。

おそらく大蔵省当局も日本の大手の銀行が抱えている不良債権を正確に掴んでいなかったのだろう。銀行自身も飛ばしなどで不良債権を隠していたからだ。日本の不良債権は土地や不動産などで実態の把握が難しい面があり、アメリカのような債券だと市場取引などで価格がでるから、大手銀行が開けた穴は誤魔化しようが無く、すぐに手を打つ必要があった。

債券市場の混乱による金融危機はひとまず落ち着きましたが、売買が出来ない債券というのはどんな優良債券でも一番最低ランクの債券と同じだ。そして不動産の下落は去年から始まったばかりであり、資産担保証券はどんどん劣化してきてこれから二年くらいは劣化を続けるだろう。

ブッシュ政権は小切手をばら撒いて景気に梃入れしていますが、庶民がモーゲージローンであけた穴は住宅市場が底を打って上げ始めないと目処がつかない。今までは不動産の値上がりと消費が相乗効果で上げてきましたが、これからは相乗効果で不況に突入せざるを得ないだろう。

金融パニックというのは一つの銀行が破綻すると将棋倒し的にパニックが広がっていく現象ですが、ベアスターンが破綻してもJPモルガンが破格の安さで買収して破局を抑えましたが、シティやメリルリンチが破綻した場合何処が引き取るのだろうか。あるいは公的資金で救済するのだろうか。

ヘッジファンドは高利回りでファンドを運用しなければならないから、レバレッジを効かせて運用している。上手く運用している時はいいが歯車が逆転するとあっという間に元本割れして巨額な負債が残る。その穴を埋めるためにヘッジファンドはより大きな賭けに出ているが、それが石油や穀物市場だ。

日本のバブル崩壊では株と土地のバブルが崩壊して、その損失の穴を埋められるような新たなバブルは無かった。2000年のITバブルが救いとなりましたが、私もITバブルでは200万ほど株で儲けることができたが、財務省は証券税制をますます強化して株式市場は火の消えたようになってしまった。

昔から株の損は株で取り返せといいますが、小泉内閣が出来て私は株式投資から撤退した。財政再建を優先して景気対策は打たれなくなってしまったからだ。大阪のような地方とは違って政府や日銀には通貨発行権があり、500円硬貨などは財務省造幣局が通貨を発行している。ならば10万円金貨や1万円銀貨などを発行して公務員の給料を硬貨で支払ったらどうだろう。

国家公務員にもにも三枚か四枚の10万円金貨で支払えば国債を発行する必要はない。硬貨の裏を見れば日本国と書かれているように日銀が発行するものではなく日本政府が通貨を発行しているのだ。
しかし小泉内閣は財政再建を最優先しているが、アメリカ政府は財政赤字も経常赤字も関係なくイラク戦争を始めたり小切手をばら撒いて景気対策をしている。

だから日本のような「失われた15年」ということはないだろうが、アメリカの銀行経営者も財務大臣もFRB議長もやることが素早い。それに比べると日本の政治家は役人任せで政治決断ができなくて、財務省のバカ役人は増税で財政の再建をしようとしている。増税というのは国民から金を巻き上げる事でありこれでは景気が良くなるわけがない。

アメリカの金融危機は大手の金融機関は比較的実態は掴みやすいが、ヘッジファンドの実態がまるで分からない。デェリバティブやレバレッジを効かせた投機などに手を出していたから、かなり闇は深いと思われるのですが、政府系ファンドもシティなどへの出資が失敗したように上手くはいっていないようだ。当面は石油などの投機で凌ぐのでしょうがそれが終わればヘッジファンドの破綻が表面化するだろう。

しかし、ヘッジファンドが破綻して困るのはファンドマネージャーではなく出資した投資家なのであり、日本からもかなりの額がファンドに金が渡っている。だから泣きを見るのは投資家でありファンドマネージャーは失敗しても首になるだけだ。結局は日本の投資家は投資も外人任せのようだから、日本の経済は良くならないのだ。


主役は日本の投資家・商品市場に資金流入〜ピーター・クラーク英マンCEOに聞く 6月5日 木走日記

原油や農産物など国際商品市場に投資マネーが流れ込み、相場高に弾みがついている。商品先物運用を得意とするヘッジファンド最王手、英マン・グループのピーター・クラーク最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞に「日本の個人マネーが運用資産拡大のけん引役だ」と述べ、日本の投資資金が大量に商品市場に流れ込んでいることを明らかにした。長期的に商品相場高は続くとの見方も示した。

−−運用資金が五月末で785億ドル(約8兆円)と一年前に比べて二割強増えた。

 「マネー流入の主役はいまや日本の個人投資家だ。個人からの預かり資産430億ドルのうち日本だけで24%を占める。国別では米国や欧州各国を上回り最大だ。日本は超低金利が続き、分散投資のニーズが強い。元本保証型などリスクを抑えた商品が売れ筋だ」

−−株式や債権、商品先物市場などに分散投資する主力ファンドの前期の運用成績が三割超のプラスとなった。

「相場の流れに追随する運用手法なので、円やユーロ、原油や金属など値上がりした相場の持ち高を高めたのが功を奏した。株式相場は急落したが、商品相場は連動性が低いので、分散投資すれば特定の市場の影響は受けにくい」

−−先物ファンドが商品相場高に拍車をかけている

「短期的には相場の流れを加速させる要因になるかも知れないが、長い目でみれば金融や商品市場の取引量を増やし、流動性を高める役割を果たす。例えば今は商品相場の上昇要因だが、相場が下落すれば売り(ショート)が膨らむはずだ」

「短期的には投資マネーが相場を振幅させるかもしれないが、方向性を決めるのはあくまで実体経済だ。エネルギー相場でいえば、中国の台頭で需要が増える一方、供給体制が追いつかず、これが歴史的な高値要因となっている。需給が逼迫(ひっぱく)する状況は改善するとは考えにくく、長期的に国際商品相場全体に上昇が続くだろう」

(聞き手はロンドン=田村篤士)

日本経済新聞2008年6月4日 経済2面より





資本金10億円以上の企業につとめるくらいなら、学校で清掃職員に
なったほうが遥かに高給ですので、サラリーマンなんかやめましょう


2008年6月6日 金曜日

大阪府職員の甘えた考え。手取り34.5万円は薄給 6月4日 ライブドアニュース

市民で作るインターネット新聞「JANJAN」に、大阪の中学校に勤める吉田みえこさんの記事が掲載されていました。タイトルは『橋下知事へ「府職員も大阪府民やで!人件費カットで誰が笑えるねん!ほんまに大阪がよくなること考えて行動してや!」』。

 記事の内容ですが、知事の給与が145万円、それに対して私の手取りは34.5万円と少ない。とても贅沢な暮らしなんてできない。大型プロジェクト失敗のつけを人件費の削減で解消しようというのは筋違いだ、と訴えられています。もうあきれかえるしかありません。

 手取り34.5万円。この額は私のように民間で働いている庶民からすると、とてつもなく羨ましい額です。手当などを含めると年収は額面で700万円にはなるでしょうか。しかも、これでリストラの心配はありません。対して民間では平均年収400万円、リストラはもちろんありますし、会社が倒産すればそこでおしまいです。

 大阪府は今、倒産しようとしています。しかし、職員は人件費の削減に反対です。私はそこに「甘え」があると感じています。――自治体は倒産することはない。この甘えが自分たちの保身しか考えない今の府職員たちを作り上げています。

 給料が不満ならやめてしまえばいいのです。どうぞ転職して下さい。あなたに手取り34.5万以上の能力があるのであれば、民間は喜んでその額を支払います。だから、どうぞ退職して下さい。大阪府は沈もうとしている船です。その船の乗員が、水を汲み出しもせずに自分たちを助けろとばかり叫んでいたら船はどうなるでしょうか?

 そんな簡単なことも分からず、声高に給料やる気待遇と叫ぶ大阪府の職員たち。目先の金にばかりとらわれて、全体が見えていません。今、少しの削減を飲むか、それとも3年後の夕張市のような状態を飲むか。あなたたちはその選択を迫られています。



公務員は薄給なのかどうかについて考える。 6月6日 palー9999の日記

3,年収700万円くらいだと、平均的な大阪の公務員の給与よりも低い。

多分だけど、今回の件の「手取り34.5万円は薄給」というのは、どうやら、ここが問題なのではなかろか。つまり、平均的な大阪の公務員の給与よりも、例の記事の人は、給料もらえてないのである。

だから、この点においていえば、吉田みえこさんは、平均的な大阪公務員よりも給料もらえていないわけであり、ひょっとしたら、そこに憤慨しているのかもしれない。

ちなみに、

地方公務員では、職能的にはレベルの低い仕事でも高給を保証されている自治体が少なくありません。雑誌「プレジデント(2006年11/13号)」によると、学校給食員の平均年収が619万円、清掃職員が796万円と、にわかに信じがたい数字が並べられています。

このカラクリは「特殊勤務手当」なる、別枠の手当てが加算されることにあります。本来は「著しく危険・不快・不健康又は困難な業務」について支払われるというのが特殊勤務手当の定義ですが、実際には学校給食員など、どうみても「特殊じゃないだろ!」と思われる仕事にまで支払われていたりもします(ちなみに給食員は月収が6%上乗せ)。

公務員の平均年収

なんだそーだ。大阪のデータと比較すると、大阪の「飲食店・宿泊業」の年間給与は、281万円で、他の職種と比較するとぶっちぎりで低い。まぁ、なんでこうなのかって理由はしらん。

これだけ明白な違いがある以上、飲食店につとめているような女性は、率先して給食のおばちゃんにでもなるべきじゃないかと思われる。みなさん、頑張って、給食のおばちゃんを目指しましょう。美味しいご飯がつくって、子ども達を笑顔にしてあげてください。

国家の規定で、「著しく危険・不快・不健康又は困難な業務」に、給食作りはなっているようですんで。

3Kの仕事なんだから、給料高くて当然ですよね。民間と比較しても、ずっと危険なんです。命がけなんです。昼ご飯をくすねにくる悪ガキどもから、大切な食料を守る命がけの仕事ですから。

というわけで、僕が皆さんに言えるのは、高卒の女性は、OLなんて目指さず、給食のおばちゃんか、学校の清掃員を目指しましょう。特に、愛知、東京、大阪は狙い目です。給料高いですからね。平均700万円程度の薄給ですけどね。

結論をいうと

橋下知事へ「府職員も大阪府民やで!人件費カットで誰が笑えるねん!ほんまに大阪がよくなること考えて行動してや!」

の吉田みえこさんは、どうやら教員のようです。皆さん、教員ですよ?身を粉にして、悪ガキどもの教育にあたっているんです。

そんな女性が、大阪府の学校給食員や、清掃職員よりも給料低いんです。年齢と仕事の質を考えても、公務員基準でいえば、年間800万円くらい貰えて妥当でしょう。

もちろん、民間との比較なんてしませんよ。民間と公務の比較なんて、定規の違うところではかったっていけませんからね。民間の二倍くらいもらえて当然なんです。

だって、お国が、学校給食員や清掃職員を「著しく危険・不快・不健康又は困難な業務」と定めるような業務なんですから。これより、教師のほうがはるかに危険かつ不快かつ不健康で困難な業務を行っているなんて、馬鹿でもわかるじゃないですか。

というわけで、僕は、橋本知事に対して、「より著しく危険・不快・不健康又は困難な業務」を行っている上に、物価が高い大阪市の教師の人が、年収700万円しかもらえないのは、公務員的にみて、著しく不公平だと言わざるを得ませんので、彼女の給与を800万円程度まであげることを、ここに進言させて頂きたいと思います。

それから、皆さん、資本金10億円以上の企業につとめるくらいなら、学校で清掃職員にでもなったほうが遥かに高給ですので、サラリーマンなんかさっさとやめて、学校の清掃に職替えすることを強くお勧めいたします。

待遇がよく、物価がやすく、家賃が安い地方の公務員は特にお勧めいたします。

塾の講師になんてなっちゃ駄目ですよ。皆さん、ちゃんと教師になりましょう。給料が二倍くらいいいですから。

飲食店で働いちゃ駄目ですよ。ちゃんと給食のおばちゃんになりましょう。給料が3倍くらいいいですからね。

民間の清掃員になっちゃ駄目ですよ。ちゃんと学校の清掃員になりましょう。給料が5倍くらい違いまるからね。



(私のコメント)
今や国や地方の財政は火の車状態なのですが、公務員の人件費に手をつけようという動きは大阪府の橋下知事しか見られないのはなぜなのだろう。東京都の石原知事も5%の人件費のカットや人員の削減で黒字になりましたが、これは例外的なものだろう。

財務省などは消費税の増税で財政の再建を目指していますが、いま消費税を上げればそれだけ消費支出が減って税収が落ちるのが分からないのだろうか? 税金はあるレベルを超えるといくら税率を上げても税収が伸びなくなる。会社倒産や失業が増えれば国や地方の支出は増える一方になりますが、税収は無くなるからだ。

だから税収を伸ばそうと思ったら景気を回復させるしかないのですが、国会で審議されるのは消費税の増税ばかりだ。41兆円もの国や地方の公務員の人件費が財政の負担となり、減税などの景気刺激対策もとれなくなっている。

大阪府は5兆円もの借金を抱えて火の車状態ですが、膨れ上がった無駄な事業を止めて大阪府職員の人件費のカットに取り組まないと財政再建は出来ないだろう。消費税は年収200万円300万円の人から税金を取り立てて、年収700万円の公務員に給料として渡す行為だから、庶民の生活は苦しくなり、公務員の生活は様々な手当がついて良くなる一方だ。

財務省は増税で財政を再建しようとしているが、非正規雇用者の増大でどうやって彼らから税金を取るのだろうか? 彼らは課税最低限度以下しか給料がないから増税しても無駄だ。消費税は彼らからも10%とか15%の税金を取ろうというのですが、700万円も貰っている公務員の給与カットのほうが財政再建に効果的だろう。

今の経済状況が改善されない場合には、非正規雇用が固定化されて低賃金のまま年金も確保できないまま老齢になって生活保護に頼ることになりますが、このままだと毎年20兆円の生活保護費が必要となるだろう。そのような状況で増税したところで税収は減る一方であり、社会保障費はますます増える事になる。

経済状況が一向に改善しないから税収も伸びないのですが、積極的な財政政策をしない財務省が財政再建を優先して自らの首を絞めている。財務省は何かというと財源がないというが公務員の給与カットという財源は思いつかないのだろうか?

外郭団体への天下り役員に使われる人件費も年間5兆円にもなるのですが、これも手付かずで放置されている。道路特別財源並みの巨額な予算が無駄使いされているのに国会では切り込む気配は見えない。政治家が官僚に政策を任せっぱなしにしているから役人達のやりたい放題であり、国会議員が国民のほうを向くのは選挙のときだけだ。

大阪の橋下知事が思い切った公務員の給与カットに取り組めるのも選挙で支持されたからですが、福田総理がこのような公務員の給与カットに取り組めないのは国民から直接選ばれていないからだ。むしろ日本の政治は「公務員の公務員による公務員の為の政治」が行なわれており、我々一般の納税者は奴隷階級であるのだ。だから税収が減れば増税すればいいと考える財務省の役人がいるのだ。

大阪府では年収700万円は低いほうの部類に入り、それで「吉田みえこ」と名乗る教職員は不満を持っているのでしょうが、非正規雇用者から見れば別世界の話に過ぎない。日本の大企業は正社員を減らして非正規雇用を増やして業績を上げてきた。

小泉構造改革でそうさせてきたのですが、国や地方の公務員には非正規雇用という手段で人件費を抑えるということは取られなかった。学校の清掃員も給食の調理員もみんな正社員だから一般の公務員よりも高給がもらえるようだ。だから民間の大企業で働くよりも学校の清掃員のほうが高給をもらえるし、飲食店で働くよりも学校の調理員になりましょう。残業も無くて週休二日制でこれほど恵まれた職業があるのだろうか?




余っているのに輸出が規制されるウクライナの小麦・トウモロコシ
食糧輸出国が輸出規制をかけるのは政治が不安定な国だからだ


2008年6月5日 木曜日

小麦が倉庫に入りきらずに簡易倉庫で発芽してしまっているウクライナの小麦
テレビ朝日 報道ステーションより

小麦の高騰はウォール街とウクライナが連携して作り出している。


食糧危機:きしむ世界/2 農地がダイヤになる 6月3日 毎日新聞

約3000平方メートルの立会場に取引人がひしめき合い、「売り」と「買い」の声が飛び交うシカゴ商品取引所(CBOT)の穀物取引フロア。開設以来160年がたった市場で異変が起きている。

 トウモロコシや大豆などの先物取引に、原油、金など、もうけが出ると見込んだ商品に投資する「商品(インデックス)ファンド」の資金が大量に流れ込み、相場を押し上げた。CBOT穀物市場の取引高は7兆円前後だったが、ファンドの運用規模はその3倍。穀物相場を知り尽くす穀物メジャーも、金融のプロに太刀打ちできず、時に大きな損失を被るという。

投機資金は、農地にも向かい始めた。

「兄は5ヘクタールの売却に応じましたが、隣接地に5ヘクタールの農地を持つ弟はまだです」。ルーマニアの首都ブカレストから北東約90キロのココラ村。農地買い上げ会社・グローバルコム社の出張所では、農地買収の打ち合わせが続いていた。「農地は、いずれダイヤモンドに変わる」と話すフランス人のジャン・ウーベル社長(47)は、「もう一押し」と指示した。

 ドナウ川が国土を横切るルーマニアは、欧州連合(EU)で「最も肥沃(ひよく)」な土地だ。農地価格は、1ヘクタール当たり2000〜3000ユーロと西欧の5分の1以下だが、この1年で2倍に。欧州系の農業関連企業だけでなく、中東産油国の王族など転売して利ざやを狙う投機家が農地を購入する。ウーベル社長は「あと5年で、主要な土地は外資が買い占めるだろう」と予測した。

ココラ村の公証役場前で「1ヘクタールの農地売却にサインしてきた」と話すブリーカ・コンスタンチンさん(71)に出会った。3ヘクタールの土地で小麦などを栽培してきたが、最近は燃料高などで経営は苦しく、「穀物価格が上がっているのに農地を手放さなければならない」と、うつむいた。

 ココラ村から南東60キロにあるカララシ県では、1万5000戸の零細農家が共同組織を作り競争力強化を図ったが、それでも苦しい状況には変わりがない。旧国営サイロ会社を買収した米穀物メジャーのカーギル社が独占的に買い上げるため小麦の生産者価格は1キロ当たり0・5レウ(約22円)とカーギル社の販売価格の半値以下にとどまるという。「われわれは収奪されている。穀物高騰の恩恵は、すべて持っていかれている」と、政府系農業コンサルタント機構カララシ支部のチューダー代表(48)は怒る。

穀物価格高騰は、休耕地を復活させる新たなビジネスも生んだ。

 世界有数の穀倉地帯ウクライナ。西部リビウの北20キロにある英国資本「ランドコム」の農場は、黄色い菜種の花が地平線まで広がっていた。最新鋭のトラクターが畑を耕し、肥料を積んだトラックが農道を行き交う。

 リチャード・スピンクス社長(41)は「農地を借り上げ、大規模化している」と話す。これまで6万7000ヘクタールを取得、35万ヘクタールまで拡大を目指す。

 社会主義体制崩壊で、旧ソ連圏の農業の主体は公営農場から零細農家に変わった。だが、資金不足で大型機械を導入できないため生産性が低い。国連食糧農業機関(FAO)によると、ウクライナは年1億トンの小麦生産能力があるが、現状は約3500万トン。潜在性の高さに目をつけた資本が、いま、大量に流れ込んでいる。


なぜか余っているのに輸出が規制されるウクライナの小麦・トウモロコシ

主な食糧輸出国が輸出規制をかけるのは政治が不安定な国だからだ


(私のコメント)
二日の「株式日記」でも食糧危機問題を書きましたが、ウォール街の連中がアメリカ政府と結託して食糧危機を作り出しているようだ。アメリカやカナダやオーストラリアのような国は輸出規制はかけていませんが、ウクライナやロシアやアルゼンチンなど政治が不安定な国は食糧の値上がりを抑えるために輸出規制をかけることで政権への支持を集めようとしている。

相場で儲ける為には、情報をいち早く得る事が大切ですが、アメリカのウォール街は情報を管理統制して、小金持ちたちを相手に金を巻き上げていく。その小金持ちの代表が日本の投資家達ですが、日本からの金が入るとその相場は終わりだと言う言葉があるくらい日本はカモにされている。

食糧危機にしても日本は食糧自給率が39%であり、食糧輸出国にエンバーゴされると日本人は餓死せざるを得なくなってしまう。現在のように世界の食糧輸出国が一斉に食糧を輸出停止される事が現実に起こっているのだから、日本としては食糧自給率を上げなければならない。しかし日本政府はこのような「食糧安保」には反対の立場だ。

このような食糧問題は農林官僚達の天下り団体がからんでいるから訳の分からないことになっているのであり、日本を食い物にしてぬくぬくとして利権をむさぼっている連中がいるから日本は良くならないのだ。役人達の天下り団体がなぜ良くないかという事を食糧問題を例にあげてみたい。民主党の山田正彦議員が農家への所得保障制度を提言していますが、食糧安保で日本の農家は復活できると思う。


雑誌SAPIOで山田正彦、農家への1兆円所得補償政策を語る

小麦の増産だけで
自給率は10%アップ

 農業者戸別所得補償とは、簡単にいえば、農家への直接支払いのことだ。
 たとえばコメに次ぐ重要な穀物である小麦は、国内消費はだいたい計627万t。飼料用の約100万tを除けば、食料用は529万t。うち国内生産は、わずか86万tに過ぎない。それを国内消費する食料分まで増産すれば、それだけで食料全体の自給率は10%アップする。

 かつて小麦は400万tの生産高があった。農家が小麦の生産を止めたのは、安い輸入小麦が大量に入ってきただけではない。もう一つ、大きな理由がある。政府=農水省が輸入小麦を推奨≠オ、国産小麦を潰してきたのだ。

 輸入小麦は、食糧管理制度時代からの特別会計予算による輸入管理制度が残っている。これは国際相場で安く輸入した小麦を国内で販売するとき、国産の小麦との価格差を助成するために高く売る制度のこと。その差額は「麦価差益」と呼ばれ、多い年には1000億円を超える。麦価差益は農水省の特別会計として自由に使える金だ。実際、麦に関する団体は「全国米麦改良協会」や「日本パン技術研究所」など13もあり、当然、農水官僚の天下り先となっている。

 国内生産が減って輸入小麦が増えれば麦価差益も増える。そんな仕組みを農水官僚自らが作っているのだ。生産が落ち込むのは当然だろう。
 ならば増産する方法は、この反対をすればいいはずである。

 今の麦価差益は、安い輸入小麦を国内価格に合わせて高く売っている。これを、高い国産小麦に「助成金」を出して、逆に安い輸入小麦の価格に合わせる。小麦の国内生産コストは10アール当たり6万653円。国際市場の価格は1万4170円。その差額4万6483円を国が補助してやるのだ。
 小麦を国内消費量の529万t分まで増産させるには、助成金3036億円が必要となる。3000億円強で自給率は10%アップするのだ。

 400万t以上を増産する耕作地がどこにあるのかという懸念もあろう。
 現在、80万t規模の小麦生産に必要な耕作地は20万ヘクタール。400万tの増産にはあと100万ヘクタールが必要だが、減反分だけで120万ヘクタールはあるので、それだけでも十分であり、さらに昔やっていたように稲作のあと二毛作で小麦を作れば事足りるのだ。

 同様に、日本の食卓に不可欠な味噌、醤油、豆腐の原材料となる食用大豆は、国内消費量の88万tのうち国産はわずかに16万t。大部分を遺伝子組み換えの輸入大豆に頼っている。88万tまで増産するために生産コストと市場価格差が10アール当たり2万7519円。補助金約644億円で自給率は2%アップする。
 食用油の菜種は国内消費量の237万tのほとんどが遺伝子組み換えの輸入品。10アール当たり価格差2万3031円の補助金総額は1081億円で、自給率は5%上昇する。
 従来の自給率を下げないよう稲作を現状維持(900万t)するために、市場価格の差1万6547円を補助するとして2040億円となる。

 ここまでの助成額6800億円で、56%にまで自給率を向上できる。さらにその他の畜産用の飼料作物や魚介類などへの助成2600億円などを合算すると、自給率60%達成のための所要額は1兆円となる。穀物に重点的に助成することになるが、まず国内で穀物を賄えることが「独立国家」としての条件だろう。

所得補償で
自給率を上げたEU

「小麦10粒のうち8粒も税金で賄うつもりか」という意見もあろうが、実はこの生産費と市場価格の差額を国が農家に直接支払う「所得補償」は欧米先進国ならどこでもやっていること。そしてEU諸国が食料自給率を上げた最大の理由なのである。
 EU諸国が「食」のために使う総額は、8兆円(05年)にものぼる。就業人口2%の第一次産業にEU予算の約半分を使っているのだ。

 まず英国では、農地の集約化が進んで1戸当たり平均68ヘクタールを耕作し、農業所得のうち、92%が政府による直接支払いの額。ドイツは36ヘクタールで107%が直接支払い額(農業所得は収量×市場価格−必要経費で算出されるため、収量や市場価格が低下しマイナスになると、直接支払いの割合が100%を超えることになる)、フランスは農業国だが、それでも42ヘクタールで79%はフランス政府からの助成金によって賄われている。EUで生産された農作物を輸出するとき国際価格との差を埋め合わせるために輸出補助金まで出る(5000億円/03年度)。さらにEU域内で値崩れしないよう行政が買い取って価格も維持する。こうしたすべての農業の所得価格関係にEU全体で5兆円ベースの予算を使っているのだ。

 その結果、EU諸国の自給率は確実にアップした。農業国フランスは120%を超えているし、一時46%まで下がっていたイギリスは、現在は70%まで回復している。ドイツも84%と高い水準にある。
 実は、ヨーロッパ諸国が直接支払い(所得補償)を積極的に行うようになったのは、1973年の「大豆パニック」がきっかけだった。
 当事のソ連が食肉増産を図って国際市場で大量の穀物を買い付け、アメリカは自国の穀物が不足するのを恐れて大豆の輸出を70日間にわたって禁止した。その結果、世界の穀物相場は一気に4.5倍まで暴騰、当時のヨーロッパの自給率は低かったこともあり、世界中でパニックが起こったのだ。

 いわばEU諸国は、その教訓を受けて国内農業の再生に取り組むようになったのである。
 日本でも「豆腐」が店頭からなくなり大騒動になった。しかし日本では、この教訓を活かすどころか、65年に73%あった自給率は、坂道を転げ落ちるように下がっていった。

 じつはこのとき、私は故郷の長崎県五島列島で牛や豚の畜産をしていた。急な大豆禁輸で飼料価格はハネ上った。一方、肉牛の値段は半値になった。当たり前だが、商売など成立つはずはない。結局、私は5億円の借金を背負い、畜産を諦めたのが政治の世界に踏み込む契機になった。そんな私だからこそ、食料自給には無関心ではいられないのである。

 その大豆パニックを引き起こしたアメリカは、いわずと知れた世界最大の農産物輸出国である。そのアメリカも当然のごとく農家への直接支払いを導入している。アメリカは日本米の「あきたこまち」などを作っているが、1t当たり240ドルのコストがかかる。国際価格は74ドル/t。競争力がないため米政府は差額分をコメ農家に支払い、国際価格74ドルにして輸出させている。つまりアメリカ産のコメは、アメリカの税金を食べているのと一緒なのである。

 むろんコメだけではない。小麦や大豆など22種類の作物にも国際価格との差額を農家に支払い、その総予算は1兆9940億円(03年度)にのぼる。1戸平均197ヘクタールという大規模集約化の進んだアメリカの農家でさえ、農業所得の28.9%は補助金なのである。

現在の農水予算だけで
1兆円は捻出できる

先進国で農業を維持し、高い自給率を確保するには、これだけの補助金を助成して、やっと可能になる。それが現実なのである。
 事実、所得補償政策は正常な貿易を阻害するとしてWTO(世界貿易機関)も「黄色い政策」と問題視しているが、一方でAMS(国内助成総量)という各国の助成金上限額を設定し、一定水準の助成を認めている。

日本のAMS枠は実は約3兆9000億円も認められているのだ。
しかし日本ではこれまで、直接支払いは中山間地域に限られ、03年度でわずか545.8億円。農業所得における比率はたった1.5%に過ぎなかった。
ここで忘れてほしくないのが、補助金による所得補償をしてこなかった従来の農業政策こそが「世界の非常識」ということだ。それでも日本の農家が辛うじて存続し、先祖からの農地を守ってきたのは兼業による「農外所得」があったからだろう。しかし、農業の担い手は高齢となり、跡継ぎは減り、すでに限界にきている。


今、大胆な対策を打たなければ、日本の農業は死滅する。だからこそ日本の農業にも欧米諸国なみに「所得補償制度」を導入すべきだと、我々は主張しているのだ。
1兆円のバラ撒き予算≠ナ日本の農業を再生する。
4年前、当時のNC(次の内閣)農水大臣だった筒井信隆衆院議員とともに、この法案を提案した際、党内にも多くの批判があった。

まずは1兆円の財源問題をどうするか? 今でも農水省はコメ転作奨励事業に3500億円の巨費を投入している。これを転用すれば残りは6500億円。現在、農業予算は3兆円のうち、45%は道路や橋、港湾などの公共事業費に使っている。国と地方自治体を合わせた公共事業の工事額は2兆6000億円。無駄な工事をやめれば、すぐに賄うことができるのだ。

次にどこまで農家を補償対象にするのか。民主党では助成対象を小規模でも農業に従事する170万戸まで広げている。兼業農家も含めたことでマスコミからも「バラ撒きだ」「選挙対策だ」と強い批判を受けたが、現状、農業従事者は加速度的に高齢化が進んでいる。所得補償したところで、肝心の農業をする人がいなければ絵にかいた餅である。間口は広くとって、意欲のある農家を育てなければならない。

またJAについては、民主党は自民党のように特別な優遇策は考えていない。農作物の流通も各事業体の自由競争に任せ活性化するのが望ましいからだ。同じく株式会社の農業進出も「農地転売」に一定の歯止めはかけるにしても、参入はおおいに結構だと考えている。

確かに課題は少なくない。しかし自民党が提案している「担い手経営安定新法」は、所得補償の総額1400億円程度で、いったい、どれだけの農業従事者が自立し、自給率がアップするというのか。

結局、政府与党と農水官僚は、相も変わらず、日本の工業製品をアメリカに買ってもらうために、アメリカの農作物を日本が買わせて頂くというスタイルから抜け出せないのだろう。次々と農作物を自由化し、日本の農業が崩壊しようとも構わないという態度である。下手に自給率を上げてアメリカを怒らせるのが怖いのかもしれない。
いま、私たちの食卓には安い外国産の農作物が溢れている


しかし、それらの農作物にWTOで認められている内外生産費の格差を直接支払いすれば、農家は外国産と同じ値段で出荷できる。そうなれば、誰もが国産品を買うはずだ。農家も農業で生計がたてられることになり、若い人も農業に参入することができる。消費者だって国産の安全な美味しい農作物を、輸入価格とそう変わらない値段で毎日食べることができるようになる。
たとえWTO、EPA、ETAで農作物を完全自由化しても所得補償をする限り、国内農業は成立する。

私は、所得補償制度を「1兆円のバラ撒き」でなく、欧米先進国なみに日本の農業を再生するための「種蒔き」と信じているのである。
(談)



(私のコメント)
このように、日本が独自の農業政策をしようとしても、国内には利権団体が沢山あり、アメリカからは農産物を買えと圧力がかかってくる。ウォ−ル街は自分達の利益の為なら貧しい国が困っても平気な連中であり、ロシアやウクライナと結託して食糧危機を作り出している。石油の暴騰でも同じ事であり、高い石油や農産物を買わせられる日本はウォ−ル街のカモに過ぎない。

毎日新聞の記事によればウクライナは一億トンの小麦の生産能力があるにもかかわらず投資が十分でない為に3500万トンの生産しかない。食糧安保でアメリカが穀物を輸出してくれなくなったら代わりを見つけなければなりませんが、ウクライナに投資をして農業を近代化すれば7500万トンの小麦が増産できる。何でもアメリカに頼りきる政治をしているから日本の政治家は頭がボケて後期高齢者医療制度のようなとんでもない法律を作ったりするのだ。




ウォール街のファンドマネージャーたちのように大量の資金を、オバマに
ふり向けて、もう一人を抹殺しようと図るような例は、以前にはなかった。


2008年6月4日 水曜日

民主党の大統領候補指名争い、オバマ氏が歴史的勝利


オバマ氏、民主党の大統領候補指名争いで勝利 6月4日 ロイター

[ワシントン 3日 ロイター] 米民主党の大統領候補指名争いは3日、指名に必要な代議員を獲得したことを受け、オバマ上院議員が対立候補のクリントン上院議員を退け、勝利した。米国の主要政党の代表として黒人候補が大統領選に臨むのは史上初めて。
 特別代議員の支持拡大を受け、オバマ氏の獲得代議員数は指名に必要な2118人に達した。


アメリカ狂乱―次の大統領は誰か』 日高義樹:著

ウォール街がオバマを支援した

その友人はニューヨークから成田へ着くとまっすぐ私のホテルにやってきた。彼が日本に来たのは、自分の著書を日本で出版するためだったが、日本の投資家たちに彼のファンドを売ることも目的のひとつだった。私はいつも彼の身だしなみの良さには感心しているのだが、十三時間の飛行機の旅にもかかわらず、うす茶色の春のスーツにはほとんどしわも寄っておらず、ズボンの折り目も際立っていた。

ホテルのロビーに腰を下ろした友人は、チェックインもそこそこに猛烈な勢いで大統領選挙戦の話を始めた。そして手にしていたケースをあけると私に一冊の書類を手渡した。「これは今度の大統領選挙戦の政治献金のリストだ。すべてが合法的なもので君のレポートに使ってもらってもまったく差支えない」

彼はいつもの癖の、皮肉をまじえた笑いを浮かべながらその本の何ぺージ目かを私に示した。そこにはオバマに対して政治献金を行ったウォール街の投資家たちの名前がずらりと並んでいた。

「普通ウォール街の連中は、オバマのような未知数の政治家には献金をしない。今度の選挙でもこれまではヒラリーに献金してきた」

彼はこう言ったが、この友人はもともとが民主党系の調査マンで、彼の言うウォール街の投資家というのはほとんどが民主党支持のユダヤ系の投資家や、アントレプレナーに近い中小のファンドマネージャー、それにパートナーたちである。彼のリストには載っていない大手の商業銀行や投資銀行、特にアングロサクソン系の成功した金融家たちは共和党に資金を送り、いわゆる本命といわれる侯補者たちだけを支援してきている。

したがって彼のリストの中に大手の銀行や著名なファンドマネージャー、パートナーの名前がないのは当然だが、私が疑問に思ったのは、一冊の本にもなりそうなリストに載っている大勢のウォール街のファンドマネージャーや投資家が、当時まだあまり有力でもなかったオバマに政治献金をしていることだった。

「どうだ、少しはびっくりしたかい」

これまたいつもの癖で、あごをなでながら彼は挑戦的な視線を私に投げかけてきた。そのあごのあたりにイブニング・シャドウならぬ飛行疲れのヒゲが不細工に何本も伸びているのが目に入ったが、私はこともなげにリストを見つづけた。

「なぜウォール街のファンドマネージャーや投資家たちがオバマにこんな大金を出すのか聞かないのかね」

彼はこう言ったが私は黙っていた。黙っていれば彼がどんどんしゃべり続けるのを知っていたからだ実際、ウォール街のファンドマネジャーやパートナーが民主党の左寄りといわれているそれも黒人の、これからどうなるか分からない侯補者に献金をするのか私にはさっぱり分からなかった。

「ウォール街の連中はヒラリーに大統領になってほしくないのさ。ヒラリーを追い落としたいと思って誰でもいいから助けようと思っている。ようやくオバマを助ける雰囲気が出てきた結果がこのリストだ」

私はなおも黙って彼の口元と目を見つづけていた。

「ウォール街の連中はヒラリーが大統領になればとてつもない増税を行うのではないかと心配してきた。彼女が特にキャピタルゲインの増税を考えていることが分かってウオール街のマネージャーたちは大恐慌をきたした。キヤピタルゲインの増税が行われれば投資家たちが投資しなくなる。マネージャーたちが大損害をこうむるのは避けられない」

しかし、なぜ今になってウォール街のマネiジャーがオバマを支援することにしたのか、その理由が私には浮かんでこなかったので、そのまま沈黙を守った。

「さすがの君も考えつかなかった話だろう。ウォール街の連中も共和党との戦いを前にヒラリーを追い落としたり、ヒラリーと正面きって戦ったりすることは考えもしなかった。そのうえ下手にヒラリー叩きをやれば、後ろにはビル・クリントンがついている。どんな報復を受けるか分からない」

彼はこう言ってさらに得意そうに言葉をつづけた。

「スーパー・チューズデーでヒラリーは負けた。オバマとの差はわずかだったが、ヒラリーの人気が限界に来ているのは明らかだった。そのうえ首都周辺を始めとする予備選挙でヒラリーが連敗するとは誰も思ってもみなかった。いまやヒラリーは負け犬なのさ」

ワシントンでは競争が厳しいだけに負け犬はいっも叩かれる。手のひらを返したように厳しい扱いを受けるのが普通だが、ついにヒラリーも負け犬とみなされてしまった。

もともとヒラリー・クリントンはブッシュ大統領の行っている金持ちに対する減税がアメリカの土地バブル、ドル高という通貨バブル、そして輸入バブルを生んでおり、アメリカ経済を不健康にしていると非難してきた。ブッシュの政策のせいでアメリカ経済が均衡を欠いた形で拡大を続けていると糾弾したのである。

ヒラリーは中流階級に対する減税を主張している。中流階級にお金を持たせれば自動車や耐久製品、さらには洋服や靴などの日常品が大量に売れ、アメリカ産業界が好況になると考えている。そして中流階級に対する減税だけではなく、アメリカ政府の資金を使って若い労働者の教育を行い、産業界を効率化するとともに輸出を増やし、アメリカ国民の所得を拡大するべきだと主張している。

このヒラリーの主張だけでもウォール街のファンドマネージャーには脅威である。そのうえヒラリーの実行力には定評がある。クリントン政権時代、ヒラリーはクリントン大統領やゴア副大統領をさしおいて国民健康保険制度を推し進め、さらに貧しい人々の生活援助を増やそうとした。

ヒラリーが大統領になったら、大きな政府作りをめざすだけでなく、増税を強行するだろうと恐れたウォール街は、ついに本格的にヒラリーに対抗するオバマを支援し始めたのでる。

ワシントンの消息筋のデータによると、二月五日のスーパー・チューズデーの後七十二時間でオバマは七百二十万ドルの選挙資金を集めた。これに対してヒラリーは、半分の四百万ドルしか集められなかった。この結果ヒラリー陣営は一時、テレビコマーシャルの費用にもこと欠き、主要スタッフの賃金も払えなくなってしまった。そしてその後、十一の州の予備選挙でオバマに負けつづけることになった。

三月はじめにこの原稿を書いている段階では、ヒラリー・クリントンがテキサスとオハイオの予備選挙で勝って甦ったが、すでに述べたように、この後ペンシルベニアの予備選挙で勝ったとしても代議員の過半数を獲得するのは無理である。

クリントンとオバマは、これからも党大会にむけてつばぜり合いをつづげると思われるが、こういった趨勢はオバマが膨大な選挙資金を持っているために可能になっている。いずれにしてもウォール街が突然、オバマを支持し始めるというのは、これまでアメリカ大統領選挙戦ではあまり見られなかった現象である。陰謀あるいは謀略の部類に入るえげつない動きで、二〇〇八年の大統領選挙の実態をよく示している。

もっとも、こうした類いの行動は政治の世界にはつきもので、これまでのアメリカ選挙戦でも何度か見られたことである。だが今度のウォール街のファンドマネージャーたちのようにあっという間に大量の資金を、競争する二人の侯補の一方だけにふり向けて、もう一人を抹殺しようと図るような例は、以前にはなかった。

オバマの劇的な勢力拡大の背後には、ウォール街だけでなく競争相手であるはずの共和党からの資金もあると言われている。つまり意図的にオバマに政治献金を行い、クリントンに勝てるようしむけているというのである。(P42〜P47)


(私のコメント)
ようやくアメリカ大統領選挙の民主党候補がオバマ氏に決まりましたが、ヒラリー・クリントン候補は未だに敗北宣言をしていない。ヒラリーにすれば選挙前は絶対的な本命候補だっただけに結果を受け入れがたい気持ちはわかりますが、女の執念なのでしょうか。金が集まらなかった為に個人の資産も投入して負けたのだから踏んだり蹴ったりです。

テレビなどの報道ではオバマ候補はネット献金で小口で集めたという事ですが、実際にはウォール街のファンドマネージャー達が集中的にオバマ候補に献金したらしい。これに対してクリントン候補はスーパーチューズデイ頃までに選挙資金を使い切ってしまって、後はなかなか選挙資金集めに苦労したらしい。

しかし常識的に考えれば、クリントン候補のほうが知名度もありご主人も元大統領なのだから一声掛ければ選挙資金は集まるはずだ。それに対してオバマ候補はクリントン候補の四倍も選挙資金を集めたのだから、何かがあったと考えざるを得ない。

日高義樹氏の『アメリカ狂乱』という本によれば、ウォール街のファンドマネージャーが集中的にオバマ候補に献金をしたということだ。つまりウォール街のファンドマネージャーは非常な高給取りたちでありアメリカの勝ち組だ。金持ち優遇税制で手持ちの資金力は一番ある人たちだ。

クリントンの経済政策では「株式日記」のホームページに掲載している通りのもっともな政策なのであり、累進課税で金持ち達から税金を取って低所得層の福祉政策に充てることは正しい政策だ。中流の階層は増税とサブプライムの住宅ローンの破綻に見られるように消費に回す金が無くなって来てしまっている。

アメリカ大統領選挙は資金力のある候補が勝つのであり、どれだけ選挙資金を集められるかが勝敗を左右する。知名度から言えばクリントン候補がダントツであり、資金集めもクリントン候補が最初は優勢だった。ところが選挙戦が進むにしたがってクリントン候補の税制や福祉政策にウォール街のファンドマネージャーが反発して、クリント以外の候補なら誰でもいいとばかりにオバマ候補を応援し始めた。

選挙戦術から言えば金持ち階級よりも中流下流の有権者のほうがはるかに多いわけだから選挙の上では福祉政策や累進課税であったほうが有利なはずだ。しかし選挙で負け続けた事で金が集まらなくなってしまった。テレビや新聞ではネット献金で差がついたということですが、2000円以下の献金をいくら集めてもたいした額にはならないはずだ。


米大統領選、資金はどこから? オバマ氏、ネット献金に強み  3月24日 産経新聞

米大統領選の民主党候補指名を争うクリントン、オバマ両上院議員は、選挙資金集めでも激しい戦いを繰り広げている。候補者たちはどうやって資金を調達しているのだろうか。(外信部 田北真樹子)

 選挙資金の“財源”は主に5つある。(1)個人からの献金(2)窓口である政治活動委員会(PAC)を通じた企業や労組などからの献金(3)政党からの資金(4)自己資金(5)公的資金−だ。各陣営は、資金の出入りを連邦選挙委員会に毎月報告し、情報はインターネットなどで公開されている。

 これまで集めた選挙資金の総額は、オバマ陣営が1億3823万ドル、ヒラリー陣営が1億3453万ドル(1月末現在)。両陣営ともに、全体の9割以上が個人献金で占められている。

とりわけ威力を発揮しているのが、インターネットを通じたクレジットカードでの献金だ。このネット献金は2000年から導入された。オバマ氏の場合、2月の選挙資金の総額は5500万ドルにのぼり、単月としては史上最高を記録したのだが、そのうち実に4500万ドルがネットを使った小口献金だった。

 個人献金の上限は、予備選段階が2300ドル、本選段階も同額で、計4600ドルだ。20ドル以上の献金者は、名前や住所などが公開されるため、これを嫌い20ドル未満の小口献金を、上限に達するまで繰り返す有権者も少なくない。

 候補者の陣営には、個人献金をかき集める「バンドラー(束ねる人)」と呼ばれる存在も。この“集金マシン”の数は、オバマ陣営361人、クリントン陣営322人とされる(1月末現在)。

 企業など団体からの直接献金は禁止されている。そこで企業などはPACという団体を設立し、社員などから個人献金を集める。それでも企業との“癒着”を有権者に連想させるという側面も。オバマ氏はPACからの献金は受け取っていない。

米国では76年の選挙以降、公的資金による援助制度が導入された。連邦政府が資金を出す「マッチングファンド」がそれだ。一定の条件のもと、候補者が集めた資金に見合う額が補助される。しかし、これを受け取ると、選挙で使える資金に足かせがはめられるという制約もある。具体的には、今年の選挙の場合は予備選で4205万ドル、本選で8410万ドルが上限だ。

 もともとこの制度は、カネのかかる選挙を抑制しようと導入された。だが、制約ゆえに、資金力がある候補はこの制度を敬遠し、自前の資金で戦う。オバマ、クリントン両氏とも受領していない。選挙戦が熾烈(しれつ)になるほど、TVコマーシャルなどに資金を投入するなど支出も増える。一方、共和党のマケイン候補は、一度は助成を受けたものの、資金が集まり始めたため2月に辞退した。


(私のコメント)
日高義樹氏の「アメリカ狂乱」という本に書かれているように、献金リストによればウォール街からの献金が圧倒的に多いということは、1人で20万円程度の献金をする人が多ければ圧倒的に有利だ。日高氏が見せられたリストも公開されたものであり、献金リスト名を見ればウォール街のファンドマネージャー達や投資家からの献金が圧倒的にオバマ候補に献金をしているのが分かる。

日本ではこのような献金制度が発達していないから実感が沸きませんが、選挙で一票入れるよりもネット献金で献金する事のほうがアメリカでは有効なようだ。日本でもネット献金も無くもないのですが非常にやりにくい。ネットを選挙に使うことすら規制しているからネット献金などとんでもないということなのだろう。

「株式日記」では選挙期間中でも小泉内閣を批判し続けましたが、BBSなどに投稿してもBBSの主催者は選挙違反を恐れて削除しまくったくらいだ。ネット献金が選挙の献金の主流になれば選挙区の候補ばかりでなく他の選挙区でも当選させたい候補に献金が出来る。

1人一票の選挙も民主的ではあるのですが、日本の選挙でもネット献金を普及させて2千円程度の献金もワンクリックで出来るようにしてほしいものだ。日本では携帯電話がネット献金の代わりになるだろう。電話料金と一緒に政治献金も決済すれば済むからだ。それでも大口の携帯献金を集める人が有利になるのだろう。




湾岸産油国、アラブ首長国連邦のドバイは、今後建造する発電所を
すべて石炭火力にするという。産油国も音を上げる石油の高騰の謎


2008年6月3日 火曜日

湾岸産油国のインフレはドルペッグ制廃止でも解決しない=米財務長官 6月2日 ロイター

[アブダビ 1日 ロイター] 中東湾岸諸国を歴訪中のポールソン米財務長官は1日、 同地域の産油国首脳は、米ドルペッグ制の廃止でもインフレ問題は解決しないとの認識だと述べた。

 ポールソン財務長官は4日間の日程でサウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問している。

 財務長官は、湾岸地域の首脳は「ドルペッグ制はインフレに多大な影響を及ぼしてはいないとの認識だ」とし、「首脳らはインフレを最優先課題とみている。ただ、ドルペッグ制の廃止がこの問題を解決するものではない」と述べた。

 一方、財務長官は、湾岸諸国によるドルペッグ制の廃止のいかなる動きも排除することはできないと述べ、通貨政策の決定は各国の主権であるとの見方を繰り返した。

 湾岸の6産油国のうち、クェートを除く5カ国がドルペッグ制を採用しており、原油価格の高騰で景気が過熱していても、米連邦準備理事会(FRB)の利下げに合わせて金利を引き下げる必要がある。

 一部諸国は、ドルペッグ制とこの数カ月間のドル安がインフレを高進させており、通貨バスケット・ペッグ制の方がインフレ制御がより容易になる可能性があるとの見方を示している。

 ロンドンに拠点を置く中東経済専門誌「ミドルイースト・エコノミック・ダイジェスト」(MEED)は30日、カタール指導者付経済顧問が、ドルペッグ製を廃止する必要があるとの見方を示したと報じた。カタールの景気が過熱している一方、米国が減速していることを理由に挙げた。

 一方、ポールソン財務長官は、強いドルが米国の国益であり、ドルの価値は究極的には長期的な経済ファンダメンタルズを反映するだろうと述べた。



サウジアラビア、ドルペッグ制廃止や通貨再評価の意向ない=財務相 6月2日 ロイター

[ジッダ 31日 ロイター] サウジアラビアのアッサーフ財務相は31日、リヤルのドルペッグ制廃止や通貨再評価を行う意向はないとの姿勢を示した。ペッグ制について、サウジを利してきた、と述べた。

 ポールソン米財務長官との共同記者会見で述べた。アッサーフ財務相は「ペッグ制を廃止したり、通貨を再評価する意向はない」と述べたうえで「米財務長官が指摘したように(ペッグ制は)われわれを利してきた。われわれはサウジの長期的利益を考えている」との見方を示した。

 一方、ポールソン米財務長官は、ドルペッグ制についての質問に対して「決定は各国の主権だ」と述べたうえで「ペッグ制は、この国(サウジアラビア)とアラブ地域の役に立ってきた」との認識を示している。



米国は湾岸アラブ諸国の為替政策変更を事実上容認=メリルリンチ 5月26日 ロイター

[ドバイ 25日 ロイター] メリルリンチは、米国は湾岸アラブ諸国に対し、インフレを問題と認識することでドルペッグの為替政策の変更を事実上容認しているとのリポートを発表した。

 メリルは「湾岸アラブ諸国に対する青信号」と題するリポートで、アラブ首長国連邦(UAE)とカタールはおそらく今後数カ月以内に通貨バスケットに移行すると予想。両国通貨は年末までに5%上昇する見込みという。

 一方、サウジアラビアの通貨政策変更は来年遅くまでない、との見方を示した。

 メリルは米財務省が初めて湾岸協力会議(GCC)の通貨とインフレに言及した議会への報告書を引用し、米政府がドルの今後の見通しについて自信を強め、湾岸諸国の支援を必ずしも必要としなくなったと指摘。「GCC加盟国の為替政策の変更を事実上容認している」との見解を示した。

 投資家は昨年9月以来、ドルペッグ廃止の思惑で一部のアラブ湾岸諸国の通貨を買い増している。

 メリルは、通貨政策の変更には国内で政治的制約もあるが、最終的には市場の流れにより自国通貨の上昇を余儀なくされる国が出てくる、との見方を示した。



カタールは通貨の米ドルとのペッグを撤廃する必要がある=首長の経済アドバイザー 6月2日 ロイター

[ドバイ 31日 ロイター] カタール首長の経済アドバイザーは、カタールは経済が拡大しているため、通貨の対ドル・ペッグ制を撤廃する必要がある、との考えを示した。30日付のミドル・イースト・エコノミック・ダイジェスト誌が伝えた。

 それによると、ハマド・ビン・ハリファ・サーニ首長の経済アドバイザーであるIbrahim al-Ibrahi氏は、同誌とのインタビューで「われわれはリンクを外す必要がある。われわれの経済が拡大しているときに、相場が下落している通貨との連動を維持するのは理にかなうことではない」と述べた。

 通貨を米ドルにペッグさせているアラブ湾岸諸国の中央銀行は、インフレの高進と力強い経済成長にもかかわらず、相対的な通貨価値を維持するため、金利を米国に追随させざるを得なくなっている。



産油国まで石炭火力=潮田道夫 5月25日 潮田道夫 毎日新聞

日本の温暖化対策の進み具合は主要70カ国の中で61位。落第点だ。世界銀行の採点である。石炭による火力発電が増えたので減点された。

 石炭は二酸化炭素の排出量で石油の1・2倍、天然ガスの1・8倍もあるそうだ。そんな汚い発電を増やすなんて、と。

 しかし、石炭火力は日本の発電量の約25%。世銀が日本より高い点をつけた米国とドイツは50%超でずっと多い。ヘンじゃないか。

 水準でなく努力の多寡の評価だから、ヘンじゃないそうだ。さようか。理屈にはなっているが、釈然としないね。

 もうひとつ、納得しにくい話を聞いた。湾岸産油国、アラブ首長国連邦のドバイは、今後建造する発電所をすべて石炭火力にするという。自国産の天然ガスや石油では高過ぎる。安い石炭でないと電力会社がやっていけなくなった。

 サウジやバーレーン、オマーンなど、他の大産油国も軒並み石炭火力を検討しているという。石炭に走るより、石油の値下げをしたらどうだ。

 そう、石炭火力は減るどころか、むしろ増えそうな情勢だ。値段が石油の5分の1、天然ガスの4分の1と安い。そのうえ、石油と違って当面枯渇の心配がない。

 しかし、さすがに環境負荷が大き過ぎる。例えば中国の場合、あの国の出す二酸化炭素の4割が石炭火力が起源だ。

 先ごろの胡錦濤主席の訪日で、日中が「二酸化炭素の回収・貯留(CCS)」で協力することが決まった。ハルビン火力発電所が排出する二酸化炭素を回収し、中国最大の大慶油田に注入する。二酸化炭素を地中に閉じ込めるとともに、その圧力で石油の採掘効率を高める。

 CCSはコストや安全性などに問題があるが、二酸化炭素を90%除去できるという。中国はもとより産油国まで石炭火力に走る時代。敵視しても仕方ない。CCSなど技術革新で低炭素化を図るほかない。(論説室)



(私のコメント)
ニュースは並べて見ないと真相はなかなか見えてきませんが、先月に湾岸産油国がドルペッグから外れるという観測のメリルリンチのニュースが流れた事によって、急遽ポールソン財務長官が湾岸産油国を周っています。

アメリカは国内の金融危機に対して、FRBが値のつかなくなった債券を買ったり、金融機関が所有している値のつかない債券を米国債と交換したりしてパニックを防いでいます。アメリカは日本に対しては時価会計を押し付けていながら、自国が金融危機になると粉飾決算まがいのことをしている。

またFRBは銀行を通じてヘッジファンドに資金を供給して石油相場を吊り上げさせていますが、これはドルの値下がりを石油でヘッジさせるための湾岸産油国との暗黙の密約があるのだろう。アメリカとしては金融危機で機能が麻痺した債券市場に介入して資金供給している。当然ドルがだぶついて値下がりする。

普通ならサウジアラビアなどが「石油をドルでは売らないユーロで売る」と言い出しかねない。売って得たドルもユーロに換えてしまうかも知れない。ところがドルや株は堅調だから石油代金もドルに還流しているようだ。金利から見てもドルよりユーロで運用したほうが金利は高いのですが不思議な現象だ。

おそらくアメリカとサウジアラビアとの間でドルの目減り分を石油価格の高騰で補填する密約が出来ているのだろう。だから増産余力のあるサウジアラビアも増産はしないのだろう。しかし石油の高騰はアメリカ経済を確実に痛めつけるからいつまでも続けられないはずだ。アメリカにとって最後の頼みはサウジであり、サウジがいつまでアメリカを支え続けられるかがドルの分かれ目だ。

中国もドルとの連動で元は動いていますが、中国もインフレで元を徐々に上げ始めた。だからポールソンは頻繁に中国を訪れてドルを買うように説得しているようだ。日本も金利を0,5%にしてドルを支えているのですが、日本はアメリカの植民地なのでポールソンは素通りしている。

しかし石油がこれだけ値上がりすると湾岸産油国も自国産の天然ガスや石油は高すぎるので、発電所も石炭火力発電所を作り始めた。産油国の発表する石油の埋蔵量はたいていが誇大広告であり、外国型投資を呼び込むための数字なのだ。だから意外と石油の埋蔵量は発表よりも少ないのだろう。だから産油国も石炭火力発電所や原子力発電所などを作りはじめているのだ。

アメリカにとっては石油とドルは切り離せないものであり、サウジがドル以外の通貨で石油を売るといったらドルの需要は無くなり、世界各国はドルを手放し始めるだろう。だからポールソンにとってはドルペッグも重要ですが石油とドルのリンクを守る事が最重要課題なのだ。

サブプライム問題自体もアメリカにとって死活問題なのですが、ドルの暴落を防ぐ為の石油とのリンクも外せない問題だ。すでにロシアやイランやベネズエラなどはドル以外の通貨で売っていますがサウジや湾岸産油国の動向が一番重要だ。

アメリカにとっては日本とサウジアラビアが最重要同盟国のはずですが、90年代のジャパンバッシングや9・11テロ以降のサウジへの冷たい扱いはアメリカにとって自殺行為である。メリルリンチのレポートは湾岸諸国のドル離れを容認した内容ですが、アメリカ政府とウォール街との見方は矛盾している。サウジ以外の国なら影響は小さいと見ているのだろう。

ポールソン財務長官は「強いドルはアメリカの国益である」と述べていますが、言っている事とやっていることは正反対だ。金利を下げ、売れない債権を買い支える事で資金を無制限に供給している。バーナンキFRB議長のヘリコプターマネー政策は上手く行くのだろうか? 

石油も食料も工業用資材も上がればインフレになり、物価が上がって債務の負担が相対的に減ればバブル崩壊によるダメージは減る事になる。このようなインフレ政策は日銀の官僚たちには理解できない事であり、デフレにしてしまった。はたしてヘリコプタマネー政策は間違っていいるのだろうか? 

インフレでも金利が上がらなければインフレ調整政策は合理性がある。財務省の官僚たちもインフレになると金利が上がると思い込んでいるからデフレにしているのかもしれない。日本は1000兆円もの国公債を発行してもインフレにもならずに金利も低いままだ。エコノミストや経済学者はハイパーインフレになって日本は破産だと騒いでいましたが、彼らのいうことは間違いだらけだ。

現実には考えられないような事がおきますが、石油の上に成り立っている産油国が石炭火力や原子力発電所を作るようなもので、現実には予想外の事がよく起きるからエコノミストや経済評論家の言うことは当てにならないのだ。




米国ブッシュが主導したバイオエタノール騒ぎは、穀物価格を
つり上げて一部の投機的投資家を大儲けさせることが真の狙いだ。


2008年6月2日 月曜日

静かな津波が広がっている 〜食糧危機の深層〜 6月1日 カトラーのマーケティング言論

その米が、奪い合いになっている。幸いなことというべきか、それは、まだ日本国内のことではないが、米だけでなく、小麦、大豆、とうもろこしといった国際商品穀物の価格が急騰し、国際食料計画(WFP)のJosette Sheeran事務局長が、「This is a silent tsunami(静かな津波)」といっているように、世界中にこれまでにないタイプの「飢饉」とそれに伴う社会不安が津波のように広がっている。
ハイチでは暴動が起こり、首相が辞任に追い込まれた。エジプトでも数千人規模の暴動が発生し、ムバラク大統領が軍隊に対してパンの製造を命じるという異常事態が発生している。香港でも米の買い占め騒動などが発生するなど、全世界で食糧をめぐる社会不安が発生していることをメディアは連日報道している。こうした事態を受けて、来週、急遽、FAOが食糧サミットを開催する。

そもそも、何故、穀物価格は急騰を始めたのか。その背景についても多くのメディアやシンクタンクが分析や解説を行っているが、大体、以下のような高騰要因を並べたてている。

@ 穀物輸出国オーストラリアでの昨年の干ばつに伴う不作(地球温暖化の影響?)
A 中国、インドなど新興国における爆発的な需要拡大、肉食など食生活の高度化
B バイオ燃料として注目されるエタノールの原料としてトウモロコシ需要の急増、
C 原油価格高騰による輸送費、肥料、燃料費などの負担増
D 投機的資金の穀物市場への流入


そして、こうした構造的な要因を背景に、食糧価格は今後も高騰しつづける可能性が高いと結論づけている。
ここで列挙されている理由は、ひとつひとつを取り上げればどれも誤りとはいえないだろう。しかし、こうした優等生の模範解答のようなステレオタイプな説明は、問題の本質を捉えていないどころか、むしろ問題の核心を隠蔽することの方が多いといってもよいだろう。

穀物価格の急騰をもたらした真の要因は何か

多くのメディアが撒き散らしている、こうした模範解答において言及されている食糧の長期的な需給ギャップが存在するとしても、昨年からの穀物価格の急騰現象は説明がつかない。あたかもわかったような気になっているだけだ。
2007 年1 月から2008 年5 月までの短期間に、トウモロコシが1.5 倍、小麦が1.7 倍、大豆が1.8 倍、米の国際価格にいたっては2.7 倍の水準まで高騰している。オーストラリアの干魃は小麦の価格に関係しているとしもて、トウモロコシや大豆とは関係ない。米についていえば、凶作や実需が何らかの理由で倍増したという話はとんと聞いたことがない。
つまり、ここで穀物の国際価格の高騰要因とされるもっともらしい理由は、全体としてみれば、事態の本質を隠蔽するという「もっともらしい嘘」になってしまっている。
思い起こされるのは、これと全く同じような論理が、日本の土地バブルの時にも見られたことだ。

@ 日本は国土が狭く、日本の土地は有限である。
A 日本経済はずっと成長してきたし、これからも成長しつづける。土地やオフィスに対する需要も拡大し続ける。
B 日本経済は、土地本位制であり、担保価値を割り込んで土地の価格は下がることはない。

今、考えれば、こんな理屈をどうして信じられたのかと思えるのだが、当時の日本人の多くが、この「もっともらしい嘘」土地神話に見事に騙された。

それでは、おなじように「もっともらしい嘘」によって穀物の国際価格を急騰させ、それが、当然の帰結、必然であるかのような言説を撒き散らしているのは、一体誰なのか。

ブッシュ大統領の一般教書演説が契機に

犯人捜しをすることが目的ではないが、明らかなことがひとつある。それは、このエントリー記事の冒頭に掲げたグラフを見れば、すぐわかることなのだが、昨年2月にブッシュ米大統領が、一般教書演説の中で化石燃料エネルギーへの過度の依存を是正し、二酸化炭素抑制を掲げバイオエタノールを代替エネルギーとして活用する方針を表明したことから、穀物価格の高騰が一気に加速したという事実だ。
バイオエタノールの原料作物は、主にトウモロコシだが、米国の農家が大豆や小麦の栽培からトウモロコシに鞍替えしたために、大豆、小麦の価格も高騰した。後は、連想ゲームだ。大豆や小麦が上がるなら、米も上がってもおかしくない・・・そう考えた連中が、香港で見られたように米を買い占めたり、あるいは商品先物市場に投資することで、実際に値がつり上がっていった。
そして、米価の急騰によって国外に米が流出することを懸念したインドやベトナムが輸出規制に踏み切ったために、さらに価格が急騰するという悪循環に陥った。こうして、穀物価格の高騰による新たな「飢饉」が貧しい国々を津波のように襲ったのだ。

静かな津波の震源地はサブプライムローンの破綻

そして、現在の「静かなる津波」といわれている食糧危機の震源地は、米国のサブプライムローンの破綻に求めることができる。すなわち、米国内の住宅ローン市場に投資されていた投機資金が、新たな儲け先、あるいはサブプライムローン破綻による実損を取り戻すために仕組んだマッチ&ポンプ相場が今回の穀物価格の急騰といえるのではないか。
このことは、投資ファンドの動きからも裏付けられる。
2007年の第1四半期末から始まった穀物相場の急騰に呼応して、上場投資信託(ETF)が欧州農産物を対象に運用する資金は5倍に膨らんだという。英銀バークレイズ系列の投資専門会社バークレイズ・キャピタルによれば、この間、米国農産物取引での運用残高はそれ以上に拡大し7倍にまで達したという。

地球環境保護という美名のもとで打ち出されたバイオエタノールへのシフトは、穀物相場全体の急騰を招き、1日の収入が1ドル以下という最貧国の人々から命の糧を奪った。その裏で、大儲けした国際穀物メジャーや投資ファンドが高笑いしている。
地球環境を守るという掛け声のもと、代替エネルギーへのシフトが唱われたわけだが、結果的としては、米国では、エタノール向けのトウモロコシの作付けがトウモロコシ全体の作付け面積の20%まで占めるようになり、それが引き金になって、全面的な穀物価格の急騰が生じたということは、これまで見た通りだ。ところが、米国全体のエネルギー使用量に占めるバイオエタノールの割合は、1%にも達していない。

進まなかった代替えエネルギーへのシフト

要するに、トウモロコシの収量全体の20%を犠牲にしながら、化石燃料依存を脱却するという課題は、これっぽっちも解消されていないのだ。穿った見方をすれば、米国ブッシュが主導したバイオエタノール騒ぎは、地球環境の問題とは、端から関係がないのであり、代替エネルギーへのシフトという大義名分の下、もともと流動性の少ない穀物の世界に投機資金を呼び込み、穀物価格をつり上げて一部の投機的投資家を大儲けさせることが真の狙いではなかったのか。
食糧サミットでは、どうやら、食糧増産の方法やら「今後の対策」に関する議論が中心になるようだが、私にいわせれば、犯人捜しの方が先決である。穀物価格の上昇によって大儲けした連中をテーブルの上にならべて、相互の関係をつまびらかにすれば、誰が仕組んだことなのかはっきりするはずだ。とはいえ、仮にそうした議論が行われ、食糧の投機的な取引に関しては何らかの歯止めが講じられたとしても、投機マネーは、既に次のターゲットの物色に入っているだろう。原油、資源、食糧とターゲットは変遷してきたが、次に向かうのは、たぶん水資源だろう。

私は、これまで資本主義というものは、多くの問題はあるにせよ、基本的には善なるシステムだと思ってきた。それは、飢えや渇きに苦しむ人々に経済と産業をもたらし、貧困から救い出すものであったからだ。それが、逆に津波のように人々を襲い、命の糧である食糧や水を奪い始めている。これは、貧しい国々の人々だけの問題ではない、資本主義の危機だ。



(私のコメント)
物価の値上がりなど90年代から忘れ去られていた事であり、日本のデフレ経済はじりじりと値下がりするのが当たり前になっていた。最近のガソリン価格の高騰やバターの品不足などはバブル期の頃を思い出させるものだ。しかし今回の価格の高騰は海外からやってきたもので、70年代の石油パニックのほうが状況は似ている。

昨日もガソリンスタンドの前を通ったらレギュラーガソリンが172円になっていた。これでは車のガソリンを入れるたびに万札が飛んでいくわけであり、流通などにも影響が出てくるだろう。ガソリンが値上がりすれば農産物にも飛び火するのは70年代の石油ショックと同じ構造だ。

だから最近の食品の値上がりは石油投機を仕掛けている連中が農産物にも手を出しているからなのですが、その金はどこから来ているのかというと、あめりかのFRBが金をばら撒いて投機ファンドが石油や穀物などの投機で大儲けをしているのだ。FRBはサブプライムで金融機関が大穴をあけているから、その穴埋めの為に金をばら撒いているのですが、バブルの損はバブルでしか埋まらない。

日本の政府日銀は株バブルと不動産バブルを同時に潰して銀行を締め上げてしまった。グリーンスパンのようにITバブルの次は住宅バブルを作り、そして今はコモディティーバブルを作ってバブルの軟着陸を図っている。日本のようにすべてを潰してしまったら回復するのにどれだけ時間がかかるのか分からないからだ。

以前にも書いたように、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーは元政府の高官たちが経営者に顔を並べる影のアメリカの政府機関とも言うべき存在ですが、カトラー氏のブログにも書かれているように去年の2月の大統領教書演説にちゃんとバイオエタノールを振興することが述べられている。つまりGSやMSは大統領からインサイド情報を得て投機を仕掛けているのだ。

インサイダー取引は日本でもアメリカでも違法なのですが、政府ぐるみでやればSECも動きようないわけでGSやMSはどんな大金でも安心して投機が仕掛けられる。迷惑するのは石油や農産物の消費者達ですが、コメや小麦を食べられなくなれば飢え死にするしかない。しかしこれらの投機はFRBが投機ファンド救済の為に仕掛けている事であり、マスコミはこの事を批判しない。

このように中央銀行とファンドとが手を組めば絶対に負けない投機が出来るのであり、FRBはいくらでもドル札を印刷できるのであり、無限に株や債権や商品を買いまくる事が出来る。日銀でも一時株を買ったことがありましたが、FRBはその大掛かりな事をやっている。しかし誰かに高値で買わせて売り抜けなければならないから、マスコミを動員してガソリンが上がったとかバターが品切れだとか騒がせているのだ。

株の世界でも業界紙が書いている事をまともに信じていたら100%損するのであり、GSやMSがどんな陰謀を企んでいるかを先読みすれば相場に勝てる。しかしFRBがドル札を刷りまくって国債を無限に発行し続ければアメリカそのものが倒産しかねない。ドルは何時までも価値を維持し続ける事は不可能だからだ。ところがドルもNY株式も堅調だ。

投機筋は石油を買って、中東産油国が売っても産油国にはこれといった産業もないから欧米の銀行に金を預けるしかない。欧米の銀行はその金をNY株に投資するからドルや株が上がる。FRBが金をばら撒いて石油や株が上がり続けているうちはいいが、FRBが資金供給をストップした時が暴落する時となる。それは何時か? 投資ファンドが売り抜けた時だ。

このように中央銀行が投機に手を出すようになったら資本主義もお終いなのであり、発行しすぎたドル札は紙切れになるときが必ず来る。日本のバブル崩壊が長引いているのは、アメリカのGSやMSに相当するような投資銀行がないからであり、日本人でファンドマネージャーを養成しようと思ってもシステム的に無理だ。世界に広がる情報ネットワークが日本には無いからだ。

日本のバブルの発生も崩壊も結局は国際金融資本による情報操作に踊らされたからだ。昨日もNHKで低炭素社会の特番をやっていましたが、これも情報操作であり石油の高騰とセットになっている。日本の「国営放送」が情報操作に加担しているのだから国際金融資本はマスコミを自由自在に操る事ができるのだ。

国際金融資本はアメリカのCIAなどの情報機関と表裏一体であり、マスコミはそこからの情報のおこぼれをちょうだいして活動している。日本に情報機関が出来ないのも、GSのような投資ファンドが出来ないのも能力的に彼らにかなう人材がいないからだ。例外的に「株式日記」の管理者は彼らの動きが手に取るように見抜く能力がある。だから「株式日記」はユーロの高騰を見抜くことが出来た。

はたして石油や穀物の次は何が狙われるのだろうか? おそらくそれは空気と水である。空気は温暖化ガスのことですが、水は穀物と関係があり穀物投機の次は水投機が始まる。5月27日のクローズアップ現代で水の問題をやっていましたが、オーストラリアでは農業用水が売買されていた。スペインでは慢性的に水不足で海水を淡水化プラントで生産していた。つまり水は只ではなくなって来たのだ。

アメリカやヨーロッパやオーストラリアでは慢性的な旱魃になっているのは温暖化と関係しているのでしょうが、水と穀物が無ければ人間は生きていく事ができない。国際金融資本は水も買い占め、空気も買い占めるつもりのようだ。温暖化ガス問題はこれも情報操作なのですが、日本企業もこれに踊らされてしまうようだ。

日本では公共事業というと橋や道路を作る事ですが、どうして太陽光発電所や風力発電所などを作ろうとしないのだろうか。箱物では維持費ばかりがかかって利益を生まない。ところが再生可能な発電所なら電気と言う利益を生む。政治家や官僚の頭がコチコチに固いからドイツのような低炭素社会ビジネスを作ると言う斬新な発想が出来ないのだ。




食糧自給率が40%しかない日本に大量の移民がやってきたら
日本はどうやって彼らを食わせて行けるのだろうか?


2008年6月1日 日曜日

<コメ支援>フィリピンにMA米で支援検討 5月19日 毎日新聞

政府は19日、コメ不足に直面しているフィリピンに対し、米国などから義務的に輸入しているミニマムアクセス(最低輸入義務、MA)米の一部を支援に回す方向で検討していることを明らかにした。コメは世界的な需要増加で海外で不足感が高まっており、米政府はこれまでの方針を転換して日本にMA米の対外援助への活用を認める方針を打ち出した。

 農林水産省の白須敏朗事務次官は19日の会見で、フィリピン政府からMA米20万トンの放出を求める要請を受けたと明らかにした。これを受け、政府は無償支援とするか、有償とするかなどの検討に入っている。また、農水省所管の社団法人が、国内の生産調整に伴う約5万トンの余剰米を売却する方向で調整している。

 日本は世界貿易機関(WTO)の協定に基づき、コメを一定量、海外から輸入する義務(ミニマムアクセス)があり、昨年10月末現在で約150万トンの在庫がある。米国はこれまで、MA米を日本国内で消費するよう要請していたが、米通商代表部は15日に「国際市場を沈静化させるため、特別の検討が正当化される」との声明を発表し、途上国援助への活用を容認する意向を示した。【工藤昭久】


食の奪い合い、分かち合い 週のはじめに考える 6月1日 中日新聞

世界各地で食べ物の争奪が頻発し「食料危機」がサミットの俎上(そじょう)にのせられるまでになりました。日本の自給率は39%。対岸の火事ではありません。

 福田康夫首相は一日欧州に出発してサルコジ仏大統領らと会見、ローマでの食料サミットにも出席します。首相は七月の北海道洞爺湖サミットの議長として食料危機の打開策を見いださねばなりません。訪欧はその地ならしです。

 毎日2万4千人が餓死

 食料争奪はアフリカ、アジア、中米の二十カ国以上に広がり、フィリピンではコメ調達先のベトナムが国内向け優先で輸出を制限したため、レストランのメニューが“半ライス”に減らされました。中米ハイチでは豆類などが急騰して民衆の抗議デモが暴動に発展、議会が首相を解任しています。

 二〇〇七年を境に小麦、トウモロコシ、大豆が三倍に、コメは今年に入って三倍以上も値上がりしました。穀物は自国でも消費し、輸出に回される量が限られるので、逼迫(ひっぱく)の兆しが見えると途端に高騰します。奪い合いは貧しい国々で起きています。資金が不足し買い負けてしまうからです。

 価格急騰は中国などの需要増、バイオ燃料の穀物利用、干魃(かんばつ)などの気候変動が主因です。投機資金の穀物市場への流入も拍車をかけています。当面の供給はしのげても、食料配分の世界秩序にきしみが生じたと見るべきでしょう。

 一九九六年、ローマの国連食糧農業機関(FAO)が八億人の飢餓人口を二〇一五年までに半減させる目標を掲げました。しかし現実には年間四百万人も増え続け、今では八億五千万人を超えて連日二万四千人が餓死しています。

 この四月、農林水産省が食料安全保障課を新設しました。きっかけは昨春、上昇を始めた米シカゴ商品取引所の穀物相場です。

 食料安全保障課の新設

 世界の総人口は五〇年には今の六十五億人から九十億人に増えると試算されています。FAOの食料在庫統計も低下が続き、いずれの数字も将来の食料不足を予測させるとの判断でした。九三年、深刻なコメ不足に見舞われ、農水省は国内混乱とタイ米緊急輸入という苦い体験をしています。

 安全保障課は穀物の需給変動などを分析し日本の農政に反映させる役割を担います。しかし食料の安定確保に即効薬はありません。テレビなどは買えなくても我慢すればすみますが、食料の欠乏は人々の生存にかかわります。三十一日、町村信孝官房長官は百万ヘクタールを超すコメ減反を見直すべきと述べました。異論はありません。

 英国は工業を振興し食料を海外に委ねる国際分業を進めてきました。食料自給率は40%台を低迷しましたが、七三年に欧州連合の前身、欧州共同体加盟を機に共通農業政策による財政支援で農家の生産意欲を刺激し、小麦輸出国に転じて八二年以降は、ほぼ70%台を維持しています。共通政策の恩恵とはいえ、英国政府が万が一に備えて食料安全保障の気概を示したからこその回復と言えます。

 欧州連合は食料高騰を受けて減反政策の廃止案を加盟国に示しました。参考になるはずです。

 日本は主食用のコメは全量自給しています。目下、小麦と遜色(そんしょく)のない米粉パンの試作が進められており、転作奨励金などで後押しし、早い商業化が期待されます。コメ以外も自給率の引き上げが求められます。「外国から買える」の危うさから目をそらし、不測の事態への備えを怠ってはいけません。

 食料配分の秩序がきしんできたとはいえ、資金が潤沢にあれば現状では農産物の輸入は可能です。それが「作物の収穫がままならない。カネもない」では悲惨です。

 内乱、虐殺で難民が続出しているアフリカのスーダン、ダルフール地方の政情不安もその一つ。難民生活が食料生産不能の環境に追いやり、大勢の餓死者を出す悪循環の典型になっています。

 昨年十月、FAOのディウフ事務局長は「地球には現在の総人口を養える食料があるはずだ」と力説し、誰に対してでも食料を得る権利を保障するよう訴えました。

 地球人口は養える

 牛肉一キログラムの生産には十一キログラムの飼料穀物が必要です。経済が豊かになれば肉類もテーブルを飾ります。世界の十六億人が太り過ぎと診断されており、ディウフ氏の発言には、栄養過多を戒めて食料を途上国などに回せば飢餓を救えるという、分かち合いへの期待が込められています。

 横浜で先月開かれたアフリカ開発会議は、コメ生産量倍増の行動計画を採択しました。福田首相はサミットで品種改良などの技術支援を提案しますが、同時に、分かち合いの思想とシステム構築を発信する場にもすべきです。



(私のコメント)
日本の政治家は負け犬根性が身についてしまって、アメリカ政府の言う事には何でも受け入れる事で、外交から防衛に至るまでアメリカ任せにしてしまってきた。食品安保についても同じであり、農業政策においてもアメリカの言うがままであり、米国産牛肉を無理やり食わされようとしている。さらには最近は大豆が高騰してアメリカから遺伝子操作された大豆が豆腐や醤油用に輸入されているようだ。

コメに関しても国内で余っているにもかかわらずアメリカから77万トン輸入させられているが、強制的に買わされているのだ。それくらいアメリカは日本の食料政策に対して内政干渉しているのですが、そのために日本では自立した食料政策がとれなくなっている。

日本はアメリカの多くの工業製品を輸出しているから、アメリカから農産物などを輸入していますが、それが今年の食品や穀物の高騰で変調をきたしている。石油価格の高騰でバイオ燃料と言うことでトウモロコシが高騰し、その影響で大豆や小麦などにも投機資金が入って高騰した。オーストラリアの旱魃による被害も重なっている。

アメリカは世界一の穀物輸出国だから儲かってしょうがないだろう。日本の商社が大豆の輸入で苦労している事は以前に「株式日記」でも書きましたが、品不足になるとアメリカは当然のように値段を吊り上げてくる。アメリカは中国という13億人もの巨大市場が出来たおかげで穀物や飼料輸出で儲かるようになった。

アメリカはソ連崩壊の後は中国にねらいを定めて経済投資を集中させて経済発展をさせてきた。中国が豊かになれば民主化も進んで13億人の巨大市場が出来るという戦略ですが、そのためにオリンピックも北京開催など支援してきた。穀物戦略に関する限りアメリカの戦略は成功してアメリカの農家は潤っている。

中国は豊かになるにつれて肉料理を多く食べるようになり、牛や豚などの家畜に対する飼料が必要になりアメリカから大量に輸入するようになった。中国が食品輸入国になる事は以前から予想されていた事であり2004年から中国は食物輸入国となった。にもかかわらず日本は中国から農産物を輸入していますが、将来的には中国には輸出余力がなくなる。

日本は差し引き320億ドルの農産物の純輸入国でであり世界一の農産物輸入国家です。第二位のイギリスは145億ドルで、日本がいかに農産物輸入大国であるかが分かるでしょう。最近の食品などの価格高騰はデフレ経済に慣れきった日本人には驚きでしょうが、日本の農業政策はあって無きに等しい。イギリスのような断固とした食品安全保障政策を見習うべきだったのだ。

世界の農産物貿易からいえば、日本は世界人口の2%に過ぎませんが農産物貿易は11%も占めている。マグロなどの水産物は日本が一手に引き受けているような状態ですが、このような事がいつまでも続けていられるはずがない。日本には何故食糧安全保障の感覚がないのだろうか?

日本のマスコミは国際分業体制を肯定してコメなどの国内農業保護政策に批判的だった。一般国民にしても廃棄する食品の多さには無頓着だ。食品店などの売れ残った食品は廃棄処分されていますが、コンビニ弁当の廃棄問題も「株式日記」でも書きましたが、何で値引きして売らないのだろうか? 日本は飽食の時代を迎えて食品に対する感覚がマヒしてしまったのだ。

日本は少子化で大変だ、産めよ増やせよと馬鹿マスコミが騒いでいますが、食糧問題から見れば日本は危機的状況であり、国土面積からいえば人口は半減するくらいで丁度良くなる。戦争などの非常事態が起きて海外から石油も食料も入ってこなくなれば戦時中のような状況になるわけであり、少子化で大変だと言う論理はどこから来るのだろうか?

さらには、若年労働者が少なくなるから海外から移民を受け入れろと言う意見もある。食品自給率が40%しかない日本に大量の移民がやってきたら日本はどうやって彼らを食わせて行けるのだろうか? 長期的な戦略としては少子化で日本の人口が減るのは当然のことであり、海外から移民を受け入れても日本の国土は受入れ余地がない。いざとなったら大量の餓死者が出るような状況だ。

『食糧安保』などという言葉は日本では禁句に近い状況に置かれて、少子化とか若年労働者が足りないとかの問題が大きな問題だった。しかしパンや乳製品のの値上がりを見ると近いうちに世界的な食糧危機がやってくるような気がする。食糧危機が来れば日本がいかに人口過剰であるかが認識できるだろう。

円高で大変だと言う認識が財務省などにあるようですが、円が高くなければ海外から石油も食料も買えなくなる事が分からないのだろうか? 食料パニックが本格化すればアメリカもカナダもオーストラリアも食物の輸出を禁止するだろう。または異常気象が本格化して不作で輸出したくても出来ない状況が来たら日本はどうするのか考えていない。



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